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シリア難民の悲惨:極寒の中で洪水 2019.1.13

 2019-01-13
先週、レバノンからイスラエルにかけて5日間、冬の嵐が到来した。これにより、リタニ川の支流が氾濫して、シリア人少女(8)が死亡。

レバノンの難民キャンプ361箇所(11300人)で洪水となり、テント内部にまで水が入って悲惨な状態になった。一部では雪も降り、厳しい寒さの中、なにもかもが濡れて、難民たちは夜も寝られなくなっている。

ベッカー谷では、シリア難民600人が避難所からの避難を余儀なくされた。

UNHCRビデオ:https://www.unhcr.org/news/latest/2019/1/5c386d6d4/storm-flooding-brings-misery-syrian-refugees-lebanon.html

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は雨の中、難民たちにマットレスや毛布を配布している。

https://www.unhcr.org/news/videos/2019/1/5c3715214.html

*レバノンには、この7年でシリア難民が100万人以上になっているが、そのほとんどはまだ難民キャンプから出られないままである。

<イスラエルではガリラヤ湖水位20センチ上昇>

同じ嵐は、イスラエルでは恵みの雨となった。北部レバノンとの国境、シリア難民らが避難を余儀なくされたベッカー谷のあるヘルモン山では、記録的な寒さから大雪となり、積雪量は1メートル近くにもなった。イスラエル全国で雪化粧が記録されている。

この大雨により、ガリラヤ湖の水位は19.5センチ上昇している。イスラエルはここ5年、干ばつにあるが、ひとまず解決とも言われている。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5443714,00.html

<石のひとりごと>

レバノンとイスラエルで大雪、大雨となり、8歳のシリア難民少女が死亡。人々は寒さに凍えながら悲惨きわまる状態に置かれている。その同じ頃、日本では10歳の女の子が史上最年少で将棋のプロになったということが、トップニュースだった。

ちょうど筆者もそのころは帰国していて、大阪のデパ地下にいたころなのであるが、日本のあまりの豊かさに圧倒されてしまった。物は超・あふれるているだけでなく、そのどれもが、素晴らしいものばかり。デパ地下の食べ物、特にケーキの華やかさには、脱帽であった。

まことに、まことに人生は不平等である。今平和にも物にも恵まれている私たちは、恐れをもって感謝すると同時に、世界には、悲惨な中で生きることを余儀なくされている人々が山のようにいることを忘れてはならないと思った。
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米軍シリア撤退騒動:その後 2019.1.1

 2019-01-01
19日にトランプ大統領が、独断とも言われる米軍のシリア撤退を発表してから、中東ではすでに様々な動きが始まっている。

マティス国防相を失うなど、国内与野党双方から批判を受けたトランプ大統領は、急遽イラクの米軍(5200人)を電撃訪問し、「イラクからは、今は撤退しない」とのメッセージを発した。しかし、公約もあり、いずれは撤退するとも言っている。

以下は、トランプ大統領の爆弾発言後に起こってきたことである。

1)クルド人勢力支配域にせまるトルコ軍とこれに対抗するシリア軍

トランプ大統領の米軍撤退表明の直後、トルコのエルドアン大統領は、残留ISはトルコが撃滅するといい、クルド人勢力への攻撃は保留にするといいながら、軍隊をシリア北部のクルド人勢力支配域(ロジャバ)のマンビジ周辺に集結させた。

https://www.bbc.com/news/world-middle-east-46701095

マンビジは、2016年にトルコが侵攻し、戦場になった経過がある(ユーフラテスの盾作戦)。以来、アメリカ軍が駐留しているが、これが撤退すると、トルコが再び侵攻すると懸念されている。このため、すでにクルド人勢力の要請により、シリア軍が、マンビジに入ったとの情報がある。

*シリアにおけるトルコとクルド人勢力の対立のこれまで

トルコは、2016年、ロジャバ(クルド支配域)の街、マンビジ(シリア北部のトルコ国境から30キロ)を攻撃(ユーフラテスの盾作戦)、続いて2018年1月から3月にかけて、ロジャバの町アフリンに侵攻し(オリーブの枝作戦)、クルド人3000人以上を殺戮している。この時、クルド人勢力(YPG)は、シリア軍に支援を要請し、結果、アフリンを含むロジャバの一部をシリア政府に引き渡した。

http://www.afpbb.com/articles/-/3160246?page=2

つまり、アメリカが撤退することで、トルコがクルド人勢力を攻撃した場合、結果的に土地はシリア(アサド政権)の支配下に入ることにつながっていく。そのシリアは、いまやロシアのいいなりなので、結局アメリカが中東から姿を消し、そのあとをロシアが支配するということである。

言い換えれば、トルコとロシアは、実質的には協力関係にあるということである。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5437124,00.html

29日、トルコとロシアの国防相は、モスクワで会談し、主にシリアから米軍が撤退したあとの協力について協議、合意した。

https://www.washingtonpost.com/world/middle_east/russian-and-turkish-ministers-meet-for-syria-talks/2018/12/29/51ef3a30-0b6d-11e9-8942-0ef442e59094_story.html?utm_term=.87a955316645

2)湾岸アラブ諸国がシリア進出!?

