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トルコがシリア東北部へ侵攻開始:イスラエルの反応は? 2019.10.11

 2019-10-11
トランプ大統領が、シリア北部から米軍を撤退させると発表して約48時間後の10日早朝、トルコが、ユーフラテス川東川を含むシリアとの国境、約300キロ全域で、ロジャバとよばれる西クルド自治区への侵攻を開始した。

戦闘機による空爆は、少なくとも6都市、181箇所に及ぶ。これまでに少なくとも市民11人が死亡。数十人のクルド人戦闘員、SDF(自由シリア軍)戦闘員の死亡が報告されている。(トルコの報道では、トルコ兵1人と、クルド人戦闘員277人死亡となっている)

https://www.timesofisrael.com/turkey-reports-first-military-fatality-in-syria-incursion/

この地域には200万人とみられる人々がいるが、トルコの攻撃でパニックとなり、わずかな荷物とともに車で、多くは大荷物をかつぎ、子供たちを連れて歩いて脱出する様子が伝えられている。多くは、シリアで8年続いた内戦で、すでに難民となっていた人々である。

トルコの侵攻以来、すでに6万人が難民になったとの報告があるが、今後100万人規模で難民が発生する可能性も懸念されている。

https://www.bbc.com/news/world-middle-east-50011468

トルコ空軍による空爆は、クルド人が管理していた元IS戦闘員らの収容所にも及んでいるもようで、最も危険とされるISメンバーが、脱出した可能性も指摘されている。

*西クルド自治区のIS関連収容所

クルド自治区には、ISとの戦闘で捕虜としたIS戦闘員とその家族ら数千人が、各地の収容所に入れられている。海外から来ているメンバーも少なくないが、今となっては、この人々を受け入れる国はない。まさに行き場のない囚人となっている。

トルコのエルドアン大統領は、世界中からの非難を受ける中、これはトルコ南部にトルコに対する危険なテロの回廊ができるのを防ぎ、地域の平穏を保つものだと主張。作戦を「平和の泉」と呼んでいる。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5604990,00.html

<西クルド自治区とは?:なぜトルコが攻撃するのか>

まずクルド人は、トルコ、シリア、イラク、イランにまたがる形で住んでいる。クルド人の国として独立国になる夢はあるが、なかなか実現するものではない。

シリア内戦中、シリアのクルド人勢力(シリア人口の7−10%)は、シリアの反政府勢力であるFSD(自由シリア軍)と米軍、水面下では敵であるアサド政権軍ともなんらかな協力をとり、ISと戦った。

IS領域を奪回する中、内戦でアサド政権が弱体化していたこともあって、クルド人の領域が、シリア領の30%を占めるまでに拡大し、ユーフラテス川東に安定したクルド自治区を形成するに至った。これを、イラクのクルド自治区に対して西クルド自治区(ロジャバ)ともよばれる。

このクルド自治区は、中東の中ではめずらしく、民主的な政治運営がなされており、クルド人だけでなく、アラブ系イスラムのほか、キリスト教徒やヤジーディなど、様々な人々が政治に参加するシステムを持つ非常にユニークな地域である。イスラエルとも友好関係にあり、ユダヤ人でクルド人勢力に混じって戦った人もいるほどである。

この西トルコ自治区がトルコに取って問題になるのは、クルド人勢力の中のYPGというグループである。YPGは独立をめざして、トルコ国内でも武力闘争を行ってきたため、トルコは、YPGをテロ組織とみなしている。

そのYPGが中心になっている西クルド自治区が、広く480キロにわたってトルコ南部と国境を接していることにトルコは、かねがね危機感を持っており、2018年にもアフリーンへの攻撃を行っていた。

また、今トルコが侵攻している地域は、アメリカとも合意の上で、シリア難民のための安全地域を設立する計画がすすめられていた地域である。

トルコとしては、この国境地域からYPGを追放したあとに、安全地域を確立し、トルコにいる360万人にものぼるシリア難民を、そこへ帰国させたいのである。

しかし、この地域には、YPGだけでなく、一般のクルド人の他、すでに多数のシリア難民や、ISの捕虜とその家族がおり、多くの人々が巻き添えになることはさけられないということである。

https://www.bbc.com/news/world-europe-49719284

<なぜアメリカは撤退を決めたのか>

トランプ大統領は、トルコとシリア国境(シリア側)に沿った安全地帯を設立することには賛成し、米軍もこれに協力していた。ところが、10月6日、エルドアン大統領が、この地域へ侵攻するとトランプ大統領に伝えてきた。理由は上記の通りである。

トランプ大統領は、これには同意せず、「これは”よくない動き”だ。アメリカはこんなエンドレスの戦いに巻き込まれるわけにはいかない。そんな戦争のために米軍兵士を犠牲にするわけにはいかない。」として、米軍を撤退させると言ったのである。

一方で、トランプ大統領にしても、トルコの申し出は、撤退へのよい理由になったとみえ、「戦争するなら勝手にやってくれ。それなら今後、その地域にいるISの捕虜とその家族についても、トルコが責任を持って対処するように。」

「クルド人は、我々とともに戦う中で、これまでに十分武器の供与を受けてきた。これからは、トルコ、ヨーロッパ、シリア、イラン、イラク、ロシアとクルド人でなんとかすることになるのだ。」と言い放って、アメリカは、さっさと手を引いたということである。

