左右統一政権のはずが!?最強右派政権へ 2016.5.21

 2016-05-21
イスラエルでは、ここ3日ほど、政治上、極端から極端へとひっくり返るような大騒ぎが発生し、国内メディアはかなり振り回された。

結論からいうと、右派(与党)と左派(野党)が同居する統一政権にほぼなり始めていたのが、急にどんでん返しとなり、いままでになかったほどの最強・右派政権になるみこみになったということである。

最強・右派になるとはどういうことかというと、「イスラエルはユダヤ」ということに重きがおかれ、パレスチナ人に対しては、これまで以上に妥協をゆるさない運営になっていくということである。

この大どんでん返しは、皮肉にも、エジプトのシシ大統領が、フランスが進めている、イスラエルとパレスチナの和平交渉再開を支援するとし、両者の和解への意欲を発表した直後に発生した。

時期的な一致から、Yネットは、エジプトは、代表野党で中道左派のシオニスト連合(元労働党)ヘルツォグ氏が、統一政権に入る事を予期して和平交渉への意欲を発表したのであり、急に最強・右派政権になったことで、エジプトのシシ大統領が怒りを発したとの記事も出していた。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4805184,00.html

しかし、エジプトは、まもなく、「どんな政権になっても和平交渉への意欲は変わらない。」と発表している。

パレスチナのアッバス議長は、ネタニヤフ首相が、統一政権ではなく、過激系右派政党を連立に加える道を選んだことについて、「結局のところ、ネタニヤフ首相は、過激な右派だということだ。フランスの提案にも応じず、地域の平和に興味がないのだ。」と語った。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4805362,00.html

<左派・右派・同時に交渉をすすめたネタニヤフ首相は非道徳的!?>

現在のネタニヤフ・連立政権は、120議席中61議席と、かなりぎりぎりで出発している。

政権を安定させるため、ネタニヤフ首相はこれまでからも、最大野党(24議席)で中道左派のシオニスト陣営(元労働党)のヘルツォグ党首に対し、連立政権に加わる交渉を行っていた。

エジプトのシシ大統領から、和平交渉推進支援に関する発表があったころも、ネタニヤフ首相は、ヘルツォグ氏に連立政権に加わり、国家統一政権を立ち上げるよう、交渉を行っていた。

エジプトの発表には、ネタニヤフ首相、ヘルツォグ氏、ともに歓迎の意志を発表し、統一政権になるとの見方がひろがった。

ヘルツォグ氏の政党には外務相など多数のポジションが、約束されていたという。この時点で、両者はほぼ、合意に達していたが、一点だけ課題があると報じられていた。

ヘルツォグ氏は、「今現在頻発しているテロが収まるまで」として、東エルサレムとの間に壁を建設し、東エルサレムはパレスチナ自治政府に管理させるとする、事実上のエルサレム分割案を主張しているのだが、これにネタニヤフ首相は合意できないのである。

そうしたことが報じられていた水曜、ネタニヤフ首相が、突然、(強硬系)右派政党のリーバーマン氏に国防相のポジションを提案したと発表し、大騒ぎになった。

ヘルツォグ氏にしたら晴天の霹靂である。ヘルツォグ氏は、「こちらと組めば統一政権で、リーバーマン氏と組めば最強右派政権になるという、両極端の結果であるのに、両者同時に交渉を行っていたのか。」と激怒した。

統一政権はなるのか!?メディアは、この金曜までにはどちらにころぶか明らかになる予定だと混乱の中で報じた。

しかし、昨日木曜のうちに、ヘルツォグ氏は、ネタニヤフ首相との交渉が決裂したと発表した。統一政権の可能性はなくなったということである。

一方、リーバーマン氏は、国防相のポジションを受諾すると発表。まだリーバーマン氏率いるイスラエル我が家党の政権入りが正式に発表されたわけではないが、これをもって、最強・右派政権の発足は、ほぼ確実という見通しとなった。

