シリア危機とイスラエル:イランとの対立再燃 2018.4.11

 2018-04-11
9日、シリアで、化学兵器が使用されたとみられ、50人以上が死亡した。この件をめぐって米露の対立が危機的となっている。

この直後、シリア中央部パルミラ近郊のシリア軍基地で、イラン軍とロシア軍も駐留するT4基地がミサイル攻撃を受け、大きな打撃を受けた。この基地は、今年2月にもイスラエルの攻撃を受けており、今回もイスラエルである可能性が濃厚だ。

イランは、イスラエルに報復を宣言している。

1)東ゴータでの化学兵器使用疑でシリア人50人以上死亡

シリアでは、2月ごろより、ダマスカス近郊東ゴータをアサド政権軍が包囲し、激戦になっていることが伝えられていたが、先月、政府軍がほぼ占領したとのことであった。

そうした中、4月8日、東ゴータで反政府勢力の最後の拠点であるドーマで、化学兵器とみられる症状を呈する患者500人に対処していると、現地のシリア・アメリカ・医療組織が伝えた。死者は49人から60人以上に上っているという。

シリアで化学兵器が使われたのは200回以上に上るといわれる中、昨年4月に、大きな化学兵器使用疑惑が発生し、アメリカが巡航ミサイルを地中海からシリアへ撃ち込んで牽制して以来の規模である。

その後しばらく化学兵器の使用は止まっていたが、今年2月ごろから再び、シリア軍が化学兵器を使っているという報告が出始め、今回の大規模な使用にいたったというものである。

トランプ大統領は、今回の化学兵器使用は、シリア軍によるものと断定。その背後にいるイランとロシアも関係しているとの見解を表明し、「超大国アメリカとしては、無視できない。」として、ここ一両日中になんらかの対処をすると発表した。現在、シリア軍は、アメリカからの攻撃に備えているという。

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-43707023

https://www.timesofisrael.com/trump-vows-forceful-response-after-syria-attack/

アメリカからの名指しの非難を受けたロシアは、関与を否定。アサド政権が関わっていることすら否定し、反政府勢力の自作自演であると主張した。また、現場に塩素ガス等の痕跡はないとし、ただちにOPCW(化学兵器禁止機構)を派遣するよう要請した。

化学兵器については、イギリスで、元ロシアの二重スパイが娘とともに化学兵器によって暗殺されかけたことから、欧米各国は、ロシアを追求している最中であったため、ロシアと欧米との対立がさらに深まったともいえる。

9日、国連安保理はこの件について緊急の会議が招集。米露を中心とする激しい論争が報じられたが、非難決議を採択しても、ロシアが拒否権を発動するのであまり意味はないとみられる。

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-43707023

イスラエルは、シリアでの化学兵器使用に関する警告をアメリカに対して行っていたという。隣国シリアで化学兵器が使われているということは、シリアにイランが進出していることもあり、イスラエルが放置できる問題ではないからである。

2)シリア軍事基地攻撃で14人死亡:イスラエルが攻撃か

上記化学兵器問題が発生した直後の9日夜明け前、シリア中央のパルミラ郊外にあるシリア最大の軍基地T4が、複数のミサイルによる攻撃を受け、少なくとも14人の死者が出たとシリアのメディアが伝えた。

この基地は、イランがドローンの発信基地として使っている基地で、今年2月、イスラエル領内にドローンを飛来させたことから、イスラエルが、空爆を行った基地である。

これまでに伝えられたところによると、多数のミサイル攻撃を受け、シリア軍が、迎撃ミサイルで数発は撃墜したという。攻撃は、トランプ大統領が、シリアでの化学兵器使用疑惑を受けて、厳しい対処を示唆した直後であった。

当然、アメリカが疑われそうなところだが、シリアとロシアは、ただちに、「攻撃はアメリカではない。」と主張。イスラエルによるものと非難した。ロシアは、イスラエルのF15戦闘機がレバノンからミサイルを発射し、5発は迎撃したと訴えている。

9日になり、レバノンも、イスラエルの空軍機4機が領空侵犯していったと証言している。また、ここ3日、イスラエルのドローンがひんぱんにシリアの様子を探っていたとも言っている。