トランプ大統領に一理がないわけではない。しかし、広い視野で見た場合、アメリカ軍がここから撤退することは、事実上、同盟として戦ってきたクルド人を見捨てるとともに、多くの難民達を見捨てることになり、さらには中東情勢を大きく変えることになる。

現時点で、すでにどの程度のアメリカ軍がこの地域から撤退したのかは不明だが、もし本当に全部撤退した場合、ユーフラテス東側のをロシア、イラン、トルコにギフトとして与えることになると指摘されている。

<クルド人勢力:ロシアに仲介要請>

トルコからの攻撃を受け、一般のクルド人たちの組織(Autonomous Administration of North and East Syria)は、国際社会に対し、アメリカが中心の連合軍に対し、ただちに国境をノーフライゾーン(戦闘機が侵入できない空域)を設定するよう要請を出した。

しかし、アメリカがすでに撤退を表明していることから、クルド人武装勢力は、ロシアに、シリアのダマスカスにおいて(つまりはシリアの合意のもとということ)、トルコに攻撃をやめるよう仲介を要請を出した。

後者の場合は、西クルド自治区(ユーフラテス川の東)が、いよいよロシア、イラン、シリア(アサド政権)、トルコ側へ移行していくことを意味する。

<ロシアの反応:トルコに青信号も期間限定を要請>

トルコのエルドアン大統領は、シリア北東部への侵攻前にトランプ大統領に電話連絡したが、ロシアのプーチン大統領にも電話していたという。プーチン大統領は、侵攻するなら最小限にとどめるよう伝えたという。

もしトルコの動きに歯止めがかからない場合は、ロシアの権限で、国境の安全地帯をノーフライゾーンにすることも可能である。

ロシアにとっては、この地域からアメリカを撤退させることができ、もしロシアの仲介によって、トルコの動きを制することができたら、ロシアにとっては、政治的なプラスになっていく。いまや、中東ですべての国と対話できるのはロシアだけとなっている。

https://jp.reuters.com/article/russia-middleeast-turkey-idJPKBN1WQ0F0

<イランはトルコとの国境付近で軍事訓練>

イランのロウハニ大統領は、トルコにシリアへの侵攻をやめ、撤退するよう要請する声明を出した。

イランは、トルコがシリアへ侵攻するとまもなく、イランとトルコとアゼルバイジャンとの国境、クルド人居住地に近い地域で、突然、大規模な軍事訓練を開始した。イランは、あらゆる状況に備えるためと言っている。

イランにとっては、ユーフラテス川東から米軍が撤退することは有利であるかもしれないが、同時に、国内でクルド人勢力がどう動くのかにも警戒しているのかもしれない。

<EU・国際社会の反応>

トルコのシリアへの侵攻は世界中が非難している。特にEUは、トルコ経由で地中海を越えてヨーロッパに流れ込んでいたシリア難民をトルコで足止めしてもらうみかえりとして、66億ドル(約7000億円)を支払っているEUにとっては穏やかなことではない。

EUは、トルコの非人道的な攻撃を非難するとともに、危ないISメンバーが野放しにされることへ強い危機感を表明している。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5604990,00.html

しかし、アメリカ抜きでの連合軍では全く無力であるし、国連はもっと無力で、国際社会にできることはなにもないというのが現状であろう。

<イスラエルはクルド人を見捨てない?:イスラエルの懸念>

イスラエルはクルド人勢力とは友好関係にあり、これまでにも水面下での支援を行っていたといわれている。

トルコのシリア北東部への侵攻を受け、イスラエル軍予備役兵ら数十人が、フェイスブックに、イスラエルは、クルド人への人道支援ならびに、情報、軍事支援をするべきだとの意見を投稿した。

その数時間後、ネタニヤフ首相は、ヨム・キプール戦争に記念式典で、「クルド人はイスラエルとは友好関係のある。ネタニヤフ首相は、イスラエルはクルド人を見捨てず、人道支援を行う。」と発表した。

しかしながら、イスラエルがどのように支援するかは、報道されないであろうし、実際のところ、それを実行するかどうかも不明である。

また、ネタニヤフ首相は、無難にアメリカがクルド人を見捨てたというような非難は盛り込まず、あくまでもアメリカとは友好な関係は維持すると強調した。一方で、ロシアとの連絡も怠っていないだろう。

https://www.jpost.com/Israel-News/Dozens-of-reservists-call-on-Netanyahu-Kochavi-to-help-Kurds-604235

アメリカがシリアから撤退し、クルド人という同盟をも失うことは、イスラエルにとっては、大変危険なことである。しかし、それ以上に危惧されることは、トランプ大統領が、今回の決断で、いよいよ世界から嫌われ孤立することである。

イスラエル側に立つと目されるトランプ大統領が、世界から孤立するということは、それはそのまま、いや倍増する形で、反イスラエル感情につながっていく可能性があるからである。
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アメリカはトルコに経済制裁を発動するのか 2019.10.11

 2019-10-11
全世界からの反発を受けて、トランプ大統領はホワイトハウスで記者会見を行った。

トランプ大統領は、シリア北東部の米軍を撤退させることで、事実上、同盟クルド人を見捨てたと批判を浴びた。その直後には、もしトルコがシリアへの侵攻を行えば、トルコ経済を崩壊させるほどの経済制裁を発動するとフォローする発言をしていたからである。

トランプ大統領は、これからの動きを注視し、もしトルコが非人道的な無差別攻撃をしたり、民族浄化的なことをすれば、経済制裁も検討するが、今の所、そのような赤信号に至るようなことにはなっていないとの認識を語った。

