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アメリカの決断:エルサレムはイスラエルの首都 2017.12.7

 2017-12-07
トランプ大統領が決断した。トランプ大統領は、6日夜、ホワイトハウスの公式発表通り、「エルサレムを正式にイスラエルの首都と認める時が来た。」と宣言した。

トランプ大統領は、「今日、明らかな事実、エルサレムがイスラエルの首都であることを認める。これはただ事実を認めるということである。」と語り、これまでの大統領は避けてきたが、自分はこの事実を認めると語った。

トランプ大統領は、イスラエルとパレスチナの和平は、これまでと同じやり方では解決しないとして、まずは、否定できない事実として、エルサレムをイスラエルの首都と認めることが平和への道だと語った。

現実直視主義のトランプ氏らしく、まずは”現実”を認め、そこから現実的な道を模索しようと示唆したものと思われる。しかし、具体的な和平案の提示はなかった。

アメリカは今月17-19日までペンス副大統領をイスラエルとパレスチナへ派遣する予定で、その時になんらかの提示があるかもしれない。

トランプ大統領は、神殿の丘など聖地とされる場所のステータス・クオ(現状維持)は守ること、また2国家案を放棄したわけではないと強調した。

しかし、2国家案(国を2つに分割する)については、国際社会が2国家案にしか解決はないと言っているのに対し、トランプ大統領は、イスラエル、パレスチナ両者が合意するなら、2国家案を支持するという表現を使い、それだけにこだわらないというこれまでのスタンスを語った。

大使館をエルサレムに移動させる件については、その準備をすすめるよう指示したことを明らかにした。実際の移動までにはまだ何年かはかかるみこみで、その時に、まだトランプ氏が大統領かどうかもわからず、確実な異動時期は不明のままである。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5052940,00.html

<歴史的タイミング>

エルサレムはイスラエルの首都とするの宣言を、12月6日に行うということは、イスラエルにとっては大きな意味がある。

今年、エルサレムは東西統一50周年を迎えた。来年は建国70年である。また、今年はイギリスが、世界に先駆けてユダヤ人の祖国をパレスチナ地方に建設することを支援すると約束したバルフォア宣言から100年目にあたる。

そのバルフォア宣言の約1ヶ月後にイギリス軍を率いていたアレンビー将軍が、エルサレムをオスマントルコの手から解放したのだが、それが、トランプ大統領宣言の5日後の12月11日である。

この時期のエルサレム解放は霊的な意味もある。

アレンビー将軍は、敬虔なキリスト教徒で、エルサレム入城の際は、軍人ではなく、巡礼として入るとして馬を下り、徒歩で入城を果たしたほどの人である。ユダヤ教徒キリスト教は、どちらも聖書の神を信じ、同じ倫理観を共有する兄弟のようなものである。

アレンビー将軍のエルサレム解放は、ユダヤ人にとっても、イスラムの手からの解放を意味した。

さらにこの時は、紀元前167年、ユダヤ人をシリアの暴君からたった5人でエルサレムを解放したマカビー一家を覚えて祝うハヌカの祭りの時期だった。アレンビー将軍は今もハヌカの英雄と重なるイメージをもつほどもある。

トランプ大統領が、「エルサレムはイスラエルの首都」と宣言したのは、ちょうどこの時期で、タイミングはこれ以上にないと思われるタイミングであった。

*ユダヤ教とキリスト教

キリスト教は単独宗教ではない。キリスト教は聖書の神、すなわち、イスラエルの神を天地創造の神と認めている。その神が、かつてイスラエルに、「罪人は死罪にあたるが、その身代わりとなる犠牲(雄牛など)を捧げることで赦され、命を得る。」と約束をしたのであった。

キリスト教は、その最終的な身代わりとなったのが、イエスだと信じる。イエスが、十字架上で全人類の罪をあがなう犠牲になったというのがキリスト教である。従って、基本的にユダヤ教とキリスト教は同じ神を信仰していることになり、両者の倫理観は基本的に同じである。

