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シリア情勢アップデート:ロシアとアメリカの心変わり!? 2019.2.2

 2019-02-02
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ダマスカス上空 写真出展アルーツ7 January 21st, 2019. (photo credit: STR / AFP)

<イスラエルのイラン攻撃エスカレート>

アメリカがシリアから撤退を表明して以来、イスラエルはシリアのイラン軍拠点への攻撃を強化している。

前イスラエル軍参謀総長のガビ・エイセンコット氏によると、イスラエル軍がシリアのイラン拠点に対して打ち込んだミサイルの数は、2018年だけで、2000発にのぼるという。

今年1月22日未明、イスラエル軍はダマスカス空港のイラン軍関係施設(諜報機関と軍事訓練関係)を攻撃。これにより、21人が死亡した。21人のうち、6人はアサド政権関係者で、15人は外国人。このうち12人がイラン人でっあったと報告されている。

この攻撃で注目されたのは、イスラエルの攻撃が夜でなく日中であり、自ら攻撃したことを認めたことであった。「イスラエルは、シリアにイランの存在を決して受け入れない。」というメッセージが込められているようである。

https://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Report-12-Iranians-killed-in-Israeli-strike-on-Syria-total-rises-to-21-578258

この攻撃に対し、シリアからゴラン高原のイスラエル側へミサイルが打ち込まれたが、迎撃ミサイルが撃墜し、イスラエル側に被害はなかった。イランは、ベングリオン空港への攻撃も示唆したが、今の所、攻撃は実施されていない。

こうした大胆なイスラエルの攻撃が、先の北部ヒズボラのトンネル摘発も含めて、総選挙と無関係ではないと見る声も少なくない。ネタニヤフ首相が、国民に対し、「ネタニヤフ首相にしか国は守れない。」というイメージを国民に提示する結果になっているからである。

しかし、イランへの攻撃があからさまになってきたことで、いつかはイランが反撃の出て、大きな地域戦争に発展するのではないかとの懸念が、リブリン大統領、またアメリカの諜報機関長官からも出始めている。

https://www.jpost.com/Israel-News/Israeli-strikes-on-Iran-in-Syria-may-lead-to-war-US-intelligence-chief-579184

こうした中、ロシアとアメリカが方針転換ともとれる発言をした。Ynetは、これを”好転”になりうるとの味方も提示する。無論、中東のことであるので、その”好転”かも状態も、あっとううまにひっくり返される可能性は十分あるわけだが・・・。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5453518,00.html

1)ロシアはイランの同盟ではない:ロシア副外相

イスラエルのダマスカス空港への攻撃を受け、ロシアのスポークスマンは、「このようなイスラエルの独断的な攻撃は停止すべきだ」と述べたが、そのわずか2日後、ロシアのリャバコブ副外相が、CNNのインタビューに答えて、「ロシアとイランは、同盟国といった種類の関係ではない。イスラエルの治安維持はロシアの最優先事項の一つだ。」と語った。

シリアでイラン人12人もの死者を出したイスラエルの攻撃の直後に、ロシア副外相がこのような発言をしたことに、Ynetの中東エキスパート、ロン・ベン・イシャイ氏は、注目する。

ロシアにとって、今はイスラエルとの関係の方がイランより重要になっているとイシャイ氏は見ている。

ロシアは今はシリアで大きな戦争になってほしくないと考えている。またシリアにおいて、イランに必要以上に勢力を伸ばしてもらいたくないと考えている。ロシアのねらいは、シリアを実質支配し、地中海への安全なアクセスを自らの支配に確保したいのである。

一方、今回の大胆な攻撃で、イスラエルは、だれになにを言われようが、自衛のために、シリア領内のイランへの攻撃はやめないということは明らかになった。ならば、イスラエルの行動を黙認し、イスラエルによって、イランを抑える方がロシアにとっては有益ということになる。

逆にイランにとっては、ロシアは失いえない存在。イランが、まだイスラエルに反撃に出て来ないのは、ロシアを気遣っている可能性もある。

こうしてみると、イスラエルが、今回、大胆に日中、イラン施設を攻撃したことで、この新しいロシア、イランの抑制システムが作り上げられたとも考えられる。

こうした計算以外にも、イスラエルは今、IT産業の最先端を行く国として注目されている。今年1月27日から3日間、テルアビブで行われたサイバーテック・カンファレンスには、世界70カ国から数千人が参加した。農業・水技術についても、イスラエルは注目される存在である。

この点からも、ロシアがイランより、イスラエルを重要視したとしても不思議はないだろう。

https://www.israeldefense.co.il/en/node/37314

しかし、1月末の攻撃があまりにも大胆であったことから、イスラエルのリブリン大統領や、アメリカ諜報部長官も、「今はイランもイスラエルとの衝突避けているが、イラン人に犠牲者が続けば、イランが反撃に転じて、中東での大きな戦争に発展する可能性はある。」と懸念を表明している。

https://www.jpost.com/Israel-News/Israeli-strikes-on-Iran-in-Syria-may-lead-to-war-US-intelligence-chief-579184

2)アメリカが、シリア南部に駐留を継続か

シリア北部、クルド人勢力地域に駐留していたアメリカ軍は、すでに撤退を開始している。しかし、1月25日の報道によると、シリア南部、シリアとヨルダン、イラク3国の国境付近、アル・タンフに駐留するアメリカ軍については撤退を最小限に留める可能性があるという。

