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第5回ホロコーストフォーラムより:世界統一の型?? 2020.1.28

 2020-01-28
23日、エルサレムのホロコースト記念館ヤド・バシェムで、第5回世界ホロコースト・フォーラムが行われた。ちょうどアウシュビッツ・ビルケナウ虐殺強制収容所がソ連の赤軍に解放されてから75年目であった。

このため、このフォーラムの先立ち、プーチン大統領は、リブリン大統領とネタニヤフ首相も同席する中、ナチス崩壊の になった、レニングラードの戦争を戦った赤軍兵士を記念するモニュメントを創立する式典を行った。フォーラムはこの直後にヤドバシェムで始まった。

このフォーラムは、単にアウシュビッツの解放を記念することが目撃ではなく、今、欧米社会で反ユダヤ主義暴力が悪化していることを受けて、イスラエルが、首脳たちに対処を約束してもらうという趣旨のもとでのイベントであった。

このテーマのもと、49カ国という、イスラエル史上最も多くの首脳が、イスラエルに集結したことは、前代未聞であり、歴史的なイベントになったことは間違いない。

<リブリン大統領、ネタニヤフ首相演説>

首脳たちを前に、リブリン大統領は、イスラエルが、このフォーラムで、被害者として、諸国の哀れみや補償を訴えているのではないと強調した。世界の反ユダヤ主義は、今も変わりはないが、イスラエルは前向きな民主国家として強い国になっていると主張した。

しかし、同時にイスラエルは、ホロコーストの事実を覚え続けると言った。それは、恨み続けるということではなく、これを覚えて、歴史を繰り返さないようにするためであり、それは、諸国にとっても同じ責務であると訴えた。

アウシュビッツを解放したのは、旧ソ連の赤軍だが、この時西からも、アメリカ、イギリス、フランスなどの連合軍が、ナチスドイツを攻撃し、全世界が協力して、ナチスを壊滅させた。

人類最大の悪を、人類が協力して打ち破ることができたと述べ、欧米とロシアはイデオロギー的には違っても、結果的に協力できたのだとして、これからも反ユダヤ主義と戦うチームになっていただきたいと呼びかけた。

ネタニヤフ首相は、義なる異邦人が、自分だけでなく、家族の命のリスクを負ってまでもユダヤ人を助けてくれたとして、諸国首脳達に感謝を述べるところから、メッセージをはじめた。

しかし、アウシュビッツ解放は遅すぎたとして、イスラエル国家の存在の重要性とともに、その首相として、第二のホロコーストを起こさないようにすることが、最大、最重要の任務であるとの認識を語った。

<諸国応答>

続いて、プーチン大統領、ペンス副大統領、マクロン仏大統領、チャールス皇太子、そして、諸国代表としては、最後に、ドイツのステインマイヤー大統領が、スピーチを行った。主なスピーチの内容は以下の通り。

1)ロシア:プーチン大統領

プーチン大統領は、大型バス満員のジャーナリストや、護衛など総勢600人を連れてきていたという。フォーラムのメッセージでは、赤軍兵士たちがアウシュビッツを解放した時の記録を読んだとして、そのショックを語るところからメッセージをおこし、アウシュビッツを解放したのがロシア軍であったことを強調した。

当時はナチスに協力した人々が、ウクライナ(ユダヤ人140万人虐殺)やリトアニア(22万人虐殺)におり、時に司令官であったナチスよりも残虐だったとしてナチスだけの犯罪ではなかったと述べた。

また、同時にナチスは、ユダヤ人を抹殺しようとしたが、同じことをロシア人、ベラルーシ人、ウクライナ人、ポーランド人に対しても行おうとしたことを忘れてはならないと語り、ホロコーストは二度と起こってはならないと述べた。

全体的に見ると、プーチン大統領は、ホロコーストを、ユダヤ人に特化せず、グローバルに表現したということである。しかし、たとえば、ポーランドのユダヤ人は、95%が抹殺されたのであり、他の民族とは比べられないような現状があるとして、イスラエルでは、批判の声もあった。

そのロシアだが、1939年に、ナチスと条約を結び、ナチスとともにポーランドの北東部を攻め取ったのであった。これについて、ポーランドとロシアの間には、まだ未解決の問題を抱えたままである。