キリスト教徒にとって、エルサレムがイスラエルの首都と言われることに特に違和感はない。むしろペンス副大統領ら福音派キリスト教徒は、それを目標としているほどである。

<イスラエルの反応>

トランプ大統領の宣言の後、ネタニヤフ首相はただちにビデオでトランプ大統領の宣言は歴史的だと述べ、「ユダヤ人の70年にわたる祈りが聞かれた。」と感謝を述べた。

また、エルサレムをイスラエルの首都と認めることが平和につながるとの認識を語った。また、トランプ大統領の動きに反対する周囲の国々に対し、イスラエルは現状維持に減速を維持する。エルサレムが、ユダヤ教徒だけでなく、イスラム教徒、キリスト教徒、またすべての人々のとって開かれた町であることを約束するとも語った。

最後に、ネタニヤフ首相は、トランプ大統領に対し、「歴史とユダヤ人は、いつもあなたの勇気ある決断を覚えるでしょう。」と感謝を述べた。

リブリン大統領も、「建国70年を前に、これほどの贈り物はない。」と感謝のコメントを出した。

エルサレムのバルカット市長は、「トランプ大統領の宣言は歴史的だ。世界にアメリカはユダヤ人、イスラエルと共に立つとのメッセージを明確にした。」と述べた。

エルサレムでは、旧市街の城壁に大きなイスラエルとアメリカの旗を並べて映し出し、アメリカに感謝する意思を表明している。

現在、各国大使館を受け入れているテルアビブのフルダイ市長は、「世界諸国の大使を歓迎するが、すべての大使館が、私たちの首都エルサレムに移動することを願っている。」と語った。

強行右派とされるユダヤの家党ナフタリ・ベネット氏は、「しばらくは衝突があるかもしれないが、長い目でみれば、平和につながると信じている。」と語った。ベネット氏は、イスラエルが主権を持つことで、パレスチナ人たちの経財の回復を助ければ、争いが減ると考えている。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5053069,00.html

しかし、よろこんでばかりではない。これがアラブ人たちの怒りをかうことは明白である。右派やシオニストたちが狂気している一方、一般の普通の世俗派で、実際に現地に住むイスラエル市民たちに聞くと、突然のトランプ大統領の動きにとまどっているようであった。

「エルサレムがイスラエルの首都となるのは良いこととは思うが、今とりあえず、平和を維持しているなら、それを壊さないでほしい。」と言った。

また、「オバマ大統領ぐらいがいうならよかったかもしれないが、トランプ大統領は、これまでからも無責任なコメントばかりだった。そのような人にエルサレムは首都だと言われても信用できない。

トランプもネタニヤフも、それぞれ私生活を暴かれて火中にある。エルサレムはそれを紛らすためだろう。迷惑だ。」と言う人も複数いた。

トランプ大統領は、違法ロシア関係疑惑。ネタニヤフ首相は、連立政権代表のバイタン氏が汚職疑惑で刑事聴取を受けており、ネタニヤフ首相の汚職は決定的になりつつある。土曜にはテルアビブで大きな反汚職デモがあった。

<パレスチナ人、アラブ諸国、国際社会の反応>

1)パレスチナ自治政府の反応

アメリカは、この宣言には、政治的な意図はなく、歴史的な事実として、エルサレムをイスラエルの首都と認めるだけだと言っている。

アメリカの言う歴史的事実というのは、エルサレムが紀元前1000年ごろから紀元後70年に至るまでの間(日本では弥生時代)、イスラエルの首都であったということ。また、現代イスラエルが建国して以来70年間、イスラエルの政府機関はエルサレムにあり、事実上、イスラエルの首都として機能してきたということである。

これは、言い換えれば、東エルサレムはパレスチナの首都として国家建設をめざすパレスチナ人に向かって、「現実として、エルサレムはイスラエルの首都だ。そろそろ東エルサレムはあきらめて、別の場所で考えよう。」と言っているのと同じである。