トランプ大統領は、アメリカが今後とりうる対処として次のようにツイートした。①数千人規模の米軍を送ってトルコ軍を撃滅する。②厳しい経済制裁で、トルコ経済を破壊し、その上で、トルコとクルド人勢力の交渉を仲介する。

同時に、トランプ大統領は、中東が混乱をきわめており、アメリカの手に負えるものではないとし、そこからの米軍撤退を改めて示唆した。

こうした中、アメリカ下院の共和党議員29人は、トルコへの経済制裁に関する法案を提出した。

https://www.bbc.com/news/world-us-canada-50009218
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トランプ大統領:シリア北部の米軍撤退発言で中東に激震 2019.10.9

 2019-10-09
6日、トルコのエルドアン大統領は、トランプ大統領に電話をかけ、長年計画していたシリア北部のクルド人勢力への攻撃を実施すると伝えた。これについて、トランプ大統領は、アメリカはこれには関与しないことを決め、地域にいる1000人の米軍を撤退させると発表。これまでに約20人が撤退したと伝えられている。

トランプ大統領は、撤退と同時に、この地域にいるIS生き残りとその家族の管理もトルコに任せるとし、中東の問題は中東自身で解決すべきであり、アメリカ人の血税を使うべきではないとの従来の考えを繰り返した。

https://www.bbc.com/japanese/49956496

中東からの米軍撤退は、トランプ大統領の選挙公約である。トランプ大統領は、就任当初にもこの発言をして、イスラエルを含む中東、世界がいっせいに反発。結局、中東からの米軍の撤退は実現しなかったという経過があった。来年の選挙を前に、今、その実現をあせっているとみられる。

<トルコのクルド人攻撃に青信号?:直後にトルコの経済破壊予告>

今回、トランプ大統領は、トルコがクルド人を攻撃するということを聞いた上で、米軍を撤退させるということなので、実質、アメリカがクルド人を見捨てたということに他ならない。

実際、トランプ大統領のこの発言からわずか数時間後、シリア北部では、クルド人の輸送隊が、トルコ空軍によってすでに空爆された。クルド人勢力は、アメリカはクルド人を見捨てたと非難している。

https://www.rt.com/news/470397-turkey-bombs-kurds-syria/

これを受けて、トランプ大統領は、「クルド人を見捨てたわけではない。」と釈明。「もしトルコが、クルド人勢力に攻め込むことがあれば、アメリカはトルコの経済を破壊する。」と、すでに侵攻準備を整えたトルコに強い口調で釘をさした。

しかし、トルコに攻撃を黙認するといいながら、攻撃するなら、経済制裁するというトランプ大統領の発言は、大きく矛盾しているといえる。BBCによると、トルコ軍は、すでにシリアとの国境に続々と戦力を派遣強化しており、エルドアン大統領は、「準備は整った。」と言っているとのこと。

https://www.bbc.com/news/world-middle-east-49978567

<アメリカ国内からも批判殺到>

中東では、先月、サウジアラビアの油田がイランの攻撃を受け、米軍との対立が高まっている最中である。その中で、イランの進出が問題になっているシリアからの米軍撤退では、まさに何を考えているのかと言われてもおかしくないだろう。

シリアからの撤退は、結果的に、アメリカは中東での足がかりを失うことにつながり、イラン、そしてロシアに中東の支配権を引き渡すことにもつながっていく。トランプ大統領は、政権の全員と協議したと言っているが、大統領自身の共和党内部からも、この決断に反発する声が相次いでいる。

<イスラエルの見方:ユーフラテス川の東>

クルド人自治区は、今、問題になっているシリア北部からユーフラテス川東側に続く広大な地域。このうち、シリア北部は今、シリア反政府勢力がアサド政権軍に押されてのがれてきて最後の砦となり、戦乱の中にある。ロシア、イランによる非人道的な攻撃が時々報じられている地域である。

この地域に今、トルコが攻撃を開始しようとしているわけだが、この地域を制覇したあと、トルコが、広くクルド人自治区にまで進出してくる可能性も出てくる。

ユーフラテス川東のクルド自治区には、今も米軍が駐留しているので、トルコが攻めてくることはない。しかし、米軍がここからも撤退した場合、クルド人は孤立無援となるため、生き残りのために、アサド政権(背後のイラン)に投降するしかなくなる。そのアサド政権は、イラン、ロシアの支配下にあるといってもよい。この2国とトルコの3国は、シリア問題においては強力関係にある。

今、アメリカがクルド人を見捨てて撤退してしまった場合、ユーフラテス川東という戦略上、非常に重要な地域に、ロシア、イラン、トルコが勢力を維持するようになる。

すると、イスラエル北部のレバノンにまで続く道が続いてしまい、大きな軍隊が、障害なく来ることができるようになる。これはイスラエルにとっては非常に危険なことである。

これを避けるため、イスラエルは、ユーフラテス川に近い、シリアとイラクの国境付近にまで足を伸ばしてイランの拠点への散発的な軍事攻撃を開始している。しかし、イラクは9月30日、このユーフラテス川に近いシリアとの国境を開放すると発表した。これはイランが、イラクを通ってシリアに行きやすくなったことを意味する。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5600269,00.html

今後米軍がどうなっていくのか、イスラエルは高い関心と警戒をもって、ことの動向を見守っている。

トランプ大統領は、イスラエル支持派とみられ、イランへ強硬姿勢にも積極的で、イスラエルも感謝していることは多い。しかし、トランプ大統領の動きは予測不能で、イスラエルも懐疑的にならざるをえないようである。

