イスラエル政府の対テロ具体策 2016.3.12

 2016-03-12
テロが頻発した8日から3日目。パレスチナ人によるテロの波は、もう半年になろうとしている。これまでに、イスラエル人34人が犠牲となり、394人が負傷。その場で射殺されたパレスチナ人は、パレスチナメディアによると200人に上る。

http://mfa.gov.il/MFA/ForeignPolicy/Terrorism/Palestinian/Pages/Wave-of-terror-October-2015.aspx

8日以降、政府がとった具体策は以下の通り。

1)ラマラ郊外のイスラム聖戦関連・放送局を急襲

イスラエル軍は、木曜深夜、ラマラで、近郊にあるイスラム聖戦に関係する放送局を急襲。カメラマンや技術者2人を逮捕したほか、機材を押収するなどして、この放送局が放送できないようにした。また、自宅にいたこの放送局のファルーク・アリアン局長を逮捕した。

この放送局は、パレスチナ人の間で最も人気のあるチャンネルだが、テロを煽動する番組を流し続けている。イスラエル軍は、これまで煽動番組を取り締まるよう、自治政府に訴えて来たが、いっこうに取り締まらないため、自ら動いたというところである。

しかし、翌金曜朝、このチャンネルからは、いつもと全く同じ番組が、放送され、中継番組までやっていた。本局がガザにあるため、そこから放送が継続されたのである。ハイテクのイスラエルにしてはお粗末な話・・・。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4777143,00.html

*パレスチナメディアのマアヤンによると、イスラエルは昨年11月にも複数のパレスチナ・メディアを閉鎖したと伝えている。
http://www.maannews.com/Content.aspx?id=770647

2)全国で違法滞在パレスチナ人250人逮捕

テロの翌日、警察が全国で、不法滞在者の捜索を行った。結果、不法滞在のパレスチナ人250人が摘発された。

なぜこれほど違法滞在がいるのかというと、彼らを雇うユダヤ人がいる(賃金が安くてすむ)ことと、”まじめな”パレスチナ人労働者には裁判所も比較的甘いという傾向があるらしい。

警察によると、今後は、許可のないパレスチナ人を雇っている事業主への罰則が強化されるという。ここでもまたテロのしわ寄せは、まじめに働きたいパレスチナ人労働者がかぶることになりそうである。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4776893,00.html

アメリカ人旅行者が犠牲になったヤッフォでの事件では、負傷者の中に東エルサレム在住のアラブ人、モハンマド・ワリさん(26)も含まれていたことがわかった。ワリさんは、「私はアラブ人だが、テロとは関係がない。助かってよかった。テロは、人種や宗教にも関係なく殺す事が目的なのだ。」とテロに反対する立場を語った。

ヤッフォは、ユダヤ人3万人とアラブ人(イスラム・クリスチャン)1万6000人と、アッコと並んで、関係が良いとまではいかないが、共存が一応は成り立っている町。しかし、なにかのきっかけで、暴動になる可能性はある。

今回の事件では、ボランティアの警察官(イスラエルには警察が雇う民間の警ら隊のような組織がある)が、すでに銃で撃たれて地面に転がっているテロリストにさらに発砲、いわば、不要に”どどめ”を刺したのではないかと思われる様子が残っていた。現在、調査がすすめられている。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4776563,00.html

3)東エルサレムのテロリスト家族を西岸地区へ追放

イスラエル政府は、8日の東エルサレムでの銃撃戦で、警察官2人に重傷を負わせたファウド・アブ・ラジャブ(21才・現場で射殺)の家族(母親と3人の兄弟たち14-19才)を、カランディアの検問所から西岸地区へ追放した。