エルサレム市は、その境界線がまだ定まっていないことも問題である。イスラエルはマアレイ・アドミムも含めた大エルサレム構想を進めようとしているが、これが実現するとパレスチナ人の領域が分断されるため、衝突の原因になっている。そのあいまいなエルサレム市を、イスラエルの首都と言い切ってしまうことはやはり歴史的認識だけではすまない。

パレスチナ自治政府は、「今後、アメリカはイスラエルとパレスチナの和平交渉を公正に行うとは思えない。」として、和平交渉は終わったと言っている。

アッバス議長は、ハマス指導者ハニエに電話をかけ、トランプ大統領の発表にすぐにも協力して対応しなければならないということで合意した。両者の和解は暗礁にのりあげているが、トランプ大統領の一件で、共通の敵と戦うということで対話ができたようである。

アッバス議長は、アルジャジーラを通して、「トランプ大統領の決断は、パレスチナ人、イスラム教徒、自由な世界の怒りを呼び起こすものだ。これから何が起こるのかはだれにもわからない。

今後イスラエルが存在するかどうかわからない。エルサレムはパレスチナの首都なのだ。」と不気味なコメントを語っている。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5052862,00.html

東エルサレムでは、アメリカの公式発表を受け、大統領を非難するビラが出回っている。ラマラやベツレヘムの通りでは、若者たちがトランプ大統領の顔写真やアメリカの旗を燃やすなどして、トランプ大統領への怒りを訴えている。

ガザ地区では、ハマスが、「アメリカは、地獄の門を開けた。」といい、イスラム諸国にアメリカとの経済関係を断ち切るよう、呼びかけた。(ありえないと思うが)

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5053082,00.html

しかし、一方で、エルサレムポストが伝えたところによると、旧市街イスラム地区のパレスチナ人からも、「トランプは何者だというので、こんな問題を持ち込むのか。」と言っている人もいるようである。

メディアや国際社会がヒートアップする中、現地のユダヤ市民、パレスチナ市民ともに、実際のところは平穏に暮らせるならそれでいいと考えているようである。

2)近隣アラブ諸国の反応

東エルサレムも含めたエルサレムをイスラエルの首都と宣言するということは、旧市街、神殿の丘がイスラエルのものということになる。

神殿の丘に今見えている黄金のドームはイスラム第三の聖地とされてからすでに1400年以上になる。これがイスラエルの主権下に入ると宣言するとなると、これは、イスラム全体を敵に回すことになる。

ホワイトハウスは、上記のように、これは歴史的認識であり、政治的な意図はないとし、神殿の丘のステータス・クオ(現状維持)はそのままで、エルサレムの境界線を広げようとするイスラエルの試みには反対する立場であると主張している。

しかし、神殿の丘は、おそらく、トランプ大統領が思うよりはるかに大きな震源地である。

アメリカの公式発表の後、ヨルダンのアブダラ国王は、トルコのアンカラにエルドアン大統領を訪問。両首脳は、「パレスチナ人は絵東エルサレムを首都として国を立ち上げる権利があるという点で合意を確認した。

またアブドラ国王は、イスラムとクリスチャンの権利を無視する事は許されることではないと語った。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5052902,00.html

エルドアン大統領は、アメリカがエルサレムをイスラエルの首都とするなら、トルコはイスラエルとの国交を遮断すると警告している。

エジプトは、アメリカの宣言を拒否すると言っている。アメリカ・イスラエルよりとも言われるサウジアラビアは、パレスチナ人を支持する立場に変わりはないとし、エルサレムをイスラエルの首都と認めることは深刻な結果を招くと警告した。

http://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Saudi-Arabia-hopes-US-will-not-recognize-Jerusalem-as-capital-of-Israel-517043

イランのハメネイ最高指導者は、「アメリカは失敗者だ。」として、イスラエルの治安を守るために、中東で戦争をしようとしていると語った。

http://www.jpost.com/Israel-News/Iran-Supreme-Leader-US-intention-to-move-embassy-sign-of-incompetence-and-failure-517164

