ゴラン高原のドルーズ村での危機 2017.11.7

 2017-11-07
北部情勢が緊張する中、3日、ゴラン高原のドルーズの町マジダル・シャムスと、国境をはさんで向かい側、シリア領内にあるドルーズの町ハダールで自爆テロが発生し、9人が死亡。これに続く銃撃の流れ弾で、イスラエル側、マジダル・シャムスのドルーズ1人が負傷した。

これを受けて、ハダールにいる家族を助けようと、マジダル・シャムスの住民10人ほどが、国境フェンスを超えて、シリア側へ行こうとした。イスラエル軍があわてて連れ戻したという。

ハダールはシリア政府側の拠点のひとつである。そのため、今回、ハダールで、反政府勢力のアル・シャムス(アル・ヌスラ)が自爆テロ、ならびに戦闘を展開したのである。

マジダル・シャムス住民は、これまで、自分はシリア人だと主張し、暴力には出ないまでも、静かにイスラエルに反抗する態度を続けていた。しかし、シリアが内戦となり、信頼していたアサド政権の残虐な行動が報じられる中、複雑な立場におかれるようになっていた。今は、家族を救えるのはイスラエル軍しかない。

マジダル・シャムスの指導者は、「イスラエルにシリアを攻撃してほしいとは要求しない。しかし、IDFは、ヘルモン山から、監視して必要ならシリアへ入らずに攻撃もできることを知っている。ハダールを守ってほしい。」とイスラエルに要請を出した。

これを受けて、イスラエル軍は、「イスラエルはドルーズの人々を守る。」約束する声明を出した。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5038041,00.html

*ハダールとマジダル・シャムス:シャウティング・ヒルの悲劇

ハダールとマジダル・シャムスは、どちらもドルーズの村だが、1967年の六日戦争で、シリアとイスラエルに分断され、行き来ができなくなった。このため、分断された家族は、かつて谷をはさんで叫びあって安否を確かめるしかなくなった。マジダル・シャムスには、「シャウティング・ヒル(叫ぶ丘)」と呼ばれれるスポットがある。この様子は映画のドラマにもなっている。

今は、電話やインターネットで連絡がとれるので叫ぶ必要はない。また必要であれば、第三国で家族が顔を合わせることも可能である。しかし、イスラエルとシリアに国交がないため、今も家族は分断されたままである。

このため、今回、向かい側のハダールで自爆テロと聞き、マジダル・シャムスのドルーズたちは、家族を助けようと、国境を超えてハダールへ助けに行こうとしたのである。

<複雑な立場のイスラエル>

この事件について、イスラエルは若干複雑である。今回、ハダールで自爆テロを決行したゴラン高原の反政府勢力アル・シャムスと、水面下で取引をしているとみられるからである。

イスラエルに隣接するゴラン高原周辺は、シリア政府軍ではなく、反政府勢力アル・シャムスが優勢である。このため、地域の治安を守る為、水面下で、彼らと取引をしたとみられるのである。

その取引とは、シリア人負傷者(戦闘員含む)を一時的に引き取ってイスラエルで治療するかわりに、イスラエルには手出ししないよう約束させたとも言われているのである。*負傷者は、治療が一段楽すればシリアへ返還される。

Times of Israel によると、2013年以来、イスラエルが治療したシリア人は3100人に上るという。同紙は、この10月にもろばに乗せられて、ヘルモン山のイスラエル側へ搬送されてきた負傷者についての記事を出している。

https://www.timesofisrael.com/arriving-on-donkeys-syrian-war-wounded-seek-israeli-help/

今回、イスラエルは、ドルーズを守るために、ハダールの住民を守ると約束したが、それは、アル・シャムスを攻撃するということであり、約束を破るということにもなりうるのである。ドルーズを守るか、イスラエル市民を守るか。難しい状況である。

なお。シリアでは、ISISの拠点ラッカが陥落し、支配域はかなり小さくなったが、今も自爆テロで、難民を75人も殺害するなど、あいかわらず危険な存在である。また、ISISが撤退した空白に、イランが入り込んでいるとの情報もある。

イスラエル軍は、日々、様々な方法を駆使して、情報収集を行っている。エージェントたちが、必要な情報を得ることができるようにと祈る。

https://www.timesofisrael.com/druze-break-into-syria-from-israel-idf-brings-them-back/
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レバノンからISIS追放へ:ヒズボラとレバノン軍がはさみうち 2017.8.14

 2017-08-15
8月3日、ヒズボラは、元アルカイダ系のシリア反政府勢力と停戦合意した後、取引を行い、反政府勢力戦闘員とシリア難民、計約9000人を、シリアとの国境に位置するレバノン領内アーサル地方から出てシリアへ撤退させることに成功した。BBCがのろのろと出て行く難民たちの列の様子を報じている。 