シリア内戦が終わり、アサド政権が国を回復しつつあることを受けて、湾岸諸国がシリアとの国交を回復し始めている。筆頭は、アラブ首長国連邦。大使館をダマスカスで再開した。

次にバハレーンがこれに続くみこみとなっている。湾岸諸国は、内戦の激化を受けて、シリア(アサド政権)をアラブ同盟から除名していたが、シリアでのアラブの使命をはたす必要性があるとしている。(ペルシャ人のイランに支配させてはならないという意味)

しかし、シリアですでに、イランがすでの勢力を伸ばしていることを思えば、これは、かなり危険な動きかもしれない。イエメンの二の舞にならないようにと思う。

*実はトランプ大統領の作戦?

シリアからの米軍撤退は、国内外から、危険だとして批判を受け、アメリカが権威を信頼を危ぶまれる結果となった。これを受けて、一時、市場も混乱し、世界にも影響を及ぼした。

しかし、この動きが、逆に肯定的な結果を生み出す可能性もじわじわ見えてきているという分析もある。イスラエルの中東専門家、モルデカイ・ケダル博士は、アメリカが撤退することでアメリカは、今後、国連でのイスラエルバックアップを強化、軍事支援も強化するとみている。

ケダル博士は、アメリカは、今、IS撲滅からイラン対策に、焦点をシフトさせたと説明する。この目標のために、これまでのアサド政権排斥から一転、軍を撤退させることで、事実上、アサド政権を容認する形になっていると指摘する。

アサド大統領は、化学兵器を使用した疑いも濃く、国民の多くを死においやった指導者としては認め難い人物ではある。しかし、実質的には、シリアが正式な国に回復することで、イランやロシアの進出に釘をさす効果も期待できるかもしれない。

今湾岸アラブ諸国が、シリアに戻る動きが始まっていることも、これをバックアップすることになるだろう。しかし、サウジアラビアがどう出てくるのかが鍵になると思われるので、今後注目される点である。

http://www.israelnationalnews.com/Articles/Article.aspx/23235

4)米軍なしでも恐れなし:イスラエルの方針は変わらず

北部のアメリカ軍、またクルド人勢力がいなくなるということは、イスラエルにとっては、ユーフラテス川の東側にあった防波堤を失うということである。しかし、トランプ大統領は、「イスラエルには毎年45億ドルの軍事支援を送っている。単独でも大丈夫だ。」と言った。

ネタニヤフ首相は、「アメリカが撤退しても、何も変わらない。イスラエルはシリアにイランが定着することを受け入れない。攻撃は続ける。」と強調した。

https://www.timesofisrael.com/netanyahu-vows-to-keep-hitting-iran-in-syria-we-stand-firmly-on-our-red-lines/

トランプ発言の5日後、イスラエルのハデラ近郊から、突然、迎撃ミサイルが発動した。その後、シリア国営放送が、イスラエルがダマスカス近郊の軍用倉庫を攻撃したことへの報復だと発表した。

シリアによると、イスラエルの攻撃の少し前に、イランからの輸送機が到着していたという。イスラエルは、これに対応して何らかの攻撃を行ったとみられる。後にイスラエルもこの攻撃を認める声明を出した。

https://www.timesofisrael.com/syria-says-air-defenses-deployed-against-enemy-targets-near-damascus/

*イランからのヒズボラへの武器空輸増えている?

エルサレムポストによると、30日、イランの747旅客機が、朝8時にテヘランを飛び立ち、10:30にダマスカスに到着。同日5時には、テヘランへ戻ったと伝えた。ヒズボラへの武器を搬送した疑いがある。

同じようなフライトが12月だけでも数回あり、シリアの監視団体によると、イスラエルの攻撃と時期が合致しているという。

今、イランは、様々な方法で、シリアに進出すると同時に、ヒズボラへの支援も継続しており、イスラエルはそれに注意深く対応しているとみられる。

https://www.jpost.com/Middle-East/DEVELOPING-Suspicious-Iranian-cargo-plane-leaves-Tehran-575797

ネタニヤフ首相は、トランプ大統領のシリア撤退発表から、イランの動きが活発化しているとして、トランプ大統領に、米軍撤退をするなら、段階を追ってゆっくりやってほしいと要請。トランプ大統領はこれに合意したとの情報が入っている。

https://www.jpost.com/Breaking-News/Diplomatic-source-Operation-against-Hezbollah-prevented-war-in-Lebanon-575945

<石のひとりごと>

イスラエルのケダル博士も指摘しているが、シリアからの米軍撤退は、駐留しているアメリカ人兵士とその家族にとっては、きわめて朗報であろう。

「アメリカは、中東では嫌われているのに、なぜ息子たちの命を捧げなければならないのか。」というトランプ大統領の言い分も、当然といえば当然である。

しかし、アメリカ軍の撤退後、イスラエルが心底頼れるのは、いよいよその神、主だけになる。・・・が、聖書によると、それこそがイスラエルの強さなのである。実際、イスラエルはこれまでからも不思議に強かった。イスラエルは、確かに侮れない国である。