そういうわけで、イスラエルがやったとの見方が濃厚だが、イスラエルは、これについて、コメントしていない。しかし、ネタニヤフ首相は、10日、住宅関係でスデロットを訪問した際、防衛を強調し、相手を特定しない形で、「我々を攻撃しようとする者は攻撃する。」と語っている。*スデロットは、かつてガザからのロケット攻撃で大打撃を受けたイスラエル南部の都市。

https://www.timesofisrael.com/after-syria-strike-netanyahu-says-israel-will-hit-all-those-who-seek-to-harm-us/

<イランの反応>

10日、シリアを訪問したイランのハメネイ最高指導者のトップアドバイザー、アリ・アクバル・ベラヤティ氏は、「犯罪が見過ごされることはない。」と将来のイスラエルへの報復を示唆した。

https://www.timesofisrael.com/iran-threatens-israel-over-syria-strike/

<ロシアには通告なし>

2月にイスラエルがT4を攻撃した際、イスラエルは事前にロシアに通告していた。このため、ロシアは、軍関係者を非難させ、だれも被害にあわなかった。しかし、今回は、事前通告がなく、ロシア軍関係者も被害にあう可能性があったことから、ロシアはイスラエルに憤慨しているとみられる。

一方、公式ではないが、アメリカ政府関係者2人は、T4基地攻撃はイスラエルによるものと考えているという。さすがにアメリカには伝えていたようである。

https://www.timesofisrael.com/us-said-to-confirm-israel-hit-syria-base-as-russia-complains-it-was-not-warned/

<タイミングについて>

今回のT4基地への攻撃のタイミングだが、シリアの化学兵器問題との関連で、アメリカが、シリアへのお仕置きをするぞといった直後であった。

つまり、イスラエルがやったことは濃厚ではあるが、アメリカがやったとも考えられなくもない時期であり、化学兵器使用で、国際非難もかわせる時期でもあったということで、イスラエルにとっては都合の良い時期であったとも指摘されている。

また、アメリカがシリアから撤退することを示唆している中、イスラエルが、イランに釘をさしたのではないかとも考えられている。

前回お伝えしたように、トランプ大統領は、ロシア、イラン、トルコ3国がアメリカ抜きでシリア問題を解決しようとしている最中に、シリアからのアメリカ軍撤退を言い出したことから、ロシアに百歩譲ったではないかとも言われた。

つまるところ、トランプ大統領は、ロシアの協力で大統領になった可能性もあり、イスラエルを支援するとはいえ、どこか、ロシアには頭があがらないのではないかとの疑惑もささやかれているのである。

このように、アメリカが、(ロシアとも組んで?)シリアから撤退する可能性が出てきたことから、「たとえ同盟国アメリカがどう出ようが、イスラエルの自衛の原則に変わりはない。必要な状況になれば、イスラエルは、すみやかに、躊躇なく行動に出る。」という強力なメッセージを発したのではないかということである。

<石のひとりごと>

あらゆるメディアの報道をリサーチしながら、記事を書いているが、実際のところ、いったいどこまでが、本当のことなのかは、わからなくなってくる。敵がやったようにみせかける、などの作戦が横行しているからである。

イスラエルも、生き残りのためには、嘘もつくし、あらゆる工作活動もするだろう。こうした中、どこまで有益な情報をお届けできるのか。日々、聖霊の知恵と導きなしには記事を書けないと実感している。
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米シリア撤退宣言とロシア・イラン・トルコ3国サミット 2018.4.8

 2018-04-08
トランプ大統領が、先週金曜、またもや爆弾を落とした。2月にティラーソン元国務長官が約束したシリア復興のための支援金2億ドルを凍結するという。

同時に、「シリアのアメリカ軍(2000人)をすみやかに撤退させる。ISをすぐにも壊滅して撤退する。あとは他の国にやらせたらいい。」と言った。理由は、今まで相当な大金を使ってきたが、アメリカには何の益もなかったからということだが、実際には11月の中間選挙への対策ではないかとも言われる。

トランプ大統領のこの発言には、ペンタゴンはじめ、側近もすべてが反対を表明。ISはまだ壊滅したわけではないし、中東での影響を維持するため、たとえ小規模でもアメリカ軍を残留させるべきだと主張した。

