ホロコースト記念日 2016.5.6

 2016-05-06
日本では子供の日にあたる5日、イスラエルではホロコースト記念日が行われた。

例年の通り、朝10時のサイレン、ヤドバシェム(ホロコースト記念館)での式典(前夜と当日)、国会での式典、ユースのための式典、記念日終了の式典が行われ、特にリブリン大統領、ネタニヤフ首相には演説三昧の忙しい一日となった。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4799598,00.html

今年、イスラエルに在住するホロコースト生存者と登録されている人は、200901人。

この時期になると、毎年ホロコースト生存者の貧困が話題となるが、Yネットによると、状況は、毎年改善しているものの、まだ3分の1にあたる約6万人が、貧困線以下、つまりは食べ物すら福祉に頼る生活だ。(データ:イスラエル厚生省、経済省)

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4799147,00.html

今年、カフロン経済相は、5億シェケル(約150億円)をホロコースト生存者の福祉予算に計上する計画であると発表した。なお、あくまでも計画。。。。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4798714,00.html

<ホロコースト生存者(特に男性)は長生きの傾向>

ホロコースト生存者の中には、家族をすべて失って、貧しい上に、孤立している人も少なくない。一方で、解放後、結婚して新しい家族を立ち上げ、今では数十人の孫・ひ孫に囲まれている人も多数いる。

しかし、いずれの場合でも、ホロコースト生存者(特に男性)は、病気を多く抱えているものの、一般のイスラエル在住の高齢者より、平均年齢は、平均5年長いという結果が出ているという。(8万人からの調査:Times of Israel)

http://www.timesofisrael.com/study-shows-survivors-sicker-but-longer-lived-than-native-born-israelis/

病気で長生きもどうかとも思うが、今年ヤドバシェムでの式典で、灯火した6人の生存者たちは、そろって「家族も増えた。私もまだ生きている。これこそヒトラーに対する勝利だ。」と語っている。

<日本のシンドラー:チャンネル2が杉原千畝氏を紹介>

ホロコースト記念日あけの夜、チャンネル2は、プライムタイムニュースで約8分、日本人外交官で、ホロコースト時代のユダヤ人難民に、”いのちのビザ”を発行した杉原千畝氏を、日本のシンドラーとして紹介した。

日本国内の杉原千畝博物館も紹介されていた。両親とともに、杉原氏に助けられたユダヤ人女性は、杉原氏について、「私と両親を救ってくれた人です。」と語り、初めて敦賀の港についたとき、人々がとても暖かかったとも語っている。

http://www.mako.co.il/news-world/international-q2_2016/Article-219484fdcf18451004.htm?sCh=31750a2610f26110&pId=2100566639

<次世代に伝えるために:”ジカロン・バ・サロン”ー居間で記念日を>(取材記録)

ホロコーストはイスラエル国家にとってその存在意義にも関わる重要なできごとである。決してこれが忘れ去られることはない。しかしそれでも、戦後70年となり、証言者も年々減って行く中、次世代にどう引き継ぐかを懸念する声もあることがわかった。

1)公式式典の現状 http://www.zikaronbasalon.org

今年も、4日夜のホロコーストの記念式典を取材したが、今年、3回目だった。毎年ほぼ同じ内容で、式典に来ている人々の様子もほとんど変わりがない。日本の公式の原爆記念式典を思い起こしていただくとよい。

来ているのは、大統領、首相ほか政治家たちと、政府から招かれ、来るだけの体力があるホロコースト生存者と家族たち(ほとんどが生存者に育てられたとみられる中高年者)と、アメリカなどからユダヤ教育を目的に来ている海外のティーンエイジャーのユダヤ人である。

式典会場では、今年はフランスからの一団に会ったが、以外にも現地イスラエル人を探すのが難しかった。式典は、テレビで生中継され、この時間、他の番組はない。イスラエル人たちは家で式典を見ているということである。つまり、見てない人も少なくないということである。

ユースグループの記念式典では、イスラエルのユダヤ人ティーンエイジャーたちばかり(ドルーズの若者を含む)数百人を前に、ナフタリ・ベネット教育相が訓示を述べ、一人のホロコースト生存者が、若者たちを前に証言をした。この女性が最後に「神はおられます。」と宣言したのが印象的だった。

ところが、若者たちは、式典が終わるやいなや、きゃあきゃあ言いながら、グループごとにポーズをとって記念撮影をし、ものすごいスピードでさっさと帰って行った。悲壮な様子はまったくない。学校のプログラムだから来たという感じだ。

