テロ被害少年死亡・戦闘意欲むき出しのハマス 2014.11.8

 2014-11-08
イスラエルでは、水曜の自動車テロで重傷となり病院で手当を受けていたバアダニさん(17)が、金曜朝、死亡した。これで今回のテロ被害者数は2人となった。  

バアダニさんは、ユダヤ教イシバに通う正統派ユダヤ教徒で、嘆きの壁での祈りを終えて帰宅するところでテロの被害に遭っていた。しかも、ユダヤ教政党シャス党高官の孫。
 
今後、ユダヤ教過激右派が、報復に出る可能性が高まってきたことを受けて、エルサレムのイツハク・ヨセフ・チーフラビは、金曜午後に行われたバアダニさんの葬儀において、「ユダヤ人は今、神殿の丘へ入らないように」との声明を出した。

しかし、右派ユダヤ教徒たちは、上記チーフラビの声明に従わず、金曜午後、ラビ・グリックの暗殺未遂現場に集結。イスラエルの旗や団体旗、「私たちの神殿の丘」と書いたバナーを掲げて、神殿の丘をめざすデモ行進を行った。治安部隊に途中で制止されたが、旧市街で、「モスクは破壊。神殿再建。」と叫んだ。

デモ行進を企画したガノール氏(ラビ・グリックの組織)によると、このデモは、「ユダヤ人が神殿の丘で祈らないことで、治安維持をはかろうとする政府の方針が間違っている」と訴えることが目的だったという。「アラブ人はユダヤ人を殺そうとしているが我々は恐れない。神の恵みにより、神殿の丘には第三神殿が建つ。」と主張する。http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4589054,00.html

一方、パレスチナ側では、昨日金曜は、神殿の丘での礼拝日だった。予想通り、東エルサレムのシュアハットや旧市街、西岸地区各地で、巣百人のパレスチナ人と治安部隊が衝突した。Yネットによると、投石する若者たちの中には8才から14才の子供たちもいたという。

<北部ガリラヤ地方でも暴動> http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4589386,00.html

金曜夜、北部ガリラヤ地方のカナでは、ナイフを掲げて警察の車両に襲いかかったアラブ人、ハマダン(22)を警察が射殺するという事件が発生した。その後、警察に反抗するアラブ人らが、カナの町中で、治安部隊に投石したり、タイヤに火をつけるなど、暴動となった。

事件の一部始終をとらえていた防犯カメラによると、犯人が、単独であったのに対し、襲われた警察車両には4人もの警察官が乗っていたことが明らかとなった。警察は正当防衛だと言っているが、アラブ人たちは射殺する必要はなかったと言って怒り心頭である。

北部ガリラヤ地方(下部)は、イスラエル全国の80%のアラブ人が在住している地域で、イスラエルの建国で、土地を奪われたと恨んでいるアラブ人が多い。カナでは、町と警察が緊急会議を開き、今日土曜日は町はストライキとなっている。

<ユダヤ人に自粛を呼びかけるネタニヤフ首相>

ネタニヤフ首相は、国会議員らに、今、神殿の丘へ入って、火に油を注ぐようなことはしないよう指示するとともに、木曜には、エルサレムを訪問したEU外交代表に対し、「ユダヤ人が神殿の丘で祈らないようにする。」と約束した。

その一方で、ネタニヤフ首相は、エルサレムの治安回復のために、治安部隊を強化しつつ、みせしめのため、今回のテロ犯人の家を破壊するようにとの指示を出した。暴動の原因を取り除くとともに強大な武力で沈静化(現状維持にもどすこと)をはかるという作戦である。

しかし、テロリストの家の破壊は、合法的とは言いがたい措置で、逆にパレスチナ人を怒らせる可能性が高い。

今回の暴動のエスカレートは、最近続いていた神殿の丘での暴動に対し、イスラエルが、これまでより若干強硬に対処し、負傷者も出たこと、一時的だったが、イスラエルが、神殿の丘をイスラム教徒も含めて完全に閉鎖するという異例の措置をとったことだったとも言われ、ネタニヤフ首相の対処に批判的な意見もある。

