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終わりなき隣人との戦い:ガザと西岸地区 2019.12.22

 2019-12-22
上記のように、国際刑事裁判所が、動き始めているが、スラエルとパレスチナ人との戦いは、まさにエンドレス。最近の動きは以下の通りである。

<西岸地区からPFLP(パレスチナ解放人民戦線)50人逮捕>

18日、シンベト(国内治安維持組織)が発表したところによると、イスラエル軍は、ここ数ヶ月の間に、西岸地区全体で、PFLPメンバー50人を逮捕するとともに、多数の銃や、武器、爆弾製造用具などを押収した。多数の危険なテロを未然に防いだとみられている。

一連の捜査は、今年8月、家族とハイキングに来ていたリナ・シナーブさん(17)が爆弾テロで死亡したことで始まった。捜査により、西岸地区でPFLPが本格的な多数のテロを計画していることがあきらかになったという。

リナさんは、死をもって、多くのイスラエル市民を救ったといえる。

https://www.timesofisrael.com/israel-arrests-50-pflp-members-in-crackdown-following-deadly-august-bombing/

<交渉は挫折?ガザからロケット弾再び>

イスラエルとハマスの交渉が行われているようではあるが、地上では、ガザとの紛争は終わる様子はない。19日木曜深夜2時半、スデロットと周辺地域は、ロケット弾のアラームで起こされ、シェルターへ駆け込んだ。幸い、迎撃ミサイルが発動し、今の所、被害の報告はない。

https://www.timesofisrael.com/rocket-fired-from-gaza-toward-israel-intercepted-by-iron-dome/

この前日、18日には、ガザから夜の闇にまぎれて、イスラエルへライフルを持って侵入しようとしたパレスチナ人1人の姿が、防犯カメラでキャッチされ、イスラエル空軍の攻撃で、後に脂肪が確認されていた。19日のロケット弾はこの件への反撃とも考えられる。

https://www.ynetnews.com/article/Hk1YxoIRr

ガザは上下水システムが崩壊し、電気も1日数時間と、もはや人間が住める場所ではなくなっていると言われていたが、カタールが大量の現金を搬入して、なんとか危機的状況からは脱出できたようである。

カタールが、イスラエルの合意のもとで、これまでにガザに搬入した金額は、11億ドル(約1300億円)にのぼる。ガザがなんとか落ち着いているのは、このカタールの資金によるものである。カタールはとりあえず、来年3月までは支援を続けると言っている。

https://www.reuters.com/article/us-palestinians-israel-qatar-aid/qatar-says-its-gaza-aid-to-continue-through-march-2020-at-least-idUSKBN1YM20I

<ガザにもいるパレスチナ人スタートアップの若者>

ガザは、ハマスがガザ支配するようになってから12年になるが、人々の生活は悪化を続けるばかりである。昨年、ガザの大学を卒業した若者(19−29歳)の失業率は80%を記録した。こうした中、テロに走る若者が絶えないのだが、そうではない若者もいた。

アル・ジャジーラが伝えたところによると、ガザで大学を卒業したタメル・アボ・モトラクさん(26)、ウサマ・カデイアさん(24)、カリッド・アボ・モトラクさん(24)は、オリーブ油抽出後に廃棄される廃棄物から、家庭用燃料玉を開発した。

通常、オリーブは、オイルを抽出後、約40%が廃棄される。西岸地区とガザで年間8万トンが廃棄物になる。モトラクさんらは、この廃棄物から、燃料玉を開発したのである。

この燃料玉は、通常の木であれば、4−5時間燃えて終わるところ、10時間は持つという。家庭用に使えば、64シェケル(約2000円)のガスの消費の代替になる。代替燃料になるとして成功を収めはじめている。

現在、1時間に1000キロを生産しているが、おいつかないほどだという。この成功がガザの若者の起業への夢の発端になればと注目されている。

https://www.jpost.com/Middle-East/Palestinian-entrepreneurs-find-way-to-turn-olive-waste-into-clean-energy-611274

アフガニスタンで、テロリストに銃殺された中村哲医師は、水と食事があれば、人々が戦いに行くことはないと言っていた。

イスラエルはガザの生活を改善することが、テロを防ぐ最大の手段と考えて、カタールの現金搬入を歓迎し、その他にも支援を惜しまない構えである。カタールの支援が尽きる前に交渉がすすみ、ハマスが、まともなガザ治世を受け入れてくれたらと思うが、どうだろうか。。

カタールはイラン側の国である。イスラエルは、そのカタールにガザの支援をさせているわけである。おそらく十分に計算してカタールを受け入れているとは思う。
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ガザでハマス創設から32年:国境デモ再燃 2019.12.15