父親は息子の犯行に関わっていたのではないかとの疑いから警察に身柄を拘束されている。

一家は東エルサレムでの永住権を申請中で、いわば、まだ永住権を持たない保留中の身の上だった。西岸地区のパレスチナ人のステータスは、労働許可がなくては東エルサレムにも入れず、職も得にくく、非常に厳しい状況になる。

http://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Palestinian-media-Family-of-terrorist-deported-to-West-Bank-from-Jerusalem-447545

4)エルサレム防護壁を完成へ

ネタニヤフ首相は、すでに全国のパレスチナ地域との間の防護壁の建設を完成に向けて工事を再開する意向を伝えていたが、木曜、エルサレム周辺で、まだ防護壁が欠けている部分に関する工事を認可すると発表した。

<ネタニヤフ首相・野党のやり玉に>

政府はいろいろやっているようだが、野党からは、ネタニヤフ政権は効果的なテロ対策をとれていないとして、厳しい批判が相次いでいる。

最大野党シオニスト陣営のヘルツォグ氏は、次のように批判した。「第三インティファーダが来る事は、8月に警告していた通りだ。このインティファーダは、若い、洗脳されたテロリストによるものだ。これを止めるには、壁を作るしかない。若者は壁があれば、クールダウンするはずだ。」

イスラエル我が家党のリーバーマン氏は、普段からそうとう辛口だが、ネタニヤフ首相について、「我々の首相は、言う事は立派だが、行動はゼロだ。今になってやっと違法労働者とその雇用主のとりしまりに乗り出し、エルサレムの防護壁の修復に乗り出した。なぜそれを6ヶ月前にやらなかったのか。」と言った。

また、アッバス議長が、テロリスト家族に見舞金を出していることをあげ、「その金はイスラエルが与えた金だ。」と批判した。

しかし、これらに対し、観光相のヤリブ・レビン氏は、「今は政府で分裂している場合ではない。」と反論するなど、相変わらず、国会では激しい論議(言い争い?)が行われている。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4776224,00.html

<現時点では無理?:ユダヤ人とパレスチナ人>

水曜の連続テロは、アメリカのバイデン副大統領のイスラエルへの到着と同時に発生した。バイデン氏は、3日のエルサレム滞在中、ネタニヤフ首相、アッバス議長の他、ヨルダンも訪問している。

アッバス議長は、バイデン副大統領にヤッフォでアメリカ人旅行者が死亡したことについて、追悼を表明したものの、同時に、「イスラエルが殺したパレスチナ人は200人だ。」とイスラエルを非難する発言も付け加えた。

アッバス議長は基本的にテロを取り締まる方策どころか、今の所、それを非難する声明も出していない。「暴力には反対だ。しかし、それはイスラエルが占領を続け、入植地を拡大し続けていることが原因だ。」といつもと同じ見解である。

アッバス議長は、バイデン副大統領の和平交渉再開への呼びかけにも応じなかったと伝えられている。

この和平交渉再開については、イスラエルの方でも同じで、よい返事はしなかったようである。ネタニヤフ首相とバイデン副大統領の会談後も特記すべき発表はなかった。たった今殺し合いをしている両者が、今の時点で、和平交渉をしてもなんの意味もないと考える方が普通であろう。

しかし、これまでも、アメリカの政権交代の時期には、任期終了前の政権が、なんらかの結果を残そうと、パレスチナ問題に急に乗り出してくるようになっている。オバマ政権もまた同じなのである。

イスラエル政府は、オバマ政権のごり押しとともに、フランスが、先に提案しや和平交渉再開案を押してくる可能性もあり、今後、9月の国連総会にむけて、国際社会から様々な無理難題がつきつけられるとみて、構えている。

ネタニヤフ首相は、今月、AIPAC(アメリカにおけるユダヤ人ロビー団体)での演説のために訪米することになっており、その時にオバマ大統領への面会をホワイトハウスに申し出ていた。

しかし、実際に、ホワイトハウスが面会の日程を出すと、今度はネタニヤフ首相から、訪米そのものを中止すると返答し、ニュースになった。この背後に何があったかは不明。
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