この地域は、イランから地中海に続く経路にあり、米軍が駐留することで、イランが地中海へのアクセスをシーア派で固めることを妨害する可能性を残すことになる。もしこれが事実ならだが、いうまでもなく、イスラエルにとっては朗報である。

https://foreignpolicy.com/2019/01/25/us-considering-plan-to-stay-in-remote-syrian-base-to-counter-iran-tanf-pentagon-military-trump/

アメリカ軍が撤退を開始したことから、アメリカの呼びかけで、IS打倒の友軍に参加してきた国々は、2月6日、今後どうするかの話し合いをするという。

フランスは元シリア支配国(20世紀)であったことからも、今後も残留するとみられるが、イギリスは、ブレキシット(EU撤退)で忙しいこともあり、シリアから撤退するとみられている。

https://www.jpost.com/Middle-East/US-Syria-policy-Get-others-to-pick-up-the-slack-as-it-leaves-579337

<40回目のイラン革命記念日>

こうした中、2月1日、イランの首都テヘランでは、1979年のイラン革命から今年40年目を迎え、10日間の記念行事が始まった。2月1日は、前のパーレビ国王(アメリカ傀儡)が、国外へ逃亡した後、代わりにパリに亡命していたホメイニ師が、イランに帰国到着した日である。

ホメイニ師は、2月11日に政権を掌握。イランは、イラン・イスラム共和国となり、シーア派イスラム教指導者が支配する国となった。これをイラン革命という。

今年2月1日は、この日から40年目ということで、ホメイニ師の廟には数千人が集まり、いつものスローガン、「アメリカとイスラエルに死を!」と叫んだ。

https://www.i24news.tv/en/news/international/middle-east/194413-190201-chanting-death-to-america-and-israel-iran-celebrates-40-years-of-revolution

しかし、今、イランは、多くの国と敵対し孤立するとともに、物価も上昇、水不足で飢饉が続き、土地に穴があく現象が出るなどの事態になり、国の状態は、革命前より悪くなっている。この40年で、市民の革命に対する態度は、変わってきたとアルジャジーラは伝えている。

https://www.aljazeera.com/news/2019/01/40-years-khomeini-return-exile-iran-revolution-190130090622584.html
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シリアから米軍撤退開始 2019.1.13

 2019-01-13
11日金曜、シリア北東部に駐留している米軍報道官によると、米軍が撤退を開始した。しかし、現時点においては、軍用機材の撤収だけで、部隊自体はまだ撤退を開始していない。

この後の撤退に関するスケジュールは発表されていない。トランプ大統領は当初、30日以内の早急な撤退と言っていたが、イスラエルやクルド人はじめ様々な方向から、懸念が噴出したため、数ヶ月から半年かけてゆっくりとした撤退になるもようである。

<シリアでの米軍の働き:未完了>

アメリカ軍は、2014年にISを相当するために駐留を開始したが、最前線での戦闘には参加せず、クルド勢力やシリア民主軍など地元勢力の訓練を担当してきた。

しかし、現地米軍ダンフォード将軍が撤退発表の2週間前に語ったところによると、効果的にISと戦うには、3万5000から4万の軍が必要になると推測されるところ、米軍がこれまでに訓練できたのはこの20%に過ぎないという。

また、米軍駐留地域に拘束されているISの外国人戦闘員ら数百人の扱いも明らかでない。この数百人らに逃げられた場合、再び結束して危険な状況になることは大いに考えられる。外国から来たISの妻たちも祖国から追放され、帰国する道がない。

イラクのユーフラテス東側にいるアメリカ軍5200人は、今の所、撤退になる様子はない。しかし、最終的には撤退するとのトランプ大統領の発言なので、いつまた突然、撤退をはじめるかもわからない。

世界の懸念に対し、先週から、ボルトン大統領補佐官、ポンペイオ国務長官が、中東を歴訪し(以下に詳細)、アメリカは、IS掃討から離脱するのではなく、今後も相当に向けた努力は続け、掃討を完了すること、同盟のクルド人は保護すること、またシリア領内のイラン軍は、最後の一人まで追放するとの方針を強調している。

しかし、これがどう実現されるのかは、明確でない。現時点ではアメリカが、計画の全貌を明らかにしていないだけと思われるが、見えないところできっちりと計算して動いてくれていることを願うばかりである。

https://www.timesofisrael.com/us-starts-withdrawing-supplies-but-not-troops-from-syria/

<イスラエル:ダマスカス空港を攻撃か>

シリア国営放送によると11日夜11:15、イスラエル空軍機が、ダマスカス空港の軍用倉庫をミサイル攻撃。シリア軍は、そのほとんどを迎撃したが、8箇所に被害を受けたと報じた。負傷者はなしとのこと。

また同時に、ダマスカスから南部のアル・キスワのヒズボラのミサイル庫も攻撃されたと伝えられている。イスラエルの攻撃はガリラヤ方面と、レバノン空域からであったとシリア国営放送は伝えている。

イスラエルは、このような攻撃を12月25日にも行い、シリア軍兵士3人が死亡している。イスラエル軍高官によると、こうした、イラン、ヒズボラ関連の武器庫などへの攻撃は、過去2年で200回以上に上る。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5445287,00.html

<石のひとりごと>

イスラエルにとって、シリアからの米軍撤退は、大きな脅威である。アサド政権の背後にいるロシアとイランがトルコとともにイスラエルに立ち向かってくる可能性につながるからである。

しかし、イスラエルは、これまでアメリカの存在に感謝しつつも、100%依存していたわけではない。したがって、このような日が来ても、あわてることはないし、トランプ大統領をうらむこともない。