 2019-12-15

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ハマス12周年(2018年12月17日) 出展: Mohammed Asad/Middle East Monitor

先月、イスラエルがイスラム聖戦を攻撃し(黒帯作戦)、ハマスの温存するかのような動きをとって、イスラエルとハマスが水面下の交渉を行っていると伝えられていた。

水面下での交渉は、まだ戻されていないイスラエル兵2人の遺体に関することも含まれているとみられるが、まだなんの進捗も報告されていない。

https://www.timesofisrael.com/gazans-clash-with-idf-troops-along-border-as-hamas-marks-founding/

こうした中、13日金曜、ガザでは、ハマス創設32年の式典が行われ、群衆が参加する中、イスラエルとの徹底的な戦いが叫ばれた。

また、一時停止していた毎週金曜の国境デモも再開され、およそ2000人がデモに参加して、イスラエル軍と衝突。パレスチナ人5人が負傷した。イスラエルとハマスの交渉は、もはや破綻したかのようである。

https://13news.co.il/item/news/politics/security/hamas-gaza-32years-959765/

<ハマス創設32年で西岸地区でも衝突予想:ヘブロンで指導者複数逮捕>

ハマス32周年で、西岸地区でも関連した衝突が予想されるめ、イスラエル軍は、西岸地区のハマス幹部らの逮捕に乗り出している。ヘブロンでは、複数のハマス幹部が、イスラエル軍に逮捕された。

https://www.timesofisrael.com/israel-arrests-several-senior-hamas-officials-in-west-bank/

パレスチナ自治政府も、イベントに合わせてハマスが暴動を起こさないよう、西岸地区各地で、ハマス関係者を連行した。これについて、ハマスは、「これでパレスチナ自治政府が計画している選挙が、公正ではないということが明らかになった。」と反発している。

*アッバス議長は、自分が高齢でもあることから、近くガザのハマスも含めた全パレスチナ人による総選挙を計画中である。しかし、ハマスがこれに参加するかどうかはまだ明確になったわけではない。

<ガザのクリスチャン:イスラエル・西岸地区への訪問許可なし>

イスラエルは、毎年、クリスマスシーズンに、ガザのクリスチャン数百人に、ベツレヘムや、西岸地区に住む親族に会いに行く許可を出している。しかし、今年は、上記のような情勢から、海外に出ることは許可しても、イスラエル国内やベツレヘムや西岸地区への訪問は許可しないと表明している。ハマスとの衝突を防ぐためである。

なお、ガザには、総人口200万人中、約1000人のクリスチャン(ほとんどがギリシャ正教)がいる。迫害もあり、その数は年々減っているという。

以前、ガザの家族から離れ、一人で西岸地区に潜んでいるという若いガザのクリスチャン男性に出会ったことがある。

彼の家族はギリシャ正教だが、彼自身は、西岸地区に来てから、福音派クリスチャンになった。ガザ出身であるため、仕事もなく、難しい状況が続いているという。当然、ガザの家族とは連絡を取ることはできていない。

https://www.i24news.tv/en/news/israel/society/1576230957-gazan-christians-barred-from-visiting-bethlehem-and-jerusalem-on-christmas

このクリスマスシーズン、ガザのクリスチャンや西岸地区にいる福音派クリスチャンたちを覚えて、その守りと導きを祈っていただければと思う。
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ベツレヘム:今年もクリスマスシーズン到来 2019.12.7

 2019-12-07
ベツレヘムでは、11月30日、キリストの生誕を記念する生誕教会(世界遺産)前、まぶね広場で、巨大なクリスマスツリーの点灯式が行われ、クリスマスシーズンの到来を世界に告げた。

点灯式典には、数千人が訪れ、ベツレヘム市長と、パレスチナ自治政府のハムダラ首相も出席した。これから、クリスマスまで連日、盛大に、クリスマスマーケットや、コンサート、市民によるパレードなどが行われる。

https://www.youtube.com/watch?v=-r9QMyWAyTM

言うまでもなく、クリスマスは、観光業に依存するベツレヘム市にとって、もっとも大事なかきいれ時。幸い、ここしばらく、イスラエルとの大きな衝突が発生していないため、昨年の観光客は150万人だった。新しいホテルも増築され、今年はさらに増えると見込まれている。

しかし、ベツレヘムは、イスラエルではなく、完全なパレスチナ自治政府の支配域である。エルサレムとベツレヘムは、車で約20分と非常に近いのだが、両者の間には、防護壁があり、すんなり出入りできるわけではない。