これを受けて、トランプ大統領は、「いましばらくは駐留させる。」といい、今の所、具体的な撤退のめどは明示しなかった。

しかし、この一連のことで、アメリカが、シリアに関して明確なビジョンを持っておらず、近い将来、本当に撤退する可能性もあるということは、中東諸国と世界に、十分示した形になった。

<ロシア、イラン、トルコ3国サミット>

トランプ大統領のシリアからの撤退発言は、イラン、トルコ、ロシア3国の首脳サミットの直前であった。3国首脳は先週火曜、トルコのアンカラに集まり、シリアのこれからについて話し合った。

この3国がシリアに関するサミットを開くのはこれが2回目。前回も今回もアメリカはカヤの外だった。

アメリカは、軍事超大国であり、現在もシリア領内に2000人規模の軍隊を置いている。それにもかかわらず、このサミットに含まれていないということは、アメリカの足がすでに中東から半分出ているということであり、すでに影響力は失せていることを表している。

トランプ大統領のシリア撤退発言が、このサミットの直前のことであったことから、トランプ大統領は。これら3国にシリアを任せることに同意しているのではないかと疑う分析もある。

ややこしいのは、ロシアとトルコはシリアにおいては、立場上敵同士であるという点。ロシアが、シリアのアサド政権を支持しているのに対し、トルコは反政府勢力を支援する立場である。

しかし、トルコは今、シリア北部アフリーンのクルド人地区を占領するなど、独自の動きを始めており、アメリカやNATOからはみ出す傾向にある。このため、ロシアはトルコを引き込もうとしているのである。

Yネットによると、トルコは、先週、ロシアとともに原子力発電所建設を開始した。200億ドルの取引だという。ロシアは、トルコがアメリカとNATOと決別することを推進しようとしているとの分析もある。

http://www.jpost.com/International/Fallout-from-the-Turkey-Iran-Russia-meeting-549022

<ネタニヤフ首相がトランプ大統領と緊急電話会談>

シリアからアメリカが撤退し、ロシア、イラン、トルコの3国が支配するシリアの誕生は、イスラエルにとっては非常に危険である。Yネットによると、ネタニヤフ首相は、先週火曜、トランプ大統領に緊急の電話をかけ、電話会談を行った。

この3国の支援を受けて、シリアのアサド政権は、勢力を急速に回復しており、もうすぐシリア南部やゴラン高原(シリア側)にいる反政府勢力の制圧にかかるとみえ、ゴラン高原の非武装地帯に戦車を並べはじめたという。

これは、ヨムキプール戦争後の1974年に、イスラエルとシリアが合意した内容に反するため、イスラエルは、これについてUNDOF(国連兵力引き離し監視軍)に申し立てをすると予想されている。

https://www.timesofisrael.com/assad-regime-places-tanks-artillery-in-buffer-zone-with-israel-report/

またイランは、テヘランから、シリアを通って、地中海へ抜ける高速道路の建設を行っているが、シリアに駐留するアメリカ軍の存在が妨害となり、イランは、道路のコースを変更を余儀なくされた。

しかし、もしアメリカが撤退すれば、この道路も一気に完成してしまうだろう。これはイスラエルにとっては非常に危険である。

https://www.theguardian.com/world/2017/may/16/iran-changes-course-of-road-to-mediterranean-coast-to-avoid-us-forces

ネタニヤフ首相とトランプ大統領の電話会談の詳細は明らかではないが、トランプ大統領はイスラエルの治安維持には必ず協力すると約束したとのこと。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5222104,00.html
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国際紛争へ発展するシリア内戦:アモス・ヤディン(イスラエル国家治安研究所) 2018.3.2

 2018-03-02
イスラエルの隣国シリア情勢が悪化し、もはや誰も止められない状況になってきた。あまりにも多くの国や組織が入り混じり、シリアの内戦は終焉どころか、新しいチャプターに入ったとイスラエル諜報・治安のエキスパート、アモス・ヤディン氏が警告している。

<シリアで何が起こっているのか>

シリアの内戦は今年8年目に入る。(死者46万5000人以上・1200万人が難民化)。この数年の間にISが登場したことで、アメリカとロシアという2大超大国が介入するようになった。今、シリアのISは、著しく縮小しつつある。

すると懸念されていたとおり、IS撤退後の空白にイランが入り込み、ロシアも協力してシリアのアサド政権が、勢力を拡大するようになった。アサド政権は、全国で、反政府勢力を残虐に一掃する作戦を展開している。

