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第71イスラエル独立記念:現代イスラエルの素顔 2019.5.16

 2019-05-16
5月9日、イスラエルは71回目の独立記念日を祝った。上記のような治安情勢だったが、直前にガザとの停戦に至り、市民たちは、例年のように独立記念日を祝うことができた。

ヘルツェルの丘では、リブリン大統領、ネタニヤフ首相などを迎えての式典。翌日は、戦闘機を含むイスラエル軍機が、バーベキューを楽しむ市民たちの頭上を飛んで、平和を謳歌した。

協力な治安体制のもと、国内では大きな問題もなく、無事この日を終えることができたことは今年も幸いであった。

1)繁栄するイスラエル

イスラエルの総人口は、昨年から2%増えて、902万1000人。71年前、80万6000人で始まったイスラエルは今や10倍以上となった。このままいくと、30年後の建国100周年には1520万人になる見通しである。

総人口902万6000人のうち、ユダヤ人は、669万7000人(74.2%)、アラブ人は189万人(20.9%)その他は43万人(4.8%)となっている。

昨年の独立記念日からの1年で生まれたユダヤ人の新生児は18万8000人(1夫婦の平均の子供の数は3.11人)。新移民は3万1000人。

建国以来、320万人が移住してくる中、71年目の今、ユダヤ人の75%は、イスラエル生まれのイスラエルネイティブ、いわば近代ヘブル人ともいえる人々である。

全世界のユダヤ人のうち、現在イスラエルに在住するユダヤ人は45%である。ということは、現在の全ユダヤ人のうち、30%ぐらいは近代ヘブル人ということである。この人々は毎年増えている。やがて、この人々が、終末時代に大きな役割を果たすことになるのかもしれない。

経済も祝福されている。観光客数は、毎年記録を塗り替えており、昨年末までに440万人がイスラエルを訪問。IT,サイバーセキュリテーなどの部門では、世界中からの投資が相次いでいる。

市民の平均収入は、昨年より増えて、2900ドル(30万円強)。しかし、これについては、格差が相当あるため、あまり参考になる数字ではない。

https://www.timesofisrael.com/israels-population-tops-9-million-including-45-of-world-jewry/

イスラエルは、戦争が尽きないとはいえ、今、最もおちついた時代を迎えているといわれる。イスラエル人の88.9%が、「私は幸せです」と回答している。

世界経済フォーラムの調査では、世界の経済トップ156カ国の幸せ度を発表しているが、イスラエルは、昨年で11位である。世界経済トップ3カ国のうち、アメリカは18位、中国、日本は、いすれも50位までにすら入っていない。

https://www.weforum.org/agenda/2018/03/these-are-the-happiest-countries-in-the-world/

2)エルサレムVSテルアビブ

イスラエルのもう一つの顔が、エルサレムとテルアビブの違いである。エルサレムは、かつてイスラエルの神殿があったように、神の存在を認める、認めざるを得ない町である。

一方、テルアビブは、建国の基となった町で、人間の力を謳歌することを全面に出す。おおまかにいえば、聖書に準じてイスラエルはユダヤ人の国と主張する右派が多いエルサレムと、パレスチナ人との対話を重要視する技術、知識最先端の左派が多いテルアビブである。

この二つの都市は、同じ国の町とは思えないほど様々な点で異なっており、どちらかがどちらかに勝とうとする動きはないものの、様々な点でライバルの様相である。

今回のユーロビジョンでは、まさに祭りで人間謳歌。夜にはバーが開かれ、ゲイ・キャピタルとして、ゲイたちが、道を闊歩する。

https://vimeo.com/330429545

また、今年のユーロビジョンでは、世界的にかなり有名になっている心を読む超能力があるとされるユダヤ人メンタリスト(イスラエル国籍)、リオール・サッカード氏が、特別に出演することになっている。

https://eurovision.tv/story/mentalist-lior-suchard-to-make-special-appearance-at-eurovision-2019

しかし、人の考えていることや、将来を読み解くというサカード氏のパフォーマンスは、聖書の視点で言えば、まさに現代における預言者である。聖書の神と無関係であることから、さしずめ偽預言者だろうか。

ユダヤ教の国だからといって、聖書を強調するだけがイスラエルではないと、テルアビブは世界に発信しているようでもある。

これが良いことかどうかは別として、今回のユーロビジョンは、ネタニヤフ首相がガザと早急な停戦を行った点からみてもわかるように、政治的外交的にも重要なイベントである。
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戦没者記念日2019 2019.5.8

