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米:シリアから撤退へ:イスラエルへの影響 2018.12.23

 2018-12-23
アメリカ軍のシリアからの撤退、マティス国防長官の辞任については、日本でも大きくとりあげられている。ここでは、この件の解説とともに、これからどうなるのか、イスラエルはどう反応しているのかを報告する。

<トランプ大統領:突然の独断Uターン>

19日、トランプ大統領は、突然、シリアに駐留させているアメリカ軍(約2000人)を、できるだけ早く撤退させると発表した。

その理由として、「目的であったIS撃退はほぼ完了した。アメリカは相当な打撃を与えた。若者たちを帰国させる時だ。」との見解をあげた。

また、中東での駐留について、「アメリカは、大切な命と大金を使っても何も得られない。当事者たちに感謝されることもない。アメリカは、中東の警察になるべきだろうか。永遠に駐留を続けるべきなのか。」と、撤退の理由を述べた。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5430067,00.html

トランプ大統領は、シリアに続いて、アフガニスタンに駐留している米軍(14000人)の半分にも撤退を命じた。

https://edition.cnn.com/2018/12/20/politics/afghanistan-withdrawal/index.html

確かに、トランプ大統領は、アメリカ軍を中東から撤退させることを公約にあげていたが、その後の情勢から、アフガニスタンからもシリアからも当分、撤退はなく、駐留は続けるとの流れになっていた。世界はこのアメリカの突然のUターンにただ驚くばかりである。

<自国補佐官らを無視してトルコに合意してシリア撤退を決めたトランプ大統領>

驚いているのは世界だけではない。アメリカの閣僚も議会も皆が驚いている。この決断は、撤退発表の数日前の14日、大統領がトルコのエルドアン大統領との電話会談中に独断で決めた可能性が高まっている。

現在、トルコは、アメリカが支援しているシリア北部のクルド人勢力支配域への攻撃を脅迫している。このままであれば、クルド勢力だけでなく、そこに駐留しているアメリカ軍、NATO軍にも被害が及び、事が大きくなる可能性があった。

このため、アメリカのポンペイオ国務長官と、トルコのカウソグル国務長官が、両国の大統領がこの件について、電話で話し合う方向で準備を進め、14日にこれが実施された。

電話会談に先立ち、ポンペイオ米国務長官は、トランプ大統領に、トルコがクルド勢力地域へ攻め込まないよう説得するようその要旨を伝えていたという。電話会談には、ボルトン大統領補佐官も参加した。

エルドアン大統領は、トランプ大統領に、「アメリカ軍のシリア攻撃は、ISの撃滅が目的だったはず。ISは、今や全盛期の1%にまで縮小した。なぜアメリカは今もまだ駐留を続けているのか。」と詰め寄った。

これを受けて、トランプ大統領は、ボルトン補佐官に、「それもそうである。なぜアメリカ軍はいまだに駐留を続けているのか。」と問うた。この時、ボルトン補佐官は、ISがもはや1%しか残っていないということには合意せざるを得なかった。

「とはいえ、ISはまだ完全には終わっていない。」とボルトン氏は強調したが、トランプ大統領は、もはやこれに動じず、「OK。ではアメリカは、できるだけ早く撤退する。」とエルドアン大統領に言い放った。

電話会談直後から、ボルトン補佐官、マティス国防長官、ポンペイオ国務長官は、3人頭をよせて、いかに大統領の発言を撤回させるか、撤退を遅らせるかを考えた。最終的には、第三の中間的な妥協案を大統領に提示しようとした。

しかし、週明け16日月曜には、すでに米軍参謀総長が、シリアからの撤退の指令を受けて、現地部隊に連絡。撤退準備が進んでいることがわかり、もはや打つ手なしということになったようである。

アメリカ軍のシリアからの撤退に関する公式発表は、当初は報道官を通じて17日に予定されていた。しかし、ペンタゴンでもまだ準備不足である上、閣僚や議会など内部にも十分連絡がいきわたっていなかったため、水曜19日に持ち越された。

https://www.timesofisrael.com/trump-decided-on-syria-pullout-during-phone-call-with-erdogan-report/

あまりにも急な展開であったため、発表の時点で、大統領自身の共和党内部にすら、まだ十分知らされていなかったようで、対抗勢力の民主党はいうまでもなく、共和党内部からも、懸念と批判の声が相次いでいる。

正式な発表ではないが、現地シリアにいる米軍司令官からも、シリアから今、撤退することへの影響を懸念する声が出ているという。

*シリア南部でISと戦闘

懸念を裏付けるかのように、トランプ発言から2日後の21日、シリア南部、ユーフラテス川東側では、アメリカが支援しているシリア民主軍(反政府勢力)がISの襲撃を受けた。

これを受けて、アメリカ軍率いる連合軍が、ISにむけて空爆を行った。(シリア民主軍報道)アメリカの撤退後、シリアで、ISが復活してくる可能性も懸念されている。

https://www.jpost.com/Middle-East/ISIS-attacks-positions-held-by-the-US-backed-Syrian-Democratic-Forces-in-southeastern-Syria-575024

<マティス国防長官退任>

さらに大きな激震は、22日、マティス国防長官(68)が、自ら、来年2月末で退任すると発表したことである。

マティス国防長官は、ISはまだ撃滅しておらず、その再生を抑える必要があると考えている。また、直接名指しはしないものの、「同盟国への敬意と強力な関係維持なくして国益はない。」として、シリアからの撤退に同意できなかったことが、退官への大きな引き金になったことを示唆した。

しかし、マティス国防長官は、湾岸戦争やイラク戦争において、現地で指揮をとった超ベテランの軍人で、得に中東事情については、相当な知識も経験も持つ人物である。またマティス国防長官は、現政権では、唯一トランプ大統領にブレーキをかけられる人物とも目されていた。

このため、今後、なにをしでかすか予測不能のトランプ大統領が暴走するのではないかも懸念されている。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/256522

なお、退官を発表したことにより、マティス国防長官は、来週予定されていたイスラエル訪問をキャンセルした。

*アメリカ政府一部閉鎖

このややこしい時に22日、アメリカは、トランプ大統領のメキシコ国境の壁建築の予算をめぐって、新暫定予算案で合意できず、政府機関の一部閉鎖という事態になった。今年3回目である。

これは、新予算案が通ってないため、22日以降、政府からの出金が止まるということであり、公的事業の一部が麻痺する、または関連労働者が無給に陥ることを意味する。

https://www.bbc.com/news/world-us-canada-46657393

クリスマス前に、アメリカは、なかなかの混乱状態のようである。

<米軍シリア撤退後どうなる!?:ロシア、イラン、トルコの進出>

シリアから撤退しても、アメリカ軍は、イラクに5000人、クウェートに1万5000人、バハレーン、アラブ首長国連邦、クエート、オマーン、ヨルダンにも部隊を置いている。なんといってもやはり、今はまだ、アメリカの力は強大だ。

それにトランプ大統領は、予測不能なので、今とはまた全然違う方向に方向転換する場合も十分ありうる。中東情勢のこれからを予測するのは、専門家でも不可能と言われている。

しかし、シリアでは、シーア派、スンニ派がぶつかり合い、ありとあらゆる勢力が入り込んでいる。この地域で、影響力を持つ者が、最終的には、中東全体での覇者になっていく可能性は高い。

今、シリアからアメリカが撤退するということは、アメリカはそこでの支配力を放棄するということでもある。その後は、ロシアとその友好国イラン、トルコが支配しても良いと言っているのと同じである。当然ながら、ロシアは、アメリカのシリアからの撤退を歓迎すると発表した。

アメリカは、まだいつシリアから撤退するのか、その具体的なタイムテーブルは発表していないが、もし本当に撤退した場合、今後、考えられる動きは以下の通りである。

1)トルコ(背後にロシア)がクルド人地区(シリア東北部)を攻撃へ

先週までトルコは、シリア東部のクルド人地域に攻め込む勢いであった。このためにエルドアン大統領とトランプ大統領の電話会談が行われたのであった。

https://www.nytimes.com/2018/12/21/world/middleeast/turkey-military-syria.html

エルドアン大統領は21日、トランプ大統領との電話会談により、クルド勢力、並びに同地域に残っているISへの攻撃は延期すると表明した。ただし、攻撃を中止したわけではなく、必ず将来、攻撃する強調している。

この取引の背後には、武器の売買がからんでいるとみられる。

最近、アメリカが問題視していたのは、トルコがアメリカからF35ステルス戦闘機を購入する一方で、ロシアからは、S400迎撃ミサイルの購入を決めたことである。

S400とF35戦闘機の双方がトルコに入ることにより、ロシアが、F35をS400で撃墜する方法を見つけ出してしまうかもしれない。このため、アメリカはトルコにF35を売却することを渋ったり、大量のパトリオット迎撃ミサイルを販売することで、ロシアのS400の購入をキャンセルするよう要請したりしていた。

しかし、F35は予定通り、トルコに売却が決まり、Press TVによると、結局S400は、ロシアからトルコへ搬入されるもようである。

また、クルド人勢力の情報によると、ロシアが、ユーフラテス川の東側、つまり、クルド人勢力を早く制圧するよう、トルコに圧力をかけているとのことである。

ロシアは今、クルド人も含め、シリアの反政府勢力を一つにまとめて、アサド政権とともに、シリア内戦の終焉にむけて、外交的プロセスに臨むという計画を進めているからである。

アメリカ撤退後、いずれ、クルド人勢力は、ロシアとイランに対し、単独で戦うことになるだろう。結果的に、クルド人たちが、アサド政権とのなんらかの合意に、サインさせられる可能性もある。

*トルコとロシアの関係

シリアでのIS攻撃において、トルコは、しぶしぶではあったが、アメリカ主導の有志軍に参加した。しかし、アメリカが、ISと戦うクルド人勢力を支援するようになると、トルコのアメリカ離れが始まった。

ここ数年、トルコは、アメリカから離れてロシア、イランの陣営に加わり、3国でシリア内戦を収めようとする動きになっている。

2)ロシア、イラン、トルコがシリア内戦集結に向けて結束へ

アメリカがシリアからの撤退を発表したころ、ロシア、イラン、トルコの3国は、国連の下、ジュネーブでシリア内戦の集結に関する会議を行った。

この3国がこうした会議を開くのは、これが3回目になる。3国が計画しているのは、アサド大統領と反政府勢力が同じテーブルについて、シリア再建を議論する会議である。新しい憲法も提案される予定である。

この会議に参加するのは、シリア政府代表50人、反政府勢力代表50人と、自立団体代表50人となっているが、現在、この3つ目のグループの50人を誰にするかで合意できず、今もなお和平会議にこぎつけられない状況である。

また、シリア和平会議を開催する前に、先のクルド人問題の他、シリア北部のイドリブ問題を解決しなければならない。

イドリブには、シリアの反政府勢力の生き残りたち10万から15万人がいる。この勢力は、アサド大統領を絶対に認めないため、アサド大統領を交えた和平交渉のテーブルにつくことはない。

イドリブについては、トルコとの国境に近いこともあり、こちらの方も、トルコがこれを制圧することをロシアは求めているとみられる。

しかし、ロシアとイランが、完全にアサド大統領支援であるのに対し、トルコは、今も一応、反政府勢力支援派であるため、トルコが、イドリブを攻撃することは容易ではない。

もし、トルコが、イドリブ制圧に動かなかった場合、再びロシアが介入し、多大な犠牲者や難民が発生することも、懸念されている。

https://www.jpost.com/Middle-East/Russia-Turkey-Iran-team-up-on-Syria-talks-as-US-weighs-pulling-troops-574799

こうした流れが予測される中でのアメリカの撤退である。アメリカは、もはやシリア内戦の集結には、なんの影響も及ぼせない、というよりは、それを放棄したということである。

中東において、アメリカの権威も信頼も失墜することはさけられないだろう。

3)イランの進出拡大へ

今回のアメリカの撤退で、最も笑っているのはイランではないかと言われている。

アメリカが撤退することで、イランは、シリア領内で、動きがとりやすくなる。また、イランからイラク、シリア、レバノンを通る地中海への回廊を妨害するものがなくなり、いよいよイスラエルを攻撃しやすい形ができあがる。

また、ロシアの進出で、アサド政権存続でシリア内戦が集結すれば、アメリカや宿敵サウジアラビアの権威は失墜する。これは、イランにとっては、非常に有利な展開と言えるだろう。

https://www.nytimes.com/2018/12/20/world/middleeast/syria-us-withdrawal-iran.html

