西岸地区合併への一歩!?:正常化法案 2016.12.12

 2016-12-12
ユダヤの家党のナフタリ・ベネット党首が提出した入植地の正常化法案について、情報が錯綜していたが、最終的には以下のようになっていることがわかった。

*そもそも・・正常化法案とは?

イスラエルの最高裁が、パレスチナ人個人の所有の土地の上に建てられていて違法であると裁定した西岸地区のユダヤ人入植地を、合法化する法案。法律問題で、へりくつをこねているようでもあり、非常にわかりにくい。

たとえば、所有者不明のまま一定年数が経っている場合は、土地を利用しても良いとか、所有者がわかっている場合は、長期リースという形にするとか、様々な形で、ユダヤ人が住むことを合法化するということである。

この法案が実現した場合、55の前哨地(まだ入植地として認められないレベルの開拓地)と、既存の入植地に加えられる形のあらたな家屋約4000戸が合法化が可能になる。

特に問題になっているのは、建てられてから20年、西岸地区最大の”Outpost(前哨地)”アモナで、2006年に一部9戸の強制撤去が施行され、住民と治安部隊で暴力的な衝突になった。常に問題児とされてきた地区である。

正常化法案では、このアモナはじめ、最高裁が違法であるとして、これまで裁判を続けてきた3つの地域(エリ、ナティブ・アボット、オフラ)も合法化する可能性が出てくる。

これは、現在、イスラエルとパレスチナ双方がめざしている2国会2民族(国をイスラエルとパレスチナで分け合うという考え方)に反して、一国家一民族(イスラエルはユダヤ人の国)、つまりは西岸地区の合併への一歩になる。

右派勢力にとっては、非常に画期的な法案である。

当然、この法案は、パレスチナ自治政府はじめ、国際社会も反発している。イスラエル国内でも、この法案が国際的なイスラエルの立場を悪くすると懸念する声が大きく、左派はいうまでもなく、右派内部でも分裂して論争になっている。

http://www.timesofisrael.com/q-and-a-on-the-israeli-legislation-that-aims-to-legalize-west-bank-outposts/

<国会審議第一回目通過:もめる右派> 

この法案について、クラヌ党(中道右派)のカフロン党首(現財務相)は、もしこのままで国会を通過して、法律になれば、(いったん違法と判断し、撤去を命じた)最高裁の決定に権威がなくなると主張。

すでに違法と判断されているアモナと問題の上記3地域が、この法案によって、撤去を免れるなら、クラヌ党はを国会で、賛成票は投じないと表明した。クラヌ党は10議席あり、この党が賛成しないと国会審議を通過することは不可能である。

そこでベネット党首とネタニヤフ首相、カフロン財務相が交渉を行い、アモナの撤去だけは、2014年に最高裁が命じたとおり、今月25日までに実施するということで、カフロン氏も妥協し、合意に踏み切った。

この合意に基づき、国会では7日、この法案に関する審議が行われた。結果、賛成58、反対51で、第一回目の審議を通過した。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4889955,00.html

アモナ住民は、見捨てられたとして、怒りを表明したが、ベネット党首は、たとえアモナを失っても、その他の地域が合法化されるという、大きな目標は達成できたとして、国会で、記念すべき勝利だと宣言した。

実はネタニヤフ首相にとっても、目の上のたんこぶであったアモナが消えてくれる上、右派勢力に借りを作ることができたので、今回のベネット党首、カフロン党首両氏との合意は、都合のよい流れになったとの分析もある。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4891270,00.html

しかし、今後、実際に法律になるには、まだ国会審議を3回通過し、さらに司法長官の承認が必要になる。

最終的に、法律として承認することになる司法長官(最高検事)のマンデルビルト氏は、「結局のところ、パレスチナ人個人の土地を、政府が取り上げるということに変わりはなく、この法案は、どうころんでも違憲(基本法)である。国際法上も違反で、弁護のしようがない。」と主張。最終的は却下せざるをえないとの考えを明らかにしている。

http://www.timesofisrael.com/attorney-general-says-outpost-bill-still-illegal-even-without-amona/

しかし、最終的には政府は、司法長官を更迭することも可能であるらしく、この正常化法案が、正式に法律になる可能性は十分にある。

時期的な問題を指摘する意見もある。アメリカでは、イスラエルの入植地政策に厳しいオバマ大統領があと1ヶ月は大統領である。

もしこの案件が現時点で国会を通過していった場合、国連安保理が動き、オバマ大統領が、反イスラエル決議、制裁などに拒否権を発動しないという可能性も否定できない。*安保理での決議は、総会決議と違って実効力がある。