 2019-05-08
イスラエルでは、6日早朝にガザと停戦となり、平穏をとりもどした。その翌日7日午後、戦没者記念日が始まった。

今年、建国以来の戦没者と数えられたのは2万3741人。このうち、テロ被害者を含む市民は3150人。

今年は、7日午後8時(日本8日夜中2時)に全国で鳴らされる黙祷のサイレンと、嘆きの壁広場での式典で始まる。この式典には、リブリン大統領とコハビ参謀総長が出席する。8日午前中には、戦没者が埋葬されているヘルツエルの丘で、ネタニヤフ首相、リブリン大統領も出席しての記念式典が行われる。

8日には11時に2分間の黙祷のサイレンが鳴らされる。この時、ヘルツェルの丘には、自分に直接関係する戦没者がいなかったとしても、人々は子供連れで、敬意を表するためにやってくる。

日中、テレビでは、1日中、戦没者たちの名前が読み上げられる。イスラエルは、様々な地域から移住したユダヤ人が多い多様な国であるが、国のために命を失った人々への敬意は、子供にもしっかり伝わっている。

戦没者記念日が明けると、独立記念日の祝祭が始まる予定。ガザとの停戦が成立してなによりであった。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5505781,00.html
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今年も平和に過越し終了 2019.4.28

 2019-04-28
イスラエルでは、4月19日、過越しが始まった。その翌日からは種無しパンの祭りと続き、27日は、過越の最終日で再び祭日(安息日)となった。この間、学校、政府関係、大手企業は休み。中小企業や、サービス業も半日業務で、いわば大型連休であった。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5496956,00.html

<過越しの大型連休>

過越しはイスラエルにとっては、安息日に続いて重要な例祭である。

紀元前12-13世紀ごろ、イスラエル人は、エジプトで奴隷であった。しかし400年の後、モーセがリーダーとして立てられ、エジプトから脱出する。これを出エジプトという。この時、神はイスラエル人を行かせようとしないエジプトに、10の災いをもたらした。

10番目の災いは、その家の長男が死ぬという災いであった。聖書の神、主は、共にエジプトにいたイスラエル人の家に、この災いが及ぶのを防ぐため、傷のない子羊をほふって、その血を家のかもいにつけておくよう指示した。それがしるしとなり、災いが、イスラエル人の上を「過越し」て行くようにされたのである。

この恐ろしい災いの後、エジプトは、ようやく、イスラエルが出て行くことに合意する。イスラエル人がエジプトから出発急いで出発する際の食事を記念するのが、過越の夜の食事、セダーである。

セダーでは、出発前の慌ただしさで、パンを醗酵させる時間がなかったことから、イースト抜きの種なしパン(マッツア)を食べた。また、苦しいエジプトでの奴隷生活を苦菜で、救い出してくださった主のあわれみを、甘いハロセット(なつめやしなどの混ぜ物)で覚えるなど、特有の食べ物を食べながら、この時のことを語り合い、神の恵みを覚える。

イスラエルでは、ユダヤ系市民の97%が、家族や友人たちとこのセダーを楽しむ。その後7日間、種無しパンの例祭となる。

過越の中日にあたる22日には、嘆きの壁で、祭司(チーフラビとコーヘンファミリーなど祭司の家系にあたる人々)祈りをささげ、その祝福をを受け取ろうと、今年も群衆で埋め尽くされた。嘆きの壁基金によると、半期までですでに75万人が嘆きの壁に来たという。

https://www.jpost.com/Israel-News/750000-people-visit-Western-Wall-since-start-of-Passover-587868

<家族そろっての行楽>

過越期間は、7-10日の大型連休である。学校や幼稚園の休暇は2週間に及ぶ。この休みを利用して海外旅行をする人も多い。今年も約150万人がベングリオン空港から出入りしたと推測されている。イスラエルは物価が高いので、国内のホテルで過ごすより、海外に行った方がコストは安い場合があるためである。

https://www.israelhayom.com/2019/04/19/1-5-million-israelis-spending-passover-abroad/

イスラエルでは、今年、異常に雨が多い日が続いたが、過越5日目ぐらいからようやく、晴れた。全国の国立公園は、家族連れで賑わった。過越の1週間だけで、20万人がいずれかの国立公園を訪れたという。

https://www.timesofisrael.com/50000-visit-israels-national-parks-as-passover-holiday-comes-to-an-end/