しかし、サウジアラビアとアメリカは、ムハンマド皇太子のカショギ記者殺害スキャンダルで、すでに十分信頼を落としていたわけである。

イラン外相は22日、「アメリカはシリアでの使命を達成したと言っているが、介入したこと自体、最初からまちがっていたのだ。アメリカの存在こそが不安定の原因だった。」と語った。

https://www.jpost.com/Middle-East/Iran-US-presence-in-Syrian-civil-war-a-mistake-from-the-start-575105

イランは、22日、ペルシャ湾への入り口で、特に問題になりやすいホルムズ海峡において、イラン革命軍の軍事演習を行った。アメリカの空母がペルシャ湾に入った翌日である。訓練をしているイラン艦船の向こうにアメリカの空母が見えている。

イランにとっては毎年恒例の訓練であるとはいえ、非常にきわどく、挑戦的であるといえる。

https://www.timesofisrael.com/irans-revolutionary-guard-launches-drill-near-strait-of-hormuz/

トランプ大統領のシリアからの軍撤退発言以降、今の中東においては、アメリカ陣営に対し、ロシア陣営が、有利に立つ流れに変わりつつあるのかもしれない。

<イスラエルの反応>

アメリカ軍がシリアから撤退し、中東での覇権を放棄することは、アメリカを唯一の同盟国とするイスラエルには大問題である。米軍のシリアからの撤退は、アメリカの閣僚よりも先にイスラエルへ一報が入っていたとの報道もある。

イスラエルにとって、最も重要な関心事は、イランである。アメリカがイランから撤退することで、シリアでの最大勢力はロシアになるが、そのロシアは、前回お伝えしたように、イスラエルとは、距離を置き始めると同時に、イランに手を貸す動きに出始めている。

ネタニヤフ首相は、トランプ大統領のシリアからの撤退発表の後、「イスラエルは、シリアのイラン攻撃を強化する」と発表。しかし、同時に、それがアメリカのバックアップで行われることを強調した。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/256483

<石のひとりごと:ユーフラテス川の向こうから来る王たち>

突然だが、世の終わりに起こることを預言する聖書には次にように書かれている。

第六の御使いが鉢を大ユーフラテス川にぶちまけた。すると、水は、日の出るほう(東側)から来る王たちに道を備えるために枯れてしまった。・・・彼らは全世界の王たちのところに出て行く。万物の支配者である神の大いなる日に備えて、彼らを集めるためである。(黙示録17:12−14)

今、イスラエルの唯一の同盟国、アメリカがシリアのクルド人領域から撤退しようとしているが、それは、ユーフラテス川の東側にあたる。

聖書によると、やがてユースラテス川の東から王たちが一斉に、イスラエルに攻め込むことになるが、その王の中にイラク、イラン、ロシアが含まれるのだろう。

また、アメリカが、もはや同盟国を大事にしなくなったとすれば、イデオロギー的にはロシア、イラン陣営に近い、中国や北朝鮮もまた、ユーフラテス川の東から来る王たちに含まれるのかもしれない。アメリカという障害物がいなくなれば、そこを通過することも容易になるだろう。終わりの時の様相が、また一つ見えてくるようである。

また、アメリカのこうした自己最優先の姿勢については、日本もまた他人事ではない。これまで北朝鮮、中国の問題に関して、マティス国防長官が、日本、韓国を含む同盟国との連携を重視し、トランプ大統領の今回のような突然の米軍撤退を抑えていたとも考えられる。

マティス国防長官退官の後、トランプ大統領が、もはや日本を守る義務はないとして、さっさと軍を撤退させるかもしれない。そうなると、日本は自力で北朝鮮や中国に立ち向かわなければならなくなる。

これをみこしてか、日本の軍事予算は来年19年度は過去最大の5兆2600億円。アメリカから、F35最新鋭ステルス戦闘機(垂直離発着)を最大100機を前倒し導入予定(1兆円以上)で、空母「いずも」を改修して、配備する予定とのこと。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018120500594&g=pol

日本では、国民が、憲法9条改正に反発する傾向にあるが、世界情勢も日本政府自体の動きも、すでに、まったくかけ離れたところにいると思ったほうがよさそうである。
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ヒズボラの越境地下テロトンネル:国連安保理非難せず 2018.12.23

 2018-12-23
19日、国連安保理では、イスラエルが北の盾作戦で、摘発しているヒズボラの越境地下トンネルに関する会議を行った。

イスラエルの国連代表ダニー・ダノン氏は、レバノンのクファル・キラからイスラエル領内に続いていたトンネルに関する資料を提示して説明し、ヒズボラは、これらのトンネルを使って、ガリラヤ地方5箇所において、イスラエル市民に対するテロを計画していたと訴えた。

ダノン氏は、これは2006年の第二次レバノン戦争後の決議1701に違反すると主張した。UNIFIL責任者も、少なくともトンネル2本は、決議1701に違反すると認めている。

また、イスラエルは、これらの資料をUNIFIL(国連レバノン暫定駐留軍)に提示したところ、その資料がレバノン政府にわたり、そこからヒズボラにわたって、レバノンでは証拠隠滅が行われたと主張した。

アメリカのヘイリー国連代表は、ヒズボラを避難し、レバノンのアオウン大統領は、レバノン国境での軍事衝突を避けるため、トンネルの脅威を全力で解決してもらいたいと訴えた。

これに対し、アラブ諸国代表らは、「そういうイスラエルこそ、国境を越えて空軍をレバノン領内に侵攻させているではないか」と避難。レバノン国連代表は、北の盾作戦でイスラエルは、レバノンへの次なる戦闘を示唆していると避難した。

ロシアは、イスラエルの懸念は理解するが、双方、ことを荒立てない方がよいと主張した。

アメリカとイスラエルは、この問題への非難決議を主張しても、ロシアが拒否権を発動して、問題は棚上げにされるのがオチだとして、提訴することを控えたとのこと。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5430007,00.html
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ガザ国境衝突:停戦中にパレスチナ人4人死亡 2018.12.23

 2018-12-23
21日金曜、今週もガザ国境では約8000人がデモ(暴動)に参加。イスラエル軍に向かってタイヤを燃やしたり、投石したり、発火物を飛ばしたりして、軍事衝突になった。中にはサンタクロースに扮していたパレスチナ人もいた。

これにより、パレスチナ人3人(16歳、28歳、40歳)が、イスラエル軍の銃撃により死亡。負傷した1人(18歳)は、のちに病院で死亡した。4人の死亡は、先月の停戦以来初めてとなる。

https://www.timesofisrael.com/thousands-attend-funerals-of-4-palestinians-said-killed-in-gaza-border-riots/
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西岸地区で続いた暴力の波:イスラエル兵2人死亡 2018.12.17

 2018-12-17
先週1週間は、毎日のように、西岸地区で暴力と乱闘の波が続いた。9日の最初のテロから1週間たった16日、一応の落ち着きは取り戻したようではあるが、背後にハマスとイランがからんでいるとみられ、今後の動きが懸念される。

一方、イスラエル国内では、国防相も兼任しているネタニヤフ首相の西岸地区での防衛対策と、テロへの報復措置は、十分でないとする抗議の声が、閣僚からもあがっている。

<西岸地区で毎日のようにテロ事件と乱闘>

9日(日)、西岸地区の入植地オフラのバス停で、パレスチナ人による走行車からの銃撃テロがあり、妊婦(21)を含む7人が負傷、胎児が死亡したテロ事件。イスラエル軍は12日(水)夜、この事件に関わったサレ・バルグーティ(29)をナブルスで射殺した。

その数時間後、10月にバルカン産業パークでイスラエル人2人を殺したアシュラフ・ナアルワ(23)を追い詰め、逮捕を試みたが、武装していたため射殺した。

ちょうどその頃、12日(水)深夜早朝、エルサレム旧市街ハガイ通りでは、パレスチナ人が、超正統派男性をナイフで襲撃し、失敗。付近にいた国境警備隊員たちに向かっていき、男性隊員1人が、かろうじて目を外して顔を刺され、女性隊員1人が足を刺された。テロリスト(26)は、警備隊がその場で射殺した。

https://www.timesofisrael.com/two-police-officers-said-wounded-in-suspected-old-city-stabbing-attack/

13日(木)11:15、9日のテロ事件のあったオフラから5キロで、入植地ギブアット・アサフ近くの国道60号線上のバス停で、再び走行車からの銃撃があり、イスラエル兵のヨセフ・コーヘン伍長(19)、ヨベル・モルヨセフ軍曹(20)の2人がその場で死亡。もう一人の兵士と女性が重傷となった。

テロリストの車はそのまま走り去ってまだ捕まっていない。イスラエル軍はただちに周辺地域(ラマラを含む)を閉鎖し、大規模な犯人捜査に入った。ラマラは特に出入り口に検問所を設けたことから、事実上、包囲した形になった。

*ラマラはパレスチナ自治政府機関があるいわばパレスチナ自治政府最大の町

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5425209,00.html

14日(金)朝、ラマラの裏出入り口付近の入植地ベイト・エルで、イスラエル兵1人(21)が、パレスチナ人にナイフで刺された後、石で頭を殴られて重傷となった。兵士は病院に搬送されたが、危篤状態。テロリストはまだ逃走中。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5425209,00.html

イスラエル軍は、西岸地区道路20か所にコンクリのブロックを置いて、テロ攻撃を防止するとともに、西岸地区広域で、ハマス・メンバーを逮捕する大規模な踏み込み捜査を継続している。エルサレムポストによると、金曜午前中までに、ラマラ、アザリヤ、ヘブロンなどで40人を逮捕。うち37人はハマスメンバーだという。

こうした中、ラマラ北部ヤラゾン難民キャンプでは14日(金)、パレスチナ人数百人とイスラエル軍の武力衝突が発生。パレスチナメディアによると、パレスチナ人1人(17)が死亡。60人が負傷した。

https://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Hundreds-clash-with-Israel-forces-north-of-Ramallah-574357

<ハマス第31回創立記念日”怒りの日”:ハマス支持者とパレスチナ自治警察も衝突>

西岸地区で混乱が続いていた14日(金)は、ハマスの第31回目の創立記念日だった。ハマスの拠点ガザでは、国境付近複数箇所で1万人が集まり、イスラエル軍と衝突。30人以上が負傷した。 *ガザでの正式な式典は16日(日)に執り行われた。

https://www.i24news.tv/en/news/international/middle-east/190953-181214-46-palestinians-injured-in-gaza-border-clashes-as-hamas-calls-for-day-of-rage

西岸地区でも、ヘブロンなど各地で、ハマス支持者らが、シンボルカラー緑の布をまとうなどして、ハマスへの支持を叫んだ。

ハマス活動家らは、最初は、イスラエルの”占領”に対して立ち上がるよう呼びかけていたが、鎮圧に来たパレスチナ自治警察に暴力を振るい始めたため、自治警察も警棒で殴りかえすなどして、パレスチナ人同士の大乱闘となった。

*ややこしいパレスチナ自治政府

テロの波が始まったころ、ハマスは、西岸地区のパレスチナ市民たちに、イスラエルに対し武力で立ち上がるよう呼びかけた。これに対し、パレスチナ自治政府報道官は、武力で立ち上がるのではなく、平和的なデモで立ち上がるよう、よびかけた。

このためか、西岸地区での暴動は、ハマスが願ったほどには拡散しなかったとみられている。

https://www.timesofisrael.com/fatah-tells-palestinians-to-reject-calls-for-new-armed-uprising-in-west-bank/

アッバス議長は、暴力ではなく、平和的なデモでの対抗をよびかけており、イスラエルの治安部隊とは日々協力している。今回もハマス逮捕には、パレスチナ自治警察も協力していたという。

しかし、一方で、アッバス議長は、イスラエル人に対するテロを行った者とその家族への手当、報酬は与え続けているので、テロはいっこうになくならないわけである。

要するに、アッバス議長が、治安面においてイスラエルと協力するのは、ライバル組織ハマスを抑えるためであろう。また、アッバス議長は現在、83歳で、いつ倒れてもおかしくない。

ファタハ党内では、次にだれが議長になるのか、様々な人物がしのぎを削っている。アッバス議長には、はなはだしい汚職(息子たちは億万長者)もあるので、恨み図っている。

イスラエルは、ポストアッバスが、どんな人物かが懸念されるので、これまでになんども暗殺からアッバス議長を守ったという。(知らない敵より知っている敵を維持したほうがよいため)