先月、サウジアラビアの油田が攻撃された後、アメリカがイランへの攻撃に出るのではと世界に緊張が走った。しかし、アメリカは軍事攻撃には出ずに、経済制裁を強化し、制裁の軽減を餌に、イランの直接交渉を行うよう圧力をかける道を選んだ。

イスラエルは、アメリカがイランとの戦争を避ける点には合意するが、アメリカがイランとの交渉に臨むことには反対している。交渉で、また甘い条件でイランの核開発が受け入れられることを懸念するからである。

厳しい制裁を継続することで、イラン市民によって今のイランの現イスラム政権が崩壊し、別のイスラム主義でないイラン政権になることがベストである。しかし、トランプ大統領は、その点にはこだわりがなく、現政権の生き残りに反対しているわけではないようである。

イスラエルは自己防衛に関しては、たとえアメリカであっても全面的に依存することはない。したがって、トランプ大統領の予測不能なジグザグに想定内であり、今回のシリアからの米軍撤退発言も、大きな驚きではなかったようである。最終的には、自分を守るのは自分でしかない。イスラエルがホロコーストで刻んだ厳しい教訓である。

<石のひとりごと>

シリアから米軍撤退、ネタニヤフ首相起訴前聴聞、3回目総選挙の可能性。。。並べるとなんとも気が狂いそうになるが、それでもイスラエル国内では、何かがおこってしまうまでは、日々の日常にはなんら変わりはない。今日の静かなヨム・キプール。ネタニヤフ首相は何を考えているのだろうか。

46年前の1973年、このヨム・キプールの日に戦争が始まった。断食してシナゴーグで祈っていた人々に徴兵令が発せられた。家族たちは、息子やお父さんたちを突然見送らなけれなならなかった。

来るべき時には来る。イスラエルの人々にとって、それは現実である。そこから目を離さず、逃げることなく、できる準備はしておく。しかし、そこに支配されて、日々恐れて生活する人は一人もいない。来る時には来る。だから、後悔しないよう、1日1日を楽しんでいる。

そういうイスラエル人の姿に学ばされる点である。
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サウジアラビア油田攻撃:アメリカはイランを攻撃するか:INSS イスラエル国家治安研究所分析より 2019.9.19

 2019-09-19
14日サウジアラビアの石油施設が攻撃を受け、産油量が半減していることについて、アメリカのポンペイオ国務長官が、イランによるものとの判断を表明。同時にペンス副大統領も、アメリカは臨戦態勢を整えたと語り、緊張が続いている。これについて、INSS イスラルの国家治安研究所の分析からお伝えする。

<サウジアラビアが武器残骸をイラン製と発表>

18日、サウジアラビアは、攻撃に使われたドローンと巡航ミサイルの残骸を公表し、イランのものであると断定する声明を出した。記者会見を行ったサウジアラビアのマルキ中将によると、アブレイクなど2箇所を攻撃したドローン18基、巡航ミサイル4発はすべて北部からのもので、南部イエメン方面からではないとのことである。

サウジアラビアは、攻撃は、国際社会全体への攻撃との認識を語った。

これについて、イランは今も関与を否定。もしイランが攻撃されたら、必ず反撃すると反発している。

https://www.bbc.com/news/world-middle-east-49746645

<アメリカは攻撃するか?:イランの背後にロシアの影>

今後、アメリカがイランを攻撃するかどうかが注目されているが、実際には、そう簡単には攻撃できないだろう。

アメリカがイランを攻撃したら、サウジアラビアをはじめ、湾岸諸国に戦火が広がってしまう。イランがヒズボラを使って、イスラエルを巻き込む可能性もある。

この一連のことが進行する中9月16日、イランのロウハニ大統領は、アンカラでのロシアとトルコとの3国首脳会議に出席した。シリア内戦に関する会議だが、3国は、シリアの新憲法に関する委員会を立ち上げることで合意したという。

世界がイランと対峙する最中に、ロシアとトルコが、イランと手を組むことをアピールした形である。さらにややこしいことに、ロシアはサウジアラビアにロシアの迎撃ミサイルs300を購入することを勧めたという。

https://www.reuters.com/article/us-saudi-aramco-russia-putin/putin-proposes-russian-weapons-for-saudi-arabia-after-oil-industry-attacks-idUSKBN1W12CV

こうした中で、もし今、アメリカがイランを攻撃したら、トルコやロシアまで巻き込んでいく可能性も否定できない。イランは周到にこうした状況を読み、ロシアの存在もちらつかせて、アメリカを牽制しているようでもある。

https://www.jpost.com/Middle-East/Russia-Iran-unlikely-to-concede-to-Turkey-on-Syria-worries-Analysts-600687

イランは、現在、2015年の核合意を復活させようとして、イランに譲歩案を出しているフランスのマクロン大統領と水面下での交渉を行っていると言われている。おそらくトランプ大統領とマクロン大統領とのコンタクトもあると推測されている。

イランは、この交渉が遅々として進まない中、経済制裁の報復として、核合意で定められた核開発のレベルを次々に逸脱している。もしイランが、関与を否定する中で、アメリカが攻撃を行った場合、その報復としてまた核合意から逸脱した核開発をすすすめていく可能性もある。

一方で、イランは、イスラエルにシリアやイラクにあるイランの軍事拠点をいくら攻撃されても、今の所、反撃に出てくることはない。イランも大きな反撃に出て、自分の意図としない形で、イスラエルやアメリカを巻き込む大戦争にはしたくないとみられる。

