国連安保理:反イスラエル決議を採択 2016.12.26

 2016-12-26
日本でも大きく報じられていたが、23日、国連安全保障理事会(国連安保理)は、イスラエルの西岸地区での入植地政策を非難する反イスラエル決議を理事国15カ国のうち賛成14カ国、棄権1カ国の圧倒的多数で可決した。

こうした反イスラエル決議は、通常ならアメリカが拒否権を発動して却下されてきたのだが、今回、オバマ大統領が、異例にも棄権にまわって拒否権を発動しなかったため、可決されたものである。

これにより、エルサレムの旧市街を含む東エルサレムはじめ、1967年の六日戦争以後、イスラエルの支配下に入ったとされる西岸地区(いわゆるグリーンラインよりパレスチナ側)にあるユダヤ人入植地はすべて、違法とみなされる。

先にユネスコが神殿の丘とユダヤ人の関係を無視したのに続き、神殿の丘のみならず、嘆きの壁や、旧市街のユダヤ人地区についてもイスラエルが支配することは違法ということになり、イスラエルにとっては非常に痛い決議である。

アメリカが拒否権を発動しなかった理由について、サマンサ米国連代表は、「(西岸地区にユダヤ人の)入植地活動を認めながら、(西岸地区にパレスチナ人の国を作るという)二国家二民族を同時に承認することは不可能である。」と述べている。

決議案を安保理に出したのは、マレーシア、ニュージーランド、ベネズエラ、セネガル。エジプトは、イスラエルとトランプ氏の圧力を受けて、決議の数時間前になって、これらの国々とともに名前をつらねることを断念していた。

賛成票を投じた国は、棄権したアメリカ以外の安保理理事国すべてで、以下の14カ国。

イギリス、フランス、ロシア、中国、アンゴラ、マレーシア、ベネズエラ、ニュージーランド、スペイン、エジプト、セネガル、ウクライナ、ウルグアイ、日本。

<決議の結果どうなるのか:世界からのさらなる孤立>

この決議は、国連総会ではなく、国連安保理での決議であるため、ある程度の実効力がある。イランの核開発疑惑が持ち上がった際、国際社会はいっせいに経済制裁に入ったが、それは国連安保理で、条項7と呼ばれる条件の元で避難決議が可決されたからである。

今回の反イスラエル決議の場合、まだそこまでの実効力はない条項6の条件下だが、今後のイスラエルの出方によっては、条項7になる可能性もあるという。

イスラエルでは、特に現在、西岸地区の入植地を、合法的にイスラエルの土地として登録するためのRegulation Bill(正常化法案)が国会審議にかけられ、すでに1回目が通過。あと2回通過すれば、正式にイスラエルの法律になるところである。

国連安保理の今回の決議はまさに、これに大きな釘をさすもので、今後、国会審議中のこの法案について、イスラエルがどう動くのか、注目される点である。

ネタニヤフ首相は、閣僚たちに対し、とりあえず、オバマ大統領が正式に退任するまでは、この件に関するコメントや行動を控えるよう指示したもようである。

現時点での具体的な影響としては、西岸地区のユダヤ人入植地をめぐって国際法廷への訴えを準備しているパレスチナ自治政府への追い風が懸念される。

また今後、東エルサレムや西岸地区での建築許可を出す閣僚や政治家たちが国際法廷に訴えられる可能性が出てくる。

現在、イスラエルは、テロ予防策として、イスラエル人を殺害したテロリストの家を破壊する報復措置がとられているが、こうした行為はジュネーブ協定における”戦犯”とみなされる可能性もある。

入植地におけるイスラエル人の存在、また事業もすべてが違法とみなされるこことから、そこで、事業を展開しているイスラエルの民間人も、世界中の法廷で訴えられる可能性が出てくる。

産業については、今回の決議により、出処はイスラエル国内か入植地か明記することが義務付けられており、今でも世界中で加熱しつつある入植地製品のボイコット運動に拍車がかかるかもしれない。

産業にとどまらず、世界のブラックリストに乗せられることをさけようと、ハイテク関連企業、銀行、ガス会社や、健康管理をするHMOなども、入植地にあるブランチを閉じる可能性が出てくる。影響は様々な分野に及ぶと懸念されている。

いずれにしてもイスラエルは違法行為を行っている国として、外交上は国際的な孤立が深まっていくと思われる。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4897773,00.html

<イスラエル政府の反応>

金曜に反イスラエル決議が採択されると、イスラエルは、「アンバランスなイスラエル非難」であると反発。拒否権を発動しなかったオバマ大統領とケリー国務長官に対し、「友は友を国連安保理に持ち込まないものだ。」と非難した。

今回のアメリカの拒否権不行使は、皮肉にも、ネタニヤフ首相が、世界の報道陣に対し、アメリカがこれまで国連において拒否権を発動してきたことに感謝し、あらためてアメリカとの友好関係の重要性を語るとともに、感謝を表明した直後のことであった。

イスラエルのダノン国連代表は、「イスラエルの最大の友(アメリカ)は、これまでの慣例に基づいて行動すると思っていた。次期新政権がこれまでと違うものになるというのも頷ける。」と反発。

エネルギー相ステイニッツ氏は、「これは単に反入植地政策ではない。イスラエル、ユダヤ人とユダヤ人の国に反対する決議だ。アメリカは、中東で唯一の友を見捨てた。」と述べた。

強行右派で、問題の正常化法案を押しているユダヤの家党ベネット党首は、「これまでの世界に遠慮する政策が問題だった。今こそ、入植地にイスラエルの法律を適応する時だ。」と主張した。