実際のところ、アッバス後に何者が出てくるのか。パレスチナ問題専門家によると、ハマス(イラン支援)が西岸地区を奪回してしまう可能性も理論上はありうるという。

<背後にイラン:ヨニ・ベン・メナヘム氏(パレスチナ問題を30年以上取材するベテランジャーナリスト)>

オスロ合意以前にアラファト議長に会ったことがあるというジャーナリストのヨニ・ベン・メナヘム氏は、ガザが停戦になったために、イランが西岸地区で事態をエスカレートさせようとしていると分析する。

イランは、南からハマス、北からはヒズボラと両方の背後にいるが、今、西岸地区で攻撃をあおりはじめたということは、ガザでは停戦、北では、北の盾作戦が始まったことで、イランに使える手が西岸地区だけになったとも読み取れなくもない。

イランは今、アメリカの経済制裁を受けて、困難な状況にあるはずだが、だからこそ、中東ではアメリカを象徴するイスラエルを攻撃するというイデオロギーを活発化させているとメナヘム氏は解説する。

<パレスチナ人を襲う過激右派ユダヤ人ユースグループ>

西岸地区でユダヤ人犠牲者が出た場合、要注意なのが、ヒルトップ・ユースや、”プライス・タグ(値札)”と呼ばれる過激右派入植者ユダヤ人ユースグループのパレスチナ人への暴力である。

案の定、先週1週間のイスラエル人へのテロを受けて、ユダヤ人ユースが、西岸地区の複数の地点で、パレスチナ人の車に投石するテロを行った。

特に、イスラエル兵2人が殺害された60号線では、数十人の右派入植地ユースが暴動を起こしたと、人権保護団体とパレスチナメディアが伝えた。

また、西岸地区のイスラエル軍による”占領”に反対し、イスラエル兵の悪事を報告するユダヤ人左派グループ・ベツアレムは、顔は布で覆っているが(従ってユダヤ人と断定は不能?)、ユダヤ人とみられるユースが、パレスチナ人のトラックに投石し、フロントガラスが壊れる映像を、ネット上にアップした。

https://www.timesofisrael.com/settler-youth-riot-at-scene-of-west-bank-terror-shooting/

さらに別の左派ユダヤ人グループ、イエシュ・ディンは、入植者が、パレスチナ人地域エイン・ヤブロウドで実弾を使って襲撃したと伝えている。(未確認)

Times of Israel, エルサレムポストなどによると、イスラエル警察は、パレスチナ人に60号船を通過させないよう要求して、道路を封鎖したた過激右派ユダヤ人20人以上を逮捕した。

https://www.timesofisrael.com/liveblog_entry/over-20-israelis-arrested-for-blocking-roads-to-palestinian-traffic-in-west-bank/

これら過激右派ユダヤ人のユースグループは、宗教的にもパレスチナ人への暴力を正当化しているので、非常に残酷で、罪意識もないので、パレスチナ人たちからは、非常に恐れられている存在である。

<怒る入植地住民:ネタニヤフ首相官邸前で抗議デモ>

こうした危険な状況が続く中、13日(木)エルサレムのネタニヤフ首相官邸前では、西岸地区入植者ら約1000人が集まり、政府に対し、入植地への防衛を強化するとともに、武力的強硬な策を要求するラリーを行った。

参加者たちは、アッバス議長の写真を燃やすなどしながら、ネタニヤフ首相の、西岸地区における政策に反対し、辞任を叫んだ。

しかし、ユダヤ・サマリア地区評議会のヨシ・ダガン議長は、「私は、ネタニヤフ首相の辞任ではなく、首相と閣僚たちに行動をおこす(つまり武力で西岸地区を制圧するなど)よう要求する。」と訴えた。

ダガン氏は、今のネタニヤフ政権の対応は、2000年代の第二次インティファーダ時代、何もしなかったバラク政権と同じだと訴えた。言い換えれば、このままであれば、再びインティファーダのようなテロの連続になると警告しているということである。

また、息子夫婦が銃撃され、まだ生まれる前の孫を殺されたハイム・シルバーステインさんもこのラリーに参加し、「私の孫アミアド・イスラエルは、ただの数字だろうか?政治的な紙上の合意のために、犠牲者たちはまた忘れられるのか?」と、強力な対策を求めた。

また、シルバーステインさんは、西岸地区に新しい入植地を開拓し、孫の名前をつけるよう、呼びかけている。*テロで負傷し、胎児の息子を失ったシルバーステインさんの息子夫妻は、その後順調に回復し、16日、入院中の病院で、初の記者会見を行っている。

https://www.timesofisrael.com/chants-for-netanyahu-to-resign-as-1000-protest-outside-pms-residence/

この他、西岸地区開拓前哨地の中で違法とされ、昨年2月に強制撤去させられたアモナの住民の一部が、撤去前の地に戻ってキャラバンを2つ建て、「この地は購入した土地だ。」と主張している。

https://www.timesofisrael.com/amid-palestinian-terror-settlers-set-up-2-caravans-at-razed-amona-outpost/

<イスラエル政府の対応>

ネタニヤフ首相は、13日、ユダヤ・サマリア地区評議会のヨシ・ダガン氏ら入植地の指導者たちに次のように約束した。

①テロリストが判明した場合、48時間以内に家を破壊する。
②ユダヤ・サマリヤ地区(西岸地区)にいるハマスの拘束をすすめるとともに、イスラエル軍の駐留を強化する。
③道路の防衛強化とともに、検問所を増やす。
④アル・ビレは包囲し、テロリストの家族や協力者のイスラエルへの入国許可を剥奪する。

また、まだ違法とされるオフラを含む、入植地の家屋数千件の合法化への手続きをすすめることや、西岸地区に新たに産業パークを2つ建設することに許可を出す方針なども表明している。

入植地の合法化については、マンデルビット司法長官が、2000件分について、着手する方針を決めたとシャキード法務相が発表した。しかし、具体的な情報はない。

ネタニヤフ首相は、これまでからも、約束はしたが、実際には実行しなかったというようなことが少なくなかったため、入植地の指導者たちは、約束は実現してはじめて信用できると言っている。

https://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Netanyahu-to-increase-West-Bank-security-and-settler-following-attack-574290

<また政権崩壊の危機!?閣僚たちがネタニヤフ首相の西岸地区対策に抗議ラリーに参加>

16日(日)、上記入植者たちの首相官邸前でのラリーに、現在、ネタニヤフ政権の閣僚と、連立に加わっている政党の議員たちが参加し、ネタニヤフ首相に、西岸地区対策を、もっと強硬に切り替えるべきだと呼び掛けた。

参加した閣僚は、ナフタリ・ベネット教育相(ユダヤの家党党首)、アエレット・シャキード法務相、ウリ・アリエル農業相、ヨアブ・ギャラント住宅相と、リクード(ネタニヤフ首相党首)、クラヌの議員たちである。

これに対し、野党の未来がある党のヤイール・ラピード党首は、これに対し、「閣僚、議員たちが自らを攻撃するとは悲しいことだ。西岸地区から近いうちに火がでることは、前から治安組織が警告していた。

問題は、ネタニヤフ首相が、外交的な対処や、アッバス議長との協力などの対処をしてこなかったことだ。今、彼らはそれを自らで抗議しているのだ。」と語った。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5426921,00.html

<死亡したイスラエル兵2人について:最後の朝のコーヒーと身代わりの死>

13日(木)に、イスラエル軍兵士2人が犠牲になったバス停のすぐ近くには、小さな移動キオスクがあった。テロの犠牲になったヨセフ・コーヘン伍長(19)と、ヨベル・モル・ヨセフ軍曹(20)は、このキオスクで、コーヒーとブレッカスを購入。その直後にパレスチナ人の車両が銃撃とともに走り去り、2人は出血して地面に倒れた。

このキオスクで2人にコーヒーを販売したラズ・シェンさんは、食べ物を買って行った2人の笑顔とその直後のテロをすべて目の当たりにしたという。

さらに、後でわかったことだが、モルヨセフさんは、自分の任務は終わっていたのだが、友人に頼まれて、この日のこのバス停での任務を引き受けていた。まさに身代わりになって死んでいったということである。

14日(金)、モルヨセフさんの葬儀はアシュケロンで行われた。副大臣のマイケル・オーレン氏などを含む2000人が参列した。

ヨセフ・コーヘンさんは、超正統派家族出身で、家族の反対を押し切ってイスラエル軍の超正統派部隊に入隊。その後は、家族から離れ、友人たちとともにベイトシェメシュに住んでいた。しかし、家族とは疎遠ではなく、犠牲になる直前も両親や親族と過ごした。

同じく14日(金)に、オリーブ山墓地で行われた葬儀で、父親で超正統派ラビ・エリヤフ・ミラブさんは、「ヨセフよ。こんな日が来るとは思いもしなかった。神は与え、また取り去るということは信じているが、実際には思いもしなかったことだった。」と泣き崩れたという。

葬儀には、超正統派、軍関係者、世俗派など様々な人々が参列していた。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5426041,00.html

<石のひとりごと>

テロで人が死亡するたびに毎回書いているが、この若い2人の兵士の明るい笑顔の写真をみていると、家族や友人たちはいったいどうこの痛みを受け止めるのだろうか。その痛みを思うとこちらにまで、深い暗闇というか、言い知れない痛みが響いてくる。

直前にコーヒーとブレッカスを買った若い二人。まさか、その直後に自分が死んでしまうとは、まったく、まったく夢にも思っていなかっただろう。家族にしても、彼らが家に帰ってくることはもう二度とない。厳しすぎる現実だ。きっと、今にもあの扉から「ただいま」と言って帰ってきそうな気がしているだろう・・

この記事を書くために、今一度ネットで検索をかけた。すると、もはや帰ってこないイスラエル兵の同じような葬儀の記事、記事、記事・・・家族や友人が抱き合って泣いている写真はどれも同じようなのだが、日付も名前も違っていた。

その一つ一つは、記事にしたと思うが、申し訳ないことに、もはやまったく覚えていない。けっこうな数であったことに改めて、痛みを覚えるとともに、イスラエルという国の存在の厳しさを実感させられた。
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北の盾作戦:トンネル4本目摘発 2018.12.17

 2018-12-17
北の盾作戦を続けているイスラエル軍は、16日、今週末、4本目のヒズボラの地下トンネル4本目を摘発したと発表した。軍が管理しているので、市民の安全に問題はないという。

https://www.timesofisrael.com/idf-finds-fourth-hezbollah-attack-tunnel-dug-into-israel-from-lebanon/

16日、リブリン大統領が、北の盾作戦の現場を視察した。大統領は、「ヒズボラは、レバノンの保護者だと言っているが、イスラエルを戦争に引き入れて、最終的にはレバノンを滅ぼそうとしている。」と語った。

なお、ネタニヤフ首相ば12月12日に現場視察を終えている。

https://www.timesofisrael.com/rivlin-warns-hezbollah-will-lead-to-destruction-of-lebanon/

<イラン軍航空機がIDにロシアの旗を使用>

イスラエルが北の盾作戦を開始したのは、シリア内戦が終焉に向かい始めたことから、ヒズボラとイランがいよいよイスラエル攻撃に乗り出してくる可能性が出てきたからである。

イスラエルが最も懸念するのは、シリアにイランが進出していることで、イスラエルは時々シリア内のイラン軍事拠点を攻撃している。

しかし今年9月、イスラエルの攻撃に対し、シリア軍が放った迎撃ミサイルが、あやまってロシア軍機を撃墜するという事故が発生してしまった。以来、ロシアはイスラエルに対し、冷たい態度を取り始めている。

ロシアは、この事故は、イスラエルが、攻撃計画をロシアに通報するのが遅すぎたことが事故の原因だと考えているからである。イスラエルはこの事故についての詳細な報告書をロシアに提出したが、ロシアはこれを拒否した。

Yネットによると、ロシアは、イラン機にロシアの旗を使わせて、イランを守っていることがわかった。ロシアの旗をつけている限り、イスラエルは攻撃できないからである。

イスラエル軍高官の代表団は、先週、モスクワを訪問し、イスラエルとロシアの今後の協力体制について協議した。報告はないが、どうも芳しい結果は得られなかったもようである。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5425367,00.html
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オーストラリア:西エルサレムがイスラエルの首都 2018.12.17

 2018-12-17
オーストラリアのスコット・モリソン首相は、15日、オーストラリアは、西エルサレムをイスラエルの首都認めるとの正式発表を行った。

統一エルサレムではなく、西エルサレムだけをイスラエルの首都と認めることを正式な見解として発表するのは、ロシア(2017年発表)に続いて2国目になる。

モリソン首相は、1967年の国境線を国境と認める(東エルサレムはイスラエルではないということ)とし、東エルサレムは将来のパレスチナ人の国の首都になると述べた。

しかし、オーストラリア大使館の移動については、イスラエルとパレスチナの間に和平が成立してからとして、移動はさせない方針である。

https://www.timesofisrael.com/australia-recognizes-west-jerusalem-as-israels-capital/