3)国際社会の反応

フランスなど、西側諸国は、トランプ大統領のエルサレムに関する”一方的な宣言”が、暴力を招くのではないかと懸念を表明している。

トランンプ大統領の声明の直後、国連のグテーレス事務総長は声明をを出し、「エルサレムの帰属は、2国家案をもとに、両者がきめることである。」とトランプ大統領の宣言に反対する意向を表明した。

しかし、これまで2国家案での和平を試みてきたのだが、すべて失敗してきた。もはや道はないというのが現状である。それで、トランプ大統領は、思い切って新しいアプローチを考えようと言っているのである。

トランプ大統領はいかにも実質主義者の考え方である。しかし、今後の状況によっては、イスラエルとトランプ大統領は世界を敵に回すことになる可能性もある。

<トランプ大統領のエルサレム首都宣言の本質>

今回のトランプ大統領の宣言はイスラエル史上、歴史的な出来事として、100年先、200年先も覚えられることだろう。しかし、これはバルフォア宣言のときと同様、まだ実現していないビジョンの提示のようなものである。

実際の大使館の移動には少なくとも3-4年、10年はかかるとの見通しもある。そのころにトランプ大統領がまだ大統領かどうかの保証はなく、次の大統領が、また見直し、中止するということも十分にありうる。

ということは、冷静に考えれば、現時点では、まだアメリカ一国、もっと言えばトランプ大統領が、エルサレムを首都と認めると言っているだけのことで、今の所、特に何かが変わるというものでもないということである。

<エルサレムはどのぐらい危険か>

6日、エルサレムの町中は、東エルサレムのパレスチナ側も含めて、今の所、いつもと変わらない様子であった。幸い、雨と風で天気が悪いので、大規模なデモやテロは起こしにくい夜を迎えた。しかし、アッバス議長が言うように、これから何が起こるのか予想がつかない。

ホワイトハウスからの公式発表があってから、実際のトランプ大統領の演説までの間に、パレスチナ人たちは、6日から3日間の「怒りの日」と宣言した。特に金曜礼拝日が危ないとされ、エルサレムでは治安部隊が警備を強化している。

東エルサレムでは、煽動が始まっているので、若者が単独テロを繰り返すか、大きな暴動からハマスや、ヒズボラが関わってくる可能性もある。日本大使館からも警戒の指示も届いている。

一方で、実際のところ、エルサレムがイスラエルの首都と言っているのはイスラエル以外ではアメリカ一国であり、国際社会全体が言っているわけではない。実際には何も変わらないということである。

また、中東では、アメリカの影響力が落ちていることから、もしこのまま、暴力事件もなく時が過ぎて行けば、今回は、「アメリカが言っているだけ」でとアラブ人達が気づき、そのまま下火になっていく可能性もありえないことではない。

ローゼンタール警察スポークスマンによると、ソーシャルネットワークも監視しているが、今の頃、深刻なテロや、暴動の情報はないとのこと。しかし、警戒は強化しており、何かあれば対処する用意はあるとのこと。

エルサレムポストによると、旧市街イスラム地区のパレスチナ市民もユダヤ市民と同様、「トランプ大統領がいったい何者だというので、混乱を持ち込むのか。」と迷惑がる声もあるようである。

アメリカは、イスラエル在住の大使館職員らにエルサレムの旧市街に行かないよう警告している。17日から来るペンス副大統領はパレスチナ側にも行く予定だが、かなり厳しいと思われる。

<石のひとりごと>

トランプ大統領は、ジャイアンである。ごり押しでなんでも実行してしまう。しかしそれで、普通の大統領なら絶対避けて通るこのエルサレム首都宣言が実現したわけである。

聖書によると、終わりの時、エルサレムにユダヤ人が住んでいて、そのエルサレムを憎む全世界が攻めてくるということが預言されている。(ゼカリヤ12章)

今、アメリカ一国がエルサレムはイスラエルの首都と宣言しただけで、世界はイスラエルをもっと憎む気配である。トランプ大統領は意識してなかったかもしれないが、終わりの日の世界情勢に向けて、一コマすすめたようである。
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