一方で、イスラエルの左派勢力は、危機感を募らせている。

左派シオニスト陣営のヘルツォグ党首は、今回の外交危機は避け得た事態であり、ネタニヤフ首相は道をあやまったとして、クラヌ党に連立から抜けて、ネタニヤフ首相をクビにするべきと訴えた。

未来がある党のラピード党首も、ネタニヤフ首相はパニックに陥っていると指摘。国連安保理の決議を「一方的で悪い。受け入れられない」事態である。ネタニヤフ首相はもっと明確な対処を示すべきだと訴えた。

リクードのツィッピー・リブニ氏は、「強行右派の政策がイスラエルに害になることがあきらかになった。世界はあきらかに入植地政策に反対だ。」とコメントしている。

1)国連に対する反発措置

ネタニヤフ首相は、国連でのイスラエルの役割についての再検討を指示。すでに、国連の中でも特にイスラエルを敵視する5つの組織に拠出していた3000万シェケル(約9億円)を停止する。

またこれら5組織のスタッフに対するイスラエルでの労働ビザの発給停止。特にUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業期間・ハマスなどのかくれみのと言われる)については、そのスポークスマンの追放も検討している。

加盟国としての年1億8600万シェケル(約31億円)の拠出についても検討する。

2)諸国に対する反発措置

イスラエルは、この決議案を提出したニュージーランドとセネガルに派遣しているイスラエルの大使を呼び戻した。

セネガルについては農業の技術支援を行っていたのだが、それを停止した。3週間後にセネガル外相がイスラエルを訪問する予定だったが、これをキャンセルした。

上記2国とともに、今回の決議案を提出したマレーシアとベネズエラについては、もともと国交がないため、特に対処はしていない。

続いて、決議案に賛成した14カ国の中で、イスラエルに大使館をおいている10カ国(日本を含む)に対し、抗議を行う為大使を召喚した。しかし、各国大使を召喚したのが、ちょうど日曜で、クリスマスの祝日でもあったため、実際には、大使ではなく、次官や高官が応じた国々もあったという。

この他、来月ウクライナの首相のイスラエル訪問が予定されていたが、これもキャンセルした。

通常はイスラエルに友好的なウクライナやその他の国々が反イスラエル決議に賛成していたことから、イスラエルは、背後で、オバマ政権が動いていたとみている。

ネタニヤフ首相は、今回の国連決議が出た後、「イスラエルは諸国に(技術など)提供するものを多く持っている。ともに働く国々は得るものがあるが、イスラエルに敵対する国はそれらを失う。」と語った。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4898065,00.html

*入植地アモナは戦わずして解決

前回、入植地アモナについて、右派活動家が集結。強制撤去をしにくるイスラエル軍兵士たちに抵抗する準備をすすめているとお伝えした。これについて、イスラエル政府がアモナ住民に新たな妥協案を提案。アモナ側がこれを受け入れたため、この件については平和裡に解決することが決まった。

合意した内容は、政府は、現在の位置からすぐ近くの丘に24家族が住むことを許可すること。さらに、撤去期限は12月25日であったところ、45日延長して2月8日と決まった。(トランプ新政権発足後)

ネタニヤフ首相としては、国際社会の入植地への厳しい視線から、今、この時に強制撤去を実施すれば、逆恨みした右派入植者たちが、”値札作戦”とよばれるパレスチナ人への暴力に出る可能性があると懸念したとみられている。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4894734,00.html

<トランプ新政権との関連は?>

1月20日に発足するトランプ次期大統領は、イスラエル支持派、さらには入植地政策支持派と目されている。この安保理での採択の前には、イスラエルとともに、アメリカは拒否権を発動するべきであると主張していた。

決議が出たあと、トランプ氏はツイッターで、「1月20日以降は、違う流れになる。」と発信している。イスラエルとパレスチナの問題については、この決議案で和平実現はさらに困難になったが、それでも和平は必ず実現するとの決意も述べている。

いったん国連安保理で採択された決議を排斥することは困難だが、それが実際に実効へと移される条項7への移行についての決議になる時には、オバマ大統領はおらず、トランプ新大統領は、拒否権を発動すると期待されている。

・・・が、予想外の連続のトランプ氏である。あまり期待しすぎないほうがよいかもしれない。

<石のひとりごと>

12月20日、安保理決議の2日前、エルサレムでは、海外からの報道陣を集めて年末のネタニヤフ首相記者会見が行われた。

この時のネタニヤフ首相の報告では、一部のイスラム諸国を含め、最近ではイスラエルとの交流を求める国が増えているということだった。実際、記者会見には、最近国交が回復したばかりのトルコの大使もにこにこと同席していた。

経済についても、諸国との関係が改善するにつれ、大荒れの中東にあって、イスラエルの経済だけは、毎年右肩上がりだという。

現実においてはイスラエルと世界諸国との関係は改善しているにもかかわらず、国連では、反イスラエル決議になるといういわばねじれた外交状況になっている。これは多数決の限界ということであろう。

これまでは、多数決で決める国連は公正であると考えられてきた。しかし、今や、多数決が必ずしも正しい答えであるとは限らないことや、必ずしも現状を反映するものではないという事実が明らかになりつつある。

しかし、明らかにまちがっているとだれもがわかっていても、システム上の流れは、だれにも変えられないのである。

聖書には、世の終末には、イスラエルが国際社会から孤立するだけでなく、世界から軍事攻撃されると書かれている。

もしかしたら、矛盾であり、不条理であるとわかっていても、世界はそれを止められず、やがてイスラエルを攻撃するようになるという図式が、なんとなく出来上がり始めているのかもしれない。
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