トランプ大統領は、まことに破天荒で、まことに危なっかしいのではあるが、本人もあずかり知らないところでどうも、主に動かされているところがある。米軍のシリアからの撤退からも、なんらかの予想もしない結果が出てくるかもしれない。注目していきたい。
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米:シリアから撤退へ:イスラエルへの影響 2018.12.23

 2018-12-23
アメリカ軍のシリアからの撤退、マティス国防長官の辞任については、日本でも大きくとりあげられている。ここでは、この件の解説とともに、これからどうなるのか、イスラエルはどう反応しているのかを報告する。

<トランプ大統領:突然の独断Uターン>

19日、トランプ大統領は、突然、シリアに駐留させているアメリカ軍(約2000人)を、できるだけ早く撤退させると発表した。

その理由として、「目的であったIS撃退はほぼ完了した。アメリカは相当な打撃を与えた。若者たちを帰国させる時だ。」との見解をあげた。

また、中東での駐留について、「アメリカは、大切な命と大金を使っても何も得られない。当事者たちに感謝されることもない。アメリカは、中東の警察になるべきだろうか。永遠に駐留を続けるべきなのか。」と、撤退の理由を述べた。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5430067,00.html

トランプ大統領は、シリアに続いて、アフガニスタンに駐留している米軍(14000人)の半分にも撤退を命じた。

https://edition.cnn.com/2018/12/20/politics/afghanistan-withdrawal/index.html

確かに、トランプ大統領は、アメリカ軍を中東から撤退させることを公約にあげていたが、その後の情勢から、アフガニスタンからもシリアからも当分、撤退はなく、駐留は続けるとの流れになっていた。世界はこのアメリカの突然のUターンにただ驚くばかりである。

<自国補佐官らを無視してトルコに合意してシリア撤退を決めたトランプ大統領>

驚いているのは世界だけではない。アメリカの閣僚も議会も皆が驚いている。この決断は、撤退発表の数日前の14日、大統領がトルコのエルドアン大統領との電話会談中に独断で決めた可能性が高まっている。

現在、トルコは、アメリカが支援しているシリア北部のクルド人勢力支配域への攻撃を脅迫している。このままであれば、クルド勢力だけでなく、そこに駐留しているアメリカ軍、NATO軍にも被害が及び、事が大きくなる可能性があった。

このため、アメリカのポンペイオ国務長官と、トルコのカウソグル国務長官が、両国の大統領がこの件について、電話で話し合う方向で準備を進め、14日にこれが実施された。

電話会談に先立ち、ポンペイオ米国務長官は、トランプ大統領に、トルコがクルド勢力地域へ攻め込まないよう説得するようその要旨を伝えていたという。電話会談には、ボルトン大統領補佐官も参加した。

エルドアン大統領は、トランプ大統領に、「アメリカ軍のシリア攻撃は、ISの撃滅が目的だったはず。ISは、今や全盛期の1%にまで縮小した。なぜアメリカは今もまだ駐留を続けているのか。」と詰め寄った。

これを受けて、トランプ大統領は、ボルトン補佐官に、「それもそうである。なぜアメリカ軍はいまだに駐留を続けているのか。」と問うた。この時、ボルトン補佐官は、ISがもはや1%しか残っていないということには合意せざるを得なかった。

「とはいえ、ISはまだ完全には終わっていない。」とボルトン氏は強調したが、トランプ大統領は、もはやこれに動じず、「OK。ではアメリカは、できるだけ早く撤退する。」とエルドアン大統領に言い放った。

電話会談直後から、ボルトン補佐官、マティス国防長官、ポンペイオ国務長官は、3人頭をよせて、いかに大統領の発言を撤回させるか、撤退を遅らせるかを考えた。最終的には、第三の中間的な妥協案を大統領に提示しようとした。

しかし、週明け16日月曜には、すでに米軍参謀総長が、シリアからの撤退の指令を受けて、現地部隊に連絡。撤退準備が進んでいることがわかり、もはや打つ手なしということになったようである。

アメリカ軍のシリアからの撤退に関する公式発表は、当初は報道官を通じて17日に予定されていた。しかし、ペンタゴンでもまだ準備不足である上、閣僚や議会など内部にも十分連絡がいきわたっていなかったため、水曜19日に持ち越された。

https://www.timesofisrael.com/trump-decided-on-syria-pullout-during-phone-call-with-erdogan-report/

あまりにも急な展開であったため、発表の時点で、大統領自身の共和党内部にすら、まだ十分知らされていなかったようで、対抗勢力の民主党はいうまでもなく、共和党内部からも、懸念と批判の声が相次いでいる。

正式な発表ではないが、現地シリアにいる米軍司令官からも、シリアから今、撤退することへの影響を懸念する声が出ているという。

*シリア南部でISと戦闘

懸念を裏付けるかのように、トランプ発言から2日後の21日、シリア南部、ユーフラテス川東側では、アメリカが支援しているシリア民主軍(反政府勢力)がISの襲撃を受けた。

これを受けて、アメリカ軍率いる連合軍が、ISにむけて空爆を行った。(シリア民主軍報道)アメリカの撤退後、シリアで、ISが復活してくる可能性も懸念されている。

https://www.jpost.com/Middle-East/ISIS-attacks-positions-held-by-the-US-backed-Syrian-Democratic-Forces-in-southeastern-Syria-575024