イスラエルは、最終的に、自分を守るのは自分しかない、ということをホロコーストの非常な痛みの中で学んだ。それぞれの国は、それぞれの国益でしか動かないことが当然なのである。

日本にしても、アメリカが、いつまでも日本を中国や北朝鮮から守ってくれると考えてはならないということである。
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シリア難民の悲惨:極寒の中で洪水 2019.1.13

 2019-01-13
先週、レバノンからイスラエルにかけて5日間、冬の嵐が到来した。これにより、リタニ川の支流が氾濫して、シリア人少女(8)が死亡。

レバノンの難民キャンプ361箇所(11300人)で洪水となり、テント内部にまで水が入って悲惨な状態になった。一部では雪も降り、厳しい寒さの中、なにもかもが濡れて、難民たちは夜も寝られなくなっている。

ベッカー谷では、シリア難民600人が避難所からの避難を余儀なくされた。

UNHCRビデオ:https://www.unhcr.org/news/latest/2019/1/5c386d6d4/storm-flooding-brings-misery-syrian-refugees-lebanon.html

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は雨の中、難民たちにマットレスや毛布を配布している。

https://www.unhcr.org/news/videos/2019/1/5c3715214.html

*レバノンには、この7年でシリア難民が100万人以上になっているが、そのほとんどはまだ難民キャンプから出られないままである。

<イスラエルではガリラヤ湖水位20センチ上昇>

同じ嵐は、イスラエルでは恵みの雨となった。北部レバノンとの国境、シリア難民らが避難を余儀なくされたベッカー谷のあるヘルモン山では、記録的な寒さから大雪となり、積雪量は1メートル近くにもなった。イスラエル全国で雪化粧が記録されている。

この大雨により、ガリラヤ湖の水位は19.5センチ上昇している。イスラエルはここ5年、干ばつにあるが、ひとまず解決とも言われている。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5443714,00.html

<石のひとりごと>

レバノンとイスラエルで大雪、大雨となり、8歳のシリア難民少女が死亡。人々は寒さに凍えながら悲惨きわまる状態に置かれている。その同じ頃、日本では10歳の女の子が史上最年少で将棋のプロになったということが、トップニュースだった。

ちょうど筆者もそのころは帰国していて、大阪のデパ地下にいたころなのであるが、日本のあまりの豊かさに圧倒されてしまった。物は超・あふれるているだけでなく、そのどれもが、素晴らしいものばかり。デパ地下の食べ物、特にケーキの華やかさには、脱帽であった。

まことに、まことに人生は不平等である。今平和にも物にも恵まれている私たちは、恐れをもって感謝すると同時に、世界には、悲惨な中で生きることを余儀なくされている人々が山のようにいることを忘れてはならないと思った。
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米軍シリア撤退騒動:その後 2019.1.1

 2019-01-01
19日にトランプ大統領が、独断とも言われる米軍のシリア撤退を発表してから、中東ではすでに様々な動きが始まっている。

マティス国防相を失うなど、国内与野党双方から批判を受けたトランプ大統領は、急遽イラクの米軍(5200人)を電撃訪問し、「イラクからは、今は撤退しない」とのメッセージを発した。しかし、公約もあり、いずれは撤退するとも言っている。

以下は、トランプ大統領の爆弾発言後に起こってきたことである。

1)クルド人勢力支配域にせまるトルコ軍とこれに対抗するシリア軍

トランプ大統領の米軍撤退表明の直後、トルコのエルドアン大統領は、残留ISはトルコが撃滅するといい、クルド人勢力への攻撃は保留にするといいながら、軍隊をシリア北部のクルド人勢力支配域(ロジャバ)のマンビジ周辺に集結させた。

https://www.bbc.com/news/world-middle-east-46701095

マンビジは、2016年にトルコが侵攻し、戦場になった経過がある(ユーフラテスの盾作戦)。以来、アメリカ軍が駐留しているが、これが撤退すると、トルコが再び侵攻すると懸念されている。このため、すでにクルド人勢力の要請により、シリア軍が、マンビジに入ったとの情報がある。

*シリアにおけるトルコとクルド人勢力の対立のこれまで

トルコは、2016年、ロジャバ(クルド支配域)の街、マンビジ(シリア北部のトルコ国境から30キロ)を攻撃(ユーフラテスの盾作戦)、続いて2018年1月から3月にかけて、ロジャバの町アフリンに侵攻し(オリーブの枝作戦)、クルド人3000人以上を殺戮している。この時、クルド人勢力(YPG)は、シリア軍に支援を要請し、結果、アフリンを含むロジャバの一部をシリア政府に引き渡した。

http://www.afpbb.com/articles/-/3160246?page=2

つまり、アメリカが撤退することで、トルコがクルド人勢力を攻撃した場合、結果的に土地はシリア(アサド政権)の支配下に入ることにつながっていく。そのシリアは、いまやロシアのいいなりなので、結局アメリカが中東から姿を消し、そのあとをロシアが支配するということである。

言い換えれば、トルコとロシアは、実質的には協力関係にあるということである。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5437124,00.html

29日、トルコとロシアの国防相は、モスクワで会談し、主にシリアから米軍が撤退したあとの協力について協議、合意した。

https://www.washingtonpost.com/world/middle_east/russian-and-turkish-ministers-meet-for-syria-talks/2018/12/29/51ef3a30-0b6d-11e9-8942-0ef442e59094_story.html?utm_term=.87a955316645

2)湾岸アラブ諸国がシリア進出!?