*アンサル地方は、レバノン領の右上部に小さく見える赤いエリア。周囲はアサド政府軍の支配域である。

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これと引き換えに、ヒズボラが得たのは、ヒズボラ戦闘員の遺体5体。その後、レバノンで拘束されていたシリア人3人と、ヒズボラ戦闘員3人の交換も行われたという。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5000379,00.html

この直後から、ヒズボラと、シリア政府軍は、反政府勢力がいなくなったレバノン領アンサル地方にいるISIS撃滅へと次なるステップを開始した。ヒズボラ・アサドチームは、シリア側から、アンサル地方に向けて攻撃を始める。

http://www.aljazeera.com/news/2017/07/arsal-hezbollah-jabhat-fateh-al-sham-agree-ceasefire-170727045158437.html

一方、レバノン軍は、アメリカとイギリスの支援を受けて、レバノン側からアンサル地方のISIS撃滅に向けた攻撃する。アメリカとイギリスは、ヒズボラとアサドチームがアンサル地方を支配するようになるのを避けたいのである。

もしヒズボラとアサドチームが、アンサル地方に居座ることになれば、そこにイランが入ってくることを意味する。これはイスラエルも避けたいところである。

<シリアへ帰還する難民たち>

シリア・イラクでISIS撃滅作戦が進んでいるが、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、これまでに約50万人近いのシリア人が、アレッポ、ホムス、ダマスカスなどの自宅へ一時帰宅し始めているという。

50万人のうち、44万人はシリア国内で難民となっていた人々で、31000人が、近隣の国で難民となっていた人々である。帰還といっても、これらの町は、すでに修復しようもないがれきの山となっているため、実際には人間が住める状態ではない。

しかし、それでも、今回、レバノンで難民になっていたシリア人たちはシリアへ戻ることを決めた。それほどレバノンでの難民生活は悲惨だということである。

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-40460126
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ゴラン高原周辺で停戦開始:米ロヨルダン合意 2017.7.11

 2017-07-11
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赤い部分が停戦エリア 地図出展:VOANews

アメリカ(トランプ大統領)とロシア(プーチン大統領)が、ドイツでのG20にて個別会談を行い、シリア南西部、ヨルダンとシリア国境周辺(ダルアとスウェイダ)と、クネイトラ(ゴラン高原シリア側)での停戦開始で合意したと発表。日曜正午から停戦が発動された。

合意によると、アメリカは、支援している反政府勢力へ圧力、ロシアはシリア軍、イラン、ヒズボラに停戦への圧力をかけたということである。発動から約48時間、限局的な紛争はあったが、今の所、空爆等の戦闘はなく、停戦は守られているとされる。

この停戦は、米ロにシリア難民の流入に困っているヨルダンも加わり、ここ数週間話し合いが行われていた結果だという。

表には出ていないが、この停戦にはゴラン高原のクネイトラも含まれているため、実際にはイスラエルも関係国である。停戦監視にはイスラエルが大きな役割を果たすことになると伝えられている。(地図参照)

http://www.jpost.com/Opinion/How-long-will-the-Southern-Syrian-ceasefire-last-499248

なお、シリア内部の部分的停戦への試みはこれが初めてではない。昨年に引き続き、今年5月にも、ロシア、イラン、トルコが別の地域での停戦を試みた。この時はアメリカは抜きであった。いずれの場合も失敗に終わっている。

http://edition.cnn.com/2017/05/04/middleeast/syria-ceasefire-talks-deescalation-zones/index.html

今回の米ロとヨルダンの停戦合意も、いつまで続くやらと、期待薄のようであるが、国連もとりあえず、今はまだ停戦は守られているとの認識を発表している。

<イスラエルへの影響は?>

イスラエルでは、先週、この地域からの流れ弾が相次ぎ、毎回、クネイトラ周辺のシリア軍関係施設への空爆という報復を繰り返さなければならなかった。これについては、この停戦は、イスラエルにとってもありがたいことである。

しかし、問題は、米ロとも、この停戦を監視し、責任をもつということにはなっていないという点が問題である。停戦の空白を利用し、イランが、イスラエルとの国境に展開し、居座ってしまう可能性もある。

イスラエルとしては、たとえ停戦であっても、この地域で、イランやヒズボラの武器搬入などの動きがある場合は、これまでと同様、先手攻撃は辞さないつもりである。

また一方で、反政府勢力が、同じスンニ派のよしみでもあり、経済力のあるISISの袖の下に協力してしまうという例もあり、停戦の空白に、ISISが入り込んでくる可能性もある。

この停戦については、雲の上の大国の政治的ねらいと地上の詳細には違いがあること、しかしそれでも大国ぬきでは平和の実現の可能性もないということを物語っていると言われている。

http://www.jpost.com/Middle-East/Analysis-Who-wins-and-loses-from-Syria-ceasefire-deal-499178
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シリア情勢緊張:イランが中距離ミサイル発射など 2017.6.21

 2017-06-21
シリアの内戦は6年目となる。もともとシリア人とシリア政府の内戦のはずであったが、まずは様々なテロ組織が入り込み、ISISが登場してきた。これにより、アメリカと有志国、ロシア、イラン、トルコなどがからむ代理戦争に発展し、さらにはその構図が変化し、複雑化がすすむ一方である。