今、特に問題になっているのが、シリアの首都ダマスカスから10キロと隣接する東ゴータでの激しい戦闘である。

東ゴータ地区は、反政府勢力支配域であったため、2013年からシリア軍に包囲された状態にあった。しかし、2018年2月19日(日)、シリア軍が、東ゴータを急に激しく爆撃しはじめた。爆撃にはロシア軍機も加わっていたと伝えられている。

その爆撃はこれまでになく残虐で、バレル爆弾など、違法なものまですべて使用し、下にいる住民たちを無差別に殺害している。攻撃がはじまってから10日の間に、すでに死者(主に市民)は500人を超えているという。

東ゴータの病院3箇所は完全に破壊され、救援物資を運び込むこともままならないほどの激しい空爆が続く。国連関係者は、「この世の地獄」と凄まじい空爆の様子を伝えている。

BBCは、埃で真っ白になっている瓦礫と爆撃の中、負傷者を抱えて走るホワイトヘルメッツ(シリア市民による救援隊)の様子が伝えている。

東ゴータの住民は40万人。その半分が18歳以下の子供だという。地下の防空壕に隠れている子供たちの様子や、多くの負傷した子供たち、食べ物がないと訴える老婆の様子などが伝えられている。

ダマスカス、ならびに東ゴータは、イスラエルのガリラヤ湖からわずか110-120キロ地点である。

https://www.aljazeera.com/news/2018/02/eastern-ghouta-happening-180226110239822.html

<シリアに化学兵器を調達しているのは北朝鮮か!?>

東ゴータからは、空爆だけではなく、化学兵器が使われているという兆候も報告されている。これについて、シリアもその化学兵器破棄を保証しているロシアも否定しているが、現地からの情報によると、化学兵器の使用は間違いなさそうである。

これについて、ニューヨークタイムスが、国連の極秘の報告書がリークしたとして伝えたところによると、2012年から2017年の間、北朝鮮が、シリアに、危険な化学物資を少なくとも40回、搬送していたもようである。

このほか、シリアのミサイルシステムの現場に北朝鮮人がいたことも目撃されている。シリアへの化学兵器、ミサイルの調達のみかえりとして流れた資金が、北朝鮮の核開発につながった可能性がある。

http://www.jpost.com/Middle-East/UN-report-links-North-Korea-to-Syrias-chemical-weapons-program-543849

<停戦ならず:国連安保理決議の無力化>

こうした状況を受け、国連安保理は緊急会議を招集し、23日(金)、シリアに停戦を要求する採択を行おうとした。しかし、ロシアがこれに難色を示したため、採択は24時間延期されることになった。

アメリカのニッキー・ヘイリー国連大使は、「ロシアが渋ったおかげで採択が遅れた。この間にいったい何人の母親が子供を失ったと思うのか。」と激しくロシアを糾弾した。

対するロシアは、停戦に反対した理由として、東ゴータにいる反政府勢力の中に、アルヌスラなど、危険なグループが多数紛れていることをあげた。停戦でこれらの組織に時間を与えるよりも、今のうちに一掃してしまうほうがよいと考えたのである。

しかし、最優的にはロシアも同意し、25日(土)、国連安保理は、全会一致で、シリアに停戦30日を命じることになった。

https://www.aljazeera.com/news/2018/02/security-council-votes-favour-30-day-syria-ceasefire-180224192352205.html

この後、数日間は日に5時間の停戦、人道支援の搬入がはじまったが、まもなく戦闘が再開し、28日現在、救援部隊は東ゴータに入ることができなくなっている。

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-43208705

なお、国連の他にもシリアの内戦を停止させようとする動きがある。ロシア、イラン、トルコの3国による取り組みである。アメリカとロシアが合意の上で停戦地域を設定するといった動きもある。しかし、どれもばらばらで、十分に功を奏しているとはいえない。

国連安保理さえも無力となった今、シリアに関わっている多種多様な国際勢力は、それぞれの考えで動くしかなくなっている。

イスラエルの国家治安研究所でイスラエル軍諜報部幹部のアモス・ヤディン氏は、シリアは停戦どころか、新しい国際紛争のはじまりを迎えたと警告した。その図式とは次の通り。