群衆がベツレヘムに向かうクリスマスイブは、観光客に便宜を図るため、エルサレム市は、ベツレヘムへの国境までの無料バスを朝まで走らせている。しかし、そこから生誕教会まではパレスチナ自治政府のバスが必要になる。

両者の間に、打ち合わせなどの協力体制はまったくないのだが、それでもこの時期、人々は群衆となって、ベツレヘムに来ている。

http://english.alarabiya.net/en/life-style/art-and-culture/2019/12/01/Hundreds-gather-for-Christmas-tree-lighting-ceremony-in-Bethlehem.html

<ローマ教皇からのプレゼント:イエスのまぶねの木片(伝統)>

今年、クリスマスツリーの点灯式に先立ち、フランシス教皇から、イエスのまぶねの一部と語り伝えられてきた手のひらサイズの小さな木片が、ベツレヘムに返還された。

この木片は、1216年から聖地の管理者と目されてきたフランシスコ会が、伝統的に2000年前のものとして伝え、7世紀にバチカンに送られていたものである。木片は、マーチングバンドとともに迎えられ、生誕教会の隣、カトリックの聖カトリナ教会に収められた。

https://www.timesofisrael.com/after-1400-years-relic-thought-to-be-from-jesus-manger-returns-to-bethlehem/

なお、現在、ベツレヘムの人口は約2万9000人。Times of Israelが伝えたところによると、1950年代には、86%であったクリスチャンの人口は今や12%と、減少を続けている。原因は、悪化する貧困とともに、イスラム過激派の流入が考えられている。

ビジネスのためとはいえ、今年もクリスマスを祝うベツレヘムのパレスチナ人たちを覚えて、また少数ながら、ベツレヘムにいるクリスチャンたちを覚えて祈られたし。
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イスラエルとハマスが歩み寄り!?:金曜国境デモ3週間保留

 2019-11-30
ガザのハマスが、もう1年以上も毎週金曜に続いてきたガザ国境の暴力的な「帰還への行進」デモを、3週連続でキャンセルしている。

国境でのデモが3週間停止していることを受けて、ガザ沖では漁業が再開。カタールが、現金をガザへ搬入し、来週にも、貧しい1家族ごとに100ドルが配布されることになっている。29日には、イスラエルとハマスが、捕虜の交換も含めた新たな交渉を始めたと発表した。

先週、国連の中東特使ニコライ・ミラディノブ氏が、イスラエルのベネット防衛相を会談。続いて、数日中にガザを訪問する予定だという。

https://www.ynetnews.com/article/S1RjPqRhS

こうした流れではあるが、実際には、ハマスのキャンセルに従わず少人数は相変わらず国境に来て、イスラエル領に近づき、イスラエル軍の発砲で、16歳少年が1人死亡。これの応報としてイスラエル南部にロケット弾が発射され、イスラエル軍はハマスへの空爆を実施した。

ハマスがガザ全部を把握しているわけではないことは、イスラエルもすでにわかっていることなので、この動きが、今のハマスとの交渉再開に影響を及ぼすことはなさそうである。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/272474

<ハマスの変化は何が目的か?>

2週間前、イスラエルは、ガザにいたイスラム聖戦指導者のバハ・アブ・アル・アタと、シリアにいたアクラム・アル・アジョウリを暗殺。これにより、イスラム聖戦が350発に及ぶミサイルを、イスラエル南部地域に撃ち込んできて、これに報復するという黒帯作戦が勃発した。

2日間続いたイスラエルとイスラム聖戦が交戦中、ガザ市民の不信を買うというリスクを負いながらも、ハマスはまったく援護しなかった。イスラエルの誤爆とみられる攻撃で、ガザの一家8人が死亡したにもかかわらずである。

イスラエルも、いつもなら、ガザからの攻撃は、だれがやったかにかかわらず、すべて、ガザの支配者であるハマスの責任を追及するのだが、今回は、ハマスへの非難をしなかった。

さらに、興味深いことに、トランプ政権が、西岸地区のユダヤ人入植地は違法ではないとする立場を表明したことに反発し、26日、西岸地区各地では、これに反発する暴力を含むデモの日、「怒りの日」デモが発生した。この時もハマスは沈黙であった。

https://www.timesofisrael.com/palestinians-clash-with-idf-during-day-of-rage-over-us-settlement-change/

イスラム聖戦は、イランの指示で動く組織である。イスラエルにとっては大きな問題だが、ハマスにとっても今や手に負えない存在になりつつあった。イスラム聖戦の指導者が死亡することは、ハマスにとっても益になったとみられる。

作戦終了後、すぐにイスラエルとハマスが、捕虜の交換を含めた交渉を再開していることから、このイスラム聖戦との戦いにおいて、両者の間に共通の敵という認識の元で、作戦が行われた可能性があるのではとの憶測がとびかっている。

