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緊張する東地中海情勢:トルコとリビアVSイスラエルとギリシャ、キプロス、エジプト、ヨルダン 2020.1.4

 2020-01-04
アメリカとイランの緊張が高まっているが、同時に東地中海情勢にも、無視できない動きが展開している。

ネタニヤフ首相は、2日、アテネにて、イスラエル、ハイファ沖の天然ガス油田から、東地中海、海底を通って、ヨーロッパまで2000キロにも及ぶ大パイプライン計画を、ギリシャとキプロスと3国で共同署名した。

これが実現すると、キプロス、ギリシャを通ってイタリア、さらには、南部ヨーロッパにまで天然ガスが運ばれることになる。天然ガスをロシアに頼ってきたヨーロッパ諸国には朗報となるはずである。このプロジェクトは、EastMed(東地中海)プロジェクトと呼ばれる。

イスラエルは、この他にも、天然ガスをヨルダンとエジプトにも輸出しており、天然ガスを武器に地中海東部の国々を味方につけた形である。これはまた、リビアと組んでこの海域の支配と、天然ガスの採掘権をねらうトルコをけん制するねらいがあるとみられる。

https://www.timesofisrael.com/israel-inks-mega-gas-pipeline-deal-with-greece-cyprus/

<トルコがリビアへ1月にも派兵か>

トルコは、2019年、11月28日、リビア西部を支配する国民合意政府(GNA:国際的にリビア政府と認められている組織)と、軍事・海洋境界に関する協力関係を結び、東地中海の海域において、イスラエルと手を組んだギリシャ、キプロス、エジプトなどに対抗する動きを見せていた。

リビアは現在、内戦により分裂しており、西は上記GNAが支配しているが、東は東部政府としてリビア国民軍(LNA)が支配しており、今も衝突が続いている。

一応は西のGNAが正式な政府と目されていることを受けて、トルコは、GNAを軍事支援する代わりに、リビア沖東地中海海域への権利を得るということで、12月、GNAと覚書を交わした。今回、イスラエルとギリシャ、キプロスなどが、交わした大パイプライン計画は、このトルコの動きに対抗するものである。

またリビアとの合意により、トルコは1月にもリビアへ軍を派遣する見通しとなっている。リビア西部へトルコが軍が出てくると、リビア東部に支援を送っているエジプト、ヨルダンとも対立することになる。

https://www.afpbb.com/articles/-/3261935

中東はいよいよチーム分けが明確になりつつあり、そのチームに大国がついている形で対立が深まっていると言える。聖書のゴグ・マゴグの戦いを容易に連想させられる形である。(カッコの名称はエゼキエル38章に出てくる国々)

イスラエルと、サウジアラビアなどスンニ派湾岸諸国(シェバやドタン)、エジプト、ヨルダン、ギリシャ。こちらについているのが、アメリカである。

一方で、イラン(ペルシャ)、トルコ(ベテ・トガルマ)、シリア、リビア(プテ)、ソマリア(クシュ)。こちらについているのが、ロシア(ゴグ?)、中国となっている。
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シリアに進出するイランとロシアの不気味な動き 2019.12.29

 2019-12-29
<イスラエルがまたダマスカスを攻撃か>

レバノンのメディアが伝えたところによると、22日、ダマスカスへの攻撃があり、。シリアの人権監視団体によると、シリア人でない外国人3人が死亡した。攻撃はイスラエルによるものとみられる。

現場は、シーア派にとって重要な地域で、死亡した3人はイラン人、ヒズボラ関係者とみられる。イスラエルからのコメントはない。

https://www.jpost.com/Breaking-News/Syrian-air-defense-systems-activated-in-Damascus-611812

<シリアがイランのベトナムになりつつある:ベネット国防相>

エルサレムポストが、アメリカの調査として伝えたところによると、シリアにるイラン人革命軍兵士は、約3000人。シーア派系兵士(ヒズボラなど)が10万人いる。イスラエルは、これらの兵力がシリアから出て行くことを要求しているが、その数は増える一方である。

このため、イスラエルは、時々急襲を行って、イラン軍拠点を破壊して行く作戦をとっている。これまでの破壊したイラン系施設は、2017年には100箇所であったが、2019年には、1000箇所以上になっている。イランが急激にシリアに進出しているということを表している。