<シリアをめぐる様々な対立の構図>

1)アメリカ対ロシア


ISとの戦いにおいて、アメリカは反政府勢力の中の自由シリア軍を支援した。2月8日、この自由シリア軍がアサド政権軍に攻撃をされたのを受けて、アメリカ軍が本格的に反撃したところ、ロシア兵を含むシリア軍戦闘員300人が死亡するという事態になった。

ロシアはこれを大きくとりあげなかったが、ISがほぼいなくなった今、それを大義にシリアに介入していたアメリカ軍が、まだ介入するとはいかがなものかと、アメリカの立場が追い込まれる結果になった。

ロシアは現在、シリアにステルス戦闘機を配備し、シリアでの影響力をグレードアップしている。ロシアが、ますますアメリカをシリアから追い出そうとしているとヤディン氏は分析する。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5098764,00.html

では、アメリカはこれからどうするかだが、2月に入って、シリアが化学兵器を再び使用しているとの情報があることから、今度はそれを大義に、アメリカが強行に出てくる可能性がある。そうなれば、ロシアとの対決は避けられないということである。

2)イスラエル対イラン、ロシア

前回お伝えした通り、イスラエルが最も恐れるのは、IS撤退後の空白に、イランが進出してくることである。2月中旬、イスラエルはすでに、シリアのイラン関係拠点を大規模に空爆するという作戦を実施し、大きな打撃を与えた。イスラエルとイランとの初めての直接対決であった。

しかし、その後、イランは、すでに新しい基地を再建していることが、航空写真から明らかになっている。イランのイスラエル打倒への意欲は衰えておらず、イスラエルも防衛に関しては躊躇しないことから、ここから火蓋が切られる可能性は高い。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5136524,00.html

イスラエル軍の予備役ベテラン司令官コビー・マロム氏は、北部で戦争になりかどうかは、アメリカが、イランとの核開発合意の見直しを行う5月が山場になると予想している。

もしアメリカが、5月にイランとの合意を破棄した場合、イランはどう出るのか。戦争になるか、戦争ではなく、アメリカがイランとの新しい交渉に入ることができるのかどうかが鍵になる。それまではとりあえず、イスラエル北部では何もおこらないだろうというのが、マロム氏の予想である。しかし、近い将来、北で戦争になるのは避けられないとイスラエルはみている。

もし戦争になった場合、イスラエルは、犠牲を最小限に抑えるため、できるだけ大規模に、短時間で戦いを終えると予想されている。しかし、その時にはイスラエルとイランの衝突のみに収まらず、ロシアもアメリカも関わって、すさまじい戦いになるだろう。

それこそゴグ・マゴグの戦いのようになってきても不思議はない。。。戦いが早く早く終わるように祈りなさいというキリストの言葉が思い出されるところである。

3)トルコ対アメリカ、ロシア

1月末、トルコは、トルコとシリアの国境近くで、シリア北部アフリーンのクルド人勢力(YPG)への激しい攻撃を始めた。クルド人勢力にはグルプがいろいろあり、YPGは、トルコが宿敵とするPKK関連のクルド人勢力である。

トルコは、シリアとの国境付近に新たなクルド人地域ができることを防ぐためにシリア領内での軍事行動に踏み切ったのであった。いわば、トルコ独自の事情で突然、シリア領内に侵攻した形である。トルコはこれを”オリーブの枝作戦”と呼んででいる。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5073672,00.html

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-43228472

突然のトルコの侵攻に対し、YPGを支援して対処したのは、シリア軍とイラン軍であった。ややこしいことに、トルコとイランはシリア問題で手を組んでいたはずである。それがここでは刃をむけあったということである。

さらに、YPGはアメリカの支援も受けている組織であった。つまり、YPGは、シリア軍とイラン軍、その2者が敵対するアメリカからも助けられる事態になったということである。

さらに、ロシアはというと、トルコの側についたとのことだが、ロシアは、シリアとイランの側にいるはずなのである。要するになにがなんだかわからない状況、とでも言っておこう。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5073672,00.html

トルコのエルドアン大統領は、かつてヨーロッパ、中東全域を支配した大オスマントルコ帝国(1299ー1922年)の復活と領土拡大を目標にしていると言われる。シリア侵攻後の演説でも、新たなトルコ・イスラム帝国を実現するといったメッセージを語っている。