イランとの攻防は、まるで、水面下で、チェスを打つかのようにじわじわとすすめられているようである。

<イランの優れた軍事力に要注意:INSS イスラエル国家治安研究所>

今回のサウジアラビアへの攻撃をイランによるとみられる攻撃から、イスラエルとしてこれをどう見ているのか、イスラエルの国家治安研究所は以下のようにまとめている。

1)イランの高い軍事力とリスクを恐れない実行力が証明された。

今回の攻撃は、イラン国外から正確な攻撃が行われた。イランが高い軍事能力を持っていることを表している。さらに、イランは、攻撃によるリスクを恐れておらず、攻撃するときには躊躇しないで実行するということがわかる。

イランが国外からも正確な攻撃ができるということは、イスラエルにとっても大きな脅威。将来、イスラエルとヒズボラが戦争になった場合、イランのこの軍事力が使われるということを意味する。

2)イエメンでサウジアラビアが劣勢

今回、サウジアラビアは、これほどの攻撃を予防、阻止、反撃もできなかった。サウジアラビアは、イエメンでイエメン政府側に立ち、反政府勢力のフーシ派と戦って4年になるが、最近、劣勢に陥っていると言われている。

アラブ首長国連邦がイエメン内戦から撤退したことで、サウジアラビアが打撃を受け、流れはイラン優勢になっている。

3)イランの核開発がすすむ?

上記のように、今回、たとえアメリカの攻撃が大きな戦争につながっていかなかったとしても、イランが今後も湾岸諸国への攻撃を続ける可能性がある。それに伴い、イランの核開発が加速していく可能性がある。

イスラエルにとっての最大の敵はイランであるため、今後のアメリカの動きをイスラエルは注意深く見守っているということである。

https://www.inss.org.il/publication/the-attack-on-the-saudi-oil-facilities-a-new-level-of-iranian-audacity/?offset=0&posts=1216&type=399&utm_source=activetrail&utm_medium=email&utm_campaign=INSS%20Insight%20No.%201214
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イランとアメリカ戦争か否か:イスラエルの反応と分析 2019.6.26

 2019-06-26
 
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写真出展:BBC

<急速に悪化するイランとアメリカ:対立の構図>

イランとアメリカが戦争直前にまで迫っていることは連日報じられている通り。13日、安倍首相がイランの首脳と会談し、アメリカとの対談をすすめたところ、それに合わせたかのように、日本企業含む2隻のタンカーが攻撃された。

アメリカがイランによるものと断定する声明を出すと、イランはこれを正面から否定。17日には、ウランの濃縮スピードを4倍にすると発表した。これにより、核兵器に必要な高濃度ウランにも届く可能性が出てくる。

イランは、もしこのまま経済制裁が緩和されない場合、6月27日までには、2015年の超大国との核合意で定められた核保有の限界を超える、つまり合意から離脱する見通しと警告する声明を出した。イギリス、フランス、ドイツは、イランに合意にとどまるよう警告したが、ロシアと中国は無言のままである。

https://www.bbc.com/news/world-middle-east-48661843

これを受けてアメリカは、ペルシャ湾に配備した戦闘機、空母などに加え、兵力1000人を増強すると発表した。アメリカもイランも戦争はしたくないとは言っているが、まさに一触即発の事態となっている。

https://www.nytimes.com/2019/06/17/world/middleeast/iran-nuclear-deal-compliance.html

こうした中、20日、ホルムズ海峡の非常に微妙な海上で、アメリカのドローンが撃墜された。ドローンといっても、推定1億3000万ドル(約150億円)の大きなUAV(無人監視航空機)である。ドローンは、ペルシャ湾に近いイランの弾道ミサイル発射地を偵察していたとみられている。

アメリカは、ドローンは、国際空域でイランに撃墜されたと発表。トランプ大統領は、「イランのだれかが、愚かなミスで撃墜した。馬鹿者だ。」と辛辣に非難した。

https://www.france24.com/en/20190620-iran-usa-drone-shot-down-air-space-growing-tensions

これに対し、イランは、ドローンの撃墜は認めたが、国際空域ではなく、イラン領空で撃墜したのであり、防衛であったと主張。イラン革命軍(トランプ大統領がテロ組織に指定)は、回収したUAVのアメリカの残骸を前に、数十人で勝利の祝いをする様子を世界に流した。

https://www.nytimes.com/2019/06/22/world/middleeast/iran-drone-revolutionary-guards.html

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アメリカのドローン撃墜地点:両者の食い違い 地図:BBC

いよいよ戦争になると懸念され、ホルムズ海峡上空を飛ぶ民間機は、航路を変える処置をとりはじめた。

翌21日、トランプ大統領は、アメリカ軍に報復の軍事作戦を命じたが、10分前にこれを停止する命令をだしたことを明らかにした。

トランプ大統領によると、イランの軍事拠点3箇所を口撃する計画で準備も整っていたが、犠牲者が150人に上る見通しと聞いて、ドローン一機を破壊されたことへの報復としては、犠牲が大きすぎると判断したと言っている。

しかし、そこまでの計算が、それ以前になされていなかったはずはなく、おそらく、イランに対し、「アメリカは本気であるが、イランへのあわれみももっている。」と改めて強圧的な姿勢を強調した可能性もある。