<マティス国防長官退任>

さらに大きな激震は、22日、マティス国防長官(68)が、自ら、来年2月末で退任すると発表したことである。

マティス国防長官は、ISはまだ撃滅しておらず、その再生を抑える必要があると考えている。また、直接名指しはしないものの、「同盟国への敬意と強力な関係維持なくして国益はない。」として、シリアからの撤退に同意できなかったことが、退官への大きな引き金になったことを示唆した。

しかし、マティス国防長官は、湾岸戦争やイラク戦争において、現地で指揮をとった超ベテランの軍人で、得に中東事情については、相当な知識も経験も持つ人物である。またマティス国防長官は、現政権では、唯一トランプ大統領にブレーキをかけられる人物とも目されていた。

このため、今後、なにをしでかすか予測不能のトランプ大統領が暴走するのではないかも懸念されている。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/256522

なお、退官を発表したことにより、マティス国防長官は、来週予定されていたイスラエル訪問をキャンセルした。

*アメリカ政府一部閉鎖

このややこしい時に22日、アメリカは、トランプ大統領のメキシコ国境の壁建築の予算をめぐって、新暫定予算案で合意できず、政府機関の一部閉鎖という事態になった。今年3回目である。

これは、新予算案が通ってないため、22日以降、政府からの出金が止まるということであり、公的事業の一部が麻痺する、または関連労働者が無給に陥ることを意味する。

https://www.bbc.com/news/world-us-canada-46657393

クリスマス前に、アメリカは、なかなかの混乱状態のようである。

<米軍シリア撤退後どうなる!?:ロシア、イラン、トルコの進出>

シリアから撤退しても、アメリカ軍は、イラクに5000人、クウェートに1万5000人、バハレーン、アラブ首長国連邦、クエート、オマーン、ヨルダンにも部隊を置いている。なんといってもやはり、今はまだ、アメリカの力は強大だ。

それにトランプ大統領は、予測不能なので、今とはまた全然違う方向に方向転換する場合も十分ありうる。中東情勢のこれからを予測するのは、専門家でも不可能と言われている。

しかし、シリアでは、シーア派、スンニ派がぶつかり合い、ありとあらゆる勢力が入り込んでいる。この地域で、影響力を持つ者が、最終的には、中東全体での覇者になっていく可能性は高い。

今、シリアからアメリカが撤退するということは、アメリカはそこでの支配力を放棄するということでもある。その後は、ロシアとその友好国イラン、トルコが支配しても良いと言っているのと同じである。当然ながら、ロシアは、アメリカのシリアからの撤退を歓迎すると発表した。

アメリカは、まだいつシリアから撤退するのか、その具体的なタイムテーブルは発表していないが、もし本当に撤退した場合、今後、考えられる動きは以下の通りである。

1)トルコ(背後にロシア)がクルド人地区(シリア東北部)を攻撃へ

先週までトルコは、シリア東部のクルド人地域に攻め込む勢いであった。このためにエルドアン大統領とトランプ大統領の電話会談が行われたのであった。

https://www.nytimes.com/2018/12/21/world/middleeast/turkey-military-syria.html

エルドアン大統領は21日、トランプ大統領との電話会談により、クルド勢力、並びに同地域に残っているISへの攻撃は延期すると表明した。ただし、攻撃を中止したわけではなく、必ず将来、攻撃する強調している。

この取引の背後には、武器の売買がからんでいるとみられる。

最近、アメリカが問題視していたのは、トルコがアメリカからF35ステルス戦闘機を購入する一方で、ロシアからは、S400迎撃ミサイルの購入を決めたことである。

S400とF35戦闘機の双方がトルコに入ることにより、ロシアが、F35をS400で撃墜する方法を見つけ出してしまうかもしれない。このため、アメリカはトルコにF35を売却することを渋ったり、大量のパトリオット迎撃ミサイルを販売することで、ロシアのS400の購入をキャンセルするよう要請したりしていた。

しかし、F35は予定通り、トルコに売却が決まり、Press TVによると、結局S400は、ロシアからトルコへ搬入されるもようである。

また、クルド人勢力の情報によると、ロシアが、ユーフラテス川の東側、つまり、クルド人勢力を早く制圧するよう、トルコに圧力をかけているとのことである。

ロシアは今、クルド人も含め、シリアの反政府勢力を一つにまとめて、アサド政権とともに、シリア内戦の終焉にむけて、外交的プロセスに臨むという計画を進めているからである。

アメリカ撤退後、いずれ、クルド人勢力は、ロシアとイランに対し、単独で戦うことになるだろう。結果的に、クルド人たちが、アサド政権とのなんらかの合意に、サインさせられる可能性もある。

*トルコとロシアの関係

シリアでのIS攻撃において、トルコは、しぶしぶではあったが、アメリカ主導の有志軍に参加した。しかし、アメリカが、ISと戦うクルド人勢力を支援するようになると、トルコのアメリカ離れが始まった。