シリア内戦が終わり、アサド政権が国を回復しつつあることを受けて、湾岸諸国がシリアとの国交を回復し始めている。筆頭は、アラブ首長国連邦。大使館をダマスカスで再開した。

次にバハレーンがこれに続くみこみとなっている。湾岸諸国は、内戦の激化を受けて、シリア(アサド政権)をアラブ同盟から除名していたが、シリアでのアラブの使命をはたす必要性があるとしている。(ペルシャ人のイランに支配させてはならないという意味)

しかし、シリアですでに、イランがすでの勢力を伸ばしていることを思えば、これは、かなり危険な動きかもしれない。イエメンの二の舞にならないようにと思う。

*実はトランプ大統領の作戦?

シリアからの米軍撤退は、国内外から、危険だとして批判を受け、アメリカが権威を信頼を危ぶまれる結果となった。これを受けて、一時、市場も混乱し、世界にも影響を及ぼした。

しかし、この動きが、逆に肯定的な結果を生み出す可能性もじわじわ見えてきているという分析もある。イスラエルの中東専門家、モルデカイ・ケダル博士は、アメリカが撤退することでアメリカは、今後、国連でのイスラエルバックアップを強化、軍事支援も強化するとみている。

ケダル博士は、アメリカは、今、IS撲滅からイラン対策に、焦点をシフトさせたと説明する。この目標のために、これまでのアサド政権排斥から一転、軍を撤退させることで、事実上、アサド政権を容認する形になっていると指摘する。

アサド大統領は、化学兵器を使用した疑いも濃く、国民の多くを死においやった指導者としては認め難い人物ではある。しかし、実質的には、シリアが正式な国に回復することで、イランやロシアの進出に釘をさす効果も期待できるかもしれない。

今湾岸アラブ諸国が、シリアに戻る動きが始まっていることも、これをバックアップすることになるだろう。しかし、サウジアラビアがどう出てくるのかが鍵になると思われるので、今後注目される点である。

http://www.israelnationalnews.com/Articles/Article.aspx/23235

4)米軍なしでも恐れなし:イスラエルの方針は変わらず

北部のアメリカ軍、またクルド人勢力がいなくなるということは、イスラエルにとっては、ユーフラテス川の東側にあった防波堤を失うということである。しかし、トランプ大統領は、「イスラエルには毎年45億ドルの軍事支援を送っている。単独でも大丈夫だ。」と言った。

ネタニヤフ首相は、「アメリカが撤退しても、何も変わらない。イスラエルはシリアにイランが定着することを受け入れない。攻撃は続ける。」と強調した。

https://www.timesofisrael.com/netanyahu-vows-to-keep-hitting-iran-in-syria-we-stand-firmly-on-our-red-lines/

トランプ発言の5日後、イスラエルのハデラ近郊から、突然、迎撃ミサイルが発動した。その後、シリア国営放送が、イスラエルがダマスカス近郊の軍用倉庫を攻撃したことへの報復だと発表した。

シリアによると、イスラエルの攻撃の少し前に、イランからの輸送機が到着していたという。イスラエルは、これに対応して何らかの攻撃を行ったとみられる。後にイスラエルもこの攻撃を認める声明を出した。

https://www.timesofisrael.com/syria-says-air-defenses-deployed-against-enemy-targets-near-damascus/

*イランからのヒズボラへの武器空輸増えている?

エルサレムポストによると、30日、イランの747旅客機が、朝8時にテヘランを飛び立ち、10:30にダマスカスに到着。同日5時には、テヘランへ戻ったと伝えた。ヒズボラへの武器を搬送した疑いがある。

同じようなフライトが12月だけでも数回あり、シリアの監視団体によると、イスラエルの攻撃と時期が合致しているという。

今、イランは、様々な方法で、シリアに進出すると同時に、ヒズボラへの支援も継続しており、イスラエルはそれに注意深く対応しているとみられる。

https://www.jpost.com/Middle-East/DEVELOPING-Suspicious-Iranian-cargo-plane-leaves-Tehran-575797

ネタニヤフ首相は、トランプ大統領のシリア撤退発表から、イランの動きが活発化しているとして、トランプ大統領に、米軍撤退をするなら、段階を追ってゆっくりやってほしいと要請。トランプ大統領はこれに合意したとの情報が入っている。

https://www.jpost.com/Breaking-News/Diplomatic-source-Operation-against-Hezbollah-prevented-war-in-Lebanon-575945

<石のひとりごと>

イスラエルのケダル博士も指摘しているが、シリアからの米軍撤退は、駐留しているアメリカ人兵士とその家族にとっては、きわめて朗報であろう。

「アメリカは、中東では嫌われているのに、なぜ息子たちの命を捧げなければならないのか。」というトランプ大統領の言い分も、当然といえば当然である。

しかし、アメリカ軍の撤退後、イスラエルが心底頼れるのは、いよいよその神、主だけになる。・・・が、聖書によると、それこそがイスラエルの強さなのである。実際、イスラエルはこれまでからも不思議に強かった。イスラエルは、確かに侮れない国である。

トランプ大統領は、まことに破天荒で、まことに危なっかしいのではあるが、本人もあずかり知らないところでどうも、主に動かされているところがある。米軍のシリアからの撤退からも、なんらかの予想もしない結果が出てくるかもしれない。注目していきたい。
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米:シリアから撤退へ:イスラエルへの影響 2018.12.23