今はまだ若い世代も、自分自身の祖父母たちが生存者という場合が多いので、意識からはなれてしまう事はない。しかし、今のままのシステムだけでは、今いる生存者がすべていなると同時に、記憶はすみやかに、うすれてしまうのではないか。こう考えたのが、ナダブ・エンボンさん(39)夫妻だった。

ナダブさんによると、イスラエルでは、学校や軍隊などに所属している時は、教育の一環として、式典に出席できるが、そうした組織から離れると、式典に出る事も、特別なセミナーに出る事もなくなり、ホロコースト記念日がだんだん遠い存在になるような気がするという。ある時、妻が、ホロコースト記念日を忘れていて危機感を持ったと語る。

この状況を課題と見たエンボンさん夫妻は、2011年、自宅のリビングに友人たち40人を招いて、ホロコースト生存者の話を聞くときをもった。

2)記念式典から家庭集会へ

第一回目のこの会では、多くの発見があった。一つは、式典では、一定時間、ただ座っているだけだが、リビングでは、ただ話を聞くだけでなく、その後で、思いや考えをシェアすることができる。

イスラエル人は、日本人ほと、遠慮をしないでもの言う。証言を聞いたあとで、正直な反応がいろいろ出て来たという。ある人は、「ホロコーストは、あまりにも恐ろしく、理解しがたいことなので、これまで目を塞いできた。」という思いを語った。

ある人は、「親しみのあるこうした会はすばらしい。しかし、やはり敬意を払うという意味でも、きちんとした式典の方がよいと感じた。」と言った。

またある人は、「こうした親しい場所だから言うが、スファラディ(アラブ東方系ユダヤ人)の自分は、ホロコースト記念日は、”かやの外”といった気分だった。」と語った。

ホロコースト記念日といえば、ヒトラーに虐殺された600万人を覚えるとういう日である。当時ヨーロッパにいなかったスファラディや南アメリカ系、エチオピアなどのユダヤ人にとっては、同族に及んだ悲劇ということで、関わりはあるが、自分や自分の家族との直接的な関わりはない。

さらにいうなら、スファラディたちも、アラブ諸国などで十分迫害を経験して来たのだが、それに対する記念日はない。

ナダブさんは、こうした”かやの外”的な人々のためにも、家庭集会は効果的だと考え、翌年には、リビングを開放するホストを募集した。すると、20件でこうした家庭集会、”ジカロン・バ・サロン(リビングでの記念日)”が実現した。

この動きは急激に世界に広がって、3年目には200件、4年目には800件、昨年には3500件。イスラエルを含め世界にも家庭にホロコースト生存者を招く集会が実現した。

今年のホロコースト記念日周辺では、さらにホストが増えて、世界で50万人が、ジカロン・バ・サロンに参加している。(生存者本人だけでなく、生存者に育てられた2代目生存者も証言者になっている)

ジカロン・バ・サロンでは、ホストに必要な教材や、ホロコースト生存者を招けないグループのために、証の収録などを用意しており、ネットからダウンロード可能。しかし、会そのもののプログラムはホストに自由に任せており、家庭だけでなく、職場や、パフォーマンス会場でも行われているという。

昨年、ミュンヘンで行われたジカロン・バ・サロンでは、ホロコースト生存者の孫と、ナチス兵士の孫が共に座って生存者の話を聴くという会も実現した。

なお、今の所、ホストはユダヤ人で、異邦人は招かれるという形をとっている。ナダブさんは、”残念ながら”と言いつつ、今のところ、パレスチナ人家庭での集会は実現していないと語った。

2)ホロコーストが人を立ち上がらせる

ナダブさんはまた、ホロコーストに関しては、非常に残酷でセンセーショナルな部分だけが、強調されるのも課題だと考えている。これだけでは、記憶は長続きしない。ここから何かよいものが出て来る必要がある。

ナダブさんは、ホロコーストから次世代が学ぶべきことは、人種差別の危険性、人間のいのちの神聖さ、兄弟愛、コミュニティの力であり、これらが、ホロコーストが、世界に提供できるポジティブな側面だと強調する。

そこから発展し、ナダブさんは、今、ジカロン・バ・サロンを、刑務所や、落ちこぼれた若者たち、売春女性関係施設で行っている。このような場所にいる人々は、日々、個人的なホロコーストを経験しているため、ホロコースト生存者に会うことで、確かに立ち上がりへの希望につながっていると報告する。