しかし一方で、アルーツ7によると、毎週金曜のデモの主催者の中からは、「デモのキャンセルと、イスラエルとの合意は関係がない。キャンセルは、今ガザで衝突が起こると、右派であるネタニヤフ首相に有利な流れになるからだ。デモは将来も続く。」との反論もある。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/272453

また、アッバス議長が高齢となり、いつ倒れてもおかしくないことから、パレスチナ自治政府では、以前から総選挙を行うという案件がでている。最近、それにハマスが同意したなどとのニュースも出た。

ハマスは、今はともかくも、イスラエルとの平穏を守って、総選挙で勝利して西岸地区も取ると作戦を行っているかもしれない。今、ハマスをおとなしくさせたからといって、必ずしもイスラエルの勝利とは限らないと釘をさす分析もある。油断せず、状況を見守る時であろう。

https://www.timesofisrael.com/palestinian-elections-are-looking-likely-and-may-be-spectacularly-bad-for-abbas/
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西岸地区入植地は国際法上違法と認識せず:トランプ政権また爆弾宣言 2019.11.22

 2019-11-22
18日、ポンペイオ国務長官は、西岸地区のユダヤ人入植地の認識について、アメリカの認識を正式に元に戻すと発表した。

すなわち、前オバマ政権が、2016年に、ヨルダン川西岸地区のユダヤ人入植地は基本的に、国際法に違反するとしていた立場を、1981年のレーガン大統領の立場ー西岸地区の入植地の存在が、基本的に国際法に違法にあたるとは考えないーに戻すということである。

しかし、ポンペイオ国務長官は、だからといって、アメリカが、全面的に、西岸地区の入植地の存在を合法と認めるということではないと強調した。

それぞれの入植地の合法性は、個別に検討する必要があるとし、その個別の問題にアメリカが関わることはないということである。実際、イスラエルの裁判所も、入植地の合法性、違法性については、個別の判断を出している。

また、アメリカが西岸地区の地位協定について最終的な判断を述べているのではないということも強調。それはあくまでも当事者どうしが交渉で決めることであるとした。

最後に、今回、アメリカがこの決断に至ったのは、この地域の独特の歴史的また環境的な条件を鑑みてのことであり、他の地域にもあてはまるものではないと述べた。

ポンペイオ国務長官は、最後に、これまでのように、入植地を違法だと判断することで、平和を得ることはできなかったと指摘。要するに、西岸地区の入植地問題は、国際法で解決できるものではなく、政治的な問題であり、両者が交渉によって解決するしかないということを認識すべきであると述べた。

https://www.timesofisrael.com/full-text-of-pompeos-statement-on-settlements/

<イスラエルの反応:相変わらず一致せず・・・>

ネタニヤフ首相とそのライバル、ガンツ氏の双方、また中道派たちは、アメリカが西岸地区入植地に関する認識を違法ではないとの認識に戻したことについて、歓迎すると表明した。

しかし、ネタニヤフ首相は、アメリカの動きを歓迎する理由について、「ユダヤ人の”ユダヤ・サマリア地区”(西岸地区)への入植活動は、外国人による植民地活動ではない。(自分の国に戻るという意味)」と述べたのに対し、

中道左派ガンツ氏は、「入植地の存在は、現地の実情に合わせて、治安が維持できるように交渉、合意で決まるものである。(国際法で判断するものではない)」とアメリカが述べた点を歓迎すると述べた。

一方、左派メレツ党のニツァン・ホロビッツ氏は、「アメリカのこの決断は平和への障害だ。入植活動はどうみても国際法上違法であり、アメリカの決断は、イスラエルとパレスチナ双方にとって害になる。」と述べた。

https://www.timesofisrael.com/netanyahu-and-gantz-both-fete-us-for-changing-tack-on-settlements/

イスラエルでは、3回目総選挙になる可能性が濃厚となっているその時に、この発表がなされたことから、アメリカが、”世紀の取引”(中東和平案)に有利と考えている右派ネタニヤフ首相をサポートしようとして、今この発表を行ったのではないかとの見方もある。

<パレスチナ、国際社会の反応>

パレスチナ自治政府のアッバス議長は、「入植地が国際法に違反であることは明らかである。国際法を無効にしたり、入植地を合法化する権利は、アメリカにはない。」と一蹴した。

ヨルダンのサフディ外相は、「西岸地区への入植活動は違法。パレスチナ人とイスラエル人が共存することをめざす2国家2民族(国を分ける)案の大きな障害になる。」と述べた。