ここ数年、トルコは、アメリカから離れてロシア、イランの陣営に加わり、3国でシリア内戦を収めようとする動きになっている。

2)ロシア、イラン、トルコがシリア内戦集結に向けて結束へ

アメリカがシリアからの撤退を発表したころ、ロシア、イラン、トルコの3国は、国連の下、ジュネーブでシリア内戦の集結に関する会議を行った。

この3国がこうした会議を開くのは、これが3回目になる。3国が計画しているのは、アサド大統領と反政府勢力が同じテーブルについて、シリア再建を議論する会議である。新しい憲法も提案される予定である。

この会議に参加するのは、シリア政府代表50人、反政府勢力代表50人と、自立団体代表50人となっているが、現在、この3つ目のグループの50人を誰にするかで合意できず、今もなお和平会議にこぎつけられない状況である。

また、シリア和平会議を開催する前に、先のクルド人問題の他、シリア北部のイドリブ問題を解決しなければならない。

イドリブには、シリアの反政府勢力の生き残りたち10万から15万人がいる。この勢力は、アサド大統領を絶対に認めないため、アサド大統領を交えた和平交渉のテーブルにつくことはない。

イドリブについては、トルコとの国境に近いこともあり、こちらの方も、トルコがこれを制圧することをロシアは求めているとみられる。

しかし、ロシアとイランが、完全にアサド大統領支援であるのに対し、トルコは、今も一応、反政府勢力支援派であるため、トルコが、イドリブを攻撃することは容易ではない。

もし、トルコが、イドリブ制圧に動かなかった場合、再びロシアが介入し、多大な犠牲者や難民が発生することも、懸念されている。

https://www.jpost.com/Middle-East/Russia-Turkey-Iran-team-up-on-Syria-talks-as-US-weighs-pulling-troops-574799

こうした流れが予測される中でのアメリカの撤退である。アメリカは、もはやシリア内戦の集結には、なんの影響も及ぼせない、というよりは、それを放棄したということである。

中東において、アメリカの権威も信頼も失墜することはさけられないだろう。

3)イランの進出拡大へ

今回のアメリカの撤退で、最も笑っているのはイランではないかと言われている。

アメリカが撤退することで、イランは、シリア領内で、動きがとりやすくなる。また、イランからイラク、シリア、レバノンを通る地中海への回廊を妨害するものがなくなり、いよいよイスラエルを攻撃しやすい形ができあがる。

また、ロシアの進出で、アサド政権存続でシリア内戦が集結すれば、アメリカや宿敵サウジアラビアの権威は失墜する。これは、イランにとっては、非常に有利な展開と言えるだろう。

https://www.nytimes.com/2018/12/20/world/middleeast/syria-us-withdrawal-iran.html

しかし、サウジアラビアとアメリカは、ムハンマド皇太子のカショギ記者殺害スキャンダルで、すでに十分信頼を落としていたわけである。

イラン外相は22日、「アメリカはシリアでの使命を達成したと言っているが、介入したこと自体、最初からまちがっていたのだ。アメリカの存在こそが不安定の原因だった。」と語った。

https://www.jpost.com/Middle-East/Iran-US-presence-in-Syrian-civil-war-a-mistake-from-the-start-575105

イランは、22日、ペルシャ湾への入り口で、特に問題になりやすいホルムズ海峡において、イラン革命軍の軍事演習を行った。アメリカの空母がペルシャ湾に入った翌日である。訓練をしているイラン艦船の向こうにアメリカの空母が見えている。

イランにとっては毎年恒例の訓練であるとはいえ、非常にきわどく、挑戦的であるといえる。

https://www.timesofisrael.com/irans-revolutionary-guard-launches-drill-near-strait-of-hormuz/

トランプ大統領のシリアからの軍撤退発言以降、今の中東においては、アメリカ陣営に対し、ロシア陣営が、有利に立つ流れに変わりつつあるのかもしれない。

<イスラエルの反応>

アメリカ軍がシリアから撤退し、中東での覇権を放棄することは、アメリカを唯一の同盟国とするイスラエルには大問題である。米軍のシリアからの撤退は、アメリカの閣僚よりも先にイスラエルへ一報が入っていたとの報道もある。

イスラエルにとって、最も重要な関心事は、イランである。アメリカがイランから撤退することで、シリアでの最大勢力はロシアになるが、そのロシアは、前回お伝えしたように、イスラエルとは、距離を置き始めると同時に、イランに手を貸す動きに出始めている。

ネタニヤフ首相は、トランプ大統領のシリアからの撤退発表の後、「イスラエルは、シリアのイラン攻撃を強化する」と発表。しかし、同時に、それがアメリカのバックアップで行われることを強調した。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/256483

<石のひとりごと:ユーフラテス川の向こうから来る王たち>

突然だが、世の終わりに起こることを預言する聖書には次にように書かれている。

第六の御使いが鉢を大ユーフラテス川にぶちまけた。すると、水は、日の出るほう(東側)から来る王たちに道を備えるために枯れてしまった。・・・彼らは全世界の王たちのところに出て行く。万物の支配者である神の大いなる日に備えて、彼らを集めるためである。(黙示録17:12−14)