エルサレムの公園でも、多くの家族連れが、バーベキューをするなどしてくつろいでいた。平和な光景であった。

<シナイ半島へ旅行するイスラエル人>

毎年、出エジプトの逆をして、シナイ半島(エジプト)への旅行を決行するイスラエル人がいる。いうまでもなく、シナイ半島には、ISがいるとされ、非常に危険である。それでも、毎年行くのだが、今年も4万人が、エイラットから国境を通過してシナイ半島でのバケーションに向かった。

しかし、過越の週末には、スリランカで、教会とホテルを狙ったISによる多発自爆テロが発生し、250以上人が死亡した。イスラエル政府は、直ちに帰国するよう警告したが、帰ったという知らせはない。

https://www.jpost.com/Opinion/Visiting-Sinai-587813

<キリスト教徒の復活祭>

過越とキリスト教は、深く関連している。イエス・キリストが十字架にかかって死んだのは、過越入りの日であった。当時も、過越の巡礼で各地からユダヤ人たちがエルサレムへ押し寄せていた中で、十字架刑が行われたということである。

言いかえれば、過越の日に、イエス・キリストの命が犠牲になって屠られ、その血が流されたということである。出エジプトの時と同様、その血を、心の扉につける、すなわち、これを信じて感謝して受け入れる時、罰(永遠の地獄行き)という災いは過越していく、罪の支配から解放されるというのが、キリスト教のいう「救い」なのである。

エルサレムでは、過越入りの日、様々な国から来たキリスト教とたちが、大混雑の中、十字架を担ぐなどして、ビアドロローサ(十字架の道)を歩いた。その3日後の日曜、キリストが死からよみがえったことを記念する復活祭が祝われた。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5496966,00.html

なお、キリスト教には西方教会(カトリック)と、東方教会(正教会)がある。先週は西方のカトリックとプロテスタントが、今週は、東方教会が、十字架と復活を記念する礼拝を行っている。

ギリシャ正教の復活祭では、イエスの十字架の場、ゴルゴタの丘とされる聖墳墓教会で、復活を象徴する火が灯され、全世界にその火が運ばれていく。エルサレム旧市街は、この日も大混雑である。

今は、エルサレムが、1年で最もこみあう時期といえる。治安維持のため、イスラエルは、過越しの間は、ガザ、西岸地区からの出入りを閉鎖し、ガザのキリスト教徒(ギリシャ正教がほとんど)がエルサレムへ巡礼に来る場合のみ特別許可を出している。

過越しと復活祭の次は、イスラム教のラマダンが、5月6日からはじまる。ラマダンは、6月4日まで。いろいろ忙しいエルサレムである。

<復活祭とキリスト教会の災難について>

イスラエルでは、今年も平和にユダヤ教の過越し、キリスト教のパームサンデー、グッドフライデー、復活祭と、どれも平和に祝うことができたが、世界では、特にキリスト教会に関連する事故やテロが発生した。ニュースでも流されたことなので、イスラエルに関連するニュースをお伝えする。

1)ノートルダム大聖堂火災とユダヤ人迫害の傷

復活祭の5日前の4月16日、パリのノートルダム大聖堂の塔が火災で焼け落ちた。これについては、テロではなく、改修工事中の事故とみられている。

これについて、1960年にフランスからイスラエルへ移住したラビ・シュロモー・アビナーが、1242年にノートルダム寺院前で、タルムード(ユダヤ教書物)を燃やしたことへの神の報いかもしれないと発言した。

また、「教会はユダヤ人にとって最大の敵。燃やしてもかまわないが、イスラエルでは燃やしてはならない。燃やした後、それを建て直す事を余儀なくされるから。その方がもっと悪い。」とコメントし、問題となった。

https://www.timesofisrael.com/radical-rabbi-says-notre-dame-fire-retribution-for-13th-century-talmud-burning/

このラビは過激と目されているが、フランスはじめヨーロッパのユダヤ人が、限りなく恐ろしい迫害、暴力を、教会という組織の中で受けてきたことは事実。その象徴の一つが、ローマ法王の命により、ノートルダム寺院前広場で、1942年に、タルムードなどユダヤ教聖典が、少なくとも1万冊焼却された事件である。

