激動の中東:まとめ 2017.6.11

 2017-06-11
中東が非常にややこしいことになっている。この真っ只中で、イスラエル市民がおおむね平和にやっているというのも不思議なほどである。中東情勢について、また、それとイスラエルの関連については以下の通り。

<アメリカとイランとの対立:スンニ派VSシーア派鮮明に>

先週、サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)、バハレーン、エジプトの中東4国が、カタールとの国交断絶を宣言。イエメン、リビア、モルディブがこれに続き、ヨルダンまで、国交のレベルを下げるに至ったことは前回お伝えした通り。

サウジアラビアなどが、国交断交によりカタールに要求しているのは、ムスリム同胞団をはじめとする過激派への支援とイランとの協力関係を断つことである。

アメリカのトランプ大統領はこの動きを賞賛し、「中東諸国が過激派撃滅への動きだした。」として、先月の自らの訪問の影響であると自負するコメントも出した。

http://www.reuters.com/article/us-gulf-qatar-idUSKBN18X0KF

サウジアラビアやエジプトなどはこのトランプ大統領のコメントを歓迎している。これで、アメリカは、スンニ派諸国の側についたことが明らかになった。

一方、シーア派のイランは、これに反発し、「サウジアラビアこそテロ組織を支援している国だ。アメリカこそテロ支援国家だ。」と訴えた。

この後になって、ティラーソン国務長官が、「湾岸諸国は、(カタールも含め)一致に向けて話し合うことを望む。」と、カタール断交に反対するかのようなコメントを出したが、先にトランプ大統領が、すでにカタールとの断交を賞賛していたこともあり、中東諸国はこのよびかけには反応しなかった。

http://edition.cnn.com/2017/06/05/middleeast/qatar-us-largest-base-in-mideast/index.html

1)カタールはどうなる?

カタールは小さい国だが、世界への影響力は大きい。液状ガスの輸出で世界で最も裕福な国の一つ。液状ガスの最大輸入国は日本である。今回のことで、カタールの株は下がったが、幸い、今のところ、市場に大きな影響はでていない。

しかし、カタール自体への影響は大きい。カタールは食料の90%を輸入に頼る国で、そのうち30%は、今回断交されたサウジアラビアに頼ってる。サウジアラビアとの国交断交により、交通路が遮断され、さらにはサウジアラビアの上空を空路として使えなくなった今、カタールは、人道的危機に陥る可能性もでてきた。

また、カタールには、エジプト人18万人、フィリピン人20万人ほか、パレスチナ人も多数出稼ぎに来ている。フィリピンは、カタールへの労働者の派遣を停止した。

2022年には、W杯も開催予定であるが、どうなるかは不明。

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-40173757

<アメリカの矛盾?>

トランプ大統領はカタール村八分を賞賛しているが、カタールには、イラク・シリアのISIS空爆に向かう最大の空軍基地がある。カタールに駐屯するアメリカ軍は11000人規模である。これについて、世界はトランプ大統領がまたわけのわからないことをしていると批判した。

しかし、ティラーソン米国務長官は、これがISIS攻撃に影響することはないと構えおり、あわてた様子はない。実際、それに関することの問題は今の所伝えられていない。

http://edition.cnn.com/2017/06/05/middleeast/qatar-us-largest-base-in-mideast/index.html

*そもそもなぜカタールは村八分?

カタールは以前より、湾岸諸国で昔から混乱をもたらしてきたムスリム同胞団を支援しているとされ、その傘下にあるハマスなど過激派の事務所を首都ドーハにも受け入れていた。この点においては、同じくテロ組織支援を疑われているイラン(シーア派)と、カタールは協力関係にあると指摘されていた。

さらにカタールは、アラブ系メディアのアル・ジャジーラを創設し、カタールの意向を反映する形でニュースを配信し、中東の混乱を拡大させていると言われていた。

そういうわけで、サウジアラビアとUAE、バハレーンなどの湾岸諸国は、すでに数年前からカタール反発を感じており、数年前から軽い制裁を行い、カタールに派遣していた大使も召還していた。