またこのような一時しのぎ的な対策は、神殿の丘のステータス自体を変えようとする右派たちには不満である。イスラエルのメディアには、ネタニヤフ首相は、エルサレムを失った首相として名を残すかもといった辛口の記事も出て来ている。

しかし、だからといって他に有効な手段があるわけでもなく、大変難しい状況である。

<ハマス・神殿の丘解放に備える新部隊を発表> http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4589331,00.html

国をあげて過激派ユダヤ人を押さえるのにやっきになっているイスラエルに対し、パレスチナ側はアッバス議長をあげて、「神殿の丘を解放せよ。」と扇動している。神殿の丘を掲げることで、これは正義の戦いだという流れになっているのである。

その流れを受けてか、国際メディアの表現が、通常は、「神殿の丘」という表記を使っていたのだが、急に「神殿の丘/ハラム・アッシャリフ」という表記になってきた。「ハラム・アッシャリフ」というのは、エルサレムの神殿の丘の黄金のドームを指すアラビア語で、「聖なる(イスラムの)神殿」という意味である。

ハマスの闘争心は、アッバス議長の上をいっている。今回の自動車テロの犯人で警察に射殺されたアル・アカリは、ハマスの戦闘員だった。昨日行われた葬儀には、ハマスの緑の旗が多数掲げられていた。

ガザ地区では、金曜、訓練が終わったばかりの戦闘員2500人を中核とする新しい「市民部隊」を発足させるとハマスが発表した。この部隊は主に「神殿の丘の解放」のためのイスラエルとの闘争が目的となっており、20才以上の者ならだれでも参加できると言っている。

<それどころではないのでは!?ガザ地区>

イスラエルへの闘争心むき出しのハマスだが、足下のガザ地区の様子はそれどころではないはずの状況である。

エジプトは、ガザとの国境を完全に閉鎖しただけでなく、ガザとシナイ半島の間のラファに500メートルの緩衝地帯を設置するとして、その地域にいたガザ住民1万人を追放し、その人々の家屋800軒を完全に破壊して平にしつつある。
http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4589220,00.html

また、ガザ地区の再建も始まったばかりである。ニュースによると、ガザ地区にコカコーラの工場が建設されることになった。これにより、3000人の雇用が実現できる。http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/186981#.VF222aW9DCu

さらに、昨日からは、 イスラエルも、ガザ地区で生産された野菜を西岸地区へ輸出することを許可。7年ぶりに、ガザ地区のキュウリを乗せたトラックが、西岸地区に向かったところだった。

<石のひとりごと>

現在、アラブ人の間では、神殿の丘にユダヤ教右派が入って挑発し、イスラエル軍が支配と暴力を拡大しているように言われている。しかし、正確には、イスラエル軍が神殿の丘に頻繁に入ったから暴動になったのではなく、パレスチナ人の暴動が頻発しているから、治安部隊が入らざるを得なかったのである。

神殿の丘を一時閉鎖したことも、まるでイスラエルが、イスラムを迫害するかのように言われているが、なぜ閉鎖したのかといえば、ユダヤ教右派のラビが暗殺未遂の難に遭い、ユダヤ教右派が神殿の丘に流れ込んでパレスチナ人とのし衝突する可能性があったからである。イスラムだけを閉め出したのではない。

しかし、パレスチナ人の間では、これまでに積み上がったイスラエルへの不満(エルサレムでユダヤ人が住宅の建設地域を拡大し続けていることなど)もあいまって、今、「神殿の丘(ハラム・アッシャリフ)」をイスラエルの手から解放せよ」というのが、正義、または暴力の大義名分になりはじめている。怒りは膨張する一方である。

一方、ユダヤ教右派も、「神に約束された”我々の”神殿の丘を取り戻す」というのが正義になっている。これまで治安部隊に神殿の丘での祈りを妨げられて来た不満とあいまって、こちらも怒りが膨張する一方となっている。

つまり、双方が、自分は正義だと信じ込み、双方が、神殿の丘を完全に自分のものにする時が来た言って立ち上がったということである。その間に入っているイスラエルの治安部隊は、双方を押さえるのに大わらわという、実に妙な状況になっているというわけである。

今後”正義の怒り”で煮えたぎっているパレスチナ人、ユダヤ人双方をおぼえて、とりなしが必要となっている。
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