本を燃やすということは、やがては人間を燃やすことにつながるとも考えられている。ナチスドイツも、迫害の初頭にユダヤ思想系の書物を焼却したのであった。

ノートルダム寺院は、12世紀から残る建築物として、世界遺産にも指定され、世界中がこの火災を惜しんでいる。しかし、ユダヤ人からみれば、恐ろしい時代の遺産でもあるということである。

2)スリランカのカトリック教会:無期限で礼拝中止

スリランカでは、復活祭を祝うキリスト教会と、ホテルにいる外国人客をねらった連続自爆テロが発生。250人以上が死亡。500人以上が負傷した。イスラエル人の犠牲者は、なかったようだが、イギリス系ユダヤ人(母はカトリック)のティーンエイジャー2人が死亡した。

https://www.timesofisrael.com/family-of-jewish-teens-killed-in-sri-lanka-talk-of-loss-plans-to-set-up-charity/

このテロについては、IS関連の地元イスラム過激派9人が犯行声明を出した。

スリランカの治安部隊が、全力を挙げて追跡していたが、金曜、北部の町で、犯人らが潜んでいた家に治安部隊が踏み込んだところ、自爆したため、子供6人を含む15人が死亡した。

首謀者とみられるザハラシ・ハシムがみつからなかったが、のちに最初のホテル攻撃時に死亡していたとスリランカの大統領が発表した。

ISはまだ130人が、スリランカにひそんでいるとみられ、治安部隊は、まだ捜査を続けている。

今日は、復活祭での大規模テロから1週間後の日曜となるが、カトリック教会は、日曜礼拝はしばらくキャンセルすることを決めた。福音派などプロテスタント教会はおそらくキャンセルにしていないと思われるが、無事を祈るのみである。

https://www.timesofisrael.com/sunday-mass-canceled-across-sri-lanka-a-week-after-bombings/

一方で、犯行が、イスラム過激派によるものであったことから、今度は、逆に一般のイスラム教徒たちに危険がせまっているとも懸念される。スリランカ政府は、イスラム教徒に対し、金曜は自宅で各自礼拝するよう、指示した。

来週からはラマダンなので、まだまだ危険は続くとみられる。

イスラエル政府は、スリランカにいるイスラエル人に、すぐに帰国するよう呼びかけた。アメリカ大使館も、自国民に対し、礼拝の場に近づかないよう、警告を出している。

https://www.bbc.com/news/world-asia-48074702

<石のひとりごと>

こうしてみると、エルサレムで、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教、それぞれが聖地として、平和に巡礼ができるよう、効果的に治安が守られていることは、高く評価するべきであろう。

イスラエルも、過去に数多くの自爆テロを経験し、市民を1000人近く失った。その苦しい経験から、今は、治安部隊が日夜働いて、テロが発生する前に、ほとんどを摘発してくれている。

ISがシリアでの領地を失った今、世界のいつどこで、こうしたテロが発生するともわからない時代になった。悲しいがイスラエルの情報収集能力と防衛能力が、世界の役にたつようになるのかもしれない。

それにしても、ここ数年、中東だけでなく、ロシア、中国、インドなど、様々な地域で、キリスト教会への暴力的な迫害や、政府による宣教禁止令などが、じわじわと進んできている。日本では、その気配はまったくないが、いよいよそういう時代がせまってくるかもしれず、緊張感を覚える。
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ネタニヤフ首相:5期目連立政権立ち上げ指名 2019.04.28

 2019-04-28
4月9日に行われた総選挙の結果は以下のとおり。

国会120議席中、リクード(ネタニヤフ首相)35議席、ブルーアンドホワイト(ガンツ元参謀総長とラピード氏)35議席。

続いてユダヤ教政党のシャス8議席、統一トーラーユダヤ教政党8議席。
続いて左派・労働党6議席、統一アラブ政党のハダッシュ・タアル党6議席。

これに続くのが、右派・イスラエル我が家党(リーバーマン党首)5議席、統一右派政党5議席。
次が、中道右派クラヌ党4議席、左派・メレツ党4議席、極左とも目されるラアム・バラード党4議席。

リクードとブルーアンドホワイトが、同数なので、リブリン大統領は、両者に統一政府を立ち上げることを要請したが、ブルーアンドホワイトは、これを拒否。筆頭野党として、ネタニヤフ首相の独走を阻止するかまえである。