今、イスラエルの唯一の同盟国、アメリカがシリアのクルド人領域から撤退しようとしているが、それは、ユーフラテス川の東側にあたる。

聖書によると、やがてユースラテス川の東から王たちが一斉に、イスラエルに攻め込むことになるが、その王の中にイラク、イラン、ロシアが含まれるのだろう。

また、アメリカが、もはや同盟国を大事にしなくなったとすれば、イデオロギー的にはロシア、イラン陣営に近い、中国や北朝鮮もまた、ユーフラテス川の東から来る王たちに含まれるのかもしれない。アメリカという障害物がいなくなれば、そこを通過することも容易になるだろう。終わりの時の様相が、また一つ見えてくるようである。

また、アメリカのこうした自己最優先の姿勢については、日本もまた他人事ではない。これまで北朝鮮、中国の問題に関して、マティス国防長官が、日本、韓国を含む同盟国との連携を重視し、トランプ大統領の今回のような突然の米軍撤退を抑えていたとも考えられる。

マティス国防長官退官の後、トランプ大統領が、もはや日本を守る義務はないとして、さっさと軍を撤退させるかもしれない。そうなると、日本は自力で北朝鮮や中国に立ち向かわなければならなくなる。

これをみこしてか、日本の軍事予算は来年19年度は過去最大の5兆2600億円。アメリカから、F35最新鋭ステルス戦闘機(垂直離発着)を最大100機を前倒し導入予定(1兆円以上)で、空母「いずも」を改修して、配備する予定とのこと。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018120500594&g=pol

日本では、国民が、憲法9条改正に反発する傾向にあるが、世界情勢も日本政府自体の動きも、すでに、まったくかけ離れたところにいると思ったほうがよさそうである。
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急変する北部情勢:ロシアによるシリア対空防衛完成か 2018.12.5

 2018-12-05
11月30日、シリア政府メディアSANAは、ダマスカス南部の町アル・キスワが、イスラエルからのミサイル攻撃を受けたため反撃し、ミサイル4発とイスラエルの戦闘機を撃墜したと発表した。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5417116,00.html

アル・キスワは、イスラエルとの国境からわずか50キロ地点で、イランの軍事拠点があるとみられている。5月にもイスラエルによるとみられる攻撃で、イラン人8人とシリア人7人の計15人が死亡した。

さらに、その半年前にも同じ地域が攻撃されている。したがって、今回もイスラエルによる攻撃であった可能性は高い。しかし、イスラエル軍報道官は、これを否定。戦闘機の撃墜も否定した。

<ロシア:シリアの対空防衛完成か?>

シリアのイスラエル戦闘機を撃墜したという発表が本当なのかどうかは、知る由もないが、ロシアがいよいよシリアに地対空ミサイルS300, S400の配備を完了したのではないかとの見方があり、懸念が広がっている。

https://www.presstv.com/Detail/2018/12/02/581738/Russia-Syria-air-defense

シリアの地対空攻撃能力がたかまっていることは、9月に、ラタキアでヒズボラへの武器移送を阻止しようとして攻撃しに来たイスラエル軍機の迎撃を試みた時に、あやまってロシア機を撃墜したことからも懸念されていた。

この時、ロシア人乗組員15人が死亡したが、プーチン大統領は、「これは事故であった」と鶴の一声を発し、大きな衝突を避けた。その代わりに、堂々と、シリアにS300の配備を開始したとの声明を出したのであった。

それから2ヶ月。もし、今、ロシアが、シリアにS300の配備を終えたとしたら、今後、イスラエルが、イランからヒズボラへの武器移送を事前に攻撃したり、シリア領内でのイランの軍事行動を察して先手を打ったり、シリアの核兵器開発が疑われる場合の先制攻撃は非常に難しくなる。

ロシアがシリアの地対空防衛を強化するのは、中東でのアメリカの進出を食い止めるためである。これまでのところ、ロシアは、イスラエルについては、まだ協力関係を維持しているようだが、これは、シリアでイランが強くなりすぎないようにするためと考えられている。

<不気味なロシアの進出:ウクライナ危機再び>

シリアで存在感を増し加えているロシアだが、ウクライナでもロシアの進出が、緊張感を増している。

11月25日、黒海に面するオデッサを出て、クリミア半島を回り、アゾブ海に向かっていたウクライナの砲艦2隻と牽引船の計3隻が、アゾブ海への入り口、ケルチ海峡で、ロシア海上保安船と衝突。ロシアは戦闘機やヘリコプターまで動員して、ウクライナ船に発砲し、ウクライナ人3-6人が負傷した。

その後、ウクライナ船3隻と、乗組員24人はロシアに拿捕された。24人はまだロシアに拿捕されたままである。

ロシアは最初、ウクライナ船が、ロシア領海を侵犯したと主張したが、ウクライナは、これはロシアの挑発だと主張した。今、2014年以来のウクライナ危機再来と懸念されている。

http://time.com/5469395/ukraine-defense-reservists-russia-tension/

*東西冷戦の発火点

ウクライナ砲撃船が向かっていたアゾブ海は、クリミア半島とケルチ海峡に挟まれた湾で、ウクライナ、親ロシア勢力、ロシアの3者がみな湾へのアクセスをもつ、複雑な湾である。問題は、黒海からこの湾に入るには、狭いケルチ海峡を通るしかないということである。