しかし、先月末、カタール国営放送のアルジャジーラが、イランを賞賛するニュースを発表したことをきっかけに、これまでの制裁では効果がなかったとして、今回、一気に制裁レベルをあげ、湾岸諸国から村八分に処したというわけである。

アルジャジーラの報道について、カタールは、サウジアラビアにハッキングされたと反論している。

この他、湾岸諸国を怒らせることがいくつか挙げられている。ファイネンシャル・タイムスによると、カタールの王家の一員が誘拐され、10億ドルもの身代金をイラクの過激派に支払った。過激派支援につながったとみられた。

アメリカのトランプ大統領が多額の武器売却を湾岸諸国全体に申し入れていた時、カタールがぎりぎりになって受注をキャンセルした。このため、サウジアラビアが一気に多額な金額を支払わなければならなくなった、(これについての真否は未確認)など、嫌われる要素はいくつもあったようである。

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-40173757

2)カタール外交努力:米ロ双方を訪問

カタールは今の所、サウジアラビアなどの要求に応じる気配はない。9日、カタールのアル・タニ外相は、ワシントンを訪問。ティラーソン米国務長官に面会し、「支援している言われるハマスについては、テロリストではなく、民族運動であるとの認識だ。」と語った。

この後、ティラーソン国務長官は、人道危機を招きかねないので、サウジアラビア等は、カタール包囲(交通の遮断)を解かなければならないとの公式発表を行った。無論、この要請が聞かれた様子はない。

https://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2017/05/270732.htm

続いて10日、アル・タニ外相は、モスクワでロシアのラブロフ外相と会談した。ロシアのラブロフ外相は、湾岸諸国は話し合ってこの問題を和解するべきだと語り、ロシアはそのために必要な支援はすると語った。

http://edition.cnn.com/2017/06/10/middleeast/qatar-crisis/index.html

この他、クウェートや、ドイツが、仲介を試みていると伝えられていたが、今の所、進展は伝えられていない。

3)イスラエルへの影響:ハマスに要注意

アメリカが、スンニ派諸国を支援して、イランとの対立姿勢を明確にし、最終的には、昨年オバマ前大統領がイランとかわした核兵器に関する合意を破棄しようとしていることは、イスラエルの立場と同調するものである。

さらに、サウジアラビアがアメリカと協力関係になれば、イスラエルはいざという時に、サウジアラビアから戦闘機を飛ばしてイランの核施設を攻撃することも、もしかしたら可能になるかもしれない。

また今回、サウジアラビアは、カタールにムスリム同胞団への支援停止を求めたが、その際、”ハマス”のようなとハマスを名指しで指摘した。おそらくトランプ大統領の要請であったと思われるが、これはイスラエルに協力するかのような流れである。

これについては、カタールは、すでに国内のハマスメンバーを国外に追放している。

しかし、ハマスへの締め付けが厳しくなりすぎると、ハマスがイスラエルへの攻撃をしかけてくる可能性も出てくる。それが中東諸国の支持を得る最終手段だからである。

カタールがハマスを支援できなくなると、代わりにイランをガザ地区へ呼び込むことになる。実際、ハマスは、2人の主要指導者をエジプトとイランへ派遣している。

なお、エジプトへ行っているのは、新政治部門代表アヒヤ・シンワル。イランへは、イシュマエル・ハニエが向かっている。

http://www.timesofisrael.com/amid-pressure-for-qatar-to-cut-ties-hamas-delegation-to-visit-iran/

イスラエルは、昨今、ナイフでテロをしかけてくるパレスチナ人への対処で、厳しい処罰ではなく、パレスチナ支援というアメを使って、第三インティファーダに発展するところをうまく阻止したと言われている。これは、パレスチナ自治政府のハムダラ首相も認めた点である。