<マーチ・オブ・ザ・リビング:元チーフラビ・イスラエル・メイール・ラウ>

ポーランドでは5日、今年28回目になるマーチ・オブ・ザ・リビング(生者の行進)行われた。アウシュビッツからビルケナウまでの3キロを歩くというプログラムである。この収容所では、ユダヤ人110万人が虐殺されている。

マーチの先頭を行くのはイスラエル政府代表団で、今年は首相府を代表してアイェレット・シャキッド法務相が代表として参加した。

その後から、40カ国、1万人(ユダヤ人・異邦人)が続いた。アメリカ、イギリスなどと並んで、今年は、日本からの参加が,
イスラエルのメディアで注目されていた。このイベントが開始されてから、1988年以来、52カ国、22万人が参加している。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4799739,00.html

イスラエルからも毎年、高校生などの修学旅行でこのマーチに参加する。やはり、実際の死の収容所、ガス室などを見ることで、ホロコーストへの理解とともに、イスラエルへの愛国心も高まるという。

しかし、最近では、旅行費が高額であることと、ヨーロッパでの反ユダヤ主義、テロの悪化から、イスラエルのティーンエイジャーたちの、ポーランドへの渡航にブレーキがかかっているという。 

ジカロン・バ・サロンのナダブさんも、実際に収容所を見る事は効果が大きいだけに、イスラエルからの参加にブレーキがかかるのは残念との見解を語っていた。

*天の父から離れてはならない:元チーフラビ・イスラエル・メイール・ラウ

自らもホロコースト生存者である元チーフラビ・イスラエル・メイール・ラウは、マーチに参加した1万人を前に次のようなパワフルなメッセージを語った。

ラビは、昨年のワシントンDCでの記念イベントで、オバマ大統領が、「現代の反ユダヤ主義は、人類すべてに対するものでである」と言ったことを引用。「現代のヨーロッパや中東に、このスピリットはない。憎しみが満ちている。

・・・私たちはなぜ苦しむのか?なぜ?いったい何をしたというのか? 私たちにはわからない。しかし、天の父から離れてはならない。散々苦しんだあげくに、私たち(ユダヤ人)に与えられたすばらしい財産を失ってはならない。ユダヤ人であることを忘れてならない。

イザヤ書60章(8節)「雲のように飛び、巣に帰る鳩のように、飛んで来る者はだれか。」と書いてある。雲は風に押されてようやく動くが、鳩は風がなくても巣に帰る。

私自身はホロコーストという大嵐に押されてイスラエルに戻らされた。しかし、あなた方は、今、鳩のように、風に押されなくても、自分の意志で、家(イスラエル)に戻る特権が与えられている。

私たちには、イスラエル以外に国、家はない。死に満ちた世界から命の国へ。皆さんが、私と同じ思いになって下さることが私の願いです。(ユダヤ人はイスラエルへ帰還してほしいということ)

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/211844#.VyuzRKUWnA8

<石のひとりごと>

シリアでの内戦ではこの5年で死亡した人数は25万人以上と推察されているが、ホロコーストでは、ヒトラー就任の1939年から、終戦までの約6年(実際には最後の数年間)で600万人である。今年は特にこの数字の重さを考えさせられた。

毎年思う事だが、ホロコーストは、単にドイツの戦犯であるとか、ユダヤ人に降りかかった災難というだけではない。これは、もはや歴史の一事件というよりは、今に続く、神の前に私たち人類の罪深さ、その能力と恐ろしさ、それを知って、人類すべてが神の前にへりくだることを示唆するできごとである。けっして他人事ではない。

しかし、ユダヤ人ですら、次世代ユダヤ人にホロコーストを伝えることに課題があるとすれば、日本を含めそれ以外の世界で次世代にホロコーストを伝えて行くのはさらに困難、というよりは不可能かもしれない。

実際、ADL(反名誉毀損連盟)が53000人(100カ国以上)から行った統計によると、54%はホロコーストについて聞いた事がないと答え、32%は、ホロコーストは事実ではないか、数字に誇張があると考えていることがわかった。

つまり世界の3分の2は、ホロコーストを知らないか、忘れているということである。世の終わりには人の愛がさめると書かれている通りである。

http://www.jewishjournal.com/sponsored/article/two_thirds_of_the_world_has_forgotten_the_holocaust_can_a_new_worldwide_mov
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