 2018-12-23
アメリカ軍のシリアからの撤退、マティス国防長官の辞任については、日本でも大きくとりあげられている。ここでは、この件の解説とともに、これからどうなるのか、イスラエルはどう反応しているのかを報告する。

<トランプ大統領:突然の独断Uターン>

19日、トランプ大統領は、突然、シリアに駐留させているアメリカ軍(約2000人)を、できるだけ早く撤退させると発表した。

その理由として、「目的であったIS撃退はほぼ完了した。アメリカは相当な打撃を与えた。若者たちを帰国させる時だ。」との見解をあげた。

また、中東での駐留について、「アメリカは、大切な命と大金を使っても何も得られない。当事者たちに感謝されることもない。アメリカは、中東の警察になるべきだろうか。永遠に駐留を続けるべきなのか。」と、撤退の理由を述べた。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5430067,00.html

トランプ大統領は、シリアに続いて、アフガニスタンに駐留している米軍(14000人)の半分にも撤退を命じた。

https://edition.cnn.com/2018/12/20/politics/afghanistan-withdrawal/index.html

確かに、トランプ大統領は、アメリカ軍を中東から撤退させることを公約にあげていたが、その後の情勢から、アフガニスタンからもシリアからも当分、撤退はなく、駐留は続けるとの流れになっていた。世界はこのアメリカの突然のUターンにただ驚くばかりである。

<自国補佐官らを無視してトルコに合意してシリア撤退を決めたトランプ大統領>

驚いているのは世界だけではない。アメリカの閣僚も議会も皆が驚いている。この決断は、撤退発表の数日前の14日、大統領がトルコのエルドアン大統領との電話会談中に独断で決めた可能性が高まっている。

現在、トルコは、アメリカが支援しているシリア北部のクルド人勢力支配域への攻撃を脅迫している。このままであれば、クルド勢力だけでなく、そこに駐留しているアメリカ軍、NATO軍にも被害が及び、事が大きくなる可能性があった。

このため、アメリカのポンペイオ国務長官と、トルコのカウソグル国務長官が、両国の大統領がこの件について、電話で話し合う方向で準備を進め、14日にこれが実施された。

電話会談に先立ち、ポンペイオ米国務長官は、トランプ大統領に、トルコがクルド勢力地域へ攻め込まないよう説得するようその要旨を伝えていたという。電話会談には、ボルトン大統領補佐官も参加した。

エルドアン大統領は、トランプ大統領に、「アメリカ軍のシリア攻撃は、ISの撃滅が目的だったはず。ISは、今や全盛期の1%にまで縮小した。なぜアメリカは今もまだ駐留を続けているのか。」と詰め寄った。

これを受けて、トランプ大統領は、ボルトン補佐官に、「それもそうである。なぜアメリカ軍はいまだに駐留を続けているのか。」と問うた。この時、ボルトン補佐官は、ISがもはや1%しか残っていないということには合意せざるを得なかった。

「とはいえ、ISはまだ完全には終わっていない。」とボルトン氏は強調したが、トランプ大統領は、もはやこれに動じず、「OK。ではアメリカは、できるだけ早く撤退する。」とエルドアン大統領に言い放った。

電話会談直後から、ボルトン補佐官、マティス国防長官、ポンペイオ国務長官は、3人頭をよせて、いかに大統領の発言を撤回させるか、撤退を遅らせるかを考えた。最終的には、第三の中間的な妥協案を大統領に提示しようとした。

しかし、週明け16日月曜には、すでに米軍参謀総長が、シリアからの撤退の指令を受けて、現地部隊に連絡。撤退準備が進んでいることがわかり、もはや打つ手なしということになったようである。

アメリカ軍のシリアからの撤退に関する公式発表は、当初は報道官を通じて17日に予定されていた。しかし、ペンタゴンでもまだ準備不足である上、閣僚や議会など内部にも十分連絡がいきわたっていなかったため、水曜19日に持ち越された。

https://www.timesofisrael.com/trump-decided-on-syria-pullout-during-phone-call-with-erdogan-report/

あまりにも急な展開であったため、発表の時点で、大統領自身の共和党内部にすら、まだ十分知らされていなかったようで、対抗勢力の民主党はいうまでもなく、共和党内部からも、懸念と批判の声が相次いでいる。

正式な発表ではないが、現地シリアにいる米軍司令官からも、シリアから今、撤退することへの影響を懸念する声が出ているという。

*シリア南部でISと戦闘

懸念を裏付けるかのように、トランプ発言から2日後の21日、シリア南部、ユーフラテス川東側では、アメリカが支援しているシリア民主軍(反政府勢力)がISの襲撃を受けた。

これを受けて、アメリカ軍率いる連合軍が、ISにむけて空爆を行った。(シリア民主軍報道)アメリカの撤退後、シリアで、ISが復活してくる可能性も懸念されている。

https://www.jpost.com/Middle-East/ISIS-attacks-positions-held-by-the-US-backed-Syrian-Democratic-Forces-in-southeastern-Syria-575024

<マティス国防長官退任>

さらに大きな激震は、22日、マティス国防長官(68)が、自ら、来年2月末で退任すると発表したことである。

マティス国防長官は、ISはまだ撃滅しておらず、その再生を抑える必要があると考えている。また、直接名指しはしないものの、「同盟国への敬意と強力な関係維持なくして国益はない。」として、シリアからの撤退に同意できなかったことが、退官への大きな引き金になったことを示唆した。