今度、ハマスに対してどういう対処をとるのか、アメとムチをどう使っていくのか、今まで以上に知恵が必要になっている。

*UNRWAが、学校地下にハマスの地下トンネルを発見

UNRWA(国連パレスチナ難民救済機構)が、1日、UNRWAがガザ地区で運営する男子小学校の地下からハマスの地下トンネル2本を発見したと伝えた。

ハマスのトンネルが、学校の下にあるのは今に始まったことではない。しかし、通常ハマスをかくまうといわれているUNRWAが、自らハマスのトンネルを摘発するのはめずらしい。

http://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/UNRWA-discovers-Hamas-tunnel-under-Gaza-schools-496394

これを受けて、イスラエルのダノン国連代表は、安保理に「テロ組織ハマス、ガザの市民を巻き込んでいるということを調査すべきである。」と訴えた。

http://www.timesofisrael.com/israel-protests-hamas-tunnel-under-gaza-un-schools/

*ニッキー・ヘイリー米国連代表:ハマスのトンネルを視察

ニッキー・ヘイリー米国連代表は先週、ジュネーブでのUNHCR(人権保護委員会)での会議に出席し、この委員会でのイスラエルにのみ非難決議が極端に多いことを指摘。その後イスラエルを訪問した。

ヘイリー代表は、ネタニヤフ首相、リブリン大統領を公式訪問したほか、嘆きの壁、ヤドバシェムでは涙するところもみられた。またイスラエル南部のキブツ周辺で発見されたハマスのイスラエル侵入用の地下トンネルを視察。ガザ周辺住民にも会った。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4973377,00.html 

<追い詰められるISISとその反撃:モスル(イラク)、ラッカ(シリア)>

イラクとシリアでISIS掃討作戦が続けられ、いよいよその本拠地とされるモスル(イラク)、ラッカ(シリア)が陥落に近づき始めている。これにより、ISISの攻撃はヨーロッパや国外に広がりをみせている。

1)ラッカ(シリア)

アメリカが支持するシリア反政府勢力のSDF(シリア民主主義軍ーシリア人とクルド人勢力)が、ISISの首都と目されるラッカへの攻撃を開始した。ラッカには4000人のISIS戦闘員がいるとみられる。市民は20万人で、激しい戦闘で多数の犠牲者が出ると懸念されいる。

 http://www.bbc.com/news/world-middle-east-40234251

2)モスル(イラク)

イラクでISISに支配されていた最大の町モスルへ、アメリカの支援を受けたイラク軍と有志軍が進軍を開始してから8ヶ月。いまやモスルは孤立し、イラク軍も町の制覇へと近づいている。

今も1000人はいるとみられるISIS戦闘員は、住民を盾として使い、逃げようとする人々を銃殺するなど悲惨なことが続いている。

BBC6月8日の報道では、シファ地域から逃げようとしたイラク市民が少なくとも231人は殺害された。

その前の5月31日には50−80人、5月26日には27人、また同じシファ地域のペプシ工場付近では163人が殺害されたもようである。

3)ISISの反撃

ISISは海外にいるメンバーにテロを呼びかけている。イギリスではマンチェスターで22人が死亡、その後ロンドンでのテロでは8人が死亡した。

①テヘラン:政府議会堂とホメイニ霊廟でテロ:17人死亡

イランは、イラク・シリアに革命軍を派遣して、ISISはじめ反政府勢力と戦っている。これを受けてISISがなんとイランの首都テヘランのしかも政府議会堂とホメイニ霊廟でテロを実行した。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4973984,00.html

これにより17人が死亡。まもなくISISが犯行声明を出した。イランのザリフ外相は、このテロの背後にサウジアラビアとアメリカがいると非難したが、イランのハメネイ・イスラム最高指導者は、これを受け流す姿勢を示した。その後、イランからの目立った動きは伝えられていない。