完全原稿: https://www.timesofisrael.com/this-crime-had-accomplices-full-text-of-vladimir-putin-holocaust-forum-speech/

2)アメリカ:ペンス副大統領

ペンス副大統領は、反ユダヤ主義暴力と戦っていく必要を述べ、ホロコーストを否定し、イスラエルを地図から抹消しようとする国、イランに対し、強くたっていかなければならないと訴えた。

また、イスラエルが、この悲劇(1945年)から3年の”死の谷”の後に、イスラエルが立ち上がった(1948年)ことへの驚きと敬意を述べ、「今日、私たちは、ユダヤ人の力と回復力、信仰を見ているが、それは神のユダヤ人への誠実の証を見ていることである。」と述べた。

最後には、神が、ユダヤ人とアメリカ、ここに集まった全ての国々を祝福されるように。天に平和を創られるように、私たちすべての国に平和を与えてくださるようにと祈りでしめくくった。

完全原稿: https://www.timesofisrael.com/we-marvel-at-jewish-resilience-full-text-of-pences-speech-to-holocaust-forum/

3)ドイツ:ステインマイヤー大統領

ドイツはナチスを生み出した国である。このような場で演説することの難しさは想像に耐えない。ステインマイヤー大統領は、まずはヘブライ語で祈りを捧げた。

「私の国の恥に耐えています」と語り、ドイツの負っているこの責任には、終わりはない。ドイツがこれに対してどう対処するかで、私たちを判断していただきたい。」と、その悔い改めの深さと覚悟を述べた。

しかし同時に、ドイツで反ユダヤ主義暴力が発生していると述べ、「私たちの国は、何も学んでない。反ユダヤ主義は悪化している。」と認め、「同じことが二度と起こらないようにしなかればならない。」と危機感を持って決意を語った。

ステインマイヤー大統領が、へりくだって、明確にその罪の責任には終わりはないとまで言ったことを、イスラエルでは感動をもって受け取られていた。一方で、口で言うだけでなく、実際に反ユダヤ主義暴力を阻止するべきだとの声もあった。

完全原稿:https://www.timesofisrael.com/laden-with-guilt-full-text-of-german-presidents-world-holocaust-forum-speech/

<その他のエピソード>

1)ペンス副大統領が嘆きの壁訪問


23日、フォーラム式典後、ペンス副大統領は、嘆きの壁を訪問。敬虔な福音派クリスチャンとして、詩篇からのみことばを読み、10分にわたって、祈りを捧げた。

その後、新しいアメリカ大使館で、ネタニヤフ首相と会談。ネタニヤフ首相は、「アメリカほどの友はいない。」と述べた。

https://www.i24news.tv/en/news/israel/1579800692-us-vp-mike-pence-makes-visits-western-wall-in-jerusalem-s-old-city

2)プーチン大統領が、ベツレヘムでアッバス議長と会談

プーチン大統領は、23日、フォーラム式典後、ベツレヘムで、アッバス議長と会談。アメリカの和平案について話しあった。プーチン大統領は、パレスチナ自治政府への支持を表明。5月の戦勝マーチが行われるモスクワへアッバス議長を招いたとのこと。

https://www.jpost.com/Middle-East/Putin-and-Abbas-meet-in-Bethlehem-discuss-Deal-of-the-Century-615235

3)チャールス皇太子の祖母は義なる異邦人

イギリスのチャールス皇太子は、エルサレムで、その父方の祖母アリス王女の墓を訪問した。

アリス王女は、第二次世界大戦のころ、イギリス王室から、ギリシャとデンマークのアンドリュー王子と結婚。その息子フィリップが、後にイギリスの女王と結婚するにあたり、ギリシャ王族のタイトルを返上して、イギリス王室に入った。その息子がチャールス皇太子である。

アリス王女は、ギリシャで、ユダヤ人をナチスから保護したことで、義なる異邦人と認められた。アリス女王は、戦後もギリシャにとどまり、ギリシャ正教の修道女のための修道会を設立した。亡骸は、エルサレムのマグダラのマリアの教会に埋葬された。