ベネット国防相は、シリアがイランにとってのベトナム(アメリカ軍50万人が駐屯)になりつつあるとの懸念を語っている。

しかし、イランはシリアで、これまでに150-300億ドルを消費し、500人を失っているとみられている。さらに、イエメンやガザにも戦争資金を用立てており、イラン市民の不満が高まって、先月以来、イラン各地で、激しい反政府デモが発生している。

https://www.jpost.com/Middle-East/Could-Syria-become-Irans-Vietnam-611005

このままイラン人自身が現イスラム政権を打倒し、民主的な政権に変えてくれることがイスラエルとアメリカの希望であるのだが、イラン政府軍は、厳しくこれを取り押さえており、これまでに警察など政府軍に殺されたデモ隊は1500人に上るとも伝えられている。

https://www.reuters.com/article/us-iran-protests-specialreport/special-report-irans-leader-ordered-crackdown-on-unrest-do-whatever-it-takes-to-end-it-idUSKBN1YR0QR

<反政府勢力最後の拠点イドリブをシリアとロシアが攻撃:23万人以上が逃亡>

日本では全く報じられていないが、シリア北部、最後の反政府勢力拠点イドリブでは、12日から25日までに発生した激しい空爆により、これまでに市民24人が死亡。少なくとも23万5000人が、極寒の中、家を追われ、難民となった。

この人々の中には、すでに何度も家を追われてきた難民もいる。行き場を失った人々はアレッポ周辺の難民キャンプなどへ逃れているという。

イドリブを攻撃しているのはシリアとロシア、イランである。トルコは今回介入していない。

https://www.bbc.com/news/world-middle-east-50927434

<シリアに進出するロシア:撤退した元米軍拠点にロシアの旗>

シリアに進出しているのは、イランだけではない。ロシアは、米軍が撤退したあとの拠点に次々に軍を進ませ、ロシアの旗を掲げている。先週、ロシア軍は、ラッカに近い元ISの拠点で、米軍が駐留していたサミンに進軍。ロシア旗を掲げた。

ロシアはこのほかにもテル・タマールなどの元米軍拠点に入ってロシア旗をあげている。

このため、イスラエルは、イランに警戒、先制攻撃すると同時に、ロシアとの関係にも注意を払わなければならなくなっている。

https://www.rt.com/news/476838-russia-us-military-outpost-syria/

<ロシアが音速の27倍弾道ミサイルを発表:世界のリーダーはロシアと主張?>

ロシア軍部は27日、音速の27倍のスピードを持つ新しい大陸間弾道ミサイルシステム・アバンガードを配備したと発表した。音速以上であるため、世界どの地域にも達成でき、しかもどの迎撃ミサイルにも撃墜されることはないとしている。

プーチン大統領は、今音速以上のミサイルを保持するのはロシアだけだと言っている。

またこのミサイルには、2メガトンの核を弾頭に搭載することが可能だという。もしロシアが発表したことが本当なら、核戦争のレベルが上がったとも考えられている。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/273750

世界ではまだアメリカが軍事、経済力ともにダントツの超大国ではあるが、自国中心になって世界諸国からの敬意を失い始めている。そこへロシアがアグレッシブに進出してきたというところである。まさに新世界秩序が見え始めたということだろうか。。
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イラン・ロシア・中国:オマーン湾で4日間の共同軍事演習 2019.12.29

 2019-12-29
27日から30日まで、イランがロシアと中国とともに、イランの港チャー・バハールが面するオマーン湾(インド洋)で、海軍の合同演習を4日間の予定で行っている。イランによると、目的は、海洋運送の安全維持で、攻撃を受けた船の救出などの訓練を行っている。

これは、アメリカが、イランに攻撃されたとするサウジアラビアとの協力体制を強化していることへの対抗とみられる。

また、アメリカはこの地域で、イランからの攻撃を守る目的で、有志連合による海洋運送を保護するためのセンチネル作戦(8月に結成)を結成している。こちらの拠点はバハレーン。参加有志国は、今の所、アメリカ、オーストラリア、イギリス、アルバニアでヨーロッパ諸国は参加していない。

https://www.timesofisrael.com/iran-says-its-working-with-russia-china-for-full-security-of-shipping-lines/

アメリカの経済制裁には、日本を含む世界諸国も同調して石油の禁輸政策をとっているが、この演習により、イランは、決して孤立しているわけではないと釘をさした形である。

<石のひとりごと:意味ある!?日本の自衛隊中東派遣>

こうした中、日本は27日、自国のタンカーを保護するためとして、中東海域への海上自衛隊(哨戒機1機、ヘリコプター搭載可能な護衛艦たかなみ、乗組ん260人)の派遣を決めた。派遣予定期間は1年。この地域にタンカーを運行させている船舶会社は、これを歓迎している。