<国防相の交代:ヤアロン現国防相が自ら辞任>

このバタバタと平行してイスラエル社会を驚かせたのが、ネタニヤフ首相が、国防相という大事なポジションの首を、いとも簡単にすげ替えたということである。

上記の通り、ネタニヤフ首相は、リーバーマン氏に国防相のポジションを提示したわけだが、現在、国防相はヤアロン氏が現職。そのヤアロン氏には、なんの連絡もなく、リーバーマン氏にポジションを提示したというわけである。

ネタニヤフ首相は、後にヤアロン氏に電話で連絡。変わりに外務相のポジションを提示したと伝えられている。

しかし、ヤアロン氏は金曜朝、まだリーバーマン氏の連立入りが正式になる前ではあったが、自ら、国防相を辞任すると発表し、メディアを驚かせた。国防相だけでなく、国会議員もやめてしばらく政治から遠ざかるという。

ヤアロン氏によると、上記外務相ポジションを含め、様々な約束事について、ネタニヤフ首相には、「これは口約束であり、書面にはしない。」と言われたという。「首相を信じられなくなった。(首相の方針についていけなくなった)」と言っている。

<政府の右傾化を危惧する?イスラエル軍幹部>

実はこれに先立ち、ネタニヤフ首相とヤアロン国防相の間には、関係崩壊かとも言われるほどの一悶着があった。

先週、ホロコースト記念日でのイベントの一つで、イスラエル軍のヤイル・ゴラン副参謀長が、「1930年代(ナチ登場のころ)のヨーロッパのような忌まわしい動きが、2016年の今のイスラエルに見られる。」と、今の政府は右派に走り始めたと批判したかのようにもとれる発言をした。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4799593,00.html

この発言を受けて、ネタニヤフ首相は、激怒。説明を求めた。メディアでも大きく取り上げられた。ゴラン副参謀長は、発言の数時間後には、「そんなつもりはなかった。」と謝罪を発表した。

ところが、その1週間後、ヤアロン国防相が、イスラエル軍司令官らへの訓示の中で、「自分の良心に忠実になれ。思っている事を、述べるべきだ。」と語ったことが、さらなる問題となった。ネタニヤフ首相はただちにヤアロン国防相を呼びつけ、説明を求めた。

ここから考えられることは、実際にところ、政府にも軍にも、過激右派への動きが高まっており、もう止められなくなっていると警鐘する声が出始めたという状態ではないかということである。

この問題は、ヘブロンで重傷のパレスチナ人テロリストを撃って死に至らしめた兵士の行為が防衛の一環なのか、殺人なのかの判断を迫られた時から出始めた問題である。イスラエル軍の中にも過激な右派思想の兵士は少なからずいるのである。

ヘブロンでの事件では、ヤアロン国防相とエイセンコット参謀総長は、ただちに、これはイスラエル軍の軍紀に反するとして厳しい対応をとると発表した。

ネタニヤフ首相は、「厳しく対応する」と言いながらも、兵士の父親に国は兵士を支持すると伝えたと伝えられており、ヤアロン国防相とは一枚岩ではなかったということである。

ヤアロン国防相が軍幹部らへ語ったことについて、ネタニヤフ首相は、政府は国防軍兵士を全力でバックアップしていることを強調。その上で、「イスラエル軍の使命は、政府の指令に従い、国防をすることであって、政治に口出しするべきではない。」と主張した。

この問題は、軍の存在基盤に関わることであり、その点でトップ2人が合意できないということは、危機的な問題である。この後、2人は、一応の一致に至ったとも伝えられたのだが、その直後、ネタニヤフ首相は右派のリーバーマン氏を国防相に指名するという話になったわけである。