チャールス皇太子は、このほか、ベツレヘムや、エルサレムのキリスト教サイトを訪問した。

https://www.bbc.com/news/uk-51236905

4)サイバー攻撃800回以上

チャンネル12が報告したところによると、このフォーラムの期間中に、キャッチされたサイバー攻撃は少なくとも800回はあったという。攻撃は、イラン、中国、北朝鮮、ロシアからとのこと。目標は航空機関連で、その飛行を妨害しようとしていた。

一般の旅客機が発着する中、これほどの数の首脳が航空機で出入りする。しかもプーチン大統領やペンス副大統領といった超大物ばかりである。これらの出入りや、首脳の動きをここまでみごとに計画し、護衛したイスラエルにはやはり脱帽である。

エルサレム市内は、22日、23日とバスの動きはかなり影響を受けたが、首脳の移動が終わればすぐに、道路閉鎖が解除されるので、困難ではあったが、移動ができなくなるということはなかった。

<石のひとりごと>

今回は、ドイツのステインマイヤー大統領がへりくだり、「私たちの責任に終わりはない。これに私たちがどうするかをみていてほしい。」と述べたことに感動を覚えた。

これを聴きながら、日本では、戦争を子供達に深く教えないまま、韓国に対して、責任の「終了宣言」をしたことを思った。無論、ナチスと日本を比べることはできない。しかし、いくら補償をしたとはいえ、加害者の方から、責任の終了を宣言できるものだろうか。

某国立大学の日本政治外交教授は、ナチスは、その罪があまりにも明確なので、むしろ幸運だ。日本の場合、国の性質が違うし、アジアで犯したとされる罪がどうもグレーの部分もあり、ドイツほど、国として謝罪を明らかにすることに問題が残ると言われていた。

そうした中、日本には、「水に流す」という文化がある。しかし、世界にそんな文化はない。しっかり覚えることで、同じ間違いを繰り返さないようにと努めるのが世界である。世界との文化の違いをよく見据えた上で、外交をしていく必要があると思った。

またこれほどの、首脳陣がエルサレムに集結した様子を見て、韓国人クリスチャンの友人が、将来のエキュメニカルな、世界統一を見るようだと言っていた。イスラエルは、聖書の神を実証する国だが、同時に、最後に神に逆らうものもまたイスラエルから出るのではとも思わせるフォーラムでもあった。
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ポーランドでアウシュビッツ解放75周年記念式典 2020.1.28

 2020-01-28
23日、エルサレムで、第5回世界ホロコーストフォーラムが行われたが、これに続いて、28日、ポーランドでアウシュビッツ解放75周年記念式典が行われた。会場は、アウシュビッツ・ビルケナウの虐殺収容所の入り口に設置された。

この式典は、現在の反ユダヤ主義の台頭を阻止しようとするイスラエルのホロコーストフォーラムとは違って、アウシュビッツ解放そのものを記念する式典である。このため、主役はアウシュビッツからの生存者たちである。式典では、生存者の証言者が続いて講壇に立ってそれぞれの経験を語った。

首脳陣としては、ポーランドのドゥダ大統領、ドイツのステインマイヤー大統領、イスラエルからリブリン大統領が式典に出席した。

式典中継:https://www.youtube.com/watch?v=Y4DP9DqLRI0&feature=emb_logo

ポーランドのドューダ大統領は、第5回世界ホロコーストフォーラムに招かれていたが、出席しなかった。アウシュビッツ解放75周年で、いわばポーランドが脚光をあびる時であるのに、ポーランドには、発言する機会が与えられなかったからである。

ポーランドに発言を許さなかったことについて、ヤドバシェムは、今回の発言国は、ナチスを打ち破った戦勝国に限っていると説明している。

イスラエルとポーランドの関係は、昨今、ホロコーストの責任はポーランドにもあるかないかという点で、関係がギクシャクしていた。このため、ポーランド大統領のフォーラム欠席は、イスラエルでも物議となった。

フォーラムの後に、ポーランドを訪問したリブリン大統領は、ドゥダ大統領との共同記者会見にて、「ホロコーストはナチスによってはじめられたが、ヨーロッパ全域でそれに協力した形であり、それぞれは、その責任を負うべきである。」と述べた。

同時に、ドゥダ大統領をエルサレムに招き、両国の関係とは別に、歴史は、双方の歴史家の研究に任せて、政治に影響しないようにしなければならないと語った。要はともに反ユダヤ主義と戦うことだとリブリン大統領は語った。

https://www.timesofisrael.com/rivlin-to-polish-counterpart-many-poles-stood-by-helped-murder-jews-in-wwii/