またその後の報道によると、アメリカは、軍事行動は控えたが、イラン革命軍関係施設へのサイバー攻撃が行ったとの情報もある。ただしイランはこれを否定。

トランプ大統領は、「イランとの戦争は望まない。前条件なしでイランと話したい。」とコメントしたが、イラン側は、「だいたいアメリカが合意から離脱して経済制裁を行っていることが問題で、その上、地域に軍備を展開している状態では、”前条件なし”と言っていることに信ぴょう性がない。」とこれを拒否した。

https://www.apnews.com/f01492c3dbd14856bce41d776248921f

<イラン:新たな経済制裁発動で国連安保理警告も拒否>

イランが、話し合いに応じなかったことから、25日、トランプ大統領は、イランへの新たな経済制裁を発動した。この制裁は、イランのイスラム最高指導者ハメネイ師と、イラン革命軍幹部8人をターゲトにしたものだという。ホワイトハウスによると、今週末までには、イランのザリフ外相も制裁の対象になる。

この数時間後、国連安保理が、イランとアメリカは、双方とも軍事衝突するべきでないとの声明を出した。これに対しイランは、アメリカが、新たな経済制裁を発動して脅迫している状態では、まだ話し合う準備ができているとはいえないと返答した。

また、今回の制裁が、ハメネイ最高指導者(数十億ドルの資産凍結)やザリフ外相をターゲットにしていることから、もはや外交の道が永遠に閉ざされたようなものだとイランの外務省スポークスマンはツイートした。

https://www.jpost.com/Breaking-News/Iran-says-US-sanctions-on-Khamenei-mean-end-of-diplomacy-Tweet-593604

その後、イランのロウハニ大統領は、ハメネイ師には、モスクと自宅しかないのに経済制裁とは、アメリカは、頭がおかしいと語った。トランプ大統領は、これに激怒したという。

こうした状況について、国連安保理は、26日、イランとの核合意についての対処を話し合うことになっている。イランと核合意を結んでいるイギリス、フランス、ドイツは、「両国は、国際法を尊重し、とりあえず、エスカレートを止めるための話し合いをするべきだ。」と言っている。

https://www.timesofisrael.com/iran-shuns-talks-with-us-as-security-council-urges-calm/

<イランはどうなっているのか>

アメリカが、厳しい経済制裁をこれでもかというほどに厳しくしているのは、イラン市民の指導部への不満をあおることも目的の一つである。

イラン最大の輸出原油の禁輸措置を始めたので、イラン経済は、相当な打撃を受けている。

イランの通貨リアルは、かつて1ドル=3万2000リアルであったが、今は13万リアルである。インフレ率は37%。つまり1年間で、物価が3.7倍、1個100円だったキャベツが370円になったということである。牛乳は倍だという。

野菜や果物といった食物の物価までが上がっているので、それ以外のもの、たとえば携帯電話を買おうとすると、2ヶ月分の給料が必要になるという。この物価上昇にもかかわらず、イラン人労働人口の12%にあたる300万人が失業している。

イランが現在のようなイスラム主義政権になったのは、1979年のイスラム革命以来である。イラン市民たちは、イランは資源も豊かな国であるはずなのに、今、これまでにない苦難を経験していることについて、政権を批判する声は少なくないようである。

https://www.timesofisrael.com/iranians-say-their-bones-breaking-under-us-sanctions/

イラン政府が、相当な圧力の下にいることは間違いない。

<イスラエルの対応:ボルトン大統領補佐官を迎えて>

ネタニヤフ首相は、先週、タンカーが攻撃された際、すぐにアメリカがイランによるものと指摘したのに同意するコメントをだした。また、20日にアメリカのドローンが撃墜された際にも、国際社会は、アメリカに賛同し、イスラエルは、アメリカの側に立つとの立場を明確にした。

また24日、この緊張高まる最中、タカ派で知られるアメリカのボルトン大統領補佐官が、シリア問題について話し合うために開催されたアメリカ、ロシア、イスラエルの3国サミット(次の記事)を前に、イスラエルを訪問。イスラエル側からヨルダン渓谷などを視察した。

ボルトン補佐官は、エルサレムでの記者会見で、イランの避難すべき点として次のように述べた。

①イランは、中東で過激派を支援している。(レバノンのヒズボラ、シリアのアサド政権、イラクのシーア派組織、イエメンフーシ派反政府勢力、アフガニスタンに駐留するアメリカ軍への攻撃) 
*イエメン内戦は、イランとサウジアラビア(アメリカ側)の戦争が繰り広げられているが、最近イエメン(フーシ派)からサウジアラビアの空港への攻撃が相次ぎ、死者も多数出る事態となっている。

②イランが核兵器開発を放棄する決断をしたという確たる裏付けがない。
③テロ組織を支援する中で、大陸間弾道ミサイルを開発している。

ボルトン大統領補佐官は、イランが、これらを公にせず、国際社会の目をかいくぐるように行っていると非難した。

https://www.jpost.com/Middle-East/Trump-calls-US-National-Security-Advisor-Bolton-an-absolute-hawk-593598

これらは、ネタニヤフ首相が以前から指摘してきたことであるが、アメリカのボルトン大統領補佐官が、エルサレムにおいて、正式に指摘したということは、アメリカとイスラエルが、同じところに立っているということの確たる証明と言える。

こうなると、イランが、イランいわく遠い大サタン(アメリカ)より先に、近い小サタン(イスラエル)を攻撃する口実になるかもしれない。イスラエル国内では、イスラエルは、この問題にあまり表立って介入するべきではないとの声もある。一方で、アメリカとの強力な同盟を誇示する方がイスラエルの防衛になるとの考え方もある。