リーバーマン国防相は、右派だが、正常化法案を通すのは、来年1月20日に、親イスラエルとみられるトランプ氏が大統領になるまで待ったほうがよいと主張している。

<パレスチナ自治政府:国連・国際法廷へ>

まだ法律にはなっていないものの、パレスチナ自治政府は、当然、危機感を持ったようである。この法案が国会で一回め通過した後、パレスチナ自治政府、ドイツ、EUからイスラエルに対する厳しい批判が出された。

パレスチナ自治政府のプレスオフィスは、パレスチナからみたエルサレムと入植地に関するビデオクリップを発表し、国際社会に、「イスラエルは西岸地区をパレスチナ人を追い出して、土地をとりこもうとしている。」と訴えている。

イスラエルの主張や、東エルサレムの開発のための努力、パレスチナ人によるテロで多数のユダヤ人が犠牲になったことなどはまったく反映されていないが、これがパレスチナ側の見方である。参考までに見ることをおすすめする。

https://www.nad.ps/en/videos/east-jerusalem-israel’s-colonial-project-unravelled

さらに、パレスチナ自治政府は、エレカット氏率いる代表団をアメリカへ派遣。ケリー国務長官に面会し、反イスラエル法案への拒否権を発動しないよう、要請するもようである。パレスチナメディアによると、トランプ氏にも面会する可能性があるという。

パレスチナ自治政府は、今のイスラエル入植地政策に厳しいオバマ政権の方針を変えないよう、要請するとのこと。

http://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Palestinian-Authority-delegation-heads-to-US-hoping-to-meet-with-Trump-474987

<アモナ住民が徹底抗戦への支援を呼びかけ>

ベネット党首が、法案を通すためとはいえ、予定通り今月25日までに撤去しなければならないアモナ住民は、激怒している。

政府は、アモナ住民に対し、変わりの土地を提供するほか、補償金として、1家族に50万シェケル(約1500万円)を検討しているようだが、どこまで話が進んでいるのかは不明。

http://www.timesofisrael.com/state-moves-on-compensation-for-amona-residents-as-evacuation-looms/

今の所、アモナ住民に自主退去する意思はなく、強制撤去に来る治安部隊と戦う構えである。撤去自体はすでに決まったことなので、もういつ何時、治安部隊が撤去に現れてもおかしくはない。住民たちに加えて、外部からも一緒に戦う応援隊が集結している。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4890544,00.html

イスラエル人どうしの衝突を避けたい政府は、住民に移動準備期間を与えるために、撤去期限を30日延期することを最高裁に要請することも検討している。30日伸ばすと、トランプ新大統領になっているので、政府としても都合がいい。

<ネタニヤフ首相黄金の像事件:テルアビブ>

今のネタニヤフ政権は、これまでになく右派政権で、ネタニヤフ首相が、政権運営しやすい形となっている。上記のようなイスラエルの動きは、世界各国で右傾化が進んでいるのと同じ流れともとれる動きである。

しかし、イスラエル社会は、右派ばかりではない。イスラエル、特にテルアビブは、リベラルで、左派が多く、右派エルサレムと対照的。様々な点で、対立しているともいえる。

そのテルアビブで5日、ラビン・スクエアのテルアビブ市役所前に、実物大の金のネタニヤフ像が出現した。台座が高いので4mの高さがあり、通行の人々が見上げる形である。出エジプト記の金の牛を連想した人も多かったようである。

像は月曜朝9時にこの場所に置かれ、人々が興味しんしんに眺めている様子は笑えるほどである。テルアビブ市役所は、像に「4時間以内に撤去せよ。」との張り紙をした。

4時間もあれば、会社の昼休みを含め、人々が十分見ることのできる時間である。多くの人々が写真を撮ったりしていたが、午後1時過ぎ、像は倒されて、創作者が撤去した。

この金のネタニヤフ像を設置したのはアーティストのイタイ・ザライト氏。イスラエルにおける言論・表現の自由を試してみたかったと語っている。

アライト氏が何を訴えたかったかを明記した記事はなかったが、この像が置かれたのは、故ラビン首相が、過激右派の青年に暗殺された現場である。

象徴的にいえば、左派でパレスチナとの対話をすすめた故ラビン首相を信奉するテルアビブが、西岸地区合併をもくろむエルサレムの右派勢力の台頭に警告したとも考えられる。

いずれにしても、この事件の後、ネタニヤフ首相が怒ったということもないし、ザライト氏も逮捕されなかった。イスラエルは、民主国家である。

http://www.timesofisrael.com/golden-statue-of-netanyahu-toppled-in-tel-aviv-plaza/
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