EUのモルゲニ外相は、「EUは、イスラエルに対し、占領者の義務として、入植活動をただちに停止することを求める。」と述べた。

https://www.aljazeera.com/news/2019/11/pompeo-israeli-settlements-inconsistent-int-law-191118192156311.html

国連安保理は、月一回の中東に関する会議を行っていたが、ポンペイオ国務長官の発表から2日後、14カ国それぞれが、アメリカの決断に否定的な発言を出した。

https://www.ynetnews.com/article/BkH8E473B

<石のひとりごと>

トランプ政権は、エルサレムをイスラエルの首都といい、今度は、西岸地区のユダヤ人入植地は違法ではないと宣言。まさに親イスラエル政権とみられてもおかしくはないだろう。しかし、今回も含め、実際に何を言っているのかをよく考えると、実質的には何かが変わるということでもない。

一方で、イスラエルは、ますます嫌われる立場に追い込まれているようである。
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ガザ・イスラム聖戦との外科的近代戦:黒帯作戦は50時間で停戦へ 2019.11.14

 2019-11-14
12日早朝、イスラエル軍は、ガザのイスラム聖戦最高指導者バハ・アブ・アル・アタル(42)を、5人の家族、親族とともにいるところを空爆で暗殺。イスラエル軍はこの時同時に、シリア(ダマスカス)にいたイスラム聖戦のもう一人の指導者アクラム・アル・アジョウリも暗殺した。

この直後から、ガザのイスラム聖戦が、イスラエル南部からテルアビブ近郊にいたる広範囲地域に向けたミサイル攻撃が始まった。イスラエルは激しい反撃を予想していたかのように、12日は、イスラエル南部だけでなく、テルアビブにも学校やビジネスを休止させ、市民には自宅待機とさせた。

<イスラエルへのミサイル350発以上>

12日、ガザからの攻撃は190発を超えた。その後、夕刻から約7時間の静寂があったが、13日早朝6時から再び、ガザからのミサイル攻撃が始まった。13日夕方までに、ガザ周辺からイスラエル南部地域、アシュケロン、さらにはテルアビブに近いレホボト、エルサレムに近いモデイーンなど、イスラエル中部地域にまで向けて発射されたミサイルは、350発にのぼった。

ミサイルの90%は迎撃ミサイルシステムのアイアンドームが撃墜。残り10%のうち60%は計算通り、住民のいない空き地に着弾し、その残りが、スデロット、アシュケロンの民家を直撃した。

これにより12日、アシュケロンで女性1人が軽傷。13日には、アシュケロンの高齢者ホームに着弾し、女性(70)が、中等度の負傷となった。この他、数十人が軽傷を負った他、ショックで手当てを受けた人もいた。物的な被害は出ているものの、イスラエル側に重篤な人的被害は出ていないといえる。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/271613

写真:直撃を受けてキッチンの天井に大きな穴があいた家(ネティボット:ガザ周辺):住民のバットシェバさんらは、2回目のサイレンでシェルターに入っていて無事だった。なお、テロで被害を受けた家の修理は、通常は、100%国がカバーする。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5623889,00.html

*余裕!?イスラエル人の様子

ミサイル攻撃は、イスラエルでは珍しいものではない。しかし、昔と違い優れた迎撃ミサイルがあるので、人々も昔のようではなく、余裕でシェルターなどへ避難しているようである。13日には、イスラエル南部以外は学校も再開した。

今は旅行のハイシーズンで、旅行者もテルアビブ地域にかなり押し寄せているが、大きなパニックはない。むしろ、迎撃ミサイルの撃墜をカメラに収めようとする観光客もみられる。ベン・グリオン空港も通常の運行を続けた。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5624786,00.html

ビデオ:南部の子供たち:子供たちがパニックにならないように導く幼稚園や家庭の様子

https://www.mako.co.il/news-military/2019_q4/Article-9e60be53be56e61027.htm?sCh=31750a2610f26110&pId=173113802

ビデオ:レホボトで結婚式中にサイレンがなり、新郎新婦と客たちも、シェルターに避難しているが、余裕の様子のイスラエル人たち

https://www.mako.co.il/news-military/2019_q4/Article-0ee952c4fb66e61027.htm?sCh=31750a2610f26110&pId=173113802

<イスラム聖戦幹部・軍事拠点への反撃:イスラエル軍>

イスラエル軍は、慎重にガザの市民に被害が出ないよう、イスラム聖戦の拠点と武装関係者だけを狙う空爆を続けた。やられたら、きっちりやり返すという反撃で、「そちらがやめたらこちらもやめる」という原則を暗示するとともに、幹部のピンポイント攻撃を行うことで、停戦を促す作戦をとった。