これは当然、イスラエルにとっては残念なことだが、パレスチナ人も歓迎していない。

パレスチナ自治政府は、正式にはエルサレムをパレスチナの首都とすることを目標としているのであって、オーストラリアが、勝手に東だけを首都とするということは、失礼なのである。

パレスチナ自治政府のサエブ・エレカット氏は、これを無責任だと反発した。

また、オーストラリアに近いイスラム教国、マレーシアと、インドネシアは、たとえ西だけであってもエルサレムをイスラエルの首都と認めたことに反発している。

オーストラリア政府は、市民に対し、周辺イスラム教国への渡航にあたっては注意するよう警鐘を鳴らしている。

https://www.timesofisrael.com/australia-stands-by-jerusalem-decision-after-backlash/

<諸国大使館のエルサレム移動は暗礁!?>

5月にアメリカが、大使館をテルアビブからエルサレムへ移動した際、ネタニヤフ首相は、複数国が、アメリカに続いてエルサレムに大使館移動を検討中と述べていた。

しかし、事はそう甘くなさそうである。アメリカに続いて、グアテマラとパラグアイがまもなく大使館をエルサレムに移動させたが、パラグアイは、すでに大使館をテルアビブに戻してしまった。

チェコのミロス・ゼーマン大統領は、大使館をエルサレムへ移動させると言っていたが、外相がそれを撤回。イスラエルの首都は、1967年の国境に基づくべきとの見方が、今の所、チェコの正式見解となっている。

ブラジルの次期大統領に選ばれているボルソナロ大統領は、強力な福音派クリスチャンで、アメリカに続いてブラジル大使館をエルサレムへ移動させることを公約にあげている。

ボルソナロ大統領の就任は2019年1月1日。就任後、この件についても動き始めるとみられる。

これに対しアラブ同盟(22カ国)は、もし、本当に大使館を移動させるなら、ブラジルとアラブ同盟との関係が格下げになると警告した。アラブ同盟は、今週、ブラジリアに集まって、この件について論議し、ボルソナロ氏に圧力をかけるとみられる。

このように、諸国がエルサレム大使館移動に慎重なのは、アラブ諸国からの反発を招くからである。

来年のブラジルの動きにまずは注目したい。

https://www.timesofisrael.com/australia-stands-by-jerusalem-decision-after-backlash

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西岸地区・銃撃テロで妊婦重症・胎児死亡 2018.12.13

 2018-12-13
9日午後9時すぎ、西岸地区入植地オフラで、バス停にいた人々に向かって、走行中の車から銃を乱射するというテロが発生した。このテロで、妊婦1人を含むユダヤ人7人が負傷した。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5422732,00.html

妊婦は、シーラ・イシュ・ランさん(21)で、上半身に銃撃を受けて重傷となったが、その後意識を回復し、現在、状態は安定している。しかし、シーラさんが出血多量に陥っていたため、胎児(30週(7ヶ月半)男児)は、帝王切開で取り出され、新生児ICUで保護されていたが、4日目の13日夜、死亡した。

死亡した男児の葬儀は、病院にいる両親不在の中、祖父母らと数百人が集まって執り行われた。ユダヤ教律法により、男児はアミアド・イスラエル(イスラエルの民は永遠に)と名付けられたのちに葬られた。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/256083

シーラさんの夫で胎児の父親のアミハイさんも現場にいて負傷し、同じ病院に搬送されている。シーラさんの証言によると、アミハイさんは、シーラさんを守ろうとして負傷したとのこと。2人は、シーラさんの意識が回復したのち、病院で再会をはたしている。

今回の被害者7人は、このバス停付近の事故で亡くなった人を記念し、ハヌカの最後のろうそくに火を灯す行事に参加したのちにバスを待っていて被害にあった。被害者の中には、16歳少女2人も含まれていた。

<イスラエル軍:大規模踏み込み捜査:3日目に犯人射殺>

テロ事件発生時、現場近くにはイスラエル兵がいて、犯行車両に発砲したが、車はそのまま走り去った。イスラエル軍は、ただちに現場付近でラマラ近郊のパレスチナ人地区シルワドとアル・ビレへ、大規模部隊による踏み込み捜査を行った。

翌10日には、ラマラ近郊のパレスチナ公共放送ワファへの踏み込み、監視カメラの押収などが行われた。イスラエル軍の踏み込みにより、アッバス議長官邸近くを含む複数地点で小規模な衝突が発生し、負傷者も出た。

https://www.timesofisrael.com/idf-hunts-palestinian-gunmen-raids-pas-official-wafa-news-agency-in-ramallah/

捜査が始まって3日後の13日夜、胎児が死亡した数時間後、イスラエル軍はラマラ北部のスルダで、オフラでのテロを行ったとみられるパレスチナ人、サレ・バルグーティを、タクシーに乗っているところを射殺した。タクシーに同乗していて負傷したパレスチナ人は、イスラエルの病院に搬送されたとのことである。

この他、シルワドで、事件にかかわったとされるグループを逮捕し、パレスチナ自治政府のムカタ近郊の家を包囲したなど、エルサレムポストは伝えている。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5424886,00.html

パレスチナ自治政府のアッバス議長は、テロ発生後、「テロは、イスラエルの支配地域で発生したのであり、パレスチナ側に責任を問われるのは心外だ。」と語ったと伝えられている。ハマスは、事件を歓迎するとの声明を出した。

<西岸地区での戦い:ハマスはガザだけにあらず>

西岸地区では、最近、死者が出る深刻なテロが相次いでいる。10月、バルカン産業パークで、ナイフと銃撃によるテロで2人死亡。9月、グッシュ・エチオンで、ナイフによるテロで1人死亡。8月には60号線のバス停に突っ込むテロで女性一人死亡。7月エルサレム北アダムでナイフにより1人死亡。3月2件、2月2件、1月1件。

これらに対し、イスラエル政府は、テロリストの家を破壊することと、逆に入植地の建築を増やすなどの政治的”反撃”は行っているが、強力な武力による反撃は行っていない。西岸地区のユダヤ人入植者たちからは、これに対する不満が高まっている。

シン・ベト(国内治安組織)のナダブ・アルガマン長官は、国会委員会において、ハマスが、西岸地区からも攻撃しようとしているという現状を述べ、西岸地区が平穏から程遠いという認識を持つべきであると述べた。

アルガマン長官によると、昨年だけで、未然に防いだテロは480件。摘発は、ハマスのセル219件、単独の犯行590件に上っている。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5422732,00.html

*13日深夜すぎ、イスラエル軍が、10月にバルカン産業パークで市民2人を殺害したパレスチナ人シャラフ・ワリード・スレイマン・ナアルワ(23)をナブルスで追い詰め射殺したとのニュースが入っている。

https://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Israeli-security-forces-kill-Barkan-terrorist-574226
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北の盾作戦の本質:高リスクで効果に疑問も 2018.12.13

 2018-12-13
4日に始まったヒズボラの越境地下トンネルの摘発は、今も続けられている。イスラエル軍は10日、3本目のトンネルを発見したと発表した。

しかし、トンネルは、レバノンとの国境ブルーラインの130キロに沿って数十本はあるとみられ、これらを全部みつけて破壊するためには、相当な時間がかかると思われる。ニュースでは当初、北の盾作戦は、数週間はかかると言っていたが、今は数ヶ月はかかるという説明になっている。

ヒズボラからの公式の声明はないが、イスラエル軍の働きを嘲笑するかのように、ネット上に、作業現場の位置(国境全体に分かれて5箇所)やイスラエル兵らが休憩している様子などの写真をアップした。

https://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Hezbollah-The-Resistance-can-infiltrate-IDF-positions-574042

北の盾作戦について、ニュースでは、イスラエル軍がうまく先手をうったというニュアンスえで報じられているが、国際対テロ研究所で、特に地下戦略に詳しいダフナ・リッチモンド・バラク博士は、北の盾作戦は、かなりのリスクを伴う割に、結局、イスラエル側での作業だけでは、完全な解決にはなりえないと指摘する。

バラク博士が警鐘を鳴らすリスクは以下の通り。https://www.m-central.org/video/#lg=1&slide=0

1)イスラエル軍兵士へのリスク

トンネルの摘発、破壊作業をしているイスラエル軍兵士は、ブルーライン(国境)の壁のすぐそばである。つまりヒズボラからは丸見え状態で、無防備といってよい。これまでに、すでに、観察していたと思われるヒズボラ戦闘員が近づいてきたため、イスラエル軍が威嚇射撃するという経過が発生している。

また、10日、ヒズボラは、イスラエル軍が作業している位置を調べて地図で公開した他、イスラエル軍兵士が休憩しているところまで顔まではっきり見える写真をネットにアップした。

イスラエル兵が遠隔から銃撃されたり、ささいなことから衝突が発生する可能性はある。

2)トンネルを全部摘発することは不可能

バラク博士によると、トンネルは掘るのは比較的簡単だが、みつけるのは非常に難しい。イスラエル軍が今、摘発しているトンネルは、諜報による情報でみつけたもので、独自に地下を調べて、みつけたのではない。ということは、イスラエル軍がまだ知らないトンネルがあっても不思議はないということである。

また、イスラエル軍がトンネルを破壊している様子をみせることで、まだ知らないトンネルがどれかをヒズボラに教えていることになり、ヒズボラの戦略を助けることにもなりかねない。

もしかしたら、50メートル以上にまで掘り進んでいるものがあるかもしれず、ある日、驚きのヒズボラ侵入という可能性もまったく否定できないということである。

しかし、そこはころんでもただ起きないイスラエルである。ガザで学んだあらゆるハイテクとその組み合わせを駆使しながら、新たなトンネル対策技術の実践研究もすすめているとのこと。

3)トンネル摘発のかかる費用は厖大

いうもまでもないことだが、トンネルを掘る以上に、それを摘発することには、厖大な資金が必要になる。いわば、イスラエルは、ヒズボラに延々と終わりのないトンネル摘発に大金を使わされているということである。

その割に、トンネルから考えられる実際の被害はそれに見合うかどうかといえば、これは論議である。

たとえば、トンネルから誘拐されるイスラエル人があったとしても1人、2人であろう。とはいえ、ハマスのトンネルから誘拐されたシャリート兵士一人のために、テロリスト1000人が釈放され、その釈放者によって多くのテロ事件が発生しているということもあるので、大きな被害を防ぐということも考えられる。

いろいろ考えれば、数人の閣僚が言うように、最終的にはレバノンへ踏み込むしかないだろうとバラク博士は語る。

<トンネル摘発がもたらすもの>

トンネル摘発がきっかけとなり、結局、イスラエルがレバノンへ踏みこまざるをえなくなることもあるとしたら、一部の閣僚たちが言うように、誘導ミサイルがまだヒズボラに十分配備されていない今のうちがよいのかもしれない。

しかし、もしそうなれば、第三次レバノン戦争ということになり、イスラエル全国にミサイルの雨がふりそそぐことになる。ヒズボラは、イスラエル全土を標的に入れていると、今回も脅迫している。

さらに、イスラエルとヒズボラが戦争になれば、今はすぐ隣のシリアにイランとロシアがいる。限りなく大戦争になってしまう可能性は否定できない。

今回、イスラエルが、大きなリスクを知りながらも、トンネル摘発に踏み切ったのは、それらのトンネルが、イスラエル領内に入り込み、市民たちが、家の下で掘削の音を聞いているところまで来たからである。

一方で、北の盾作戦開始が、ネタニャフ首相に警察から汚職有罪の勧告が出た翌日、というタイミングであったことから、イスラエル国内では、ネタニヤフ首相が、前からあった北部トンネル問題を今、利用したのではと皮肉る人々もいる。

いずれにしても、サイは投げられたわけである。ただ北の盾作戦については、イスラエルが、先手を打ってトンネルを摘発できたと喜んでばかりはいられないということは知っておいたほうがよいだろう。
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混乱のヨーロッパ:ユダヤ人90%が反ユダヤ主義悪化を懸念:EU調べ 2018.12.13

 2018-12-13
ヨーロッパでは、難民の流入とともに、国粋主義や極右派勢力が台頭し、イギリスもEU離脱をめぐって混乱をきわけるなど刻々と、混乱にむかっている。

