イランとの”歴史的枠組み合意”へ 2015.4.3

 2015-04-03
http://www.bbc.com/news/world-middle-east-32166814

イランの核兵器問題に関して、イランと超大国P5+1(アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、ドイツ、中国、EU)が、スイスでの8日間のマラソン交渉の末、イランとの枠組みの合意に達したと共同声明を発表した。

イランのテヘランでは、経済制裁が終わるとして、祝賀ムードになっている。

<何に合意したのか> http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4643896,00.html

何に合意したのかというと、大まかにはイランは今後、10-15年間、大規模にウランの濃縮を制限し、国際社会は、その履行を確認しながら、段階的に経済制裁をすべて解除していくという内容である。

現時点での枠組みだが、Yネットによると、現時点でわかっている詳細は次の通りである。

①イランはむこう15年間、核の濃縮のための核施設を建設しない。
②低濃度のウランを1万kgから300kgに減らし、少なくともむこう15年間は3.67%以上の濃縮を行わない。

③むこう10年間、ナタンツに19000基ある遠心分離機の稼働を5060基に減らす
④イランは、少なくとも10年間、最新式の遠心分離機を使用しない。

これに加え、ケリー国務長官は、今回、これまでになかった査察のシステムにイランが合意したと伝えている。(BBC)

この枠組みを元に3ヶ月かけて成文化と技術的な詰めが行われ、6月末に最終合意を行うという流れである。

<懸念事項>

この共同声明はBBCでもトップで報じられたが、様々な疑問や、不信を拭えるのかとの懐疑的な雰囲気の中で伝えていた。

まず問題になるのが、期限である。今回の合意に期限が切れたあとどうするのかという方針は明らかにされていない。10-15年の期限終了後、イランは無制限に核開発を再開する可能性を残している。

また”研究分野”については、継続となっている。研究という名のもとに、結局はなんでもできる可能性も残すことになる。

次に、枠組みに合意したといっても、現時点ではまだ両者が完全に理解を同じくする文字になっていない、いわば口約束に近いという点。以前、文字になっていた合意事項ですら、後になってイランと6大国では解釈が違っていたという問題が発生していた。

INSS(イスラエル国家治安研究所)のエミリー・ランダウ博士は、文化や価値観が大幅に違う欧米とイランが、今回は口約束しかできていない。成文化できるとは思えないと語っている。

しかし、それでもオバマ大統領は、ワシントンで記者会見で「非常によい取引だ。」との見解を発表した。

<ネタニヤフ首相声明>

上記共同声明が発表された後、エルサレムでは、ネタニヤフ首相が、以下の声明を出した。

「この枠ぐみでの取引は、イスラエルの存続への脅威となる。ほんの2日前、イランはイスラエルの撲滅については話し合いの余地はないと言っていた。またイランはここ数日間、イエメンなど中東での勢力を拡大している。

経済制裁を緩和することによって、イランの中東、ならびに世界でのテロ支援を助長することになる。

この取引はイランの核開発を制限するどころか、道を開くものになる。中東で核競争(サウジアラビアなどアラブ諸国がいっせいに核を保有しようとするということ)がはじまり、恐ろしい戦争になっていく可能性が高まる。

今できることがあるとすれば、もっとよい取引に至るまで、イランへの圧力をかけ続けることだ。」

*ポジティブな記事も http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4643999,00.html

イスラエルは民主主義である。この件について、ネタニヤフ首相とは違う見解の記事もある。

Yネット(反ネタニヤフで知られる)は、「たとえ10年でも、イランの核兵器開発が遅れるなら、それはよい取引だ。たとえイスラエルがイランの核施設を攻撃してもイランの核開発を10年も遅らせることはできないにではないか。」との記事を出している。

<INSS(イスラエル国家治安研究所)の分析>

この共同声明に先立ち、INSSのイラン関係専門のランダウ博士と、イスラエル軍司令官で防衛専門家のクパワッサー氏が、この件に関するブリーフィングを行った。

ランダウ博士は、この交渉全体の矛盾を訴えた。もともとNPT(核拡散防止機構)に違反していたのはイランなのだから、国際社会が譲歩する必要はないはず。

それがいつのまにか、イランに核開発を”やめていただく”ために、アメリカの方が譲歩する側になってしまっている。イランが核兵器開発をできないようにするまで経済制裁を続けることが本来の道筋だったとネタニヤフ首相と同じ見解を語った。

また、イランの最高指導者ハメネイ師が、継続して「イスラエルを絶滅する」と言っていること、「中東での軍事活動を活性化させていることについては論議されていなかった。これは大きな矛盾である。

最終的にはイランが軍事目的で核開発を行っていることが問題なのあって、その根本を審議しないでウランの濃縮の程度についてのみ審議するのは、矛盾している。」と指摘した。

ネタニヤフ首相が10年以上前から、「イランはもうすぐ核兵器を完成する。」と同じ警告を繰り返していることへの質問についてクパワッサー氏は次のように返答した。

「それは、イスラエルが水面下のサイバー攻撃などで、開発を遅らせてきたからだとクパワッサー氏は語る。イスラエルは今後も同様の対処を行っていくだろう。」


*イランの核兵器開発疑惑と国際社会のこれまでに流れ

イランの核兵器開発疑惑が最初に発覚したのは2002年に遡る。一時はIAEA(国際原子力機構)の査察を拒否するなど疑惑が高まった。国連安全保障理事会の審議にかけられ、以来、アメリカを筆頭に世界から厳しい経済制裁がイランに課せられていた。

2013年にイランにロウハニ新政権が誕生。イランは穏健をアピールして、国際社会に経済制裁緩和に向けた交渉を申し入れて来た。

これを受けて、オバマ大統領は、イラン革命以来、35年に及ぶイランとの断絶をやぶってロウハニ大統領に直接電話をかけ、アメリカを含む6対国が、イランが直接交渉のテーブルにつくという、歴史的な交渉が始まった。

しかし、交渉はのらりくらりと進展せず、なんらかの合意に達したとしても、その合意事項の解釈がイランと6対国で違っているなどで大きな進展はみられなかった。

この3月31日は、アメリカが自主的に決めていた合意達成への期限だった。これに先立ち、ケリー国務長官とロシアのラブロフ大統領など6カ国の外相とイランのザリフ外相は、3月20日すぎからスイスのローザンヌに集まって深刻な交渉を行っていた。

しかし1週間後の31日が来ても合意に達することができず、2日延長して、徹夜のマラソン会議が行われた。途中で帰ってしまう外相も現れ、イランも帰ろうとするなどの動きがあったが、4月2日、6対国はそろって”歴史的な枠組みの合意に達した”との共同声明を発表したものである。
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