しかし、日本は、憲法9条によって、あくまでも「自己防衛」に徹しなければならないため、アメリカの有志連合には加わらず、日本の船舶の護衛とともに、独自の”情報収集”が目的とされている。

また、できるだけ実戦にまきこまれないよう、派遣海域はソマリア沖アデン湾で、ホルムズ海峡やペルシャ湾には入らないという。

同盟国アメリカと、友好国イランとのはざまに立たされている日本が、”究極の妥協”として、今回の海上自衛隊派遣を決めたと伝えられている。

https://www.sankei.com/politics/news/191227/plt1912270004-n1.html

しかし、これほど複雑に多国籍の軍がからみあう地域、しかもロシア、中国という日本も独自の領土問題を抱える国々の軍が展開する地域に、憲法9条により、実戦でどこまで動けるかもいまいち明確にされていない自衛隊が出て行くことに、不安を感じない人はいないだろう。

また、危険地域は避けてソマリア沖アデン湾に派遣と言っているが、そのソマリアでは、28日、首都モガディッシュでの爆破テロ事件で、少なくとも90人が死亡した。この海域は、イランとサウジが代理戦争をしているイエメンにも近い。

https://www.timesofisrael.com/at-least-73-killed-by-truck-bomb-in-somalias-capital/

また、情報収集というが、日本は、サイバー攻撃については、世界に大幅に遅れをとっていて、まったく無防備と言われている。情報戦の最前戦である中東で情報収集などできるのだろうか。情報収集についてはイスラエルが最先端であり、日本の出る幕はないのではないか。

イランとアメリカ双方に気を遣って自衛隊を出すというが、ヨーロッパはそんな気遣いはせずに、軍をだしていないわけである。いらぬ配慮だったのではないか。

アメリカに相当押されたのか、政府になんらかの事情があるかは分かり得ないところではあるが、これほど危険な地域に、しかもこの時期に、日本の国防のみが目的の自衛隊を派遣することに疑問を持たざるをえない。
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イラン支えるマレーシア、トルコ、カタール 2019.12.22

 2019-12-22
18−21日までの4日間、マレーシアの首都クアラルンプールで、イスラム・サミットが開催された。参加国は、議長国のマレーシアの他、イラン、トルコ、カタールを含む約20カ国。

OIC(サウジアラビアが基盤のイスラム協力機構)に加盟するイスラム諸国は、57カ国で、この全てがマレーシアでのサミットに招かれていたは、イランの参加などから、サウジアラビア欠席したため、参加が約20カ国にとどまったとみられている。

したがって、このサミットに参加した国は、イランとの貿易も継続しているシーア派か、その支持国ということになる。マレーシアは、国としてはシーア派ではないが、イランの側に立っていることを宣言したような形である。

マレーシアのマハティール首相は、イランとカタールが、制裁の下でも耐えていることを称賛。イスラム世界は、これからも、どこにも経済的に頼らないでいることが重要だと語った。また、デナリを共通通貨として用いて、互いの貿易を推進するビジョンを語った。

カタールは、湾岸諸国の国だが、イラン側についていることから、同じ湾岸地域のサウジアラビアやバハレーン、アラブ首長国連邦から、2年半前に国交を遮断されている。

https://www.jpost.com/Middle-East/Muslim-nations-consider-gold-barter-trade-to-beat-sanctions-611650

<ロウハニ大統領来日>

イランのロウハニ大統領が、マレーシアでのサミットに合わせて来日、2日間滞在して、安倍首相と会談した。来日は、イランからの要望であったという。

イランは、アメリカの経済制裁を受けており、国内では、反政府勢力との衝突が激化しているような状況にある。ロウハニ大統領は、アメリカの制裁が一方的であると訴え、日本や周辺諸国が、イラン経済への支援を要請した。

しかし、アメリカと同盟国である日本は、マレーシアのように、イランの側に立つことはできないが、一方で、イランは大事な原油供給国として友好国でもあるので、難しい対応であった。

安倍首相は、イランのホルムズ海峡はじめ中東での緊張が高まっていることの懸念を伝え、日本が、ホルムズ海峡の日本船を守るために海上自衛隊を派遣することへの理解を求めた。イランからの攻撃を守るための軍の派遣をイラン大統領に理解を求めているわけで、どうも妙な感じではあるが、ロウハニ大統領はこれに理解を示した。

https://www.france24.com/en/20191221-rouhani-concludes-japan-visit-seeks-support-for-iran-economy