しかし、マティス国防長官は、湾岸戦争やイラク戦争において、現地で指揮をとった超ベテランの軍人で、得に中東事情については、相当な知識も経験も持つ人物である。またマティス国防長官は、現政権では、唯一トランプ大統領にブレーキをかけられる人物とも目されていた。

このため、今後、なにをしでかすか予測不能のトランプ大統領が暴走するのではないかも懸念されている。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/256522

なお、退官を発表したことにより、マティス国防長官は、来週予定されていたイスラエル訪問をキャンセルした。

*アメリカ政府一部閉鎖

このややこしい時に22日、アメリカは、トランプ大統領のメキシコ国境の壁建築の予算をめぐって、新暫定予算案で合意できず、政府機関の一部閉鎖という事態になった。今年3回目である。

これは、新予算案が通ってないため、22日以降、政府からの出金が止まるということであり、公的事業の一部が麻痺する、または関連労働者が無給に陥ることを意味する。

https://www.bbc.com/news/world-us-canada-46657393

クリスマス前に、アメリカは、なかなかの混乱状態のようである。

<米軍シリア撤退後どうなる!?:ロシア、イラン、トルコの進出>

シリアから撤退しても、アメリカ軍は、イラクに5000人、クウェートに1万5000人、バハレーン、アラブ首長国連邦、クエート、オマーン、ヨルダンにも部隊を置いている。なんといってもやはり、今はまだ、アメリカの力は強大だ。

それにトランプ大統領は、予測不能なので、今とはまた全然違う方向に方向転換する場合も十分ありうる。中東情勢のこれからを予測するのは、専門家でも不可能と言われている。

しかし、シリアでは、シーア派、スンニ派がぶつかり合い、ありとあらゆる勢力が入り込んでいる。この地域で、影響力を持つ者が、最終的には、中東全体での覇者になっていく可能性は高い。

今、シリアからアメリカが撤退するということは、アメリカはそこでの支配力を放棄するということでもある。その後は、ロシアとその友好国イラン、トルコが支配しても良いと言っているのと同じである。当然ながら、ロシアは、アメリカのシリアからの撤退を歓迎すると発表した。

アメリカは、まだいつシリアから撤退するのか、その具体的なタイムテーブルは発表していないが、もし本当に撤退した場合、今後、考えられる動きは以下の通りである。

1)トルコ(背後にロシア)がクルド人地区(シリア東北部)を攻撃へ

先週までトルコは、シリア東部のクルド人地域に攻め込む勢いであった。このためにエルドアン大統領とトランプ大統領の電話会談が行われたのであった。

https://www.nytimes.com/2018/12/21/world/middleeast/turkey-military-syria.html

エルドアン大統領は21日、トランプ大統領との電話会談により、クルド勢力、並びに同地域に残っているISへの攻撃は延期すると表明した。ただし、攻撃を中止したわけではなく、必ず将来、攻撃する強調している。

この取引の背後には、武器の売買がからんでいるとみられる。

最近、アメリカが問題視していたのは、トルコがアメリカからF35ステルス戦闘機を購入する一方で、ロシアからは、S400迎撃ミサイルの購入を決めたことである。

S400とF35戦闘機の双方がトルコに入ることにより、ロシアが、F35をS400で撃墜する方法を見つけ出してしまうかもしれない。このため、アメリカはトルコにF35を売却することを渋ったり、大量のパトリオット迎撃ミサイルを販売することで、ロシアのS400の購入をキャンセルするよう要請したりしていた。

しかし、F35は予定通り、トルコに売却が決まり、Press TVによると、結局S400は、ロシアからトルコへ搬入されるもようである。

また、クルド人勢力の情報によると、ロシアが、ユーフラテス川の東側、つまり、クルド人勢力を早く制圧するよう、トルコに圧力をかけているとのことである。

ロシアは今、クルド人も含め、シリアの反政府勢力を一つにまとめて、アサド政権とともに、シリア内戦の終焉にむけて、外交的プロセスに臨むという計画を進めているからである。

アメリカ撤退後、いずれ、クルド人勢力は、ロシアとイランに対し、単独で戦うことになるだろう。結果的に、クルド人たちが、アサド政権とのなんらかの合意に、サインさせられる可能性もある。

*トルコとロシアの関係

シリアでのIS攻撃において、トルコは、しぶしぶではあったが、アメリカ主導の有志軍に参加した。しかし、アメリカが、ISと戦うクルド人勢力を支援するようになると、トルコのアメリカ離れが始まった。

ここ数年、トルコは、アメリカから離れてロシア、イランの陣営に加わり、3国でシリア内戦を収めようとする動きになっている。

2)ロシア、イラン、トルコがシリア内戦集結に向けて結束へ

アメリカがシリアからの撤退を発表したころ、ロシア、イラン、トルコの3国は、国連の下、ジュネーブでシリア内戦の集結に関する会議を行った。

この3国がこうした会議を開くのは、これが3回目になる。3国が計画しているのは、アサド大統領と反政府勢力が同じテーブルについて、シリア再建を議論する会議である。新しい憲法も提案される予定である。

この会議に参加するのは、シリア政府代表50人、反政府勢力代表50人と、自立団体代表50人となっているが、現在、この3つ目のグループの50人を誰にするかで合意できず、今もなお和平会議にこぎつけられない状況である。

また、シリア和平会議を開催する前に、先のクルド人問題の他、シリア北部のイドリブ問題を解決しなければならない。

イドリブには、シリアの反政府勢力の生き残りたち10万から15万人がいる。この勢力は、アサド大統領を絶対に認めないため、アサド大統領を交えた和平交渉のテーブルにつくことはない。

