悲しいクリスマス:ベツレヘム 2015.12.22

 2015-12-22
クリスマスを控えたベツレヘム。今年は異様に寂しいクリスマスとなっている。イスラエルでテロが続いているため、ツアー客が来なくなったせいだ。

ベラ・バブーン市長(カトリック)によると、ツアーのキャンセルが相次ぎ、ベツレヘムに来る旅行者の数は、昨年から60%減っている。旅行者の数は、バブーン市長が就任した2012年から毎年確実に下がり、今年最低を記録しているという。

通常なら、クリスマス24日夜には予約満員のホテルが、今年は40%止まり。観光業だけでなく、様々な産業が影響を受けている”異常事態”だと、語る。

バブーン市長の様子は、2年前に彼女を訪問した時とはまったく違っており、やりきれないいらだちが明らかに見えて、ベツレヘムの逼迫した様子が痛いほどに伝わって来た。

確かに生誕教会にも広場にも、海外からの観光客の姿はほとんどない。12月24日のクリスマスをベツレヘムで祝うのは主にカトリックだが、ベツレヘムで出会うクリスチャンはほとんどが正教徒(ギリシャ正教、ロシア正教)だった。

つまり、世界12億のカトリックが今年はベツレヘムに来ていないということである。*正教徒のクリスマスは1月6日。

生誕教会前広場には、巨大なクリスマスツリー周辺で、いかにも石を投げてきそうな若者たちが、ひまそうにうろついていたり、ヒジャブをかぶったイスラムの若い女性たちが目立っていた。

その中で、赤いサンタの帽子を手に、ちょうどマッチ売りの少女のように売り歩く男子ティーンエイジャーを少なくとも4-5人は見た。観光客がいないので全く売れないのは言うまでもないことである。この屈辱が殺意になるのもなんとなく伺えた。

この3ヶ月の間にイスラエルの治安部隊に射殺されたパレスチナ人の若者が、ゆうに100人を超え、ベツレヘムでもあちこちで葬儀が行われている。悲しんでいる人々の横では、とてもにぎやかにお祝いをする気分になれないのだと何人かの住民は語った。

生誕教会前広場では、毎年、にぎやかなコンサートなどが行われるが、今年はそうしたイベントもかなり少ない。日本風にいえば、「自粛」といったところだ。

一方、生誕教会前広場には、イスラエル軍に引き抜かれたとするオリーブの木に、イスラエル軍の催涙弾のからをほどこし、周囲にろうそくを並べて”殉教者”の記念だと言っていた。多数の若者や小さな少年たちが集まっていた。

この木には、先に、エルサレム北部で13才のユダヤ人少年を刺し殺そうとした少年(13)の写真が掲げられていた。この少年は死んでいないのだが、先にアッバス議長が「イスラエルに殺された」と謝った声明を出したことから、まだ間違っているかもしれない。

しかし、13才のユダヤ人少年を刺し殺そうとした13才が正当化されるのだから、やはり、異常と言うほかない。

<クリスチャンもテロの仲間入りか>

生誕教会にある土産物店を夫とともに経営する中年のクリスチャン女性(カトリック)に話を聞いた。

これは若者でなく大人であれば、たいがい同じコメントなのだが、ベツレヘムのクリスチャンは、歴史的にもイスラム教徒と大変よい関係を保っていたという。

クリスマスにはイスラム教徒の友人が来、ラマダンにはクリスチャンが祝いに招かれる。それがなぜこうなったのかと、中年以上の人ならたいがい嘆いた表情になる。宗教の前に、「私たちは同じパレスチナ人」という意識なのだと語る。

この女性は特に家が病院の近くにあるため、イスラエルとの紛争で負傷したり死亡した人が搬送されるのをしょっちゅう見ているという。子供たちには、できるだけ、ネガティブにならず、希望を持ち続けるようにしていると語る。

この女性によると、イスラエル人に投石したり、テロリストの中にはクリスチャンもいるという。これは心理学者や統計専門家も言っていることだが、今のテロは、イスラム運動だけでは説明できないことなのである。

パレスチナ人の世論調査分析専門家(パレスチナ世論)で、イスラエル政府も信頼をおくカリル・シカキ博士は、最近発表された調査結果から、このテロの波は急激には悪化しないが、じわじわと続きながら、悪化し続けるとの予想を懸念として語っている。

*この報告は非常に興味深かった。近日報告予定。http://www.pcpsr.org/en/node/192

<テロの状況> http://www.israelnationalnews.com/News/Tag.aspx/39833

15日にエルサレムのバス停に車が突っ込んで14人が負傷した事件の後、テルアビブ北部の町ラナナで、ナイフによるテロで市民3人が負傷。1人が重傷となっている。

この他、エルサレム、ヘブロンやグッシュエチオンで、ナイフや車突っ込みによるテロを未然に防いだ、またはテロを計画中のアラブ人を逮捕といった事件が複数件、伝えられている。

エルサレムでは市内300カ所のバス停に治安部隊隊員が立つようになっている。車よけブロック設置については、300箇所で100万シェケル(3200万円)もかかるという。むしろアラブ人をその地域から出さないように、アラブ地区周辺にブロックを並べた方がいいのではないかといった過激発言もある。

一方、ユダヤ人過激派の動きもあった。22日朝、パレスチナ人家庭に煙を発生させる手榴弾が投げ込まれ、付近の家に「デユマの一件に関する復讐」とヘブライ語で書かれていた。

デュマの一件とは、パレスチナ人家庭が放火され、家族4人のうち3人が死亡した事件で、現在ユダヤ人過激派の若者たちが拘束され取り調べを受けている件である。それでパレスチナ人家庭の家に手榴弾を投げ込むとは、こちらも相当、異常事態である。

土曜夜には、その取調中に拷問やセクハラが行われているとしてエルサレムで右派ユダヤ人(入植者系)が、「ユダヤ人はユダヤ人を拷問しない。」などと主張するデモを行い、警察と暴力的な衝突となった。数人の逮捕者も出ている。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4742655,00.html

<石のひとりごと:平安の子>

イスラエルとパレスチナの関係は確実に悪化しているのは間違いない。イスラエルでの日常生活にほぼ変わりはないのだが、霊的には、憎しみと争いの渦になりはじめているようである。

しかし、以前、北部のマロン派クリスチャン(ギリシャ・カトリック)一家を訪ねたときも感じたことだが、ベツレヘムのカシスファミリー(正教徒)の家にも、やはりなんとなく平安の香りがあった。信仰の形は違うとはいえ、イエス・キリストを救い主と信じている人々である。

パレスチナにもアラブイスラエル人の敵意の中にも平安の子たちがいる。このクリスマス、イエス誕生の地、ベツレヘムが痛みと苦しみの中にあることを覚え、特に若い子供たちや若者たちを覚えてお祈りいただければと思う。
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