ヨーロッパでは、社会、特に経済が混乱すると、反ユダヤ主義が台頭するという歴史的パターンがある。現在のヨーロッパが1930年代(ナチス時代)に酷似してきたと指摘するユダヤ人は少なくない。

EUが今年5-6月に、加盟国12カ国(ネット上16000人のユダヤ人が回答)で行った調査結果として10日に公表されたところによると、ヨーロッパ在住のユダヤ人の90%近くが、反ユダヤ主義が、過去5年間で悪化したと答えた。また30%が、昨年中になんらかの嫌がらせを受けたと答えた。

https://www.timesofisrael.com/unprecedented-eu-poll-finds-90-of-european-jews-feel-anti-semitism-increasing/

反ユダヤ主義を経験する国として最も回答が多かったのはイギリスだったが、危険度としては、フランスが最も深刻と目されている。

フランスではここ数週間、マクロン政権に反発するイエローベストの暴動(以下に解説)が各地で発生しているが、Yネットによると、この運動から反ユダヤ主義へ移行するサインがすでに現れているという。

パリとマルセイユの大通りでは、「マクロンは、ユダヤ人のあばずれだ」と書かれたバナーが掲げられた。これとともに広がっているメッセージは、「ユダヤ人がマクロンを大統領にして裏で糸を引いている。金持ちの税金が下がり、今の経済状況を招いたのはユダヤ人だ。」ということである。

またイエローベストの群れがハバッド派のハヌカに招かれ、「ユダヤ人は、我々に食べ物がないときにハヌカを祝っている」と訴えるビデオも、ユーチューブに登場した。(すでに削除済み)

8日土曜、シャンセリゼ通りにあるユダヤ教ハバッド派シナゴーグでは、安全のため、安息日に初めて一時、扉を閉めたという。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5424971,00.html

イスラエルでは、ディアスポラ担当のナフタリ・ベネット氏が、閣議において、フランスにいる20万人のユダヤ人が移住を希望しているのに、イスラエル側にこれを受け入れる用意ができていないと指摘。政府をあげて、受け入れ準備が必要と提案した。

ネタニヤフ首相は、これに賛同し、準備をすすめるよう、指示した。 http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/255906 
<混乱するヨーロッパの現状>

1)フランス:マクロン政権危し

*ストラスバーグ・クリスマスマーケット乱射テロ事件


フランスでは、12日午後8時ごろ、ドイツとの国境に近いストラスバーグのクリスマス・マーケットで、銃の乱射事件があり、これまでに3人の死亡が確認された。

現場は、EU本部から1キロしか離れていない。フランス警察は付近を閉鎖して、700人体制で捜査にあたっているが、まだ犯人は逮捕されていない。

しかし13日、フランス警察は、シェリフ・シャカット(29)を顔写真つきで指名手配した。シャリフは、ストラスバーグ生まれ。強盗で前科があるが、さらに、フランス、ドイツ、スイスをまたにかけて27の罪状で追われている。イスラム過激派として、以前より当局に知られていた人物だった。

フランスでは、2012年にユダヤ人学校が襲撃され、7人が死亡。2015年には、130人もの犠牲者を出すテロ事件が発生している。今回を含め、いずれの事件も、当局がマークしていた人物による犯行であることから、フランスの治安体制の甘さをイスラエルは指摘している。

https://www.bbc.com/news/world-europe-46535552

*マクロン大統領へ市民の怒り爆発:イエローベスト暴動

これに先立つ11月17日、フランスでは首都パリをはじめ、全国において、マクロン大統領の経済政策に反発する市民十数万人がデモを開始した。全員が黄色のベストを着ていることから、イエローベストと呼ばれている。

これに対し、政府が、装甲車や催涙弾などで対処したことから暴力的な衝突となり、市民4人が死亡する事態となった。

きっかけは、マクロン大統領が、地球温暖化政策として締結された「パリ協定」に従い、電気自動車導入促進にむけて、ガソリン税を大幅に上げたことへの反発で、トラック運転手などが中心となってはじまった。

在英ジャーナリストの木村正人氏(元産経新聞ロンドン支局長)が、伝えるところによると、フランスでは、ガソリンが15%もあがったという。日本でいうなら、レギュラー1リットルが今146円円として、168円になったということである。

https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20181204-00106489/

これは特に自動車関連の同道者には大きな打撃である。また、この値上げが、ガソリン自体の値が上がったのではなく、税金として政府に入ったとなると、市民の怒りは政府に向けられることになる。

さらに、フランスでの賃金低下への不満の火がついた。EUでは、国によって、最低賃金にかなりの差があり、それを是正するとして、フランスでの賃金は下がる一方であった。これは、雇用主には有利であっても市民には、怒りにしかならない。

マクロン大統領はあわてて、ガソリン値上げを撤回し、賃金の値上げも宣言したが、もう時遅しである。フランス市民の間で、マクロン大統領は、「現代のマリー・アンドワネット」と評されるほど、庶民のことより高額取得者優遇というイメージができあがっているという。これを是正しない限り、解決はないとBBCは伝えている。

https://www.bbc.com/news/world-europe-46437904

フランスで懸念されることは、極右で知られる国民戦線のマリー・ルペン氏が登場してくる可能性である。そうなった場合、反ユダヤ主義は、加速して深刻になっていくことは確実である。

2)イギリス:ブレキシット(イギリスEU離脱)で大混乱

イギリスは、イギリスのEU離脱を来年3月29日に控えている。メイ首相は、2016年からの2年間の交渉でできあがった合意案について、11日、議会の承認への採択を行うと宣言していた。ところが、ぎりぎりになって、「合意をえられそうもない」との見通しから、採択を延期すると発表した。

https://www.sankei.com/world/news/181211/wor1812110006-n1.html

しかし、3月29日に、スムーズに離脱を発動するためには、来年1月21日までに離脱案について議会の承認を得なければならない。延期を決めたメイ首相は、クリスマス休暇を終えた来年1月7日以降に、採択を行う方針だが、かなりぎりぎりである。

この合意に議会が反対する最も大きな問題は、アイルランド問題。アイルランドは一つの島だが、北の一部はイギリス領のアイルランドで、それ以外は、別の独立国であるアイルランドである。

現時点では、両方ともEU加盟国なので、両者の間に検問や関税はない。しかし、イギリスがEUから離脱すると、イギリス領アイルランドと、アイルランドは、EU非加盟と加盟国の関係となり、関税などが発生することになる。

この点を解決するには、まだまだ時間がかかるとみられるため、メイ首相は、この問題が解決するまで、イギリスは離脱後も関税については残留という形で合意しようとした。ところが、この案は、中途半端で、イギリスがEUの加盟国より低い立場になるとして、反発しているのである。

メイ首相は、改めてEUとアイルランドとの再交渉をするといったが、両者ともに、もう合意はなったのであり、再交渉の余地はないとの考えをあきらかにした。

これを受けて、与党保守党では、メイ首相の不信任投票を行うべきだとの意見が出され、13日、投票が行われた。結果、かろうじて過半数となり、首相にとどまることが決まった。しかし、解決の見通しはたっていない。

フランスと同様、イギリスにも、反ユダヤ主義者として知られる、野党労働党のジェレミー・コルビン氏が控えている。

イギリスがもしこのまま、合意なき離脱に突入して、経済が下落すると、イギリスでも反ユダヤ主義に拍車がかかることは間違いないだろう。

3)民族主義、極右台頭の気配

この他、ヨーロッパでは、ドイツのメルケル首相が、移民受け入れに関して、市民からの怒りを買い、10月に行われた州議会選挙では、メルケル首相のCDU(キリスト教民主同盟)が、敗北。メルケル氏4期目は難しいとの見方がひろがっている。ドイツでは、ネオナチなど極右の台頭が指摘されているところである。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-28/PHBLQP6KLVR401

また、スペインでも12月2日に行われたアンダルシア自治州議会選で、極右政党ボックスが、0からいきなり12議席を獲得。反移民、ポピュリズムの流れがスペインにも広がり始めたとみられている。

確かに今のヨーロッパは、1930年代のナチスが台頭してきた時代に似てきているようである。
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北の盾作戦:レバノン国境で何が起こっているか 2018.12.08

 2018-12-08
4日(火)から始まった北の盾作戦ーレバノン南部クファル・キラ周辺からイスラエル領内に続く地下トンネルの、イスラエル領内での摘発、破壊ーは、悪天候の今もまだ続いている。実際に活動中であったトンネルは、今の所1本だが、他にも複数あるとみられ、作業は数週間からそれ以上に及ぶとみられる。

メトゥラの住民たちは、以前から、トンネル掘削の音を聞いていたので、イスラエル軍がトンネルの摘発を「やっとはじめてくれた」と緊張の中にも安堵の様子である。女性たちは、ハヌカのスフガニヨットを、作業にあたっている兵士たちに差し入れしたりしている。

https://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Watch-The-Mood-in-Metulla-as-IDFs-anti-tunnel-operation-is-well-underway-573773

<ネタニヤフ首相:イスラエルの最大の敵は、ハマス・ヒズボラの背後にいるイラン>

ネタニヤフ首相は、作戦が始まった火曜の記者会見で、数週間前に、ガザから500発近いミサイルと受けながら、大きな反撃に出なかったのは、北部でのこの作戦の直前であったからだと語った。

ネタニヤフ首相は、ハマスの背後にも、ヒズボラの背後にもイランがいるといい、イスラエルにとっての最大の敵はやはりイランであると語った。そのイランが今、シリアに進出してきているので、イスラエルは、防衛のために、まず北部で行動を起こしたと語る。言い換えれば、南部より北部を優先したということである。

イスラエル軍の発表によると、シリアとレバノンの国境にロシアが部隊を配備しており、ヒズボラは、予定ではもっと誘導ミサイルを増やせていたはずだが、誘導できるミサイルはまだ一部にとどまっているとの見解も明らかにした。つまり・・状況が手に負えなくなる前に介入できたと言っているわけである。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5421061,00.html

<国際社会に理解を求めるイスラエル>

ネタニヤフ首相は、4日の記者会見で、トンネルは、イスラエル人に害を与えようとするテロ目的で作られたヒズボラ(イラン支援)のトンネルであると断言。イスラエルの主権を著しく犯すものだとして、ヒズボラにこれを許したレバノンに責任があると訴えた。

https://www.timesofisrael.com/netanyahu-hezbollah-tunnels-part-of-plan-to-capture-parts-of-galilee/

この他、イスラエル軍と、イスラエル外務省は、積極的にトンネルに関する情報とともに、ヒズボラが、2006年のレバノン戦争後に採択された国連安保理決議1701に違反していることなど、映像を通して世界に発信し、国際社会にヒズボラへの制裁を呼びかけている。

●北の盾作戦で摘発したトンネルの情報(2日記者会見):https://www.youtube.com/watch?v=FGMtBLcgMNE

●トンネル(イスラエル領内)に仕掛けたカメラに近づいてくるヒズボラとみられる2人: https://www.youtube.com/watch?v=q6vrSCvjxRo

●トンネル出発地:クファル・カラの現状: https://www.youtube.com/watch?v=iCni8HjUnyo

*クファル・カラにはかつて、キリスト教徒の南レバノン軍(SLA)が住んでいたが、2005年にイスラエル軍が南レバノンから撤退した際、SLAもイスラエルに避難した。その後にヒズボラが入り、民家下をトンネルでつないで、軍事拠点にした。

●ヒズボラが、いかに安保理決議1701を無視して、南レバノンに武力を蓄積したのか: https://www.youtube.com/watch?v=_Ix-0_qn1w8

6日、ネタニヤフ首相は、イスラエルに駐在する25カ国の大使を、現場に近いレバノン南部をみはらすキブツ・ミスガブ・アムに招き、自ら状況説明を行った。

この地域の危険性を説明し、ヒズボラの反応によっては、イスラエルが、レバノン内部に入って、トンネルを破壊しなければならなくなる可能性は十分あると語った。(おそらくそうはならないが。。というニュアンス)

また、同じく6日、イスラエル軍は、UNIFIL(国連レバノン暫定駐留軍)司令官を、摘発したトンネルへ案内するとともに、2つ目に発見したトンネルについても報告し、これについては、レバノン軍とUNIFILが協力して、処分してもらいたいと訴えた。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5421209,00.html

<国際社会の反応>

アメリカは、イスラエルのトンネル摘発、破壊について、全面的に支持すると表明。ドイツとイギリスは、作戦開始の翌日、イスラエル領内にまでトンネルを掘ったヒズボラを非難した。これに続いて、イスラエル駐在するEU大使も、イスラエルは自国を防衛する権利があるとの立場を示した。