いずれにしても、イスラエルでは、イラン、またはイランの支配下にあるヒズボラなどからの攻撃の可能性にそなえている。しかし、これは今に始まったことではない。

<トランプ政権:国防長官不在での決断>

トランプ政権では、人事の入れ替わりが激しいが、今回、イランへの攻撃を決めて、直前の撤回という事態は、正式な国防長官が不在という中での決断であった。

昨年、トランプ大統領が、シリアとアフガニスタンの米軍を撤退させると宣言した際、これに同意できないとするマティス国防長官が辞任。以来、まだ正式な国防長官はおらず、パトリック・シャナハン氏が国防長官代行であった。

そのシャナハン氏も、家族の件で、辞任を表明したため、トランプ大統領は、マーク・エスパー陸軍長官を新しく国防長官代行に指名した。ちょうどイランへの攻撃、また直前の撤回というごたごたは、この交代がまだ完了していない最中であった。

つまり、国防長官なしに、トランプ政権がイランへの攻撃をいったん決定したということである。これほどまでに重大な決断を国防長官(日本でいえば防衛相)なしに決定していたことに、懸念がひろがっている。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019061900124&g=int

トランプ政権には、タカ派と目されるジョン・ボルトン大統領補佐官がいる。トランプ大統領は米テレビ番組のインタビューで、ボルトン大統領補佐官が、確かにタカ派であると述べ、彼がしきったら、世界が戦争になると評した。

しかし、トランプ大統領は余裕で、トランプ政権にはタカ派もハト派もいる、政権には両方必要と述べた。なんとも気軽に言ってくれるが、トランプ政権の決断しだいでは、世界を巻き込む戦争にもなりうるわけである。

https://www.jpost.com/Middle-East/Trump-calls-US-National-Security-Advisor-Bolton-an-absolute-hawk-593598

ニューヨークタイムスのコラムニスト、トーマス・フリードマン氏は、今、イランと中国に、同時に大きな痛みを与えているトランプ大統領を評価しながらも、どこに向かうのか、明確な目標がみえないことや、単独で動いており、協力する同盟国がない点に危機感を述べる。

今のイラン問題、また中国問題がどう向かうかによって、世界の経済、核開発の行方が決まってくる。フリードマン氏は、2019年が世界の歴史における大きな分岐点になりうると警鐘をならしている。

https://www.nytimes.com/2019/06/25/opinion/trump-china-iran.html

<石のひとりごと>

アメリカの強硬な姿勢をみれば、イランが、「先に合意から勝手に降りたのはアメリカの方だ。さらに今、脅しをかけながら、話し合いをしようとは、ありえないことだ。」というのも一理あるように見えている人も少なくないだろう。

しかし、ボルトン大統領が指摘するように、イランが、今に至るまで、上記のようなことを隠れて行ってきたことは事実のようである。

また、イランの現政権は、核開発に関して国際社会と平和な話し合いを続けたが。10年以上ものらりくらりとかわすのみであった。一方で、経済制裁など実質の圧力が耐えられなくなると、逆にイランから話し合いを申し入れたのであった。これが2015年の核合意である。

2015年の核合意は、アメとムチという視点でいうなら、アメであったといえる。そのアメで、イランが武力や影響力を増強してしまい、いまや危険は、中東のみならず、国際社会にも広がり始めている。このため、ネタニヤフ首相と、トランプ大統領は、イランには強硬姿勢でなかればならないと言っているのである。

こちらが引けば、相手も引いて平和な結論になるというのが日本の常識だが、中東では、こちらが引けば、相手はその分つけあがる。このネイチャーは、日常生活でも経験するところである。引いたり、押したりをバランス良く、狡猾にすすめることが求められるのが中東である。

しかし、ここまでアメリカが強圧的に出ている現状では、イスラム革命の発信地としての誇りを持つ現イラン政権が、十字軍と見ているアメリカの前に頭を下げるという選択肢はないだろう。戦争になるか、もしくは、トランプ大統領、ネタニヤフ首相が望んでいるような、イラン市民自身による現政権打倒しかない。

イラン市民の中では、アメリカに好意はなくとも、現政権への不満は高まっているとの報告もある。

ここからどうなるのか、戦争になり、多くの死者が出て、世界の石油に大きな影響を及ぼす大混乱をもたらすのか。ニューヨークタイムスの評論家フリードマン氏が言っているように、危険度の高さの割に、どうにも先が見通せない状況である。
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バーレーンで米の中東和平:”世紀の取引”始動も不評 2019.6.26

 2019-06-26

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バーレーンのパレスチナ経済ワークショップ:クシュナー大統領補佐官 写真出展:ynet

24,25日と、バーレーンで、アメリカが主導による、パレスチナ人の経済に関する2日間のワークショップが行われている。アメリカは、むこう10年間で、ガザと西岸地区の経済を改善するとして、総額500億ドルやインフラプロジェクトを募る予定である。

このワークショップは、トランプ大統領がもったいぶらせて言い続けてきた世紀の中東和平案の第一段階にあたる。

経済が、政治外交に敵意に大きく関係することから、まずはパレスチナ人の経済を回復させてから、政治の話に入ろうという流れである。本命の和平案自体は、まだ公示しないことになっている。今回のワークショップを取り仕切るのは、トランプ大統領の婿でもあるジェレッド・クシュナー大統領補佐官。