日本は、イランへの配慮から、アメリカが呼びかけている対イラン包囲網とは一線を引いた形で、独自に自国タンカーを守るための海上自衛隊を派遣する計画である。閣議決定は、27日の予定。

<ユダヤ教ラビがバハレーン訪問>

マレーシアでのサミットに先立ち、バハレーンでは、10日、カタール、クウェート、ヨルダン、エジプト、ロシア、アメリカ、イタリア、インド、タイから、様々な宗教指導者たちが集まった。いわゆるエキュメニカル運動である。

その中にエルサレムのチーフラビ・シュロモー・アマール(スファラディ)も含まれていた。ユダヤ教ラビが、イスラムの国バハレーンを訪問するのは、初めてである。

イスラエルがアラブ諸国の中で、国交を持っているのは、ヨルダンとエジプトだけで、バハレーンとの正式な国交はまだない。しかし、バハレーンには、10月にネタニヤフ首相も電撃訪問しており、今回のラビの訪問も、バハレーン国王の招きで、イスラエル外務省が動いて手配したという。

バハレーン始め湾岸諸国は、近年、イランという共通の敵意識から、アメリカとイスラエルに近づく傾向にある。ラビ・アマールは、「中東の人々はイスラエルとの平和を望んでいる。」と語った。

netanyahu visit bahrain

世界はやはり、イスラエルという国へどのような態度をとるかで、グループ分けがすすんでいるようである。日本は今の所、アメリカ、イスラエル側といってよいだろう。
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シリアからミサイル4発:イスラエル反撃でイラン革命軍23人死亡か 2019.11.22

 2019-11-22
先週のガザとの攻防に続き、北部ゴラン高原でも、シリアからのミサイルが飛来した。これらは別個の攻撃ではなく、どちらもイランが背後にいるとみられる。実際はどうなっているのかは、不明だが、ニュースから判断される動きをまとめた。

<続く実質イラン?からの攻撃>

1)ガザからの攻撃


シリアのイランの存在感が増しつつある。12日、イスラエルは、ダマスカス近郊にいたイスラム聖戦(イラン傀儡)幹部アクラム・アル・アジョウリを暗殺。同時にガザでもバハ・アブ・アル・アタを暗殺して、14日からガザのイスラム聖戦との激しい衝突が2日間続いた。

この時、イスラエルに撃ち込まれたロケット弾は、約400発。深刻な人的被害はなかったが、空き地に着弾したロケット弾が、直径2−3メートルのクレーターを残しており、これまでより強力なミサイルであったことがわかった。

2日後、一応の停戦となったものの、その後も時々、イスラエル南部へのロケット弾攻撃が続いた。15日には、停戦合意にもかかわらず、イスラエル第3の都市ベエルシェバに向かって、ガザからミサイルが発射された。

こちらも迎撃ミサイルの活躍で被害はなかったが、ちょうど安息日入りの夜で、3000人がナイトクラブに集まっているところにサイレンが鳴り、シェルターへ駆け込む騒ぎとなった。ショックで搬送された人もいた。

https://www.timesofisrael.com/rocket-sirens-sound-in-beersheba-idf-investigating/

イスラエルは、これについては、イスラム聖戦ではなく、ガザのハマスへの反撃を実施した。しかし、この攻撃はハマスの指示ではなく、ハマスの中の一派が勝手にやったとの見方もある。この後、南部はようやく静寂が戻った。

2)シリアからの攻撃

ところが今度は、19日早朝から、北部ゴラン高原、ガリラヤ北部にミサイルが4発が飛来した。こちらもアイアンドームがすべて撃墜し、被害はなかった。

しかし、イスラエル軍は、20日深夜すぎ、シリアのダマスカス近郊のイラン軍とシリア軍の拠点を20カ所を戦闘機が攻撃。シリア側情報によると23人が死亡した。このうち16人はシリア人ではない外国人で、イスラエルはイラン人とみている。

シリア国営放送は、この攻撃で、市民2人が破片によって死亡、複数が負傷したと伝えたが、シリア軍が地上から反撃したかとみられるミサイルを発射したが、それが市街地に落ちる映像が残っており、市民の死傷者はそれによる可能性も否定できない。

なお、戦闘機による攻撃と言っても、そのあとかたは航空写真でみてもわかりにくいほどのピンポイント攻撃で、いわゆる空爆で焼け野原になったというわけではない。しかし、イランには、かなり大きな打撃であったようである。