<レバノンの反応:トンネルを作らせた覚えはない>

トンネルを作ったのは、明らかにヒズボラである。しかし、ヒズボラは、外国人によるテロ組織でありながら、社会的な貢献もしていることかとからレバノンでは正規の政党である。今のハリリ首相率いる連立政権にも加わっている。したがって、トンネルはヒズボラの責任であったとしても、まずは、レバノン政府に問われることになる。

北の盾作戦が始まった4日、イスラエルは、UNIFILとレバノン政府との3者会談を、国境ローシュ・ハニクラで行った。

イスラエルは、レバノンに対し、トンネルの状況証拠を提示したところ、レバノンのハリリ首相は、イスラエルの領空侵犯で反論したものの、トンネルについては触れなかった。翌日、ハリリ首相は、「レバノンは、ヒズボラにイスラエルに続くトンネルを作らせた覚えはない。」と発表。イスラエルとの武力衝突になる理由はないとの見解を表明した。

ハリリ首相は、親サウジアラビア、つまりはアメリカよりとも考えられ、ヒズボラとは対立する。しかし、国内の安定のため、連立政権には、ヒズボラも抱える難しい立場である。

さらに、レバノンのアウン大統領はヒズボラ派で知られる。アウン大統領は、レバノン軍に対し、国境で作業するイスラエル軍を十分観察するよう指示したとのこと。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5420940,00.html

<ヒズボラの反応:トンネル破壊は問題ではない>

肝心のヒズボラだが、作戦がはじまってすぐに、テルアビブを攻撃するといった脅迫するビデオを発信した。その後、イスラエルが摘発するクファル・カラの施設は、本当にセメント工場であると反論するような情報を出したりしていたが、以後、静かになって、音沙汰なしの感じである。

イスラエルでは、ヒズボラの不気味な静寂に、次の出方と見定めているのではないかと懸念する意見や、予想外にイスラエルがトンネルという主要攻撃ルートを破壊されたナスララ党首は、あわてているのではないかとの見方をする専門家もいる。

イスラエル国家治安委員会のアモス・ヤディン氏は、トンネルがヒズボラの主要戦略ではないので、気を抜いてはならないと警告する。ヤディン氏は、ネタニヤフ首相が、ヒズボラのミサイルの中で、誘導であるのはごく一部であると発表したことに懸念を表明した。

北部情勢において、諜報活動は最も重要な戦略である。ヒズボラが、今イスラエルがなぜその情報を得たのか、ヒントを与えてしまったというのが、ヤディン氏の懸念である。

<今後どうなるのか>

今のとこころ、北部国境の平穏は保たれている。しかし、ぼろぼろと、イスラエルの閣僚たちから、レバノンへ踏み込む可能性を示唆する発言も出ている。

しかし、これについては、たとえヒズボラがテロ組織ではあっても、レバノンの正規の政党である以上、レバノンにイスラエルが入ってこれを攻撃すると、レバノンとの戦争ということになってしまう。これが第二次レバノン戦争の間違いだったと警告する声もある。

むしろ、今、アメリカが、レバノン政府に圧力をかけて、ヒズボラを追い出すようにするのが良いとの意見のある。ヒズボラの追放は、その背後にいるイランの弱体化にもつながるというのである。今後のアメリカの動きに期待したいところである。

聖書には、いつかは、ロシアとイランを含む大軍がイスラエルへ攻め込む「その時」が来ると書かれている。しかし、それがいつかは、神のみぞ知る・・である。まったく予想もしないときに、戦争になる可能性は大いにある。
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イランに立ち向かうアメリカ 2018.12.08

 2018-12-08
イスラエルが、今大きな動きに出られる背景には、トランプ政権が親イスラエルであるという点が考えられる。11月5日、トランプ政権は、イランへの第二弾経済制裁を発動。さすがに原油に関しては、全面的な制裁を一気に開始できず、180日の猶予を設けたが、それでもイラン経済は大きな打撃を受けている。

イラン通貨のリアルは、アメリカが核合意から離脱する前は、1ドル=37000リアルだったが、今は11万9000リアルとなっている。これは、日本で言えば、1ドル=113円が、400円ぐらいになったようなものである。

https://www.presstv.com/Detail/2018/11/28/581387/Iran-rial-US-sanctions-dollar-Rouhani-forex

イランの海外のテロ組織への支援は一段と難しくなっているはずである。しかし、イランも負けてはいない。最近のイラン関連のニュースは以下の通り。

1)イランが中距離弾道ミサイル実験

1日、イランが、核弾頭を装着できる中距離弾道ミサイルの実験を行った。イランからの中距離弾道ミサイルは、中東に位置するアメリカの基地をすべて射程に入れることができる。

アメリカのポンペイオ国務長官は、これは国際社会との合意に違反すると非難した。また、シリア、イエメン、レバノン、イラクのテロ組織への支援もやめていないことも批判した。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5418286,00.html

2)イランと貿易?:中国ファーウェイの女性副社長逮捕

アメリカは、11月5日、イランへの第二弾経済制裁を発動した。原油を含む制裁は、世界への影響が大きいとして180日の猶予を発表している状況だが、イランとの取引については、諸国に厳しく制限を課している。

そのような中5日、中国の通信機器大手ファーウェイの女性副社長が、イランとの取引を継続している疑惑があるとして、アメリカの要請により、カナダで逮捕された。身柄は今後、アメリカへ移されるとみられている。

この件は、今とりあえずの”停戦”とみられた米中の貿易戦争に影を落とすと言われている。しかし、問題は、経済だけでなく、ファーウェイ社の技術が、サイバーセキュリティ上、危険だとみられている点で、アメリカ政府は、すでに情報関連でファーエイ社の利用を停止している。問題は、経済だけではなさそうである。

https://www.businessinsider.jp/post-180962#cxrecs_s

なお、ファーエイ製品については、7日、日本政府も政府関係機関では利用しないと発表した。日本では、ソフトバンクが、ファーウェイ社を使っているが、6日、このタイミングで大規模な通信障害を起こしたことから、今後、同社の株にも影響がでるのではないかと懸念されている。

この件について、イランからの声明はない。

3)イエメン内戦:和平交渉開始

イランとサウジアラビアが代理戦争をしているイエメンでの内戦は、今年で4年目に入る。国連によると、国民の75%が人道支援を必要としており、多くの子供たちが餓死しているほか、1780万人が、次の食事のあてがない状況だという。すべては人的災害であり、人類最大の罪悪を言われている。

https://www.bbc.com/news/world-europe-46462255

これを受けてようやく、国連が仲介となり、スェーデンで、イエメン政府(スンニ派サウジアラビア支援)、フーシ派(シーア派イラン支援)が、初めて顔を合わせて和平交渉を始めた。しかし、何かよい結果が出るとはほとんど期待されていない。

イランの支援を受けているフーシ派の旗には次のように書かれている。”神(アラー)は偉大なり。アメリカに死を。イスラエルに死を。ユダヤ人の上にのろいがあるように。イスラムに勝利を”

https://www.apnews.com/e32442a4c8c24acd9d362c433d5cd10e

地理的にも政治的にも、直接にはなんの関係もない、イエメンのフーシ派から、イスラエルとユダヤ人へののろいが出てくるところに、霊的な恐ろしさを感じさせられる。
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ガザへのカタール現金搬入第2回目をめぐって 2018.12.08

 2018-12-08
北部を優先して、南部で、ガザのハマスへの攻撃をしなかったことは、南部住民には、がまんならないことであろう。そのガザへは、イランと同盟しているカタールが資金提供を始めたことは前回お伝えした通り。

11月に、ガザとイスラエルの停戦に伴い、現金1500万ドルがガザに搬入されたことで、未払いの給料がガザ市民に支払われた。この時1000万ドル分の燃料も搬入され、下水や水の供給に関する改善がみられていると伝えられている。

それからすでに12月分として、6日、カタールからガザへ2回目の現金1500万ドルが搬入された。この資金により、ガザ住民たちは、給料の50%を受け取ることになっているとのこと。今回の受け取りには、ハマス指導者イシュマエル・ハニエが現れたという。つまり、現金はハマスに入ったということである。

しかし、この現金は、イスラエルの承認の元、イスラエル経由で搬入されている。イスラエルは、もしこれが、パレスチナ自治政府経由であれば、ガザに現金は届かないはずだ(着服するので)と、イスラエルの好意を強調している。

https://www.timesofisrael.com/hamas-workers-collect-salaries-as-qatar-injects-more-cash-into-gaza/

にもかかわらず、7日金曜には、相変わらず、ガザ国境に1万人が集まって暴動を行い、イスラエル軍との衝突で33人が負傷した。

https://www.i24news.tv/en/news/international/middle-east/190464-181207-33-palestinians-injured-in-gaza-border-protests-health-ministry

今回、イスラエル政府は、北部情勢を優先して、南部を後回しにしたわけだが、ハマスにこれほどの現金を、しかもイランと同盟関係にあるカタールから引き渡して大丈夫なのか。。。とは素人でも思うことである。

これについて、イスラエル政府は、現金は「ガザの人道支援のため」と説明している。しかし、南部住民は、こうした政府の方針に怒りを隠していない。

8日、安息日開けには、「ハマスにハヌカの贈り物は不要だ」とするデモを行う予定になっている。
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エルサレムのハヌカ:ベツレヘムのクリスマス 2018.12.05

 2018-12-05
イスラエルでは、12月2日(日)日没から10日(月)まで、ハヌカの祭りを祝っている。毎年のように、通りのあちこちに9枝の大きなメノラーが設置され、毎日一本づつ点灯される。町には、いたるところに華やかなスフガニヨット(揚げパン)が売られている。時に無料配布も行っている。

エルサレム市内では、毎日、旧市街でユダヤ地区がライトアップ。考古学公園のダビデの町、聖書博物館から、六日戦争を記念する弾薬の丘ミュージアム、ヤド・バシェムから国立公園など、それぞれの場所で、様々なファミリー向けフリーのイベントを行っている。

各地の公民館でも3日、フェスティバルが行われた。オープンマーケットのマハネイヤフダでは、ビールで騒ごう!というイベントもあった。

また今年は、3日にディアスポラ(イスラエル外ニスムユダヤ人)6000人が、エルサレムでパレードを行った。ニューヨークのメイシーズのような巨大なバルーンを浮かべてのマーチで、その後は、旧市街すぐ横のスルタン・パークでコンサートが行われた。エルサレムはにぎやかに楽しくやっている。

<ハヌカは神の奇跡と勝利を思う時>

紀元前198年から、エルサレムは支配していた強大なセレウコス朝シリアに支配された。176BCから王座についたアンテイオカス4世は、特に反ユダヤの王で、神殿でブタを犠牲に捧げて汚した上、ユダヤ人の律法をことごとく守らせないようにした。

聖書の価値観を否定し、ヘレニズム、人間の文化を押し付けたという点から、この王は反キリストの型ともいわれる。ハヌカは、そのシリアを、ユダヤ人のマカビー一家(父親と5人の息子)が撃退し、エルサレムとその中心であった神殿を解放した奇跡を記念する。

勝利の後、マカビー一家は、10年近く異邦の偶像礼拝に汚された神殿をきよめ、主の神殿として捧げなおした。これを「宮きよめ」と言う。この時、神殿のメノラーには油が1日分しかなかったのに、8日間消えなかったという伝説が伝わる。

これを記念して、ハヌカには、通常は7本枝のメノラーを9本枝にして、毎日1本づつ、8日間、明かりをともす。勝利は勝ち取ったのではなく、神が与えてくださるものであることを思う。同時に、再献身の時でもある。

<イエス・キリストとハヌカ>

イエス・キリストも、ハヌカの時にエルサレムで神殿を訪れている。新約聖書ヨハネ10:22-23によると、「宮きよめ」の祭りの時に、イエスが宮(神殿)の中のソロモンの回廊を歩いていたと書かれている。

ハヌカは、ユダヤ人の神、律法への思い、信仰、愛国心が高まる時期である。この時期に、しかも神殿の中で、パリサイ派たちは、イエスに向かって「メシアならはっきりそう言え。」と詰め寄っている。ユダヤ民族への熱い思いから、イエスが否定しないことを知っていて、はじめから石打にする気だったのだろう。

イエスは、「神である父と私は一つである。」と答えた。パリサイ派たちは、これを許しがたい冒涜と捉え、イエスを石打にしようとするが、イエスは彼らの手から逃れたと書かれている。