<アウシュビッツに教会建物:ラビたちが撤去を要求>

アウシュビッツは、一度に9万人が在住できるひとつの大きな町である。この広大な殺人工場で、110万人が虐殺された。そのアウシュビッツから見えるところに、大きな教会が、大きな十字架をかかげて立っている。

この教会は、カトリックで、今も礼拝が行われている活発な教会である。この建物は、かつてナチスの本部が置かれていた建物であり、ユダヤ人女性たちが拷問やレイプされた場所でもありという。

いわば、アウシュビッツ・ビルケナウにあるべき建物ではないといえる。アウシュビッツ解放75周年イベントに合わせて、アメリカのユダヤ教ラビたち4人が、「この建物は、1987年に欧州で、アウシュビッツにカトリックの礼拝の場を置かないと決められた協定に違反する。すぐにも撤去せよ。」と訴えた。

この運動を導くラビ・ウエイスは、「これこそアウシュビッツに対する冒涜だ。」と叫んだ。

なお、ホロコーストにおいて、カトリックのバチカンは、公式には、ユダヤ人を助けなかったが、コルベ神父のように、個人でユダヤ人を助けてアウシュビッツで殺されたカトリックの聖職者は、少なからず存在している。

https://www.reuters.com/article/us-holocaust-memorial-auschwitz-rabbi-pr/rabbis-call-for-removal-of-church-at-auschwitz-idUSKBN1ZP0OY

<アウシュビッツからの手紙:アウシュビッツ映像をカラーに>

イスラエルの国立図書館は、アウシュビッツ解放75周年を記念して、アウシュビッツにいた人々とウイーンの親族友人の間の葉書や手紙を公開した。お互いの無事を尋ねる短いやりとりだが、殺されていった人々の直筆からは、失われた命の尊さがあふれている。

https://www.ynetnews.com/article/S1Z00uHhW8

また、ホロコーストの記憶を後世に伝え続けるため、白黒の写真や記録映像にカラーをつけたドキュメンタリーが、今週公開される。論争はあったが、カラーになると、現実味が増して、戦争を知らない次世代にもその現実が少しは伝わるのではないかと言われている。

https://www.jpost.com/Diaspora/Antisemitism/New-documentary-colourizes-images-from-Auschwitz-for-the-first-time-615539

<イスラム教指導者62人がアウシュビッツ訪問>

イスラエルで世界ホロコーストフォーラムが行われ、続いてポーランドで、アウシュビッツ解放記念式典が行われたが、この中にイスラム諸国はまったく含まれていない。

こうした中、24日、アメリカのユダヤ委員会のメンバーとともに、イスラム教指導者62人が、アウシュビッツを訪問した。導いたのは、サウジアラビアのメッカを拠点とする世界イスラム同盟のミハンマド・アル・イサ氏である。訪問の目的は、イスラムの寛容性を示すためとしている。

https://www.aljazeera.com/news/2020/01/muslim-leaders-visit-auschwitz-liberation-anniversary-200123171532513.html

62人は、28カ国から来たイスラム指導者で、うち25人は高位のイスラム教指導者であった。イスラム指導者たちは、アウシュビッツで祈りを捧げ、また一行は、ポーランドのユダヤ博物館も訪問した。

<石のひとりごと>

ホロコーストは、単にユダヤ人が被害者で、ナチスが加害者というだけではない。これは、全人類の罪が表面化した形である。こうしたイベントにアジア諸国もイスラム諸国も招かれていなかったが、日本人を含め、人間として、この問題に無関係の人はいないだろう。

筆者は、ヤドバシェムで、初の日本語公式ガイドとして、より多くの日本の人にもこの問題を知ってもらいたいと願っている。ホロコーストを学ぶ事は、世界を理解する事にとどまらず、個人の生き方にも大きな益になると確信している。

これを読んでくださっている読者もいつか、ヤドバシェムに来てくださるか、学校等でのセミナーの受付もぜひ検討していただければ幸いである。
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国際世界首脳46人:第5回国際ホロコーストフォーラム 2020.1.23 