ロシアとウクライナは2003年に、海峡の通過の自由に合意しているが、2014年にロシアが、クリミア半島を併合すると、数年後には、ロシアがケルチ海峡に武力を強化し、通過する船の検問するようになっていた。これにより、アゾブ海に面するウクライナの港は、閑古鳥がなくようになり、経済的な打撃となっていった。

2018年には、ロシア領からケルチ海峡をまたいで、クリミア半島に至る橋が完成し、ロシアはますますこの湾での支配力を高めるようになっていた。

ウクライナは国際社会に、ロシアの動きを訴えたが、西側諸国はこれをとりあげなかった。今回の衝突でも、ウクライナは、ロシアが、アゾブ海を占領し、ウクライナへ侵攻してくる可能性があるとして、武力支援を要請したが、欧米は非難しつつも、これに応じる様子はない。

ウクライナが、単独でロシア軍に立ち向かえるはずもないのだが、ウクライナのポロシェンコ大統領は、予備役の招集と、国境の防衛を強化。東ウクライナとロシアとの国境を武装地帯とし、ロシア人男性(16-40歳)のウクライナへの通過を禁止する措置を発表した。期間は今の所30日間とされる。

ロシアは、これを、「緊張を高めるばかげた行為だ。」と言っている。また、ケルチ海峡の通過をロシアが妨害しているというウクライナの訴えも否定した。

ちょうどこの時、アルゼンチンでG20が行われたが、トランプ大統領は、この問題を西側への挑戦であるとして、予定されていたプーチン大統領との2者首脳会談をキャンセルした。

https://www.bbc.com/news/world-europe-46340283
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シリア:ロシア空軍機撃墜で乗組員15人死亡 2018.9.20

 2018-09-22
イスラエルは、防衛のため、シリアで、イランからの武器がヒズボラに移送されそうになった場合、先手をうって、これを攻撃する作戦を続けている。その回数は、これまでに200以上とも言われる。

17日、イスラエル空軍は、地中海に面するシリアの町ラタキア北部のシリア軍施設を攻撃した。そこからレバノンのヒズボラに武器が移送されるとの情報があったからである。

イスラエル空軍機は、地中海側からこの施設を攻撃したが、同じ時刻に内陸からこの地域に飛来したロシア空軍機が、イスラエルの戦闘機を狙っていたシリアの地対空ミサイルに当たって墜落。乗組員15人が死亡した。皮肉にもこの地対空ミサイルはロシア製S200であった。

この直後、ロシア軍は、イスラエルがこうした攻撃の際にはロシアに通告することになっているが、それが遅すぎたと非難。さらに、イスラエル戦闘機が、ちょうどロシア軍機が近くにいる時にミサイルを発射し、ロシア軍機を地対空ミサイルのカバーに使ったと、イスラエルに責任があると非難した。

シリアのアサド大統領は、プーチン大統領に哀悼の手紙を出し、「傲慢なイスラエルの悪行のせいだ」と言い訳している。シリアのメディアによると、シリア政府は現在、ロシア機を撃墜した地対空ミサイルの担当官らを逮捕し、調査しているという。

https://www.timesofisrael.com/iaf-chief-heads-to-moscow-to-present-findings-on-downing-of-russian-plane/

イスラエルは、軍事施設への攻撃は認めたが、ロシア機をカバーに使ったことは否定。これは、悲惨な事故であったと主張している。イスラエルは20日、イスラエル空軍のアミカム・ノルキン長官をモスクワに派遣し、独自の調査結果と作戦の詳細についてを報告している。

ロシア軍機墜落の直後、ネタニヤフ首相は、プーチン大統領に電話し、遺憾を伝えるとともに、イスラエルには何の計算もなく、事故であったと伝えている。

<プーチン大統領:これは悲惨な事故>

ロシア軍がイスラエルを非難する発表を行ってまもなく、プーチン大統領は、「イスラエル機が撃墜したのではないのだから、これは悲惨な事故であったとみられる。」との見解を発表した。プーチン大統領は、詳細な調査を行うと言っている。

ロシアにとっても、今はイスラエルと親密な関係を継続する方が有益なのである。

https://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/252169

<イスラエルの攻撃は失敗だった:ナスララ・ヒズボラ党首>

ヒズボラのナスララ党首が18日、テレビ演説で、「イスラエルの(ラタキアでの)攻撃は失敗だった。非常に命中率の高い精密なミサイルはすでに、我々の手に搬入された後だった。」とコメントした。

これを受けて、ネタニヤフ首相は、「イスラエルを攻撃するなら、いまだかつてない想像をこえる規模で、反撃する。ヒズボラはイスラエルを攻撃しない方がよい。」と釘をさすコメントを出した。

また、ラタキアを攻撃したのは、イランがイスラエルを攻撃しようとする準備が進んでいたからだとし、イスラエルには自衛の権利があると述べた。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5354754,00.html