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-40198578

この動きについて、イランの中東を制覇しようとしていたもくろみが崩れ始めているのではないかとの分析もある。

イランは、今、予想に反してシリア内戦が継続していることで兵士を予想以上に失っている。さらにはロシアがシリアにシリアに居座るみこみで、ISIS打倒の後、イランが、この地域で、どの程度、影響力を維持できるかは不明。

また、アメリカのトランプ大統領が強力にサウジアラビアを支援し、中東に乗り込んできたことから、中東での主導権をイランが握る可能性はますます薄らいでいるとの見方もある。

②フィリピン:マラウィを奪回へ

ISISはアジアにもいる。フィリピン軍は、ISIS関連組織に支配されていた南部の町マラウィを奪回するべく、激しい戦闘を続けている。町の解放は今週月曜を目標としている。BBCによると、これまでに少なくとも戦闘員138人、市民20人が死亡した。

フィリピンとアメリカの関係はオバマ大統領の時は、冷え切っていたが、トランプ大統領になってからは、関係が回復に向かっているもようで、このマラウィでの ISISとの戦いには、アメリカの特殊部隊が支援しているという。

http://www.bbc.com/news/world-asia-40231605

トランプ大統領になってから、確かに世界の流れは変わってきているようである。しかし、それが世界を安定に向かわせるものなのか、逆に大戦争に向かわせるものなのか、まだそのどちらにもなりうる気配である。

しかし、各メディアが共通して言っていることは、「かつてアメリカが中東で権力を持っていた時代とよく似た形になりつつある」ということである。

いずれにしても、ISISが全世界でテロを扇動しているので、どこでテロが発生するかわからない。今、テロをどこかで計画しているものたちの目が開かれるようにとりなしを。
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トランプ効果?:中東5カ国がカタールと断交 2017.6.5

 2017-06-05
トランプ大統領の外交手腕は、全体像が隠されているだけに、どこまでどう計算し、実際に何を動かそうとしているのが不明瞭なまま世界が振り回されているようである。

トランプ大統領がサウジアラビアでイスラム諸国50カ国の首脳代表をに向かって、「アメリカに頼らず、それぞれがテロと戦う必要がある。アメリカはそれを支援する用意がある。」と訴えてから約2週間。中東諸国が異例の動きをみせた。

4日、中東4諸国(サウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、バハレーン)に続いて、イエメンが加わり、中東5国が、カタールとの国交を遮断すると発表したのである。

カタールは湾岸諸国の一つで、サウジアラビアにくっつくようにして存在する半島の国。サウジアラビア、バハレーン、UAEからの国交遮断は、まさに湾岸諸国からの村八分といえる。

これら5国がカタールと外交を遮断するの理由は、カタールが、ムスリム同胞団はじめ、ISISやアルカイダなどのテロ組織を支援し、イランとも関係して、中東の治安を脅かしているというものである。

なお、トランプ大統領は、これらのテロ組織に加え、ハマスとヒズボラも撃滅すべきテロ組織にあげていた。

Yネットによると、今回の国交遮断の発表に先立ち、カタールは、ハマスメンバーに、国外へ退去するよう、通告していた。すでに2人がカタールから出たもようである。しかし、いずれにしてもこの国交遮断が発表されてしまった形である。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4971577,00.html

なお、今のところ、カタールからの声明はまだ出されていない。

<ハマスとイスラエルへの影響>

カタールは、ハマスの主な経済的支援国である。カタールは、この4月にも、燃料不足で電気の供給が極端に少なくなったガザ地区のために、トルコとともに燃料を緊急支援してた。

そのカタールが、ガザと隣接するエジプトを含む中東5国と国交を遮断されたとなると、これはガザのハマスにとっても締め付けとなりうる。カタールの支援なしにハマスは生き残れないという見方もある。

http://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Past-Israeli-emissary-to-Qatar-Hamas-wouldnt-survive-without-Doha-494889

加えて、ハマスは今、パレスチナ自治政府のアッバス議長からの締め付けも経験している。前々回お伝えした電気代の肩代わりを停止されたことで、ハマスは、深刻な電気不足にみまわれている。