 2020-01-23

新しくオリーブ山通信を開設しました。 https://mtolive.net

今日23日、エルサレムのヤド・バシェムでは、アウシュビッツ解放75周年を記念して、第5回国際ホロコーストフォーラムが行われている。

このフォーラムは、イスラエルのリブリン大統領が、ロシアやヨーロッパ、オーストラリアなど、ホロコーストに関係する諸国の首脳たちを招いて、共に反ユダヤ主義と戦おうとするものである。

招きに応じて22日から、フランスのマクロン大統領などヨーロッパの首脳たちがエルサレムに集まり始めた。23日朝には、プーチン露大統領、ペンス米副大統領も到着。順次、リブリン大統領、ネタニヤフ首相と会談している。

首脳たちは、プーチン大統領、ペンス米副大統領、マクロン仏大統領、イギリスのチャールズ皇太子、ドイツのステインメイール大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領、ベルギーのフィリップ国王、オランダのウイレム・アレキサンダー国王、ノルウェーのハアコン皇太子、スペインの国王フィリップ4世,
ルクセンブルクのヘンリー大公

この他大統領の出席は、アルバニア、アルメニア、オーストリア、ベラルーシ、ボスニア、ブルガリア、クロアチア、フィンランド、ジョージア、キプロス、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、モルドバ、モンテネグロ、北部マセドニア、ポルトガル、ルーマニア、セルビア、スロバキア、スロバニア

首相は、チェコ、モナコ、スェーデン その他代表は、カナダ、欧州共同体、バチカン。また、トランプ大統領の弾劾を主張する民主党のナンシー・ペロシ下院議長が出席する。

HPにて、イベントを中継中。詳しくは順次お伝えする。
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ハヌカにラビ宅で刃テロ5人負傷:ニューヨーク 2019.12.30

 2019-12-30
28日、ハヌカ7日目の夜午後10時ごろ、アメリカのニューヨーク市北部、モンゼイの超正統派ラビ・ロッテンバーグが、自宅で、家族や友人とともに、ハヌカのろうそく7本目をともしていたところ、大きな”なた”を持った男が入ってきて、次々に5人を刺した。

ハヌカの祝い中だったので、現場には数十人がおり、血まみれの人や叫び声などで大パニックになったという。現場にいた人が犯人に、テーブルや椅子を投げつけ、その瞬間に人々は、近くのシナゴーグへ逃げ込み、扉を閉めた。

犯人は追ってきたが、シナゴーグの扉を開けることができなかったので、そのまま車に走って逃げていったという。

負傷者5人のうち、3人は、まもなく搬送先の病院から帰宅できたが、ラビの子供たち2人、ヨセフ・ベン・ペレルさん、シュロモー・ベン・ヴィッテルさんが重症となっている。状態は落ち着いているとのことだが、家族は回復のための祈りを要請している。

証言によると、犯人はマスクを着用していたアフリカ系アメリカ人だった。容疑者はマンハッタン・ハーレムで身柄を拘束されている。詳細はまだ発表されていない。

ニューヨークのユダヤ人(Jewish Virtual libraryより)

ニューヨーク州には、17世紀前半からヨーロッパからユダヤ人が来て、住み始めた。1880年には6-8万人、その30年後の1910年には90万人と急増し、その約20年後の1928年には、183万5000人となった。

ホロコーストの時代に逃れてきた人も多い。超正統派の主流はの一つ、ハバッド派のラビ・ルバビッチも、1941年にヨーロッパからニューヨークに移住。ニューヨークで教え、死去した。本部がニューヨークにあることから、ハバッド派超正統派が、今もニューヨークに多数在住している。

貧しいイスラエルの超正統派と違い、ニューヨークの超正統派たちの中には、ビジネスでも成功している人も多い。

現在、ニューヨークに在住するユダヤ人の総数は176万人で、ニューヨーク州総人口の約9%を占める。ニューヨーク・マンハッタンでは、黒人かアジア人でないなら、ユダヤ人だといわれるほど、白人がユダヤ人である確率は高い。

https://www.jewishvirtuallibrary.org/new-york-state-jewish-history

<ニューヨーク周辺で急増する反ユダヤ主義暴力>

今回の事件が発生したモンゼイでは、11月に、シナゴーグへ向かっていた男性が刺され、目をくりぬかれた。この2ヶ月の間の反ユダヤ主義暴力は、モンゼイだけで、9件にものぼっているとのこと。