<ホロコースト時代のハヌカ>

ホロコースト時代のユダヤ人たちは、マカビー時代と同様に、ユダヤ文化を完全否定するナチスの圧政の下にいた。

ナチスの圧政は、1933年から1945年の12年も続いた。はじめはユダヤ人ボイコットから始まり、ゲットー、そしてガス室と、事態は徐々に悪化する。それでも、ユダヤ人たちは、自分たちの時代にもマカビーがまた来るだろうかと思いながら、毎年ハヌカを祝っていた。

https://www.yadvashem.org/yv/en/exhibitions/hanukkah/index.asp (ハヌカ写真:戦争前、中、後)

1942年、ポーランドで、まだ若い少女であったフェラ・チェプスさんが、日記にハヌカの日のことを書き残している。ゲットーの中で、家々で隠れるようにしてひそかにハヌカが祝われている様子、かすかに聞こえるハヌカの歌声など・・・すぐに消さなければならないろうそくを前に、それでも毎年またハヌカは祝われていたと書いている。

イスラエルという父祖の地、自由の地でのマカビーの活躍を思い、もしかしたら、新しい時代のマカビー、地下組織が私たちを解放してくれるかも!とも書いている。
フェラさんは、パレスチナへの移住の準備をしていた。

ハヌカを日記に記してから3年後の1945年、フェラさんは、グロス・ローゼンに属する強制労働収容所にいた。敗北が近づいていたナチスは、ソ連軍が近づいてくるのを受けて、女性たちを、1-2月の冬の凍てつく中、800キロも歩かせた。これはデス・マーチと呼ばれ、道中で衰弱死させて殺すことを目的としていた。

フェラさんは、デス・マーチで、1945年5月の解放まで生き延びたが、その翌日、力尽きて死亡した。ホロコーストの4年間を書き綴った日記は、デス・マーチの間もフェラさんのリュックに入っていて、今に残されたのであった。

ホロコーストで死んでいったユダヤ人たちが夢見ていた通り、今、ユダヤ人の国があり、そこで盛大にハヌカが祝われている。これまでも、これからも、ユダヤ人たちは、何があろうが、ハヌカを祝いつづけていくだろう。

エルサレムでは、3日、リブリン大統領が、ホロコースト生存者50人とともにハヌカの2日目を祝った。

<石のひとりごと>

ユダヤ人は、自分とその生きている時代を超えて、民族とその将来を見て、それを希望にできる人々である。それはおそらく今も変わっていない。地上ではユダヤ人であったイエスが、十字架での自分の苦しみと死の向こうに見ておられたのも、未来の全人類の救いであった。

私自身に、自分は死んでも、日本民族の将来の勝利を見て満足できる心はあるだろうかと考えさせられる。。。

<ちょっと悲しいベツレヘムのクリスマス>

エルサレムでハヌカの準備が進む中、そこから車で30分ほどのところにあるパレスチナ人の町ベツレヘムでは、クリスマスの準備が行われている。11月29日、ベツレヘム市のクリスマスに関する記者会見に行ってきた。

今年のテーマは、Message of Christmas is being and existence (クリスマスのメッセージは、(パレスチナ人が)ここにいるということ)であった。記者会見は、アラビア語(英語通訳)であり、取材に来ているのは、ほとんど全員アラブ系、パレスチナ系メディアであった。

記者会見には、ベツレヘムのアントン・サルマン市長(キリスト教徒)、パレスチナ自治政府のルラ・マヤ観光相、カーメル・ハメイド知事もコメントを述べた。どの人も、まずは、イスラエルの”占領”とネタニヤフ首相を非難した。

ハメイド知事は、主イエスと言っていたので、クリスチャンのようだが、今年のクリスマスは、特にアメリカ大使館がエルサレムに移動した年なので、特にパレスチナ人の一致、パレスチナ人の存在のイメージを世界に発信しなければならない年だという点を強調した。

http://imemc.org/article/holiday-preparations-well-underway-in-bethlehem/

確かに、ベツレヘムは、周囲を壁で囲まれ、検問所があって、自由にエルサレムへも出入りできないので、「占領」と感じるのであろうが、ベツレヘムは、最も多くのテロリストをイスラエルに送り込んできた町の一つ。イスラエルは、ベツレヘムによって、多くの市民を殺された。壁によって、テロ事件は大幅に減った。何もないのに、イスラエルが意地悪で、壁や検問所を設けているのではない。

2016年、当時のベラ・バブーン前ベツレヘム市長は、記者会見を英語で行い、クリスマスのテーマは、少なくとも希望と平和だと言っていた。それが今年は、記者会見は、すべてアラビア語で、ベツレヘムはアラブであるという自己主張をはかるとともに、テーマもさらに政治的になっていた。

しかし、クリスマスのメッセージは、「きょう、ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになりました。こお方こそ主キリストです。」である。

言い換えれば、ユダヤ人の救い主が、ダビデの町(ユダヤ人の町)ベツレヘムでうまれたということである。クリスマスを認めるということは、ベツレヘムはユダヤ人の町であったということもまた然りなのではないか。

ベツレヘムが、クリスマスの本来のメッセージ、福音*からどんどん遠ざかっているようで、なんとも悲しいというか、やりきれない記者会見であった。

ベツレヘムでは、12月1日に大きなクリスマスツリーの点火が行われた。2日には、クリスマスマーケット、聖歌隊コンサート・・と様々なイベントが続く。24日には、今年もアッバス議長も出席して生誕教会隣のカトリック教会でミサが行われる。

しかし、パレスチナ自治政府のルラ・マアヤ観光相によると、ベツレヘムの観光はここ数年でかなり回復しており、観光客は、数時間、教会などを見て回るだけで、宿泊はイスラエル側というのが通常であったが、最近は、ベツレヘムに宿泊する観光客が増えて、満員御礼だという。

https://www.timesofisrael.com/thousands-gather-in-bethlehem-for-christmas-tree-lighting/

*福音(ゴスペル)

福音(ゴスペル)とは、一般的にキリスト教と考えられているが、実はユダヤ教の土台の上に成り立っているのであり、ユダヤ教を無視しては語れないということはあまり知られていない。

ユダヤ教の中心事項は、聖書によれば、世界の民族の中で、神と契約を結んだユダヤ人が、その際に与えられた律法を守って、神との関係を維持・発展することにより、世界もまたこの神につながり、本来の姿を回復していくという考えである。(オラン・ティクーン)

この教えの頂点にあるのが、大贖罪日(ヨム・キプール)。一年に一回、この日に、イスラエルの国と個人、それぞれが、自分には罪がある(律法を完全に守れていない)とみとめ、悔い改めをする。そうしてその罰を受ける身代わりとして、おのおのエルサレムの神殿で、毎年、犠牲の動物をささげることになっていた。これが旧約聖書である。

この後に来るキリスト(救い主)とよばれるイエスは、この教えを基盤に、エルサレムにおいて、自らがその犠牲となって、罪の罰を受け、十字架上で死なれたということである。しかし、イエスは、動物ではなく、神の子である。死んでから3日目によみがえった。

これにより、毎年ささげものになる動物と違って、一回で永遠に、人類すべての罪の身代わりの役割を果たすという新しい契約がもたらされたことになった。興味深いことに、イエスの十字架の後、約40年後には、神殿がローマ帝国によって破壊され、今にいたるまで、もはや動物を罪の身代わりにすることはできなくなっている。

イエスの十字架と復活が世にもたらされて以降、ユダヤ人でも異邦人でも、イエスの十字架が罪の贖いになったと信じて受け取る者は、神との関係を完全に回復することができる。罪の結果として死ぬこともなく、永遠のいのちを受けると聖書は説いている。これを「救い」と言う。

早い話が、罪の赦しと永遠の命の代価をイエスが払ってくれたので、私たちはただ受け取れば良いということである。個人の良い行いや働き、成果によるものではなく、ただ受け取ることだけであることから、良い知らせ、「福音(ゴスペル)」と呼ばれるのである。

ところが、これがなかなか、あまりにも話が良すぎて、人間基準のヘレニズム思考には理解不能で、受け入れがたいのである。福音が、ヘレニズムを超えるという意味では、ハヌカとクリスマスが同じ頃に来るというのも、ある意味興味深いかもしれない。。。
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総督ピラトの指輪発見か!? 2018.12.05

 2018-12-05
ハヌカとクリスマスの前に、重要な考古学的な発見があった。ベツレヘム近郊のヘロデオン(ヘロデ大王の墓で宮殿の遺跡)で、50年前にみつかっていた銅の指輪が、総督ピラトのものである可能性が出てきた。

総督ピラトは、イエスを十字架刑につけることを許した当時、エルサレムを統治していたローマ帝国の総督である。

この指輪は、50年前に、ヘロデオンで発見されたものの、そのままになっていたもので、考古学者ポラット氏がよく磨いてみるよう指示したところ、ちょっとゆがんだ文字で「ピラトのもの」という文字が出てきたという。

ただし、ピラトという名前は、ユダヤ人でもローマ人でもありうるため、新訳聖書に出てくるポンテオ・ピラト提督かどうかは、完全には特定はできないという。指輪が金ではなく銅であり、それほど高級ではないことも注目される点である。

しかし、この指輪が見つかった場所が、ヘロデオンという王家の敷地内であったことや、ピラトが、日常の業務用には、金ではなく銅の指輪を使っていた可能性もあることから、ポンテオ・ピラトのものである可能性を否定することもできない。

もし、ピラトのものであれば、新約聖書に登場するピラトが実在したことを証明する2つ目の考古学的証拠となる。

一つ目は、ピラトという名前が彫り込まれている石板で、カイザリヤのヘロデ大王が使っていたとみられる宮殿跡近くで発見された。

ヘロデ大王、総督ピラトが実在していたということは、新約聖書が現実の話を記録したものであるということであり、イエスもまた確かに実在したということにつながる。福音の確かさを証明する貴重な証拠の一つになりうる発見である。

https://www.timesofisrael.com/2000-year-old-ring-engraved-with-pilate-may-have-belonged-to-notorious-ruler/
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警察がネタニヤフ首相を汚職で起訴を勧告 2018.12.5

 2018-12-05
現在、首相、外務相に加えて、国防相も務めることになったネタニヤフ首相だが、3件の汚職疑惑がある。その中の一つで、ケース・4000と呼ばれる件について、2日、警察は、十分な証拠を入手したとして、ネタニヤフ首相夫妻を起訴すべきとの勧告を発表した。

ケース・4000とは、ネタニヤフ首相が、イスラエル最大の、ベゼック・コミュニケーション会社が運営するメディア、ワラに、自身に都合の良い記事を出してもらうため、ベゼックの主要株主サウル・エロビッチ氏に便宜を図っていたというものである。記事だけでなく、エロビッチ氏から賄賂をとっていたこともあると警察は言っている。

ネタニヤフ首相は、これについて、完全に否定。政治家がメディアと関わることはめずらしいことではないと一蹴し、自身に対する陰謀だと反論した。また、ちょうど警察庁長官が、交代する直前の摘発はタイミングよすぎると批判した。

<今後どうなっていくのか:最終決断は2019年末予定>

ネタニヤフ首相夫妻起訴への報告は、これから司法検事によって審査され、その後、マンデルビット司法長官が、起訴するかどうかの最終決断を下す。マンデルビット長官は、疑惑3件すべてを精査する予定で、最終的な決断の発表は、2019年末とみられる。

2019年末といえば、ネタニヤフ政権が任期満了となり総選挙が予定されている時期である。しかし、今回の警察の報告により、連立政権から離脱する党が出てくる可能性もあり、そうなるとまた早期総選挙という騒ぎになる。

一難さってまた一難というのが、今のネタニヤフ政権であるが、今の所、他にネタニヤフ首相ほどのリーダーシップをとれる人物もいないので、結局このまま・・ということになるのかもしれない。

https://www.timesofisrael.com/police-recommend-bribery-charges-for-netanyahu-in-case-4000/
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ガザ停戦その後:カタールの資金で伝染病阻止か 2018.12.5

 2018-12-05
イスラエルとハマスの間で交わされた合意では、国境でのデモを沈静化させることが含まれていたことから、ハマスは、できるだけ国境に近づかないようにと指導したている。しかし、11月30日金曜、ガザ国境では、相変わらず1万人がデモに参加し、イスラエル軍との衝突で、17人が負傷した。

https://www.timesofisrael.com/10000-palestinians-protest-along-gaza-border-14-said-wounded-by-idf-fire/