また、Yネットによると、アッバス議長は、イスラエルで囚人となっていて、人質となっていたイスラエル兵のシャリート軍曹との交換で、釈放され、ガザへ送られたハマスメンバー277人への給与を差し止めたもようである。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4971474,00.html

単にハマスとファタハの内部闘争の一面と思われるが、イスラエルに関連したハマスメンバーが、対象となっていることから、アッバス議長が、トランプ大統領とイスラエルの圧力で、この給料差し止めを実施させられたのではないかとの見方もある。

しかしながら、こうしたハマスへの締め付けが、全部イスラエルにとって益になるかどうかはわからない。

たとえば、電力不足で、下水処理ができないため、ガザからは地中海に下水がどんどん垂れ流しになっている。エレツ検問所では、悪臭がただようほどだという。

最悪なことに、ガザ地区とイスラエルの境目に海水の無塩化工場があるが、採取する付近の海水が下水で汚染しているため、工場は今も操業できないままである。

また、ハマスがカタールの支援から遮断された場合、不満が爆発して再びイスラエルとの戦争になっていく可能性もあるし、
その反動でイランがハマスを支援しはじめる可能性もある。

今回の中東5国のカタール村八分政策が、ハマスにどう影響してくるのか、イスラエルにどう影響してくるかは、まだ先行き不透明である。

<保安官・中東に戻る!?>

イスラエルやアメリカのメディアでは、トランプ大統領が、前のオバマ大統領が積み上げたものを全部ひっくり返しながら、中東で影響力を取り戻そうとしている様について、「Sherif in Middle East returned.(中東に保安官戻る)」といった言い方がなされている。

保安官かどうかは不明だが、中東諸国は、イスラエルも含め、ハマスに至るまで、皆が振り回されているのは確かである。ただトランプ大統領が、どこまで計算しているのかはわからず、非常に危険なゲームをしているようでもあり、はらはらさせられているところである。

http://www.jpost.com/Middle-East/Analysis-Whats-the-new-US-sheriff-in-the-Middle-East-up-to-494767
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イラクで福音に死す:アンソニー・シモンさん 2017.6.4

 2017-06-04
イスラエル人のアンソニー・シモンさん、”トニーさん”は、イギリスの正統派家族に生まれ、35年前に、18歳でイスラエルに帰還。その後救われて、メシアニック・ジューとなった。

2年ほど前から、イラクに聖書を届ける働きをしていたが、5月29日、イラク(イルビル)で車にはねられて死亡した。常に福音宣教に邁進するパウロのような兄弟であったという。享年53歳。

トニーさんを取材していた韓国人のHさんによると、遺体はまだイラクにあるとのこと。

トニーさんがイギリスのパスポートでイラク入りしていたことから、遺体をイラクから運び出す責任は、イスラエル政府ではなく、イギリス政府になる。その場合、遺体はいったんイギリスへ運ばれ、そこからイスラエルへ運ばれることになるが、イスラエルに戻すのは非常に困難だという。

トニーさんの遺族が、「はねた人を赦すので、逮捕しないでほしい。」という趣旨の手紙をイラク当局に送付したとのことで、遺体は、現在、トニーさんをはねた人の家族が丁寧に管理してくれているとのこと。

遺族は妻と成人している2人の息子と娘。もうすぐ初孫が生まれる予定であった。

遺体はないが、6月1日、エルサレムの所属教会(バプテスト・ハウス)で葬儀が行われた。

<福音宣教にかけた人生>

イスラエルでは、信教の自由が認められている。しかし、ユダヤ人にキリスト教の福音宣教することだけは禁止で、場合によっては刑事問題になる。

路傍伝道などを繰り返すと、外国人の場合は国外追放になり、トニーさんのように市民権を持っている人でも、市民権を剥奪され、国外追放になる可能性がある。

しかし、トニーさんは救われて以来、そういうことはいっさい恐れず、どこにいても常に大胆に福音を語りつづけた。近年は、毎週金曜に、テルアビブの路上で、仲間とともに、聖書を配布。話ができた人には福音を語った。