ニューヨーク州のデータによると、2019年にニューヨーク市で発生した反ユダヤ主義暴力は152件で、昨年度の93件から63%も急増している。

警察は、ユダヤ人たちが、特に集中してすんでいるニューヨークのボローパーク、クラウンハイツ、ブルックリンでの警戒態勢を強化すると発表した。29日からは、ボランティアによる警備隊も巡回を始めるとのこと。

https://www.jpost.com/Breaking-News/Multiple-victims-reported-after-stabbing-reported-in-synagogue-in-Monsey-NY-612415

ニューヨークのユダヤ人は、いよいよユダヤ人とわかる外見をすることの恐怖を実感せざるをえなくなっているという。

*最近の重大な反ユダヤ主義テロ

2018年10月 ペンシルバニア州ピッツバーグで、保守派シナゴーグで銃の乱射テロがあり、11人死亡。

2019年5月、カリフォルニア州サンディエゴで、過越の最終日、ハバッド派シナゴーグで銃撃テロが発生。1人死亡。

2019年10月、ドイツでネオナチの男が、ケバブ店と隣接するヨム・キプール礼拝中のシナゴーグを襲撃。シナゴーグは強固な戸に守られたが、1人が死亡した。

2019年12月 ジャージーシティのコシェルのスーパーで銃撃、4人死亡。

<イスラエルの反応>

事件を受けて、リブリン大統領は、「悲しみに打ちひしがれている。反ユダヤ主義の再燃は、ユダヤ人やイスラエルだけの問題ではない。何度も首をもたげてくるこの悪は、世界全体の危機を意味している。皆で戦っていかなければならない。」と語った。

ネタニヤフ首相は、「イスラエルはこの反ユダヤ主義暴力、ましてハヌカを祝うラビの家でのテロを強く非難する。」と述べた。

イスラエル我が家党のリーバーマン党首は、「唯一の解決は、(ユダヤ人は)イスラエルへ移住することだ。」と述べた。

青白党のラピード氏は、「このようなテロで私たちの魂がひるむことはない。モンゼイのユダヤ人共同体は、(この事件のあとも)ハヌカ8日目のろうそくに火をともすのだ。」と語った。

https://www.timesofisrael.com/israeli-leaders-shocked-and-devastated-demand-action-after-monsey-attack/

<石のひとりごと>

世界の反ユダヤ主義は、確実に、また急速に悪化している。リーバーマン氏が言うように、一番よいのは、イスラエルへ移住することであろう。

しかし、アメリカのような先進国で快適に住んでいると、イスラエルへの移住は大きな決断になる。筆者の友人は、イスラエルへ移住したが、冷暖房完備のアメリカと違い、冬には寒く、夏には暑く、仕事もキツイ。結局アメリカへ帰ってしまった。

また、メシアニック(イエスを信じるユダヤ人)の友人は、移住を申請したが、キリストを信じている場合は、ユダヤ人とは認められないと判断され、移住を拒否されて、アメリカへ戻された。

アメリカのユダヤ人(ディアスポラ)の多くは、イスラエルが定めるユダヤ人の定義にあるような超正統派ではなく、改革派や保守派である。このため、イスラエルに反感を持つ人も増えている。イスラエルに行きたくないユダヤ人も少なくない。

ホロコーストの時代も、滞在する社会に深く根ざしていたユダヤ人たちは、ヒトラーが政権についたのちも、なかなか逃げようとはせず、多くが時を逸して殺されていった。

今はイスラエルという国がある。特に反ユダヤ主義が悪化している欧米諸国のユダヤ人が時を逃さず、イスラエルへ移住する決断ができるようにと思う。
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アメリカでユダヤ教コシェル・マーケット銃撃:4人死亡 2019.12.15

 2019-12-15

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犠牲者の2人 出展:Ynet

10日の午後12時半過ぎ、アメリカ東海岸ニューヨーク・マンハッタンに近いニュージャージー州、ジャージー市で、コシェル(ユダヤ教食物規定を遵守する)のスーパーマーケットで、男2人による銃の乱射事件が発生。警察官1人と一般市民3人の計4人と犯人2人が死亡した。