今回、破壊されたのは、ダマスカス国際空港内のイラン革命軍クッズ隊の中枢司令部がある建物の2階3階部分、また、諜報部があったとみられるビルの上2階部分、郊外のアル・マゼ空港にある革命軍司令部と駐車場ビルのみである。その他は、破壊されずに残されている。

イスラエル軍によると、今回は、イラン革命軍が駐留する上記2空港と、革命軍が関わっているとみられるシリア軍の拠点も攻撃したとのこと。

https://www.timesofisrael.com/photos-show-alleged-quds-force-headquarters-destroyed-in-idf-strikes/

イスラエルは、イランからイラクを経てシリア、レバノンへ搬入されてくる武器輸送隊を、シリアにおいて、数え切れないほど攻撃してきた。しかし、今年7月、初めてシリアを超えて、イラクとイランの国境付近への空爆を実施した。そこからイランの武器の搬入が始まっていたからである。

イスラエルが今回、ミサイル4発に対し、これほどまでに大規模に、しかも反撃を覚悟しながらも、直接イラン革命軍を攻撃したということは、それほどイランの脅威がイスラエルに近づいているということであろう。

ベネット防衛相は、「イスラエルはサウジアラビアとは違う。イランとはいえ、(イスラエルが恐れて)反撃を控えることはない。」と強力に釘をさすコメントを出した。

<拡大するイランの脅威:ニューヨークタイムスの摘発>

18日、ニューヨークタイムスとインターセプト(メディア会社)は、イラク内部からのリークとして、700ページにわたる情報を公表した。イラクにいるイランの諜報機関が、2014−2015年に、ケーブルを介してイラン本国に送った記録である。

リーク元は、「イランが私の国イラクで何をしているのか世界に知ってもらいたい。」と言っていたという。

それによると、2003年に米軍がイラクのサダム政権を打倒した直後から、イラン革命軍(スレイマニ将軍)がイラクに介入し、以後、イラクの主権はイランに牛耳られていたもようである。当時、イラクに駐留していたアメリカ軍の動きもイランにリークされていた。

https://www.nytimes.com/2019/11/18/world/middleeast/iran-iraq-cables.html

イランは、ほぼその支配下に入れたようなイラクから、内戦中のシリアに入って、軍事拠点を徐々に構築し、今では、アメリカ軍もイランの軍事拠点を、シリアから排斥する必要を認識するまでになっている。イスラエルにとっては、もう待ったがきかないぐらいに懸念される状況になっているようである。

<ロシアがイスラエルの攻撃を非難・警告>

イスラエルが、シリアのイラン革命軍拠点に大きな打撃を与えたことについて、18日、イスラエルがヨルダン空域を侵犯してシリアにいるイラン革命軍を攻撃したなどの詳細を公表。地域の安定を著しく脅かすものだとして、強く非難し、警告を発した。

https://www.ynetnews.com/article/Sk8CdpXnB

レバノン系メディアは、ゴラン高原へのミサイル4発は、先にイスラエルが、シリアとイラクとの国境付近を攻撃したことへの報復だと伝えた。情報が錯綜しており、実際にどうであったかはもはや確認のしようがない。

<石のひとりごと:ロシアの出方?>

ロシアは、現時点まででは、イランがシリアで軍事拠点をあまり多く築くことには賛同していなかった。そのため、イスラエルがイラン拠点を攻撃することを暗黙に了解していた。しかし、今回、ロシアが、イスラエルに対し、強い警告を出したということは、単に立場上のことか、重要な方向転換と見るべきかはわからない。

先月、アメリカ軍がシリアから撤退し、トルコがその後へ侵攻したわけだが、その地域に、今、トルコとともにロシア軍も入って駐留を始めている。今や混乱極まるシリアで最も影響力を持つのはロシアと言われている。

今はまだイスラエルとの戦争は考えていないが、最終的に、ロシアが、イスラエルを攻撃すべきだと判断し、号令をかければ、ロシアとともに、トルコ、イラン、シリアがいっせいにイスラエルへなだれこんでくるというシナリオも、十分ありうる状況ではないだろうか。

また、懸念されることは、中東だけでなく、トランプ大統領の親イスラエル政策が拍車となって、イスラエルを嫌悪する国々や反イスラエル的な感情を持つ人が増えていることである。ヨーロッパでは、25%の人が反ユダヤ主義思想を持っているとの調査結果も発表されている。

中東に限らず、やがて全世界が、イスラエルは消え去るべきと考える時もそう遠くないかもしれない。
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イラクとレバノンで反政府・反イランデモ 2019.11.8