エルサレムでも大胆に聖書を配布し、常に人々に声をかけて福音を語り続けたという。当然、市民権剥奪の危機にもあったが、これまで市民権を維持して、エルサレムの路上でも大胆に福音を語り続けた。

2年前からは、イラク(クルド人地区)の教会に呼ばれるようになり、トルコを経由してイラク入りするようになった。トニーさんのことである。アラビア語の聖書を大量に持ち込み、イラクの武装兵にまで聖書を渡して福音を語り続けた。

以来トニーさんは、40日ごとにイラクへ出向き、主にシリア難民などに福音を伝えた。働きはイラクがほとんどだったが、通過するトルコ、シリアでも聖書を配り、福音を伝え続けたという。

ISISがうようよする地域で、イスラエル国籍を持つユダヤ人がすることとは思えないほど大胆である。

なお、イラクで車にはねられた時も、路上で聖書を配布していたときだったとのこと。

若いころ、トニーさんを救いに導いた友人のリチャードさんによると、トニーさんは、「ユダヤ人をはじめ」ということを大事にしながらも、それ以外の諸国の民にも等しく熱心に福音宣教する人だった。文字どおりパウロのような人であったという。

<最後の聖書>

エルサレムで最後にトニーさんにイラクでの配布用の聖書を調達したのが、エルサレムの筆者宅に来て、彼に聖書を届けた友人のエレナだった。2週間前のことである。

昨日朝、エレナとともにトニーさんの話をしたその朝、教会で、彼が死亡したことを聞いた。エレナも大きなショックを受けていた。教会でも、福音に生きた現代版パウロ、トニーさんの生き方が紹介され、感動してしばらく涙が止まらなかった。

Kings Room Media のHさんが作成したトニーさんに関するビデオがある。韓国語ではあるが、以下のサイトで、トニーさんが熱心に聖書を配布する様子や、イラクでの写真、「コーヒーを飲みながら、無駄な話はせずに聖書の話をする。」と話しているのも見る事ができる。(約3分)

http://kingsroommedia.com/?p=2809 

兄弟の遺体はまだイラクにあるが、魂は、間違いなく主のもとにある。自分の走るべき行程を走りつくしたアンソニー・シモンさんに続いて、私自身も自分に与えられた使命を果たしていくこと、福音のために、みこころを一つもたがえることなく、やるべきことをすべて成し遂げていきたいと思わされた。

*訂正のお願い:聖書年間通読が始まるのはシムハット・トーラー

6月2日付のオリーブ山便り記事「シャブオットとラマダン」の中で、ユダヤ教ではこの日に年間聖書通読が始まると記載しました。年間通読が始まるのは、秋の仮庵の祭りの最終日シムハット・トーラーの時でした。訂正をお願いいたします。重大な間違いでした。心よりお詫び申し上げます。*ブログ内では訂正ずみです 
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トランプ大統領の中東和平政策 2017.5.8

 2017-05-08
トランプ大統領が、イスラエルとパレスチナの中東和平問題解決に乗り出している。まずは、アメリカが仲介または、きっかけ作り役となり、2014年に頓挫して以来になる両者の対話を再開したい考えである。

トランプ大統領は、イスラエル、パレスチナ双方が納得する案であれば、2国家案(国を2つに分ける)でも1国家案でもどちらでもよいと発言しており、2国家案に固執したこれまでの大統領の考えとは異なった立場を明らかにしている。

しかし、実際にトランプ大統領がどのような将来像をもって和平を目指すのか、具体的なことはまだ明らかではない。

なお、1月20日の大統領就任の時点では、義理の息子で、現在、大統領上級顧問のジェレッド・クシュナー氏(ユダヤ人・36歳)が、中東政策の担当となっている。

http://www.jpost.com/American-Politics/Jared-Kushner-will-broker-Middle-East-peace-at-the-White-House-says-Trump-478554