この反撃中、アブ・アル・アタルに加えて、イスラム聖戦ガザ部隊司令官カリッド・ファラージ(38)、ロケット部門司令官ラスミ・アブ・マルハウスが死亡した。(イスラエル軍報告)。

https://www.timesofisrael.com/palestinians-say-family-of-6-killed-in-apparent-israeli-strike-on-home-in-gaza/

ガザによると、13日までにイスラエル軍の攻撃で死亡したパレスチナ人は32人。イスラエルは、そのほとんどが、イスラム聖戦幹部やメンバーと主張しているが、ガザからの報告では、両親と子供という一家6人全員を含む13人の市民が空爆の犠牲になったと主張する。これについて、イスラエル軍のコメントはない。

注目されたのは、ハマスの出方であった。今回、イスラエルの攻撃対象はイスラム聖戦に限られているが、今後ハマスが加わってくるかどうかで、イスラエルも大規模な戦争に発展させるかどうかを決断しなければならなくなる。しかし、最後までハマスは戦闘には参加しなかった。

またイスラム聖戦がイランの支援を受けるシーア派組織であることから、北部ヒズボラが、この事態に便乗してくる可能性も懸念されたが、それも避けられたようである。

<14日5時30分停戦合意へ:イスラム聖戦の方から停戦条件提示>

衝突が始まって間もなく、エジプトと国連が停戦への仲介を開始。イスラム聖戦は、12日中は、「まだアル・アタルの血が乾いていない。」として、停戦には応じない構えを見せた。

しかし13日になり、イスラム聖戦側から、イスラエルが直ちに幹部へのピンポイント攻撃を停止するなど、複数の停戦条件を出し、仲介のエジプトが、14日朝午前5時30分から停戦との合意に至ったと伝えた。戦闘が始まってから2日後のことである。

合意内容には、毎週金曜の国境デモにおいてもイスラエルが攻撃を停止することも盛り込まれており、イスラエルがどこまで合意したかは不明。また、合意時間より後の午前6時の時点で、その後正午ごろもまだイスラエルへのミサイル攻撃があったので、有効かどうかは今後の動きを見るしかない。

ただ、14日、イスラエル南部では、少しづつ学校が再開されるなどの動きが始まっているので、合意に至ったことは間違いなさそうである。

https://www.timesofisrael.com/gaza-ceasefire-between-israel-islamic-jihad-in-effect-from-5-30-a-m/

結局のところ、迎撃ミサイルが威力を発するので、いくらミサイルで攻撃しても、イスラエルへの被害は最小限である一方、イスラム聖戦へのダメージはかなり大きいわけである。ネタニヤフ首相は、イスラム聖戦の方から停戦を出してきたことから、今回は、イスラエルの作戦勝ちだとの認識を語った。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/271640

イスラエル軍も、50時間で、イスラエルの目標は全部達成できたと高く評価し、この作戦を「ブラック・ベルト(黒帯)」と名付け、作戦は成功したと発表した。

https://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/gaza-news/IDF-confirms-ceasefire-with-Palestinian-Islamic-Jihad-607828

<なぜ今ハバ・アブ・アル・アタル暗殺したのか:イスラム聖戦とは?>

今回の紛争は、イスラエル軍がイスラム聖戦のハバ・アブ・アル・アタルを暗殺したことから始まっている。イスラム聖戦は、ヒズボラと同様、イランの支援を受けて活動しているテロ組織(アメリカがテロ組織に指定)。特にアブ・アル・アタルはイランとの調整役として知られていた人物である。

ガザ市民への公的責任を一応にも負っているハマスと違い、イランの支持の元、ただただイスラエルを攻撃すればよいだけのイスラム聖戦は、イスラエルにとって非常に危険な存在であった。イスラエル軍によると、アブ・アル・アタルは、ここ数ヶ月の間のイスラエルへのテロを計画、指示しており、今後のテロも計画していたという。

また現在、イスラエルは、ガザへの全面介入を避けるため、ハマスに上手にガザを治めてもらうことを目標に、エジプトを介して、ハマスとの交渉を水面下で行っている。この間、アブ・アル・アタルは、イスラエルへの攻撃を実施して、両者の交渉を妨害してきたのであった。

今回、アブ・アル・アタルを暗殺することで、イスラム聖戦の動きを制すると同時に、それへの反撃に反撃する形で、イスラム聖戦が持つ武力に打撃を与えておくことは、イランの脅威を削ぐことにもつながる。イスラエルにとっても大きな益であった。

イスラエルとっては、大きな外科的作戦ではあったが、政府、軍、リブリン大統領からも成功したとの評価になっている。

https://www.timesofisrael.com/as-rockets-paralyze-half-the-country-was-assassinating-abu-al-ata-worth-it/

