パレスチナ・イスラエル・接点のない紛争 2014.11.22

 2014-11-22
今日で、シナゴーグでのテロから4日目。エルサレム市内では、テロの可能性に対して政治的にも軍事的にも抜本的な対策案がない - すなわち終わりが見えないまま、これまで通りの日常が続いている。

警戒態勢がとられているようだが、少しでも落ち着けば警察はすぐに引き上げるので、ものものしい雰囲気はない。今のところ、エルサレムは、いつもと同じような様子である。12月のハヌカを控えて、色とりどりのスフガニヨット(揚げパン)が店頭に並び始めている。

4人のラビが虐殺された現場のシナゴーグでは、恐れるどころか逆に毎日、大勢のユダヤ教徒たちが来て、神に祈りが捧げられている。

水曜には、テロ現場に最初に駆けつけて負傷し、死亡した兵士ジダン・サイフさん(38)の葬儀が出身地のガリラヤ地方の村で行われた。

ジダンさんはドルーズ教徒だった。”ユダヤ人を守るために命を捧げた異邦人”として、葬儀にはリブリン大統領、アハロノビッツ治安相、ダニーノ警察庁長官に加えて、スファラディのチーフラビも参列。超正統派ユダヤ教徒たちは、ジダンさんに敬意と感謝を示そうとして葬儀への参列を呼びかけ、大型バスで数千人が葬儀に参列した。

<東エルサレム・西岸地区では衝突続く>

昨日は、ムスリムたちが神殿の丘で礼拝する金曜日だった。ハマスは、「怒りの日」だとして、相変わらずパレスチナ人民衆に、イスラエルの治安部隊に対して立ち上がるよう、呼びかけた。

エルサレムのイスラム指導者ラエード・サラも、第三インティファーダが始まったとして、ユダヤ・サマリア地域で暴力行動を起こすよう呼びかけた。 http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/187693#.VHA0baW9DCs (警察はまだ第三インティファーダだとは認めていない。)

イスラエル政府は、神殿の丘を開放するべきか、石を投げる若者を神殿の丘に入らせないよう年齢制限するべきか、ぎりぎりまで悩んでいたが、最終的には、完全に開放した方が衝突を避けられると判断。警戒態勢を維持しつつ、ムスリムたちの礼拝を制限しなかった。

結果、神殿の丘周辺、旧市街では衝突はなかったが、ヘブロンなど西岸地区各地で、パレスチナ人のユースが検問所にいる治安部隊に対して石や燃えるタイヤを投げつけるなどして衝突が発生している。

シナゴーグ・テロの犯人の出身地、東エルサレム南部のジャベル・ムカバでは、ほぼ毎日、アラブ人が、治安部隊に石、火炎瓶、爆竹などを投げつけて、衝突が発生している。

アルーツ7(チャンネル10)によると、警察は、犯人2人の遺体を、まだ家族に返還していないという。つまり、遺体は人質のようなもので、「もしテロをやめないなら、遺体は帰さない。」ということである。ジャベル・ムカバでは、家族や仲間たちが、イスラエルと徹底的に戦うと叫び、木曜は特に大きな紛争になった。    http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/187664#.VHAqxKW9BCs

ところでジャベル・ムカバは、記者宅から歩いて20分ぐらいである。夜8時すぎぐらいになると、紛争現場自体は見えないのだが、東側のアパート群の向こうからパンパンと、花火のような爆竹か何かの音が聞こえる。時にどかんという、けっこう大きな音がしたりする。

すぐそこで本物の紛争になっているのだが、その音のこちら側にはユダヤ人の普通のアパートや住宅があって、いつもとかわらない、ほのぼのとした明かりが点々と見える。日々の営みが変わらず続けられている。そういう自分も紛争の音を聞きながら、宿題をやっている。

こうした紛争の音は、だいたい夜10時ぐらいまでには、終わっている。パレスチナ人も寝るのだろう。日常になってしまい、もはやヘリコプターも来ないし、いちいちニュースにもならない。毎晩、暴動を起こしているパレスチナ人は、どこか自分で自分の首を絞めているのではないかと気の毒な感じがする。

<暴動をあおるもの>

これらの暴動を煽っているのは、まずは、「イスラエルが神殿の丘の現状維持を変えようとしている。」というハマスなどによる、宗教的な扇動と危機感があげられる。

ネタニヤフ首相は、内外に向かって「神殿の丘のステータスは変えない。」と明言し、ムスリムの礼拝の自由を保障しているのだが、一部の若いパレスチナ人たちは、神殿の丘を解放すること、さらにはエルサレムをユダヤ人から解放する時が来たと信じているのである。