<トランプ大統領:アッバス議長会談>

3日、トランプ大統領は、ホワイトハウスにて、パレスチナ自治政府のアッバス議長と会談した。

アッバス議長は、昔からの変わらぬ方針、①エルサレムをパレスチナの首都とし、②1967年の軍事ラインを国境線にしてパレスチナ国家を設立する(神殿の丘を含む東エルサレムがパレスチナになる)という主張をトランプ大統領に伝えた。

結局のところ、この2点は、まさにイスラエルが受け入れられない究極の2点である。要するに狭い路地で対面した車2台が、どちらもが後ろにも引けず、かといってゆずり合う隙間もなく、ただにらみあったままになっているという状況なのである。

この会談において、トランプ大統領は、アッバス議長に、イスラエルへの敵意を緩和するため、イスラエルの刑務所にいるテロリストの家族への経済支援を停止することや、イスラエルへの憎しみを増長するような発信をやめるように要請したと伝えられている。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4957090,00.html

この会談について、アラブ系メディアのアル・ジャジーラは、具体性のまったくない、ただ「無駄」としかいいようのない訪問と、かなり手厳しく伝えた。

http://www.aljazeera.com/indepth/features/2017/05/trump-abbas-meeting-exercise-futility-170505124344776.html

<トランプ大統領のエルサレム訪問予定>

アッバス議長との会談の後の5日、トランプ大統領は、正式にエルサレムを今月22日、23日と一泊2日で訪問するという予定を発表した。

エルサレムに滞在中には、ネタニヤフ首相に会う他、ベツレヘムでアッバス議長にも会う方向で、調整が進められている。

エルサレムでの宿泊はキング・デービット・ホテル。同伴者やセキュリティ関係者、マスコミも世界中から来る。トランプ大統領がホテルから移動するたびに、道路が封鎖され、エルサレムは相当な混乱となる。

この翌日が、エルサレム統一50周年記念日で、様々なイベントの他、若い右派シオニストたちが市内から旧市街までをパレードする日になっている。治安部隊にとっては、悪夢のような3日間になりそうである。

イスラエル政府は、ホワイトハウスに対し、訪問を6月に延期するよう要請したが、トランプ大統領が、これを拒否したと伝えられている。その背景には、時期的な重要性が考えられる。

トランプ大統領は、アメリカ国家祈りの日*であった5日に、「自由は政府が与えるものではなく、神が与えるものだ。信教の自由を保障する。」と語る中で、エルサレム訪問を公式に発表した。

日程は、5月19日にアメリカを出て、イスラムのメッカがあるサウジアラビア(20−21日)、次にエルサレムがあるイスラエル(22−23日)、続いてキリスト教のバチカンがあるローマ(24日)を訪問するという、3宗教を等しく回る予定である。

またこの直後の25日には、ブリュッセルでNATO首脳会議にあわせて、EUのトゥスク大統領と、ユンケル欧州委員長 に会うことになっている。その翌日26日からは、イタリア、シシリー島でのG7に出席する。

なかなか忙しそうだが、これでトランプ政権の外交方針がだいたい見えてくるのではないかと思われる。

http://www.jiji.com/jc/article?k=2017050500735&g=int

<そもそも・・ヨルダン・オプション>

イスラエルとパレスチナの問題が、どこにも解決がないかのような事態になっているが、そもそも、パレスチナ人の国はすでにあるではないか、というのが、昔からある、”ヨルダン・オプション”である。

オスマントルコが崩壊したのちのイギリス委任統治の時代、1917年から1922年(トランスヨルダン設立)までは、今のイスラエルだけでなく、ヨルダンを含めた地域全体が「パレスチナ地方」と呼ばれていた。

それを1922年に分割してイスラエルとヨルダンにしたのだが、ヨルダンの国民は今も70%以上がパレスチナ人であり、今の王妃ラーニアもクエート生まれではあるが、パレスチナ人である。