しかし、一方で、イスラム聖戦が弱体化することは、結果的に、そのライバルであるハマスを強化することにもつながっていく。

ハマスへの徹底的な攻撃ではなく、逆にハマスを助けることになるような方針を続けるネタニヤフ首相に反発して、昨年末、防衛相を辞任したリーバーマン氏(イスラエル我が家党)は、今回の衝突についても、「実質、ハマスへの敗北だ。」と、痛烈な批判を出した。

https://www.timesofisrael.com/this-is-actual-surrender-liberman-assails-netanyahu-for-hamas-policy/

*ハマスとイスラム聖戦の違い

ハマスとイスラム聖戦は、かつては両者ともにイランの支援を受けていた。しかしシリア内戦が勃発すると、ハマスは、イラン傀儡だったアサド政権を支持せず、反政府勢力の側に立ってしまう。これを受けて、イランはハマスを見捨てるようになった。

しかし、イスラム聖戦は、続けてイランの側に立ったので、イランはイスラム聖戦を支援するようになった。このため、イスラム聖戦は、ハマスより小さい組織でありながら、武力については同等ぐらいになったので、今、ガザではハマスにとって頭の痛い存在になったのである。

イスラム聖戦が強くなったために、ハマスの支配で、生活を破壊されたガザの市民の中には、こちらに流れる者も出始めている気配がある。将来ガザがイラン傀儡のイスラム聖戦に支配されることは、第二のヒズボラを南に抱えることにもなりうる。

皮肉なことだが、イスラエルはイランを連れてくるイスラム聖戦よりハマスの方が、まだましということになっているわけである。

<今後どうなるのか:イスラム聖戦指導者ズィヤド・ラシディ・アル・ナクハラ登場>

今回、アブ・アル・アタルが暗殺された後、今回の衝突を導き、後にイスラエルとの停戦に持ち込んだのは、ズィヤド・ラシディ・アル・ナクハラ(66)であった。

ナクハラは、ガザ出身。1971年にテロリストとしてイスラエルで逮捕され、終身刑の判決を受けたが、1985年に囚人交換で釈放された。イスラエルの刑務所での14年でヘブル語も堪能だという。ナクハラはその後もう一回イスラエルで逮捕されたが再び釈放。2018年から、レバノンで、イスラム聖戦の事務総長となった。

エルサレムポストによると、ナクハラは、イスラエルから釈放された後は、レバノンとシリアに在住。ヒズボラとイラン、特にイラン革命軍のカッサム・スレイマニとも関係を維持している。ヒズボラと同様、イランには、完全服従だという。パレスチナ人のナスララともよばれている人物である。

ただ一点の希望は、ナクハラのナスララと違うところは、ナクハラが、ガザ出身者として、この地域でのエジプトの存在を理解している点である。今回、停戦に応じたのは、エジプトに逆らったら、ガザからは出入りもできなくなるというガザの弱点を良く理解しているからと思われる。

結局のところ、イスラエルは、黒帯作戦で、イスラム聖戦に大きな打撃を与えたが、実際には前と同じか、前より悪いものを迎えた可能性も否定できないということである。

https://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Ziyad-al-Nakhalah-The-Palestinian-Hassan-Nasrallah-607752

<情報とハイテクによるコスト戦:新しい戦争の形>

戦争の形は、医学以上に日進月歩かもしれない。今回のイスラエルとガザとの戦争は、世界に新しい戦争の形を垣間見せていた。それは、情報とハイテクに支えられたコストパフォーマンスの考え方に基づく戦争という概念である。

アブ・アル・アタルを暗殺したイスラエル軍は、アブ・アタルが確実にその日、その時間に自宅にいるということを突き止め、小さなドローンでそれを確認後、ビル全体を空爆するのではなく、その部屋がある階のみを完全に破壊した。

これはイスラエルがいかに情報と、攻撃のハイテクにすすんでいるかを証明するものである。実際には、ガザがイスラエルに太刀打ちなど到底できるものではないのである。

しかし、コスト面でみればどうだろうか。迎撃ミサイルアイアンドームシステムは1億ドル。発射される迎撃ミサイルは1発が5万ドル(600万円程度)となっている。(CTEC)

戦争においては、どちらが勝つかということが重要であるが、近代においては、コスト面を考え、勝ち負け以上に、いったい何が益なのかが考えなければならなくなっている。ガザとの衝突は、一掃してしまうと、その戦争の際の出費、またその後ガザの管理にかかる出費などを考えると、時々、短期の衝突で延々と同じ状況でいるほうが出費は少なくてすむということである。

https://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Ziyad-al-Nakhalah-The-Palestinian-Hassan-Nasrallah-607752