 2019-11-08
サウジアラビアの石油施設攻撃に続いて、核合意離脱措置第4弾と、イランがひるむ様子はないが、イラクとレバノンでは、反政府デモから、その政府に影響を及ぼしているイランに対する敵対を表明する大規模なデモが、イラクとレバノンで拡大、継続中である。

イスラエルは、基本的に他国へは干渉しない方針だが、この流れがイランにどう影響してくるのか注目している。

<イラク市民:反政府・反イランデモ>

イラクでは、10月に入ってから、経済悪化を改善できない政府に対する市民デモが始まった。デモ隊は、サダム・フセイン後の政府になってから経済悪化が改善しないことや、イラク人ではない勢力に牛耳られているとして反発しているのである。

最初のデモの波で149人が死亡。警察との暴力が発生すると、反政府デモは徐々に拡大し、11月1日からは、首都バグダッドのタクリル広場に20万人が集まる大きなデモとなった。警察は催涙弾を使うなど暴力的な衝突となり、最初にデモが始まってから250人以上が死亡。9000人以上が負傷したとのこと。

https://www.bbc.com/news/world-middle-east-50280498

さらにこの反政府デモは、イラク政府を支援しているイランにも向かった。4日、群衆は、バグダッドの南、カルバラのイラン大使館を襲撃。「カルバラは自由だ。イランは出て行け」と叫んだ。この衝突で少なくとも3人が死亡した。

イラクのマフディ首相は、新しい選挙後に辞任することを提案したが、群衆は、今の政府全部をまるまる排斥することを求めているとのこと。

イラクの群衆は、シーア派でもあるので、シーア派だからといって、皆イランを支援しているわけではないということである。

https://www.bbc.com/news/world-middle-east-50287644

<レバノンの反政府でハリリ首相辞任>

10月17日、レバノン政府が、たばこと、ソーシャルネットワークのワッツアップに税金をかけようとしたことがきっかけとなり、ベイルートでデモがはじまった。政府はこれをすぐにキャンセルしたが、デモは、大群衆となってその後も続き、10月29日、ハリリ首相が辞任に追い込まれた。

市民の怒りは、今回の税金のことだけではない。イラクと同様、レバノン経済は、改善するどころか、国の借金は今やGDPの150%にまで膨れ上がっていること、また政府内にはびこる汚職に市民の怒りが爆発したということである。

レバノンは、クリスチャンとイスラム教(スンニ派とシーア派)が半々の国。そのために長い内戦が続き、1989年に、大統領はクリスチャン、首相はスンニ派、議会はシーア派と定められた。

しかし、これが逆に、それぞれの政治家が国よりもそれぞれの宗派を庇護する傾向にあるため、国の分裂と汚職を生む結果になっているのである。

デモ隊は、イラクと同様、国家体制まるまるの変革を求めて、ベイルートの主要道路を閉鎖するなどして、今もまだ続いている。それぞれがそれぞれの訴えをして混乱が続いている。しかし、今後、アウン大統領が、新しい首相と政府を任命するのを待つ状態だが、実際にはまるまるの変革は難しいとみられている。

選択肢としては、結局新しい政府に再びハリリ首相が戻ってくるパターン。またアウン大統領が指示するヒズボラが時期政府を牛耳るパターン。もしくは、まったく新しい政府への移行である。しかし、今のところ、3番目のパターンは難しいとみられている。

https://www.aljazeera.com/news/2019/10/lebanon-eyes-hezbollah-allies-hariri-resignation-191031171809685.html

*イスラエルとの関連

イスラエルとしては、このデモで、ヒズボラが弱体化することを期待している。またレバノン経済の回復をEUが行い、ヒズボラの活動の制限をその条件とするよう要請しているという情報もある。

しかし、一方で、アウン大統領とヒズボラが、市民の目をそらすために、逆に、イスラエルを攻撃してくる可能性もある。この場合のイスラエルの対処は事情に難しいものになると懸念されている。

イスラエルがヒズボラの攻撃を受けると、一気に反撃を余儀なくされるが、そうなると多数の市民に犠牲が出て、世界からは、イスラエルが悪の根源呼ばわりになるからである。

ヒズボラは弱体化するか否か。まだ先は全く見えない。イスラエル軍は、レバノンの動きを注意深く見守っている。

https://www.timesofisrael.com/wary-of-hezbollah-israel-unsure-if-lebanon-turmoil-an-opportunity-or-threat/
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