停戦と並行して、カタールが調達した1500万ドルと、燃料1000万ドル分について、イスラエルでは反発もあったが、この資金により、ガザでは、下水処理が再開され、浄化された水が市民に配給されはじめたという。これにより、伝染病が予防され、間接的にはイスラエルの益になったかもしれないとのニュースが入っている。

Yネットによると、これまでガザ市民が、水道の供給を受けていたのは週に1回程度だった。今は2-3日に一回になっている。しかしそれでもまだ伝染病発生の可能性があるとして、国連は、ガザ市民へのワクチンを要請。ワクチンは、イスラエルからガザへ搬入されたとのこと。

カタールは、この資金供給を毎月6ヶ月継続することになっている。計1億5000万ドル(約170億円)になる。カタールの資金がテロではなく、ガザ市民のために使われつづけることを願うばかりである。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5414906,00.html
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急変する北部情勢:ロシアによるシリア対空防衛完成か 2018.12.5

 2018-12-05
11月30日、シリア政府メディアSANAは、ダマスカス南部の町アル・キスワが、イスラエルからのミサイル攻撃を受けたため反撃し、ミサイル4発とイスラエルの戦闘機を撃墜したと発表した。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5417116,00.html

アル・キスワは、イスラエルとの国境からわずか50キロ地点で、イランの軍事拠点があるとみられている。5月にもイスラエルによるとみられる攻撃で、イラン人8人とシリア人7人の計15人が死亡した。

さらに、その半年前にも同じ地域が攻撃されている。したがって、今回もイスラエルによる攻撃であった可能性は高い。しかし、イスラエル軍報道官は、これを否定。戦闘機の撃墜も否定した。

<ロシア:シリアの対空防衛完成か?>

シリアのイスラエル戦闘機を撃墜したという発表が本当なのかどうかは、知る由もないが、ロシアがいよいよシリアに地対空ミサイルS300, S400の配備を完了したのではないかとの見方があり、懸念が広がっている。

https://www.presstv.com/Detail/2018/12/02/581738/Russia-Syria-air-defense

シリアの地対空攻撃能力がたかまっていることは、9月に、ラタキアでヒズボラへの武器移送を阻止しようとして攻撃しに来たイスラエル軍機の迎撃を試みた時に、あやまってロシア機を撃墜したことからも懸念されていた。

この時、ロシア人乗組員15人が死亡したが、プーチン大統領は、「これは事故であった」と鶴の一声を発し、大きな衝突を避けた。その代わりに、堂々と、シリアにS300の配備を開始したとの声明を出したのであった。

それから2ヶ月。もし、今、ロシアが、シリアにS300の配備を終えたとしたら、今後、イスラエルが、イランからヒズボラへの武器移送を事前に攻撃したり、シリア領内でのイランの軍事行動を察して先手を打ったり、シリアの核兵器開発が疑われる場合の先制攻撃は非常に難しくなる。

ロシアがシリアの地対空防衛を強化するのは、中東でのアメリカの進出を食い止めるためである。これまでのところ、ロシアは、イスラエルについては、まだ協力関係を維持しているようだが、これは、シリアでイランが強くなりすぎないようにするためと考えられている。

<不気味なロシアの進出:ウクライナ危機再び>

シリアで存在感を増し加えているロシアだが、ウクライナでもロシアの進出が、緊張感を増している。

11月25日、黒海に面するオデッサを出て、クリミア半島を回り、アゾブ海に向かっていたウクライナの砲艦2隻と牽引船の計3隻が、アゾブ海への入り口、ケルチ海峡で、ロシア海上保安船と衝突。ロシアは戦闘機やヘリコプターまで動員して、ウクライナ船に発砲し、ウクライナ人3-6人が負傷した。

その後、ウクライナ船3隻と、乗組員24人はロシアに拿捕された。24人はまだロシアに拿捕されたままである。

ロシアは最初、ウクライナ船が、ロシア領海を侵犯したと主張したが、ウクライナは、これはロシアの挑発だと主張した。今、2014年以来のウクライナ危機再来と懸念されている。

http://time.com/5469395/ukraine-defense-reservists-russia-tension/

*東西冷戦の発火点

ウクライナ砲撃船が向かっていたアゾブ海は、クリミア半島とケルチ海峡に挟まれた湾で、ウクライナ、親ロシア勢力、ロシアの3者がみな湾へのアクセスをもつ、複雑な湾である。問題は、黒海からこの湾に入るには、狭いケルチ海峡を通るしかないということである。

ロシアとウクライナは2003年に、海峡の通過の自由に合意しているが、2014年にロシアが、クリミア半島を併合すると、数年後には、ロシアがケルチ海峡に武力を強化し、通過する船の検問するようになっていた。これにより、アゾブ海に面するウクライナの港は、閑古鳥がなくようになり、経済的な打撃となっていった。

2018年には、ロシア領からケルチ海峡をまたいで、クリミア半島に至る橋が完成し、ロシアはますますこの湾での支配力を高めるようになっていた。

ウクライナは国際社会に、ロシアの動きを訴えたが、西側諸国はこれをとりあげなかった。今回の衝突でも、ウクライナは、ロシアが、アゾブ海を占領し、ウクライナへ侵攻してくる可能性があるとして、武力支援を要請したが、欧米は非難しつつも、これに応じる様子はない。

ウクライナが、単独でロシア軍に立ち向かえるはずもないのだが、ウクライナのポロシェンコ大統領は、予備役の招集と、国境の防衛を強化。東ウクライナとロシアとの国境を武装地帯とし、ロシア人男性(16-40歳)のウクライナへの通過を禁止する措置を発表した。期間は今の所30日間とされる。

ロシアは、これを、「緊張を高めるばかげた行為だ。」と言っている。また、ケルチ海峡の通過をロシアが妨害しているというウクライナの訴えも否定した。

ちょうどこの時、アルゼンチンでG20が行われたが、トランプ大統領は、この問題を西側への挑戦であるとして、予定されていたプーチン大統領との2者首脳会談をキャンセルした。

https://www.bbc.com/news/world-europe-46340283
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ヒズボラの地下トンネルを摘発:北の盾作戦開始(重要) 2018.12.5

 2018-12-05
4日朝、イスラエルは、「北の盾作戦」と称して、北部レバノンからイスラエル領内に続く地下トンネルを破壊する作業を開始したと発表した。

これにより、レバノンのクファル・キラ村からイスラエルの町メトゥラに向かって掘られ、イスラエル領内に40メートル入り込んでいたトンネルが摘発され、破壊された。メトゥラの居住地からはまだ十分遠いので、住民への危険はないと、イスラエル軍は発表している。

イスラエル軍によると、トンネルの全長は200メートル、深さ25メートル、高さ2メートル、幅2メートルで、ハマスのトンネルより、かなり大きい。トンネル内部には、通信機能が備えられており、現実に使用中のトンネルとみられる。他にもトンネルはあるが、今の所、使用中だったのはこのトンネルだけとのことである。

レバノンとイスラエルの国境は、地盤も硬く、基本的に砂の南部ガザより、地理的に険しい。トンネルをここまで掘るのに2年はかかったとみられる。

心配されるのは、レバノンからの反撃だが、イスラエルのメディアによると、イスラエルは、作業に関して、イスラエルとレバノンの間を監視するUNIFIL(国連レバノン暫定駐留軍)に事前連絡しており、UNIFILを通じて、レバノン側にも連絡されていたもようで、今の所、国境の平穏は保たれている。

ヒズボラの地下トンネルについては、今発見されたのではない。ずっと以前から、地域住民が地下での掘削の音を聞いていたし、イスラエル軍も、やがてヒズボラが、北部国境の町に侵入して、ガリラヤ一帯を占領しようとしているという情報は把握していたのであった。

ではなぜこのタイミングかだが、ロシアがシリアの対空能力を上げていることはじめ、以下のようなことが発生し、北部情勢が、変わりつつあるということがあげられる。

1)イランからレバノンへ民間機で武器直送で緊張

シリアの内戦が終焉し、ロシアからイラン、イラク、シリア、レバノンと、地中海まで地つづきでつながるという状況になってきた。イスラエルにとってはきわめて危険な事態である。ロシアも加わって、北から一気に攻撃される用意ができたようなものだからである。

このような中、11月29日、軍事物資を満載しているとみられる民間機が、イランから、イラク上空を通って、レバノンのベイルートに到着した。アサド政権が、シリア上空の支配権を取り戻したことで、イランはレバノンまでの空路を使えるようになって、ヒズボラに武器を空輸できるようになったのである。

https://www.timesofisrael.com/tehran-beirut-cargo-flight-sparks-concerns-iran-arming-hezbollah-directly/

これまでイランは、武器をいったんシリアに搬送し、そこからヒズボラへ搬送していた。このため、イスラエルは、武器がまだシリア領内にあるうちに、破壊することができた。これについては、ロシアがシリアの地対空防衛能力を強化したことで、今、かなり困難になったといえる。

この上に、軍事物資が、イランから空輸で直送されるようになれば、ヒズボラの武力は一気に高まり、懸念されてきたイスラエル北部への侵攻作戦が、いよいよ現実味をおびてくることになる。トンネルは今のうちに破壊しておかなければならない、ということである。

幸い、アメリカがイランへの制裁を再開してくれたので、イランは資金不足に陥っており、ヒズボラへの武器搬入は、かなり制約されているとみられる。

2)ヒズボラの脅威:精密な誘導ミサイル導入

イランからレバノンへの武器の直送を受けて、イスラエル軍は、ベイルートの飛行場の上空写真とともに(イランからの空輸は把握しているという意味)、アラビア語にて、「レバノンは、イランからの飛行機を受け入れるべきではない」との警告を出した。言い換えれば、これを続けるならイスラエルは攻撃するということである。

すると、ヒズボラは1日、「イスラエルが攻撃してくるなら、テルアビブを攻撃する。」と告げるプロパガンダ・ビデオをアップしかえしてきた。テルアビブやイスラエル軍を標的にしているというような、心理作戦をねらったクリップである。

これに対し、イスラエル軍は、「草の家に住む者が石をなげるべきではない。」との声明を出した。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5417749,00.html

ヒズボラはすごんでいるが、実際にはイスラエルを攻撃することはないとみられている。トンネルの存在が明らかになった今、もし、今ヒズボラが攻撃を開始すれば、イスラエルにレバノン領内のトンネルをも破壊する道理をあたえてしまうからである。

しかし、今回の北の盾作戦により、ヒズボラのイスラエル北部への侵攻は防いだとしても、本来の脅威、15万発もあるみられるヒズボラのミサイル攻撃の可能性はそのままである。

シリア内戦が終焉に向かっている今、ヒズボラの脅威は、いよいよイスラエルに向けられるようになってきているので、ヒズボラが、ミサイルを撃ち込んで来る可能性はあると懸念する分析家もいる。ヒズボラが、すでにイランから精密な誘導ミサイルを入手しているとの情報もあり、非常に危険である。

<アメリカとの協力:ポンペイオ米国務長官と会談>

ネタニヤフ首相は、3日、北の盾作戦開始に先立ち、急遽、ブリュッセルのNATO本部を訪問中のポンペイオ米国務長官を訪問し、厳しい北部情勢についての報告を行った。

https://www.timesofisrael.com/meeting-pompeo-netanyahu-said-to-threaten-lebanon-if-no-clampdown-on-hezbollah/

ネタニヤフ首相とポンペイオ国務長官の会談の内容に関する発表はないが、レバノンがイランからの武器直送受け入れをやめないなら、イスラエルはレバノンを攻撃すると伝え、レバノン政府に圧力をかけるよう、要請したとも伝えられている。

中東情勢においては、今はアメリカよりロシアの方が影響力がある。これまでのところ、イスラエルは、シリア領ないでのヒズボラへの武器搬送を阻止する攻撃を続けるため、シリアで実質支配力のあるロシアの、黙認を得なければならなかった。

しかし、今や、ロシアによって、シリアの対空能力が高度化したことや、ヒズボラへの武器が、イランから直接空輸になるとなると、もはや、シリアでこれを阻止することができなくなる。となると、もはや、ロシアに取り入る時代は終わり、頼れるのは旧友アメリカということになるのかもしれない。

<石のひとりごと>

シリア内戦がアサド大統領の勝利で終わるみこみとなり、サウジや湾岸諸国の変化も合わせて、中東が大きく変わり始めている。いよいよイスラエルの北からロシアを筆頭としてイランを含む大軍勢が、イスラエルに攻め込むゴグ・マゴグの戦いの形が、形作られているようで緊張する。

イスラエルはそれに勝利するのであろうが、大変な被害が出ることだろう。主のあわれみが、イスラエルとその周辺諸国の人々にあるように・・
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