<イスラエルの懸念はイランの回廊>

シリアの内戦は、ロシア軍の介入でアサド政権が国土を奪回する方向で終焉に向かいはじめている。これは、反政府勢力支配域にアサド政権のせい協力が戻ることを意味する。その地域に、これまでになくイランやヒズボラの存在が目立ち始めていることはすでにお伝えしている通りである。

今回、イスラエルが攻撃したラタキア地域は、地中海に面しており、イランからイラク北部のシーア派地域、シリアを通って地中海に抜ける”イランの回廊”の一部分であった。

アサド政権がシリア領土を奪回することによって、今や、この回廊が地続きとなり、イランが、地中海にまで進出することが可能になった。これは、イスラル史上、最も危険な状況だという。

これを抑えているのが、ロシアなのだが、言い換えれば、このロシアの動き次第では、一気にロシア、イラン、そしてトルコも加わって、イスラエルに攻め込むことも可能になるということである。このため、イスラエルは、ロシアの機嫌とりに忙しいのである。

現時点ではまだ、ロシアはイスラエルとの戦争は望んでいないらしく、むしろイランの進出を抑え込む政策を続けているようである。

https://www.bbc.com/news/world-middle-east-38891358
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シリア情勢:最後の決戦イドリブ地方をめぐる攻防:ロシア、イラン、トルコ 2018.9.20

 2018-09-22
7年続いたシリアの内戦は、ロシアの介入でアサド政権が、反政府勢力をほぼ制圧した形になった。シリア南部、イスラエルとヨルダンに接する地域からは、反政府勢力とISも掃討され、今はアサド政権の支配域になっている。(添付した地図参照)

こうした中、現在、反政府勢力の最後の砦として残されているのが、シリア北部、トルコとの国境近くにあるイドリブ地方である。この地域はいまや、トルコ、シリア、ロシアに睨まれる形で包囲されている。この地域にいるのは、全国の反政府勢力関係の市民たち300万人である。

シリアのアサド政権は、今、ロシア、イランとともにこの地域に攻め込み、反政府勢力を一掃する準備を始めている。これに対抗するのが、トルコという図式である。このままでいけば、シリアとロシア、イランが攻め込み、イドリブ地方は血の海になると懸念されている。

<7日:テヘラン・サミット決裂:ロシア、イラン、トルコ>

イドリブ地方に攻めこもうとするシリアに協力するロシア、イランに対するのは、反政府勢力の背後に立つトルコである。トルコは、「イドリブ地方で戦争になれば、犠牲になるのは、そこにいる市民たちであり、トルコに難民が押し寄せる。」として、大戦争を回避するべく、ロシアとイランに停戦を申し出た。しかし、ロシアはこれを拒絶した。

ロシアは、イドリブ地方に逃げ込んだ反政府勢力(少なくとも3万人)は、今一掃すべきだと考えている。しかし、同時に、「これら”テロリスト(シリア側主張)”が、市民を盾にするので、戦闘になれば、市民に大きな犠牲が出る。」ということも理解している。

反政府勢力の最後の砦であるイドリブ地方をどうするかは、今後のシリアの再建にだれがどのように関わってくるのかにも関係してくるため、9月7日、ロシア、イラン、トルコの3首脳は、テヘランでこの件に関するサミットを開催した。

しかし、3国それぞれが、それぞれの国益があるため、一致した合意には至らなかった。このままでは、イドリブ地方の大戦争は避けられない状態となった。

この間、イドリブ地方では、アサド政権とロシアに反発する反政府勢力の群衆が、集まってシリアの旗やトルコの旗をふる様子が伝えられた。

https://www.timesofisrael.com/rouhani-israel-us-will-not-achieve-their-objectives-through-rebels-in-syria/

大きな戦闘になり、難民が押し寄せることに備え、イドリブ地方の国境に、戦車部隊などを配備している。

<17日:ソチ首脳会談:ロシア、トルコ>

大戦争を避けるため、ロシアとトルコは再度、国会に面するソチで首脳会談を行った。これはいわば、シリア政府側支援者と、反政府勢力側支援者の会談である。両者は、イドリブ地方周囲15-30キロを非武装地帯とすることで合意した。これが実施されるのは、10月15日と定められた。

これに伴い、武装勢力は、重火器とともに、イドリブ地方から撤退することとされている。イランはロシアとトルコが、イドリブ地方の大戦争を回避したとして、この合意を賞賛している。

https://www.timesofisrael.com/iran-hails-russia-turkey-agreement-to-avoid-idlib-onslaught/

<これからどうなるのか>

シリアの内戦が終焉に向かっているが、シリア国民の大半は、国を破壊したアサド大統領を指導者とは認めていない。かりにアサド政権がシリアを再び氏はうするようになっても、平和になるとは考え難い。

イスラエルが注目するのは、シリアの内戦によって、あきらかにイランがその存在感を定着させたことである。イドリブでもイランは、大きな役割を担おうと狙っているようである。イスラエルは、ロシアに、シリア領内からイランを完全撤退させることを要請しているが、ロシアはそれは難しいと言っている通りである。

そのイランは、シリアに駐留する2000人のアメリカ軍を撤退させるべきだと主張している。シリアの内戦はまだまだ火種をのこしたままということである。
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