政府や軍が危険レベルの右傾化に進んでいるのかどうかは不明だが、これに乗じて、元首相であり元国防相のエフード・バラク氏が、テレビでのインタビューで、過激右派のリーバーマン氏が国防相に指名されたことについて、「今のネタニヤフ政権はファシズムの様相になりつつある。」と語った。

http://www.jpost.com/Israel-News/Politics-And-Diplomacy/Netanyahu-Liberman-government-showing-signs-of-fascism-Ehud-Barak-says-454557

<最強・右派政権の中身>

現在のネタニヤフ政権には、ネタニヤフ首相とは常に険悪だが、(強硬系)右派で、ナフタリ・ベネット氏率いるユダヤの家党がいる。ベネット氏は、2国家2民族の考えに同意しておらず、基本的に、西岸地区も全部イスラエルが支配するべきだと考えている。

ベネット氏にとって、ヘルツォグ氏が主張するエルサレムいったん分割案は、とても受け入れられるものではない。もしヘルツォグ氏が加わって統一政権になっていたら、ベネット氏は間違いなく連立を離脱していただろう。

ベネット氏はまた、ヘブロンでテロリストを撃った兵士について、見方の兵士を殺人に問うのは、敵味方を間違えた行為だとして、ヤアロン国防相らに正面から反対した経過がある。

今回、連立に加わる見込みとなったリーバーマン氏は、以前より、「テロリストは死刑にする法案」を提出している。今の所棚上げになっているが、ネタニヤフ首相は連立参加への見返りとして、この論議を復活させることを、リーバーマン氏に約束したという。そのリーバーマン氏が国防相である。

リーバーマン氏は、軍司令官の経験がなく、これまでの動きからしても、この人が国防相で大丈夫か・・・?と我々のような者でも不安になってくる。

いずれにしても、左派を含んだ統一政権になるはずが、全く正反対の最強右派政権の形になったことから、だれかが裏ですべてを仕組んだのではないかといった記事もあった。

<第三神殿推進派のユダ・グリック氏が国会入りへ>

ヤアロン氏が議員もやめて政界から引退するということになると、次にリクードの選挙名簿に上がっているのは、ラビでもあるユダ・グリック氏である。

グリック氏(50)は、強力な「第三神殿推進派」で、数年前に、パレスチナ人テロリストに撃たれて重傷になりながらも”よみがえった”人物である。それが国会入りする。最強右派政権に、もう一つ右派要素が加わったということである。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4805583,00.html

<石のひとりごと>

政治は生き物とはよく言われる事だが、イスラエルでは本当にそれが顕著だと思う。常に予測不能なのである。

今回連立に入る見通しのリーバーマン氏は、総選挙の時にはネタニヤフ首相と組んでいたにも関わらず、連立に加わらないと言って、ネタニヤフ政権樹立を危機に陥らせた張本人である。

その後も、ことあるごとに、ネタニヤフ首相に対し、そうとう手厳しい批判をとばしてきた。それが、今回、連立に入っただけでなく、国防相という首相の右腕とも言えるポジションである。

ヘルツォグ氏にしても、そこまで言うか。。。とこちらがぎょっとするような言葉使いで、ネタニヤフ首相を批判してきたのである。それが条件しだいで、ほぼ統一政権とまで言われるほどに交渉が行われた。いちいち根に持っていては、イスラエルの政治家は務まらないようだ。

今回は、特に結局の所、やはり、エルサレムの分割で統一政権はならなかったということも注目された。アッバス議長が言う通り、イスラエルが西岸地区や特にエルサレムをパレスチナと分け合う気はないということだろう。

国の右傾化は、イスラエルだけではない。アメリカでは、過激発言で「アメリカ最優先」と言っているトランプ氏が次期大統領になる勢いであるし、ヨーロッパでも、中東からの移民急増で、各国で右傾化が出始めている。

かくいう日本も、安倍政権が国粋に走っていると懸念する声もある。

今すぐ世界が変わっていくということではないが、各国の右傾化の動きとともに、今回、第三神殿推進派のグリック氏が国会入りするというのも、黙示録時代へまた一歩近づいたというしるしのようでもある。
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