そうなると、連立政権を立ち上げる可能性があるのは、右派を統括して国会120議席中、65議席の過半数とリードできるリクードのネタニヤフ首相でしかない。

リブリン大統領は、通常の手続き通り、議席を持つ政党の党首とそれぞれ、だれが次期連立政権のリーダーにふさわしいかの聞き取りを行った結果、17日、正式にネタニヤフ首相にその役割を指名した。

https://www.france24.com/en/20190417-israel-president-netanyahu-government-likud-election

今後、ネタニヤフ首相は、28日以内に、各党と連立に入ってくれるよう交渉を行い、新政権の立ち上げをはかる。各党首は、閣僚のポジションや、要求する政策などを、連立に加わる条件として提示し、ネタニヤフ首相と交渉する。

今回の選挙での驚きは、前政権では、教育相、法務相のポジションを割り当てられ、発言権も大きかったナフタリ・ベネット氏の党が、国会入りを果たせなかったことである。ベネット氏自身にとっても無念であっただろう。

ベネット氏がなぜ今回、落ちたかについては、先に、防衛相のポジションを要求し、与えられない場合は連立を離脱すると強気に出たものの、ネタニヤフ首相はこれを拒否。

ベネット氏は、意見を撤回し、政権に残ったが、結局政府は解散総選挙となったため、国民からの信頼と支持を大きく失ったと考えられる。ネタニヤフ首相にとっては、頭痛のタネのベネット氏を首尾よく排斥した形である。

また、ネタニヤフ首相が続投の結果になったことについて、トランプ大統領は、「近く推し進めるアメリカの中東和平案を進めやすくなった。」とこれを歓迎する意向を表明した。

先延ばしになってきたアメリカの中東和平案は、6月に提示される予定となっているが、トランプ大統領が、どうもイスラエルよりであることから、パレスチナ人の間では、国を立ち上げるのはもはや無理との見方が広がっている。

<ネタニヤフ首相の汚職関連>

波に乗っているかのようなネタニヤフ首相だが、まだ汚職問題が払拭されたわけではない。注目されているのは、国会で過半数を確保したリクードが、まずは、「現職首相は起訴されない」とする法案を通そうとするかどうかである。

新しい第21代国会は4月30日に就任することになっている。ブルーアンドホワイトのガンツ氏は、ネタニヤフ首相は、連立交渉で、この法案を通すよう根回しをしていると非難。筆頭野党として、断固、これを阻止すると言っている。

https://www.timesofisrael.com/netanyahu-using-coalition-talks-to-secure-immunity-from-prosecution-gantz-fumes/
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ネタニヤフ首相5期目続投へ 2019.4.12

 2019-04-12

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写真出展:エルサレムポスト(photo credit: RONEN ZVULUN/REUTERS)

10日、ネタニヤフ首相が5期目続投が決定的となった。これで、ネタニヤフ首相(69)は、故ベン・グリオン首相を超えて、イスラエル史上最長の首相(現在で在職13年)ということになる。

総選挙の投票は、9日朝7時から行われた。有権者は、支持する党の名前を示す文字票を選んで封筒に入れ、投票するしくみ。リブリン大統領、ネタニヤフ首相もそれぞれ投票所で投票を行った。

投票は同日22時までで、即日開票が行われた。投票したのは、433万7284人。最初は、ネタニヤフ首相のリクードより、ガンツ氏のブルーアンドホワイト党が先を行っていたが、最終的には、リクードとブルーアンドホワイトが、ともに得票率29.2%で35議席獲得のひきわけとなった。
(12日深夜の最終発表で、リクード36議席、ブルーアンドホワイト35席とリクードが1位となった。)

リクードとブルーアンドホワイト党以外の党の得票、ならびに議席数を見ると、リクードと右派政党の合計が、120議席中65議席、ブルーアンドホワイトと左派系政党の合計が55議席と、右派系の方が多いことから、右派のネタニヤフ首相のリクードが、次期政権も続投することが決定的となった。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5492086,00.html

これを受けて、10日夕刻、ネタニヤフ首相が盛大に勝利宣言を出し、左派のガンツ氏とブルーアンドホワイト党は、敗北を認める声明を出した。ガンツ氏は、次期ネタニヤフ政権には加わらず、筆頭野党として戦うことを明言している。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5492530,00.html

リクードとブルーアンドホワイトの次は、シャス党(超正統派ユダヤ教政党)で6.7%で8議席、同じく右派ユダヤ・トーラー連合が7議席。リーバーマン元防衛相のイスラエル我が家党は4.2%で5議席、カフロン元経財相のクラヌ党はぎりぎり投票率3.25%を超えた3.3%で4議席。