死亡した市民は、ユダヤ教超正統派で買い物に来ていたモシェ・ハルシュ・デウチさん(24)と、レア・ミンデル・フェレンツさん(33)、スーパーの職員、ミグエル・ロドリゲスさん(49)。

警察官のヨセフ・シールさんは、近くの墓地にいたが、犯人2人がスーパーに入るのを防ごうとして射殺されたとみられる。ロドリゲスさんは、客を逃がそうとしていて射殺されたもよう。

道路に設置されていた防犯カメラが店周囲の様子を記録していた。それによると、犯人は、男性デービッド・アンダーソン(47)と、女性フランセン・グラハム(50)の2人。アンダーソンがまずスーパーの外から銃を打ち込み、続いてグラハムが店に入っている。

デービッド・ラックスさんは、この時現場にいたが、奇跡的に脱出して唯一の目撃者、生き残りとなった。ラックスさんによると、犯人の男女2人は、強盗が目的ではなく、最初から殺害を目的にしていたと語っている。

通報で、約20分後に警官隊が駆けつけ、2時間ほど店内にいた犯人と撃ち合いが続いたが、午後3時25分、ようやく踏み込んだところ、市民3人と、犯人2人の遺体を発見したという。

https://edition.cnn.com/2019/12/12/us/jersey-city-new-jersey-shooting-thursday/index.html

ジャージー市市長は、まだ未確認ではあったが、反ユダヤ主義暴力の可能性があるとして、市内のユダヤ関連施設に治安部隊を送って警戒に当たらせた。

こうした中ではあったが、翌日のモシェさんとレアさんの葬儀には、超正統派300人が出席した。ラビは、「これが現状だと知らなければならない。」と群衆に語った。警察やボランティアが、葬儀の間の警備に当たった。

https://www.timesofisrael.com/jersey-city-shooting-survivor-says-attackers-looked-well-trained-came-to-kill/

犠牲となったスーパーは、この地域では唯一のコシェルのスーパーで、超正統派たちの集まる場であった。犠牲となったレアさんは、数年前にこの地域に来て、夫とともにこのスーパーを経営しながら、イシバでも学んでいたという。

レアさんが殺害された日は、レアさんの息子の11歳の誕生日であった。

<犯人は、Black Hebrew(黒人ヘブル・イスラエル人)?>

犯行に及んだ2人は、犯行に及んだ際、銃を4丁所持していた上、乗ってきたバンにもう一丁と、パイプ爆弾まで所持していた。

被害を受けたスーパーは、ユダヤ教イシバ(神学校)に隣接しており、事件当時、イシバには、50-60人のユダヤ人小学生がいた。犯人は当初この学校を狙う予定だったが、スーパーを襲撃することに計画変更したとみられる。

もし学校が襲撃されていたらさらに大きな大惨事になるとことろであった。

https://www.timesofisrael.com/jersey-city-mayor-says-gunmen-wanted-to-target-next-door-yeshiva-with-50-kids/

犯人のアンダーソンは、元アメリカ兵で、武器にはなれている人物であった。また、Black Hebrew(黒人ヘブル・イスラエル人)と呼ばれる組織への興味を示していたが、実際にこの組織とどの程度関わっていたかは不明である。

このグループは、アメリカのアフリカ系黒人たちで、自分たちこそ聖書的なヘブル人だと信じており、反ユダヤ主義思想を表明するものもいる。

https://www.nj.com/hudson/2019/12/its-a-miracle-dozens-of-children-were-inside-jewish-school-next-door-to-deadly-jersey-city-shooting-scene-rabbi-says.html

アメリカでは、2018年にピッツバーグのシナゴーグが襲撃され、11人が死亡するという反ユダヤ主義暴力が発生している。アメリカの反ユだや主義が急激に悪化していることはもはや誰の目にも明らかである。

<犠牲になった警察官に5万ドル(約550万円)献金:ニューヨーク地域の超ユダヤ教徒たち>

ニューヨーク地域の超正統派ユダヤ教とたちは、犯行を防ごうとして殺害された警察官のヨセフ・シールさんに感謝して、その家族のための献金を募った。

結果、事件発生からわずか20時間で、5万ドル(約550万円)が集まった。多くはシールさんの葬儀(おそらくはキリスト教)にも参列する予定だという。

9:11に関連するグループも、勤務中のことで、一家の柱を失ったシールさんの妻と5人の子供たちを助けるため、家のローンなどをカバーする

https://www.timesofisrael.com/orthodox-community-raises-50000-for-family-of-slain-jersey-city-detective/