今回のトルコの動きは、この目標に向けた動きであるともみえる。このため、同盟であるはずのイランだけでなく、トルコが所属するNATOやアメリカとの関係をもぎくしゃくさせる結果になったとみられている。

トルコは、終末の大混乱に大きな役割を担っていると思われる国の一つ。目を離せない国の一つである。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/242403

<戦いに備えるイスラエル>

シリアは、今、いつ何時、世界をまきこむ大戦争になっても不思議はない火蓋を山のように抱えている。そのすぐ隣にいるイスラエルは、今年中にも大きな戦争になると予想しており、準備を周到に行っているようである。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/242327
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北部情勢:一段落するも危険度は一段階上 2018.2.17

 2018-02-17
シリアからイラン製のドローンが、イスラエル領内に侵入し、イスラエルが、シリア空軍基地(イラン革命軍拠点)4カ所を含む少なくとも12箇所を空爆。イスラエルのF16戦闘機一機が墜落して、あわや戦争かと、北部に予備役兵が呼び出されて、緊急事態になってから、1週間になる。

今のところ、大きな衝突はなく、北部シリアとの国境周辺は落ち着いている。今回、イスラエルとシリアの間に入って、戦闘をやめさせたのは、シリア領内に自らも軍を駐留させているロシアだった。

戦闘機を撃墜されて、イスラエルが黙っているはずはなく、もしロシアが介入しなければ、イスラエルはもっと攻撃を継続させるつもりで、準備をすすめていたとみられている。

しかし、一応落ち着いてはいるが、次の衝突は時間の問題であり、もし戦闘になれば、かなり深刻なものになると予想されている。アメリカのタイム紙はイスラエル北部の治安は、「一段階上の危険度になった。」と評している。

なお、今回のイスラエルによる攻撃の結果だが、イスラエル軍は、シリア空軍機の約半数は、破壊できたと判断している。また、Times of Israelが、レバノン系メディアの情報として伝えたところによると、イラン革命軍兵士12人が死亡したもよう。

https://www.timesofisrael.com/arab-media-12-iranians-killed-in-israeli-strike-in-syria/

<シリアからのミサイルに200キロの爆弾か>

シリアは、攻撃するイスラエル空軍機に対し、地対空ミサイルを多数、発射。ミサイルは戦闘機を追ってきたため、一発はイスラエル領ヨルダン渓谷のベイトシャン地域に着弾するとみられた。そのため、イスラエル軍は、最新の迎撃ミサイル、アロー3を発動しさせ、着弾前にミサイルを迎撃。破片はヨルダン領内に落下した。

後に、このミサイルの弾頭には200キロもの爆弾が搭載されていたことがわかった。アロー3迎撃ミサイルは、一発300万ドル(3億円以上)もするため、後になって、その必要があったのかとの声も出たが、対応に誤りはなかったとされた。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4938142,00.html

<イスラエル外務省から世界15カ国へ:ゴラン高原に毒ガスが漏洩した場合>

シリアのアサド大統領は、火曜、イスラエルとの将来の衝突について、「イスラエルはもっと驚くことになる。」と脅迫した。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/241892

そのシリアだが、ここ2週間、シリアイドリブ地方で、アサド政権軍が、これまでになく頻回に化学兵器を使用しているとの警告が発せられている。BBCによると、少なくとも6回は化学兵器が使われたとみられ、子供20人が被害にあったとの報告もある。

これを受けて13日、フランスのマクロン大統領が、「化学兵器は明確なレッドラインだ」として、フランスは攻撃(空爆)も辞さないと発表したが、同時に、まだ証拠は得ていないとも言った。

フランスが本当に攻撃する意思があるかないかは別として、シリアの化学兵器の問題は欧米社会が注目するに値するほどになっているということは確かである。

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-43074956

シリアの化学兵器使用疑惑について、国連安保理では、アメリカのヘイリー代表が、先週、シリアへの非難決議を提案したが、ロシアは、これに拒否権を発動した。

こうした中15日水曜、イスラエル外務省は、世界15カ国の大使たちに、それぞれの駐留国に、イスラエルのイラン、シリア、ヒズボラの敵対行為へのイスラエルの厳しい対策を伝えるよう、指示した。

その中で、もし、シリア政府と反政府勢力が、ゴラン高原で毒ガスを用いた場合、イスラエル側に毒ガスが流れてくる可能性を上げ、その場合、イスラエルは強力な行動に出ると示唆した。

イスラエルは、シリア領内にイランがいる限り、常にイスラエルを攻撃する可能性があり、イスラエルはこれには、強力な対策をとらざるをえないとして、国際社会がイランに圧力をかけて、シリアから追放する必要性も強調した。

https://www.timesofisrael.com/israel-said-to-fear-assad-chemical-weapons-spillover-into-golan-heights/

*シリアに化学兵器はないはずでは!?