ネタニヤフ首相は、ビジネスマンなので、一気にガザを粉砕せよと主張する右派勢をかわしながら、今に至っているわけである。従って、今回も50時間で一応の落着となったが、今後、また発生することはすでに計算済みである。

<ネタニヤフ首相の政治的意図?>

イスラエルは、今、連立政権が立ち上がらず、3回目の総選挙になるかどうかとの瀬戸際にある。なんとしても首相の座にとどまりたいネタニヤフ首相が、今この時に、アブ・アル・アタルの暗殺をあえて指示したのではないかとの疑いの声もある。

戦争になれば、国民は、左派ではなく、右派に傾く傾向があるため、ガザとの紛争は、ネタニヤフ首相に有利に働く可能性があるのである。

リーバーマン氏によると、アブ・アル・アタルの暗殺は数ヶ月前にすでに案として上がっていたという。それを阻止したのがネタニヤフ首相であった。それがなぜ今、暗殺に踏み切ったのか。政治的な意図があったのではないか、というのが、リーバーマン氏の指摘である。

ネタニヤフ首相がいかに必死かは、アブ・アル・アタルへの攻撃を実施する直前に、ナフタリ・ベネット氏を防衛相に任命したことからも疑われる点である。

ベネット氏は、昨年末、リーバーマン氏が防衛相を辞任した際に、そのポジションをネタニヤフ首相に要求して断られた。結局、その後、内閣、議会からも姿を消すことになった人物である。そのベネット氏に今、次期政権が決まるまでの暫定政権においてのみではあるが、防衛相の椅子を与えた。

これは、ベネット氏が、ライバルのガンツ氏側へ移行する動きがあったためである。もしベネット氏が、右派ブロックを出て、ガンツ氏側へ移行した場合、ガンツ氏を中心とする小政府が立ち上がる可能性もあった。

ネタニヤフ首相があえて今、防衛相というベネット氏の念願をかなえてでも、ガンツ氏の進出を阻止して、自分を中心とする右派ブロックの一致を強固にしておくためである。アブ・アル・アタルの暗殺は、ベネット氏が防衛相としてそのオフィスに入った当日に始まった。

ベネット氏が防衛相になると発表されると、世論はじめ、政界からも激しい反発を呼んだ。暫定政権なのにこの動きは違法だとの声もあがった。しかし、ガザとの戦争が始まると同時に、その反発の声はなくなった。これもまたネタニヤフ首相の計算であったといえなくもない。

https://mondoweiss.net/2019/11/cynical-and-frightened-why-netanyahu-appointed-bennett-as-defense-minister/

ライバルのガンツ氏は、こうした醜い政治的な背景については、厳しく批判しているが、しかし、元イスラエル軍参謀総長としては、アブ・アル・アタルの暗殺は支持する立場であった。

<石のひとりごと>

今回も一段落したが、何が起こっているかを理解するだけでも、相当なエネルギーを要した。イスラエルの政治、防衛は、実にチェスのごときである。何手も先を読んで、それでも、予想外が発生し、それにだれよりも早く対処しなければならない。そうして終わりが見えてくることもない。

こうした世界で、しかも周囲全部からきらわれ、時に内部からも攻撃されるイスラエルの首相をやっていくということは、想像を絶する体力気力を要する。繊細な日本人には理解できないような超極太の神経が必要だ。しかし、繊細である余裕がないというのがイスラエルの現状であろう。

先日、今回もミサイル攻撃を受けたアシュドドに住むイスラエル人で韓国人を妻にもつジャーナリストのRさんから、「韓国と日本はメンツを守るという点ではよく似ているよね。僕達にはそれがない。」と言われた。

基本的に積極的な韓国人と、ひかえめを美とする日本人では性格は全く違うと思うが、確かに、メンツを守る、人前で誇りを保てるかどうかが、実質よりも重要になることがあるという点では、似ているかもしれない。だから両国ともに自殺が多い。そこがイスラエル人と違うとRさんは言うのである。

イスラエルでは、最終的には、メンツよりも命。恥よりも実質。だから、過去を根に持つ余裕はないし、実質のためなら、昨日の敵も今日は平気で友になる。外からみてそれがどう映るかなど全く気にしないのである。多少恥ずかしいことをしてでも、たいがいは生き残る方を選んでいる。

ミサイル攻撃の下にいるRさんからは、「大丈夫。我々はいつものように強いから。」との返事が来た。その通り、2日で今回も乗り越えた。イスラエルとその国の人々を見ているとなにやら励まされる思いがしている。
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