驚きは、元教育相ナフタリ・ベネット氏の立ち上げた新右派等が3.22%で、3.25%にぎりぎり達成せず、国会入りできなかったという点。ベネット氏は表の数え直しを要請していたが、最終カウントが発表された12日夜の結果でも、得票率はかわらず、国会入りを果たせなかった。

左派系では、労働党がかなり下落して5%で、たったの6議席。建国を率いたのは労働党という栄光を思えば、今回の敗北は相当な打撃である。ガバイ党首は、失敗と敗北を認める声明を出した。

アラブ連合政党は、アラブ系住民の支持を得られず、投票に行かなかった住民が多かったため、得票率が、予想をはるかに超えて下回った。このため、得票率は3.3%と、かろうじて3.25%を上回り、4議席となった。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5492414,00.html

*イスラエルの得票率と議席数

イスラエルでは、得票率が、3.25%以下の政党は、国会に議席を持つことができないという法律が最近成立した。これにより、かつてはそれ以下でも、得票数に応じて1議席などでも国会入りできたのだが、今は、できなくなっている。これにより、小さい政党は国会入りできなくなった。

今回でいうなら、ブルーアンドホワイトに回った票により、主に左派系の小さな正統が大打撃を受け、国会入りできなくなった一方、右派系の党は、残ったわけで、ネタニヤフ首相のリクードに有利な国会になったということである。

<第21代国会の勢力図模様替え>

今回の選挙により、イスラエルの国会が、アメリカのように大きく2派に分かれた結果になったと指摘されている。

選挙結果によると、ネタニヤフ首相のリクードは、地方や西岸地区入植者など労働者層、貧しい系の人々の支持が多かった。南部住民は、前政権のガザ・ハマスに対する方針に不満を持っているが、それでもネタニヤフ首相を支持する結果となっていた。

一方、ブルーアンドホワイトを支持したのは、主にテルアビブ住民で、プロフェッショナル、IT系など、人権重視、左派に傾きがちな若い層の支持を受けていた。言い換えれば、イスラエルの国会の勢力図が、これまでになく、右派、左派に分断されたということである。

右派勢力が強い、新しい第21代国会の勢力図からして、もはやパレスチナ国家との2国家共存はなくなり、西岸地区のイスラエルへの合併へとさらに進むのではないかとの見方もある。

その他の特徴としては、女性議員を出さないシャス党など超正統派が第3党になったため、女性議員が29人(前国会は39人)に減少する。一方で、ゲイの議員が少なくとも3人は国会入りするみこみ。多種多用な現代イスラエル社会を反映した国会ということであろう。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5492706,00.html

<ネタニヤフ首相の汚職告訴について>

華々しい勝利を得たネタニヤフ首相だが、まもなく、汚職、収賄、背任などの罪で、首相への尋問がはじまる。これについては、首相職の告訴はないとする法案に合意する党はないため、これが癌となって、連立を組めないという事態もまったくないわけではない。

https://www.timesofisrael.com/netanyahu-allies-repulse-immunity-law-suggestion/

総選挙を前に、マンデルビット司法長官は、選挙日の後、3ヶ月以内に、ネタニヤフ首相の尋問を始めると発表している。このため、首相府は、本日司法から、起訴の証拠に関する文書を受け取ることになっている。

現職首相が、ここまでの事態になったことはないので、実際に有罪となるまでは、ネタニヤフ首相が辞任に追い込まれることはない。しかし、今後、「現職首相を、収賄疑惑で尋問することはできない。」とするいわゆる「フランス法」を、持ち出してくるかどうかが注目されている。

なお、ネタニヤフ首相自身は、やましいことはまったくないと無実を主張。ちょうどトランプ大統領が、ロシア疑惑を疑われていた時と同様、陰謀だと言っている。

<外交勝利:トランプ大統領・プーチン大統領のバックアップ>

ネタニヤフ首相続投のニュースを受け、トランプ大統領、ペンス副大統領は、それぞれ、ネタニヤフ首相続投を祝う声明を出した。トランプ大統領は、いまだ発表されていない、独自の中東和平案について、「ネタニヤフ首相であったので、この案を進める可能性が高まった。」と表明した。

ネタニヤフ首相は、親イスラエルで福音派の支持も大きいトランプ政権の支持で、追い風である。

https://www.timesofisrael.com/trump-says-netanyahu-election-win-means-a-better-chance-for-peace/