シリアは、2012年、明確に化学兵器を使用したため、アメリカの軍事攻撃を受ける直前までいったが、そこでロシアが介入し、シリアに化学兵器を放棄を約束させたと主張したため、オバマ大統領は攻撃を中止した。

以後、国連の化学兵器禁止機関、OPCW(ノーベル賞受賞)が設立され、シリアの化学兵器の放棄を監視。すでにシリアには化学兵器はないということになっていた。今、シリアに化学兵器があることは、その責任を負うと言ったロシアんいは認め難いことであろう。

<レバノンとイスラエルの領土問題>

イスラエルは、レバノンにいるヒズボラの侵入に備え、国境にコンクリの防護壁を建設中である。これについて、レバ人のアウン大統領は、「イスラエルはレバノン領内に壁を建設している。」と訴えた。

イスラエルとレバノンの間は、今も正式に合意した国境はない。そのため、ハイファ沖の天然ガス田についても、イスラルとヒズボラはもめている。

今、中東を歴訪しているティラーソン米国務長官は、レバノンにも立ち寄り、アウン大統領や、ハリリ首相と会談。イスラエルとの紛争を起こさないよう、要請した。なお、ティラーソン国務長官がイスラエルに立ち寄る予定はない。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5115407,00.html
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ゴラン高原のドルーズ村での危機 2017.11.7

 2017-11-07
北部情勢が緊張する中、3日、ゴラン高原のドルーズの町マジダル・シャムスと、国境をはさんで向かい側、シリア領内にあるドルーズの町ハダールで自爆テロが発生し、9人が死亡。これに続く銃撃の流れ弾で、イスラエル側、マジダル・シャムスのドルーズ1人が負傷した。

これを受けて、ハダールにいる家族を助けようと、マジダル・シャムスの住民10人ほどが、国境フェンスを超えて、シリア側へ行こうとした。イスラエル軍があわてて連れ戻したという。

ハダールはシリア政府側の拠点のひとつである。そのため、今回、ハダールで、反政府勢力のアル・シャムス(アル・ヌスラ)が自爆テロ、ならびに戦闘を展開したのである。

マジダル・シャムス住民は、これまで、自分はシリア人だと主張し、暴力には出ないまでも、静かにイスラエルに反抗する態度を続けていた。しかし、シリアが内戦となり、信頼していたアサド政権の残虐な行動が報じられる中、複雑な立場におかれるようになっていた。今は、家族を救えるのはイスラエル軍しかない。

マジダル・シャムスの指導者は、「イスラエルにシリアを攻撃してほしいとは要求しない。しかし、IDFは、ヘルモン山から、監視して必要ならシリアへ入らずに攻撃もできることを知っている。ハダールを守ってほしい。」とイスラエルに要請を出した。

これを受けて、イスラエル軍は、「イスラエルはドルーズの人々を守る。」約束する声明を出した。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5038041,00.html

*ハダールとマジダル・シャムス:シャウティング・ヒルの悲劇

ハダールとマジダル・シャムスは、どちらもドルーズの村だが、1967年の六日戦争で、シリアとイスラエルに分断され、行き来ができなくなった。このため、分断された家族は、かつて谷をはさんで叫びあって安否を確かめるしかなくなった。マジダル・シャムスには、「シャウティング・ヒル(叫ぶ丘)」と呼ばれれるスポットがある。この様子は映画のドラマにもなっている。

今は、電話やインターネットで連絡がとれるので叫ぶ必要はない。また必要であれば、第三国で家族が顔を合わせることも可能である。しかし、イスラエルとシリアに国交がないため、今も家族は分断されたままである。