バーレーンでの会議には、元中東特使のトニー・ブレア氏や、IMF(国際通貨基金)のクリスティーヌ・ラガルド氏が出席した。ビジネス上がりのトランプ大統領らしく、会議はワークショップとの位置付けで、政治家だけでなく、民間のビジネスマンなども参加している。

しかし、パレスチナ自治政府のアッバス議長は、いわばこのワークソップの主人公であるにもかかわらず、トランプ大統領が、親イスラエルであることは明白なので、後出しする肝心の和平案は、パレスチナに不利なものになるとして出席を拒否した。しかし、数人のパレスチナ人ビジネスマンは出席している。

イスラエルについては、ぎりぎりまで政府関係者が出席する、しないでもめていたが、政治的なタブーからか結局、政治家どころか、ビジネス関係者すら出席しないことになった。こうしたワークショップはイスラエルの得意とするところなので、イスラエル抜きというだけで、すでに残念なイメージではあった。

余談になるが、イスラエルのカッツ外務相(5月末に外相に就任)は、以前にもガザ沖にパレスチナ人のための空港を作って、ガザの出入り口を作るという案を提案していた。今の所それが実現するといった情報はない。

そのカッツ外相は、昨年から、湾岸諸国から地中海を結ぶ鉄道を提案している。これにより、湾岸諸国の石油は、ホルムズ海峡を通過せずに世界へ運搬できる。政治的にも実現は難しそうだが、案といえば案。トランプ大統領も賛成だという。

あらゆる状況にも絶望せず、突飛もないことを含め、なんらかの解決をさがそうとするのが、イスラエル・ユダヤ人根性である。

https://www.timesofisrael.com/rail-from-israel-to-gulf-makes-sense-says-transportation-minister-in-oman/

<蓋をあけてみれば・・・落胆するアラブ諸国>

先週、40ページにわたる世紀の取引の第一段階が公示されたが、パレスチナ人はもとより、アラブ諸国、イスラエルからも落胆の声があがった。予告されていた通り、政治をいっさい含めずに、経済にのみ焦点をあてていたのだが、それはやはり無理ということを皆が実感したようである。

たとえば、パレスチナ人は、今、西岸地区とガザ地区に分裂・敵対し、一つになる気配がまったくない。その中で、トランプ政権は、両者の間に通路を設けることを計画している。これは、パレスチナ人だけでなく、イスラエルにとっても、ありえないことである。

湾岸諸国にしても、いくらトランプ大統領との関係や、イランという共通の敵があるとしても、最終的には、パレスチナ国家設立という大義から離れることはない。結局のところ、経済を改善したとしても行き着くところがないということなのである。

政治的な解決というゴールを明示せずに、まずは経済支援をと言われても、当事者たちとしては、困惑するのみということである。結局のところ、トランプ大統領は、この問題がどれほど困難なのかということがわかっていないとも言われている。

2日間のバーレーンでのワークショップは、まもなく終わるが、何か結果が出るとはほとんど期待されていないようである。

https://www.timesofisrael.com/bahrain-confab-set-to-kick-off-with-loaded-schedule-but-meager-expectations/

<UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業期間)が同じ日に1億1000万ドル>

バーレーンでパレスチナ人の経済活性化に向けた投資が呼びかけられた同じ日、UNRWAが、ニューヨークで、全世界のパレスチナ人540万人を支える資金として、1億1000万ドルの献金の約束をとりつけることに成功した。主な出資者はEUである。

UNRWAによると、2019年に必要な額は12億ドルで、今回の献金を入れてもまだ1億ドル不足している。ガザへの食料配布だけでも年間8000万ドル必要なのだが、毎年不足しているという。

国連でのこうしたパレスチナ難民への献金は毎年行われているが、アメリカが、資金がテロ組織に流れているなどで、UNRWAから撤退して以来、資金不足で、組織の存続すら疑問視されるほどになっている。

こうした現状なのに、アメリカの500億ドル経済支援の申し出を断るというのも、誇り高く、必ずしも論理的ではない中東のアラブ人らしいといえばらしいといえるかもしれない。

https://www.jpost.com/Middle-East/UNRWA-raises-110-million-for-Palestinians-on-same-day-as-Bahrain-summit-593728

<イスラエルとパレスチナ人との現実>

バーレーンで当事者不在の状態で、パレスチナ人経済活性化ワークショップが行なわれているのだが、イスラエルとパレスチナ、両者の現状は以下の通りであった。

1)パレスチナ市民のバーレーン抗議デモ

24日、バーレーン会議開催の日、西岸地区では、ナブルスなど各地で、パレスチナ市民たちが、「パレスチナは売り物ではない。」と叫びながら抗議デモを行った。平和的なデモではなく、石や燃えるタイヤをイスラエル兵らに投げつけるなどの行為があり、イスラエル軍も催涙弾で対処した。

ガザでは、「我々は腹が空いているのではない。尊厳を求めているだけだ。」とのデモを行った。こちらもイスラエル軍と衝突し、パレスチナ人12人が負傷した。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5536133,00.html

2)ガザ;火炎蛸で火災:イスラエルは燃料搬入差し止め

また、ガザからの火炎蛸によりイスラエル南部13箇所で火災となり、200ディナムが焼失した。これを受けて、イスラエルは、ガザへの燃料搬入を停止した。

両者の関係は、バーレーンとはまったく無関係にいつもの通りの様相である。

https://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Israel-stops-fuel-transfer-to-Gaza-following-13-fires-on-border-593606
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