また、パレスチナ人権保護団体は、そもそも自動車によるつっこみテロは事故だったといい、その場で射殺する治安部隊は過剰防衛だと非難している。

その上で、ここ数週間の間に治安部隊との衝突で死亡、負傷したパレスチナ人犠牲者の経緯をくわしく報じ、パレスチナ人たちの怒りを増長させている。暴動を繰り返しているのは、パレスチナ人にとって、この戦いは正義の戦いだと思っているのである。

また問題は、こうした大人の扇動に10歳代の子供たちが影響を受けていることである。西岸地区では、8才から12才ぐらいの子供たちが「インティファーダだ。最後まで戦う。」と叫び、フル装備の大人のイスラエルの治安部隊に投石している。

*未然に防がれた事件

イスラエルでも警察、治安部隊、諜報機関は、互いの情報交換の悪さ、協力性のなさが指摘されているが、それでも多くのテロを未然に防いでいる。

今日は、ハマスによるイスラエルのリーバーマン外相をミサイルで殺害する暗殺計画が未然に発覚した。ハマスは、8月のイスラエルのガザ攻撃への復讐だったと言っている。ハマスはこの直後も、イスラエルの閣僚はみなターゲットだと豪語した。
http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/187706#.VHAhyKW9BCs

大量の火炎瓶や爆竹、大型ナイフなど、治安部隊に向かって使われると思われる物資が、中国から東エルサレムの個人宛に届けられるところ、未然に発覚。警察に押収された。

また、金曜午後からは雨が降り始めた。来週1週間、天気はぐずつくと予想されている。しばらくは火炎瓶も爆竹も使いにくいということである。間が空いて、怒りが少しでも静まることを願う。

<増長する差別意識と暴力> http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4594415,00.html

エルサレム市内だけでなく、イスラエル各地では、ユダヤ人、アラブ人の間で、互いを敵視する空気が広がり、アラブ人を雇わなくなる傾向や、双方からの個人レベルでの暴力が散発している。

金曜、ユダヤ教セミナリー学生2人が、オリーブ山麓の学校近くで袋だたきにされた。一方、一瞬出たニュースだが、クファルサバで、35才のパレスチナ人が遺体で発見された。この他、イスラム教指導者がユダヤ人に酸をかけられる、アラブ人タクシー運転手がユダヤ人少女らから暴行を受けるなどの事件も発生した。

Yネットの調べによると、テロを恐れているのはユダヤ人市民だけではない。一般のアラブ人市民もユダヤ人からのテロと、西エルサレムでの職を失うことを恐れているという。http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4594415,00.html

シナゴーグでのテロ以来、ユダヤ人の元で働くアラブ人たちの多くは、欠勤したままである。エゲッド(バス会社)ではアラブ人運転手が数百人欠勤し、バスの本数がかなり減っていた。なんとかユダヤ人運転手を都合したのか、現在、バスの本数は2日前より増えているようである。

これについては、市民の足にかなりの影響が出たのだが、ニュースにもならず、誰一人文句を言わなかった。アラブ人労働者がいなくなることに文句はないという民意の現れだったかもしれない。

大手チェーン・スーパーマーケットのラミレビでは、シナゴーグでのテロが発生した直後に、ユダヤ人の報復を恐れて、多数のアラブ人職員を帰宅させた。するとソーシャルメディアを通じて「ラミレビはアラブ人労働者を1000人以上解雇しようとしている。」という噂が流れた。ラミレビはこれを否定している。

Yネットによると、シナゴグで5人を殺害した犯人の姉妹は、エルサレム市職員として働いていた優秀な社会福祉士だった。この女性も欠勤している。エルサレム市は、彼女には犯行に関わるようなサインはなかったと言っている。(他の家族は、公に犯行を支持)
http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4594525,00.html

そんな中、昨日、アシュドド市長が、「安全確保のため、幼稚園近隣での公共事業にアラブ人は雇わない。」という方針を打ち出した。ただちに「人種差別だ。」と非難と物議となった。ネタニヤフ首相は、「イスラエルのアラブ人への差別はありえない。」との声明を出している。

またエルサレム市長は、テロ被害のあった町が模範になるとして、アラブ人労働者の雇用を続けるよう、市民たちに呼びかけている。

<イスラエルはユダヤの国か?>

こうした社会的な流れの中、イスラエルは、ユダヤ人の国だということを明記するという法案が浮上している。この法案は以前からあったものだが、あまりにも繊細な問題であるため、棚上げされたままだった。

ネタニヤフ首相は、「民主国家・ユダヤ人の国イスラエル」という定義をはっきりさせるべきだとの考えを明らかにしている。しかし、時期的に今は火に油を注ぐようなものだとして反発もあり、今のところ、実現の可能性は低い。

*CGNTV オリーブ山便り 「神殿の丘とパレスチナ人の憎しみ」http://japan.cgntv.net/newsub.asp?pid=2751&gubun=0309
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