1)イランがISISへ地対地中距離ミサイル

19日、イランがイラン領内からシリアのISISをターゲットに地対地中距離ミサイル(射程700キロ)7発を発射した。イラン革命軍は、これは、6月7日にテヘランの市議会などが主撃され、17人が殺害された(ISIS犯行声明)ことへの報復だと発表した。

http://www.timesofisrael.com/iran-launches-missile-strike-into-syria-for-tehran-attacks/

イスラエルの報道によると、実際には、ミサイル7発のうち目的地に達したのは2発で、2発は目標をかなりはずし、3発はイラクに着弾していたもようである。

しかし、攻撃自体がどこまで成功していたかとは別に、イランが、中距離ミサイルを使用するのは30年ぶりであったことが注目されている。「イランは報復する」というメッセージをISISだけでなく、敵対するアメリカとその友好国にも誇示した形である。

また、イランは、これまでシリアで、アサド政権とロシアに協力して大きな犠牲をはらってきたにもかかわらず、最終的に中東で支配力を発揮するのは、イランではなくロシアになる様相になってきた中、イランの存在感を主張したとの見方もある。

http://www.presstv.ir/Detail/2017/06/19/525815/Iran-Syria-missile-strike-Daesh-Dayr-alZawr-terrorism

2)アメリカがシリアの戦闘機、イラン製ドローンを撃墜

イランがシリアへ中距離ミサイルを撃ち込んだ数時間後、シリアのISIS支配域上空で、アメリカの戦闘機がシリアの戦闘機を撃墜した。初めてのことである。

これを受けて、シリアとロシアは、互いに戦闘機の衝突を避けるためにアメリカとかわしている合意を破棄した。さらにシリア上空に入ってくるアメリカとその有志軍の戦闘機を撃墜する脅迫もしている。

https://www.nytimes.com/2017/06/19/world/middleeast/russia-syria.html 

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これに続いて火曜、アメリカはシリア上空で、イラン製のドローンを撃墜した。同様のイラン製ドローンは、8日にも、アメリカが支援する反政府勢力に爆弾を投下したため、アメリカに撃墜されている。

https://www.nytimes.com/2017/06/20/world/middleeast/american-warplane-shoots-down-iranian-made-drone-over-syria.html

アメリカがシリアの内戦に徐々に深みに入りこみはじめているとみられている。

こうした中、ニューヨークタイムスは、イスラエルがゴラン高原で、軍事的にも反政府勢力を支援してアサド政府軍やイランが近づかないようにしていると伝えた。イスラエルは、今も極秘にシリア難民を救出する働きは継続している。

イスラエルとしてはできるだけ関わりたくないが、大きな戦いがすぐそばで繰り広げられているため、まったく関わらないというわけにもいかなくなりはじめている。
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ロシア、イラン、トルコが合意:シリアに4安全地帯設置へ 2017.5.8

 2017-05-08
4日、ロシア、イラン、トルコの首脳が、カザフスタンのアスタナに集まり、シリア内戦解決に向けて、4つの安全地帯を設ける方向で合意に署名し、6日、6ヶ月の予定で開始した(実際に開始したかどうかは未確認)。

安全地帯は、イドリブ県やアレッポ周辺などの激戦地域の近くで、4つとも反政府勢力エリアに指定されているが、3国は6月4日までに、正式な境界線を策定することになっている。

安全地帯とは、上空をいかなる戦闘機も飛行せず、原則として戦闘が行われない地域のことで、難民となった市民たちが避難できる場所のことである。

しかし、これまでの停戦協定と同様、ISISやアルカイダなどの過激派に対する攻撃は続行される上、保証国となるのが、すでにシリアで残虐な行為を行っているイランであるため、どこまで実効力があるのかは疑問視されている。

反政府勢力は、これに同意しないと言っている。

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-39830307

<ロシア、イラン、トルコ>

この案はロシアが、シリア政府側代表として提言し、反政府勢力側代表としてトルコが合意。それをイランが、保障するという形となっている。

アメリカはここに加わっていないが、安全地帯の設立は、トランプ大統領も提案していたことでもあり、この会議に先立つ2日、ロシアのプーチン大統領はトランプ大統領が電話会談を行っている。

ロシア、イラン、トルコ、といえば、エゼキエル38章を思い出させる3国。今後のこの3国の動きが注目される。

<トランプ大統領の執念!?:アフガニスタンのISIS主謀者死亡か>

トランプ大統領がISISの撃滅に置く優先度は高い。先月モアブという最大爆弾をアフガニスタンで使用し、ISIS戦闘員少なくとも36人が死亡している。

アフガニスタン国内では、アメリカ軍の動きが活発になっていると伝えられていたが、8日、アフガニスタンISISのトップと目されるアブドゥル・ハシブが死亡したと伝えられた。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/229269

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