イドリブについては、トルコとの国境に近いこともあり、こちらの方も、トルコがこれを制圧することをロシアは求めているとみられる。

しかし、ロシアとイランが、完全にアサド大統領支援であるのに対し、トルコは、今も一応、反政府勢力支援派であるため、トルコが、イドリブを攻撃することは容易ではない。

もし、トルコが、イドリブ制圧に動かなかった場合、再びロシアが介入し、多大な犠牲者や難民が発生することも、懸念されている。

https://www.jpost.com/Middle-East/Russia-Turkey-Iran-team-up-on-Syria-talks-as-US-weighs-pulling-troops-574799

こうした流れが予測される中でのアメリカの撤退である。アメリカは、もはやシリア内戦の集結には、なんの影響も及ぼせない、というよりは、それを放棄したということである。

中東において、アメリカの権威も信頼も失墜することはさけられないだろう。

3)イランの進出拡大へ

今回のアメリカの撤退で、最も笑っているのはイランではないかと言われている。

アメリカが撤退することで、イランは、シリア領内で、動きがとりやすくなる。また、イランからイラク、シリア、レバノンを通る地中海への回廊を妨害するものがなくなり、いよいよイスラエルを攻撃しやすい形ができあがる。

また、ロシアの進出で、アサド政権存続でシリア内戦が集結すれば、アメリカや宿敵サウジアラビアの権威は失墜する。これは、イランにとっては、非常に有利な展開と言えるだろう。

https://www.nytimes.com/2018/12/20/world/middleeast/syria-us-withdrawal-iran.html

しかし、サウジアラビアとアメリカは、ムハンマド皇太子のカショギ記者殺害スキャンダルで、すでに十分信頼を落としていたわけである。

イラン外相は22日、「アメリカはシリアでの使命を達成したと言っているが、介入したこと自体、最初からまちがっていたのだ。アメリカの存在こそが不安定の原因だった。」と語った。

https://www.jpost.com/Middle-East/Iran-US-presence-in-Syrian-civil-war-a-mistake-from-the-start-575105

イランは、22日、ペルシャ湾への入り口で、特に問題になりやすいホルムズ海峡において、イラン革命軍の軍事演習を行った。アメリカの空母がペルシャ湾に入った翌日である。訓練をしているイラン艦船の向こうにアメリカの空母が見えている。

イランにとっては毎年恒例の訓練であるとはいえ、非常にきわどく、挑戦的であるといえる。

https://www.timesofisrael.com/irans-revolutionary-guard-launches-drill-near-strait-of-hormuz/

トランプ大統領のシリアからの軍撤退発言以降、今の中東においては、アメリカ陣営に対し、ロシア陣営が、有利に立つ流れに変わりつつあるのかもしれない。

<イスラエルの反応>

アメリカ軍がシリアから撤退し、中東での覇権を放棄することは、アメリカを唯一の同盟国とするイスラエルには大問題である。米軍のシリアからの撤退は、アメリカの閣僚よりも先にイスラエルへ一報が入っていたとの報道もある。

イスラエルにとって、最も重要な関心事は、イランである。アメリカがイランから撤退することで、シリアでの最大勢力はロシアになるが、そのロシアは、前回お伝えしたように、イスラエルとは、距離を置き始めると同時に、イランに手を貸す動きに出始めている。

ネタニヤフ首相は、トランプ大統領のシリアからの撤退発表の後、「イスラエルは、シリアのイラン攻撃を強化する」と発表。しかし、同時に、それがアメリカのバックアップで行われることを強調した。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/256483

<石のひとりごと:ユーフラテス川の向こうから来る王たち>

突然だが、世の終わりに起こることを預言する聖書には次にように書かれている。

第六の御使いが鉢を大ユーフラテス川にぶちまけた。すると、水は、日の出るほう(東側)から来る王たちに道を備えるために枯れてしまった。・・・彼らは全世界の王たちのところに出て行く。万物の支配者である神の大いなる日に備えて、彼らを集めるためである。(黙示録17:12−14)

今、イスラエルの唯一の同盟国、アメリカがシリアのクルド人領域から撤退しようとしているが、それは、ユーフラテス川の東側にあたる。

聖書によると、やがてユースラテス川の東から王たちが一斉に、イスラエルに攻め込むことになるが、その王の中にイラク、イラン、ロシアが含まれるのだろう。

また、アメリカが、もはや同盟国を大事にしなくなったとすれば、イデオロギー的にはロシア、イラン陣営に近い、中国や北朝鮮もまた、ユーフラテス川の東から来る王たちに含まれるのかもしれない。アメリカという障害物がいなくなれば、そこを通過することも容易になるだろう。終わりの時の様相が、また一つ見えてくるようである。

また、アメリカのこうした自己最優先の姿勢については、日本もまた他人事ではない。これまで北朝鮮、中国の問題に関して、マティス国防長官が、日本、韓国を含む同盟国との連携を重視し、トランプ大統領の今回のような突然の米軍撤退を抑えていたとも考えられる。

マティス国防長官退官の後、トランプ大統領が、もはや日本を守る義務はないとして、さっさと軍を撤退させるかもしれない。そうなると、日本は自力で北朝鮮や中国に立ち向かわなければならなくなる。

これをみこしてか、日本の軍事予算は来年19年度は過去最大の5兆2600億円。アメリカから、F35最新鋭ステルス戦闘機(垂直離発着)を最大100機を前倒し導入予定(1兆円以上)で、空母「いずも」を改修して、配備する予定とのこと。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018120500594&g=pol