さらに、ネタニヤフ首相は、ロシアのプーチン大統領からも支持を受けていたとみられている。総選挙のわずか5日前、ネタニヤフ首相は、モスクワへ飛び、シリア問題などについての会談を行った。

その前日、1982年の第一次レバノン戦争で、戦死したまま遺体が発見できないでいたザカリー・バウメル軍曹(当時21歳)の遺体が、シリアから第3国を経由して、イスラエルに戻された。これが可能になったのは、プーチン大統領のテコ入れがあったからとみられている。

いうまでもなく、これは、総選挙を前にしたネタニヤフ首相にとっては、大きなトロフィーであり、プーチン大統領がネタニヤフ首相続投を、支援したとも理解できる動きである。

外交を兼務してきたネタニヤフ首相が、外交において、業績をあげてきたことは、否定できないであろう。

*ザカリー・バウメル軍曹の遺体返還について

ザカリー・バウメル軍曹(当時21歳)は、アメリカ生まれの戦車隊司令官であった。1982年の第一次レバノン戦争の時、レバノンのベカー高原でシリア軍との戦っている時、2人の兵士とともに、消息が不明となった。イスラエルは、これまで37年間、3人の捜索を続けてきた。

昨年5月に、PFLP(パレスチナ解放人民戦線)が、ロシアが、シリアのダマスカス近郊で、IS(当時)が、3人のイスラエル兵の遺体を発掘したと発表したが、その後9月に、第3国へ1人の遺体が移送されていた。これをとりはからったのは、ロシアだったとみられる。ロシアは否定しているが、この第3国が、そう伝えている。

水曜に変換されたバウメル軍曹の遺体は、その軍服とブーツもともに返還された。

バウメル軍曹の遺体返還は、ちょうど総選挙の直前に実現したのだが、実際には、これまで37年間諦めずに、遺体の捜索にあたってきたイスラエル軍、また返還のためにあらゆる労を惜しまなかったこれまでのイスラエル首脳たちの働きの成果だと、担当のイスラエル軍少佐は語っている。

なお、あとの二人、ツビ・フェルドマンさん、ユダ・カッツさんの消息は不明のままなので、捜索は続く・・

https://www.timesofisrael.com/body-of-soldier-zachary-baumel-missing-since-1982-battle-in-lebanon-brought-home/

<石のひとりごと>

今回の総選挙の投票者数は、433万7284人(有権者の68.4%)というのに驚かされる。イスラエルは実に小さい国なのだ。それなのに、これほどまでに中東、世界情勢を振り回している。

次に述べるが、イスラエルは、この小ささにもかかわらず、月に探査機を飛ばす技術力、経済力も持っている。イスラエルがなぜ、これほどまでに世界に影響を及ぼすかをみれば、聖書がまさに、ただの宗教書ではなく、現実のことを記した書物であることは明らかである。
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ベレシット月面探査機着陸失敗 2019.4.12

 2019-04-12

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写真出展:ベレシットと月(エルサレムポスト)

今年2月21日に、アメリカのケープカナベラルから打ち上げられたイスラエル初の宇宙探査機ベレシット(はじめに:または創世記)が、予定通り、4月11日午後22:15(日本時間朝4:15)、月面への着陸態勢に入ったが、最終的には月面に激突したとみえ、着陸は失敗に終わった。

成功すれば、アメリカ、ロシア、中国に続いて4番目に月面探査を成功させた国になり、私立の会社によるものとしては、世界初になるはずだった。

11日、ベン・グリオン空港では、22:00 ”月” として旅客機の到着案内掲示板に、ベレシットの着陸時間を掲示。着陸は同時中継され、イスラエル中が、期待を持って見守っていた。

ネヤニヤフ首相夫妻と息子のヤイールさんは、イスラエル政府(4000万ドル出資)とともに、このプロジェクトに投資した南アフリカのイスラエル人億万長者モリス・カーン氏(6000万ドル出資)と、テルアビブ近郊ヤフダのコントロールセンターで、着陸の瞬間を待った。

ベレシットは、月面探査のための機材のほか、聖書やホロコーストの犠牲者で月への旅を夢見ていたペテル・ギンツ君(16)の月面から地球を見た絵などを含むタイムカプセルを載せていたという。リブリン大統領は、大統領官邸に、9-12歳の子供達80人を招いて、共に着陸を見守った。