さすが、献金と助け合いの文化基盤があるアメリカである。
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ボリス・ジョンソン英首相勝利:ユダヤ人は安堵 2019.12.15

 2019-12-15

ボリス・ジョンソン首相とネタニヤフ首相 

ボリス・ジョンソン首相とネタニヤフ首相 出展:Haim Zach, GPO

イギリスで、EU離脱(ブレクシット)を進めてきたジョンソン首相が、下院で強い反発を受けて、なかなか離脱が進まないことを受けて、国民の意思を問うとする総選挙を決行した。

大きな賭けであったが、予想に反して、ジョンソン首相の保守派が365議席(650議席中)を獲得。EU離脱をキャンセルすると言っていたライバルの労働党(ジェレミー・コービン党首)の191議席をはるかに超えた圧勝となった。

これを受けてジョンソン首相は、来月末までに離脱を完了させるとEUとの交渉に張り切っている。このニュースは、イスラエルを含む世界中でトップニュースとなった。

イギリス国民の意思がはっきりしたことを受けて、アメリカのトランプ大統領は、ジョンソン首相に祝いを述べ、今後イギリスとの貿易関係を深めていくと述べた。

一方、総選挙で大敗したコービン党首は、敗北を認め、党首を辞任すると発表した。これでイギリスから左派勢力が世界に広がっていくというコービン氏の夢もとりあえずは、棚上げになったといえる。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191214-00010000-newsweek-int

<イギリスのユダヤ人とイスラエルは安堵>

ジョンソン首相のライバル、労働党のコービン党首は、イギリスで高まっている反ユダヤ主義に十分対処せず、ユダヤ人たちの間では、コービン氏自身が、反ユダヤ主義であるとみられていた。

コービン氏は、またハマスやヒズボラとも関係があり、イスラエルも、もしコービン氏が首相になれば、イギリスとの関係も失うことになると懸念していたのであった。

しかし、選挙の結果、労働党が大敗北で、コービン氏は、政界から消えることになり、イギリスのユダヤ人とイスラエルは安堵している。

https://www.timesofisrael.com/uk-jews-israelis-fete-apparent-defeat-of-anti-semite-corbyn/

ネタニヤフ首相とリブリン大統領は、それぞれ、ボリス・ジョンソン首相に祝辞を送り、今後さらに関係を深めていきたいと伝えた。

https://www.timesofisrael.com/netanyahu-rivlin-congratulate-johnson-on-reelection-say-it-will-boost-uk-ties/

<石のひとりごと>

イギリス人は、少なくとも半分はブレクシットに反対していた。前のメイ首相も総選挙を行ったが、彼女がEUと取り決めた合意を市民たちは受け入れなかった。この時はまだ、やはりブレキシットは中止したほうがよいという意見まで出て、その旗頭であったコービン氏が優勢になりつつあったのである。

ところが、蓋を開けてみると、予想外にもボリス・ジョンソン首相が、圧勝だった。イギリス市民は、ブレキシットを決めてから3年になるのにまだ宙ぶらりんであることに耐えられなかったとみられる。またもはやここまで来た以上、引き返すことも受け入れられなかったのだろう。

ジョンソン首相は、イギリスのトランプと言われている。市民は、ジョンソン首相の明るさと、イギリスに対する猪突猛進的な熱意を支持したのでだろう。超大国アメリカのトランプ大統領から好意的にみられていることは、ジョンソン首相にとっても大きなプラスになる。

これからの指導者は、オバマ大統領時代のポリティカル・コレクトネス(政治的に、また見た目に正しいかどうか)ではなく、トランプ式に、したたかに実質を見て交渉を行う、つまりは自分自身だけでなく、心底、自分の国を愛するリーダーが、これまで以上に求められているということだろう。

しかし、勝負はこれからである。ボリス氏が今後どのような条件をEUから引き出すのか注目したい。
カテゴリ :反ユダヤ主義 トラックバック(-) コメント(-)
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