日本では、国民が、憲法9条改正に反発する傾向にあるが、世界情勢も日本政府自体の動きも、すでに、まったくかけ離れたところにいると思ったほうがよさそうである。
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急変する北部情勢:ロシアによるシリア対空防衛完成か 2018.12.5

 2018-12-05
11月30日、シリア政府メディアSANAは、ダマスカス南部の町アル・キスワが、イスラエルからのミサイル攻撃を受けたため反撃し、ミサイル4発とイスラエルの戦闘機を撃墜したと発表した。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5417116,00.html

アル・キスワは、イスラエルとの国境からわずか50キロ地点で、イランの軍事拠点があるとみられている。5月にもイスラエルによるとみられる攻撃で、イラン人8人とシリア人7人の計15人が死亡した。

さらに、その半年前にも同じ地域が攻撃されている。したがって、今回もイスラエルによる攻撃であった可能性は高い。しかし、イスラエル軍報道官は、これを否定。戦闘機の撃墜も否定した。

<ロシア:シリアの対空防衛完成か?>

シリアのイスラエル戦闘機を撃墜したという発表が本当なのかどうかは、知る由もないが、ロシアがいよいよシリアに地対空ミサイルS300, S400の配備を完了したのではないかとの見方があり、懸念が広がっている。

https://www.presstv.com/Detail/2018/12/02/581738/Russia-Syria-air-defense

シリアの地対空攻撃能力がたかまっていることは、9月に、ラタキアでヒズボラへの武器移送を阻止しようとして攻撃しに来たイスラエル軍機の迎撃を試みた時に、あやまってロシア機を撃墜したことからも懸念されていた。

この時、ロシア人乗組員15人が死亡したが、プーチン大統領は、「これは事故であった」と鶴の一声を発し、大きな衝突を避けた。その代わりに、堂々と、シリアにS300の配備を開始したとの声明を出したのであった。

それから2ヶ月。もし、今、ロシアが、シリアにS300の配備を終えたとしたら、今後、イスラエルが、イランからヒズボラへの武器移送を事前に攻撃したり、シリア領内でのイランの軍事行動を察して先手を打ったり、シリアの核兵器開発が疑われる場合の先制攻撃は非常に難しくなる。

ロシアがシリアの地対空防衛を強化するのは、中東でのアメリカの進出を食い止めるためである。これまでのところ、ロシアは、イスラエルについては、まだ協力関係を維持しているようだが、これは、シリアでイランが強くなりすぎないようにするためと考えられている。

<不気味なロシアの進出:ウクライナ危機再び>

シリアで存在感を増し加えているロシアだが、ウクライナでもロシアの進出が、緊張感を増している。

11月25日、黒海に面するオデッサを出て、クリミア半島を回り、アゾブ海に向かっていたウクライナの砲艦2隻と牽引船の計3隻が、アゾブ海への入り口、ケルチ海峡で、ロシア海上保安船と衝突。ロシアは戦闘機やヘリコプターまで動員して、ウクライナ船に発砲し、ウクライナ人3-6人が負傷した。

その後、ウクライナ船3隻と、乗組員24人はロシアに拿捕された。24人はまだロシアに拿捕されたままである。

ロシアは最初、ウクライナ船が、ロシア領海を侵犯したと主張したが、ウクライナは、これはロシアの挑発だと主張した。今、2014年以来のウクライナ危機再来と懸念されている。

http://time.com/5469395/ukraine-defense-reservists-russia-tension/

*東西冷戦の発火点

ウクライナ砲撃船が向かっていたアゾブ海は、クリミア半島とケルチ海峡に挟まれた湾で、ウクライナ、親ロシア勢力、ロシアの3者がみな湾へのアクセスをもつ、複雑な湾である。問題は、黒海からこの湾に入るには、狭いケルチ海峡を通るしかないということである。

ロシアとウクライナは2003年に、海峡の通過の自由に合意しているが、2014年にロシアが、クリミア半島を併合すると、数年後には、ロシアがケルチ海峡に武力を強化し、通過する船の検問するようになっていた。これにより、アゾブ海に面するウクライナの港は、閑古鳥がなくようになり、経済的な打撃となっていった。

2018年には、ロシア領からケルチ海峡をまたいで、クリミア半島に至る橋が完成し、ロシアはますますこの湾での支配力を高めるようになっていた。

ウクライナは国際社会に、ロシアの動きを訴えたが、西側諸国はこれをとりあげなかった。今回の衝突でも、ウクライナは、ロシアが、アゾブ海を占領し、ウクライナへ侵攻してくる可能性があるとして、武力支援を要請したが、欧米は非難しつつも、これに応じる様子はない。

ウクライナが、単独でロシア軍に立ち向かえるはずもないのだが、ウクライナのポロシェンコ大統領は、予備役の招集と、国境の防衛を強化。東ウクライナとロシアとの国境を武装地帯とし、ロシア人男性(16-40歳)のウクライナへの通過を禁止する措置を発表した。期間は今の所30日間とされる。

ロシアは、これを、「緊張を高めるばかげた行為だ。」と言っている。また、ケルチ海峡の通過をロシアが妨害しているというウクライナの訴えも否定した。

ちょうどこの時、アルゼンチンでG20が行われたが、トランプ大統領は、この問題を西側への挑戦であるとして、予定されていたプーチン大統領との2者首脳会談をキャンセルした。

https://www.bbc.com/news/world-europe-46340283
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