いわば、この最初の2国家分割案の時に、イスラエルはユダヤ人の国、ヨルダンがパレスチナ人の国、ということで落着してもよかったわけである。

ところが、1960年代にアラファト議長率いるPLOが登場する。1993年のオスロ合意の時には、このアラファト議長率いるPLOが、正式にパレスチナ人の代表となり、第二のパレスチナ人の国ともいえる国を立ち上げることになった。

その新しいパレスチナになる予定の国も2007年に、西岸地区のファタハと、ガザ地区のハマスが分裂した。今では、ガザという第三のパレスチナ人の国ともいえるものができはじめた。問題は徐々に複雑化をたどっているというのが現状である。

今になって、そもそもの話を出してももう、まったく意味はないのだが、今になってこの理論を再度持ち出した記者は、「パレスチナ人の国を論じるなら、イスラエルだけが、そのために領土を差し出すのではなく、ヨルダンにもその一端をになう責任があるのではないか。」と訴えている。

理論的にはまったくその通りといえるかもしれない。しかし、そうはならないというのは、イスラエルにはエルサレムがあるからである。

結局のところ、パレスチナ問題の究極の到達目標地点は、「エルサレムからユダヤ人を追放する」という一点につきるというイスラエルの指摘は、残念ながら正しいといえるだろう。

さてトランプ大統領、これにどう介入するのだろうか。。。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4957389,00.html

*アメリカの国家祈りの日

アメリカでは、1775年に初代の議会が、国家をあげて神の前にへりくだりって悔い改め、祈る日を設けた。1863年には、リンカーンが、国のために断食の祈りを呼びかけている。

1952年、トルーマン大統領が、毎年恒例の国家行事とし、1988年、レーガン大統領が、5月第一木曜を、国家祈りの日に定めた。

http://www.nationaldayofprayer.org

しかし、アメリカでは、年々リベラル化がすすみ、同性愛者の結婚式を拒否する教会は、法廷に訴えられ、宗教法人としての税金控除の特権を剥奪されるなどして、破産する教会や、神学校が相次いでいる。

今年の国家祈りの日、トランプ大統領は、教会の発言力を強化する、牧師のメッセージも監視されることはないと語り、いわゆる”ジョンソン・アメンドメント”(政教分離のため、政治に口出しする教会は税金控除を剥奪されるなどの法案)を破棄するとの方針を語った。

一見、よいことのようにもみえるが、アメリカの有力な福音派メディア、クリスチャニティ・トゥデイは、ジョンソン・アメンドメントの廃止だけでは、政治的な発言に関することだけであり、ほとんど意味がないとして、落胆の反応をしている。

http://www.christianitytoday.com/ct/2017/may-web-only/trump-religious-liberty-order-johnson-amendment-ndop-prayer.html
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ローマ法王がエジプト訪問 2017.5.2

 2017-05-02
4月28日、ローマ法王フランシス(80)が、先月、受難週に発生した2回の爆破テロ(ISIS犯行声明)で、コプト・クリスチャン45人が死亡したエジプトを訪問した。

エジプトは現在、3ヶ月の国家非常事態宣言下にあるが、警戒態勢の中、法王は、国賓としてエジプトのシシ大統領に迎えられた。

訪問の目的は、迫害を受ける中東のクリスチャンたちを励ますことと、テロへの反対を訴えるためである。

BBCによると、法王は、1000年続くイスラム教の伝統的な学舎アル・アズハルのイマームに迎えられ、その地でスピーチも行った。

しかし、この訪問が、どの程度コプトクリスチャンを励ましたかどうかは不明。エジプトの総人口の10%を占めるコプト教徒は、東方教会に由来する正教会である。コプト教徒たちは、最近のテロ事件に関して、エジプト政府は十分な対策を講じていないと不満を訴えている。

ローマ法王は、世界13億人のカトリックの代表だが、エジプトのカトリックは、BBCによると15万人以下。

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-39743162
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