ベレシットは、着陸態勢に入った後、月の表面が間近になった状態でのセルフィーを送信。しかし、その直後、ベレシットからの連絡は途絶えた。この時点で急速に落下したとみられる。その後まもなく、記者会見が行われ、着陸は失敗したと発表された。

ネタニヤフ首相は、「最初の失敗なら、また挑戦すればよい。月に近づいたのだから、イスラエルは2-3年後には必ず着陸する。挑戦したことがすでに達成だ。」と語った。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/261738

ベレシットのために費やした資金は、総額1億ドル(約110億円)。ここまで来るのにかかった時間は8年以上である。

カーン氏は、着陸失敗後の記者会見にて、「私たちは夢を選ぶ。」と語り、「次回の挑戦への思いがあるようだ。次は必ず成功する。今夜のことは誇りに思うべきだ。」と語った。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/261741

リブリン大統領は、子供達を前に、「失望する理由はない。私たちの少ない資源で、月直前まで行ったことは、大きな達成だ。本気でやれば成功する。確かにすこしがっかりだが、達成したことに比べたら小さいことだ。あなたがたとともに今夜を過ごせて幸せだった。

私が子供のころは、月に行くなど夢にも思わなかった。みなさんが月へ行き、さらに偉大なことを成し遂げる科学者になってくれることを楽しみにしている。挑戦したいと思ったら、できるということを学んだ。今夜はイスラエルとその国民、またその子供たちにとって重要な夜だった。」と語った。

大統領と子供たちは、国家ハティクバを歌ってから帰宅の途についた。

<挑戦魂:ベレシットは酒場での会話から>

ベレシットは、9年前の2011年、3人のイスラエルの起業家、ヨリブ・バシュ氏とヨナタン・ウェイチラウブ氏、クフィル・ダマリ氏が、酒場にて、資金を集めて、グーグルがスポンサーでのルナ・エックスプライズに参加することを思いついた。

ルナ・エックスプライズとは、無人探査機で月面を探査することに成功したグループに賞金を出すとするコンテストで、2007年に、Xプライズ財団(人類の発展のためのスポンサー)が、全世界に向けてよびかけたもの。スポンサーはグーグルであった。最高賞金額は2000万ドル(22億4000万円)にのぼった。

しかし、2015年になっても成功するグループが出ず、コンテスト期間は何度か延長された。その後、最終的に残ったのは、スペースIL(イスラエルチーム)を含む5社となったが、どのグループも成功しないまま2018年3月31日を迎えたため、コンテストは、新しいスポンサーが現れるまでは賞金なしで継続されることとなった。

ヨリブ・バシュ氏ら3人は、投資家モリス・カーン氏とともにスペースILを設立。イスラエル国立のIAI(Israel Aerospace Industry)と共同出資で、研究を続けた。2018年に賞金なしになってからも、挑戦を続けていたことになる。

<石のひとりごと:失敗してもいい国イスラエル>

イスラエルほど小さい国が、アメリカやロシア、中国といった大国にならんで、月面着陸に、ここまで達成したということは、特筆に価する。

だいたい、イスラエルのように小さく、資源もない国で、月面着陸という現実では全く可能性がない夢のような話に挑戦しようとした人がいたこと、またそれに乗って、成功するかどうかもわからないことに大金を出した人がいたという点が、イスラエルなのである。

いったいその力はどこから来るのか。イスラエルの建国の父テオドール・ヘルツェルは、かつて「望むならそれはもう夢ではない。」と語った。これがイスラエル人すべての座右の銘である。イスラエルの建国自体が、月へ行くほどの夢物語だったのである。

イスラエルは、失敗が許される国。失敗は、そこから学び、次へつながるためのものと信じている。国民も、こんな大きなプロジェクトが失敗しても、だれの責任かと追及することはない。世論から叩かれることもない。だから大きなことへの挑戦ができる。

失敗しても愛されているという信頼関係は、ユダヤ人の親子関係にもみられるものである。これは信仰の問題ではなく、彼らのDNAの中にある資質のようなものかもしれない。こうして、新しいことにたえず挑戦して、先取りをしながらユダヤ人は生き延びてきたのである。

日本ではよく、「イスラエルに行きたいけど、お金がない。休みがとれない。」という声を聞く。本気であれば、道は必ず開ける。まずはそれをイスラエルから学んでいただければと思う。
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