このため、今回、向かい側のハダールで自爆テロと聞き、マジダル・シャムスのドルーズたちは、家族を助けようと、国境を超えてハダールへ助けに行こうとしたのである。

<複雑な立場のイスラエル>

この事件について、イスラエルは若干複雑である。今回、ハダールで自爆テロを決行したゴラン高原の反政府勢力アル・シャムスと、水面下で取引をしているとみられるからである。

イスラエルに隣接するゴラン高原周辺は、シリア政府軍ではなく、反政府勢力アル・シャムスが優勢である。このため、地域の治安を守る為、水面下で、彼らと取引をしたとみられるのである。

その取引とは、シリア人負傷者(戦闘員含む)を一時的に引き取ってイスラエルで治療するかわりに、イスラエルには手出ししないよう約束させたとも言われているのである。*負傷者は、治療が一段楽すればシリアへ返還される。

Times of Israel によると、2013年以来、イスラエルが治療したシリア人は3100人に上るという。同紙は、この10月にもろばに乗せられて、ヘルモン山のイスラエル側へ搬送されてきた負傷者についての記事を出している。

https://www.timesofisrael.com/arriving-on-donkeys-syrian-war-wounded-seek-israeli-help/

今回、イスラエルは、ドルーズを守るために、ハダールの住民を守ると約束したが、それは、アル・シャムスを攻撃するということであり、約束を破るということにもなりうるのである。ドルーズを守るか、イスラエル市民を守るか。難しい状況である。

なお。シリアでは、ISISの拠点ラッカが陥落し、支配域はかなり小さくなったが、今も自爆テロで、難民を75人も殺害するなど、あいかわらず危険な存在である。また、ISISが撤退した空白に、イランが入り込んでいるとの情報もある。

イスラエル軍は、日々、様々な方法を駆使して、情報収集を行っている。エージェントたちが、必要な情報を得ることができるようにと祈る。

https://www.timesofisrael.com/druze-break-into-syria-from-israel-idf-brings-them-back/
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レバノンからISIS追放へ:ヒズボラとレバノン軍がはさみうち 2017.8.14

 2017-08-15
8月3日、ヒズボラは、元アルカイダ系のシリア反政府勢力と停戦合意した後、取引を行い、反政府勢力戦闘員とシリア難民、計約9000人を、シリアとの国境に位置するレバノン領内アーサル地方から出てシリアへ撤退させることに成功した。BBCがのろのろと出て行く難民たちの列の様子を報じている。 

*アンサル地方は、レバノン領の右上部に小さく見える赤いエリア。周囲はアサド政府軍の支配域である。

Syria2.png

Syria.jpg

これと引き換えに、ヒズボラが得たのは、ヒズボラ戦闘員の遺体5体。その後、レバノンで拘束されていたシリア人3人と、ヒズボラ戦闘員3人の交換も行われたという。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5000379,00.html

この直後から、ヒズボラと、シリア政府軍は、反政府勢力がいなくなったレバノン領アンサル地方にいるISIS撃滅へと次なるステップを開始した。ヒズボラ・アサドチームは、シリア側から、アンサル地方に向けて攻撃を始める。

http://www.aljazeera.com/news/2017/07/arsal-hezbollah-jabhat-fateh-al-sham-agree-ceasefire-170727045158437.html

一方、レバノン軍は、アメリカとイギリスの支援を受けて、レバノン側からアンサル地方のISIS撃滅に向けた攻撃する。アメリカとイギリスは、ヒズボラとアサドチームがアンサル地方を支配するようになるのを避けたいのである。

もしヒズボラとアサドチームが、アンサル地方に居座ることになれば、そこにイランが入ってくることを意味する。これはイスラエルも避けたいところである。

<シリアへ帰還する難民たち>

シリア・イラクでISIS撃滅作戦が進んでいるが、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、これまでに約50万人近いのシリア人が、アレッポ、ホムス、ダマスカスなどの自宅へ一時帰宅し始めているという。

50万人のうち、44万人はシリア国内で難民となっていた人々で、31000人が、近隣の国で難民となっていた人々である。帰還といっても、これらの町は、すでに修復しようもないがれきの山となっているため、実際には人間が住める状態ではない。

しかし、それでも、今回、レバノンで難民になっていたシリア人たちはシリアへ戻ることを決めた。それほどレバノンでの難民生活は悲惨だということである。

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-40460126
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