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北部:ロシア製シリア軍戦闘機撃墜 2018.7.24

 2018-07-25
シリアの内戦が終焉に近づき、シリア政府軍の反政府勢力への攻撃が、イスラエルとの国境クネイトラ周辺で激しさを増してきた。

以下に述べるが、昨日、イスラエル北部で、警報が何度も鳴ったのに続いて、今日24日も午後1時半ごろ、再びゴラン高原、ヨルダン渓谷などで警報が複数回鳴った。

今日は、シリアから、ロシア製の戦闘機1機が、ゴラン高原からイスラエル領内へ2キロ侵入して来たことから、ツファットに配備されていたパトリオットが、迎撃ミサイル2発を発射して撃墜。戦闘機は、シリア軍とISが激戦中のシリア側ヤルムク地方に墜落した。イスラエル側に被害はなかった。

https://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Israel-fires-Patriot-missiles-against-Syrian-jet-in-Golan-Heights-563275

<23日:ダビデの石投げ迎撃ミサイル初始動>

昨日23日朝10時半ごろ、ツファットやエン・ゲブを含むゴラン高原からガリラヤ南部など広範囲に警報が何度も鳴り響いた。

警報は、シリア方面からイスラエルに向かっているとみられたミサイルに反応した中距離迎撃ミサイル、ダビデの石投げが発射されたことに反応したもので、イスラエル領内には危険が及ばない、いわば、間違い警報であった。

ダビデの石投げは、アイアンドームとアローの中間で射程40−300キロをカバーする迎撃ミサイルで、シリア領内から中距離弾道ミサイルが発射されたために、イスラエル領内へ到達すると計算したのである。

しかし、最終的に、イスラエル国境から1キロシリア側に着弾すると計算され、この時点で、ダビデの石投げは、発射した迎撃ミサイルに自爆を命じた。1発は無事自爆したが、2発目はどうなったのかわからない。

万が一に不発でシリア領内に着弾した場合、イスラエル防衛の情報が漏洩することになるが、その危険性は低いとのこと。

https://www.timesofisrael.com/syrian-missiles-with-half-ton-warheads-triggered-anti-missile-system-army-says/

今回は、ダビデの石投げの初始動で、失敗に終わったが、2−3日の間に修正される予定。しかし、ダビデの石投げミサイルは一発が70万から100万ドルもする。失敗で、最大200万ドル・・・後悔するより、危険な時は発射したほうがよいというのがイスラエルの考え方である。

なお、費用の一部はアメリカが支援している。

https://www.haaretz.com/.premium-why-does-israel-need-3-anti-missile-systems-1.5346632

現在、イスラエルは、パトリオット、アイアンドーム、ダビデの石投げ、アロー2、3と何重にも重なる迎撃ミサイルシステムで国を守っている。しかし、さらに10年計画で82億ドルをかけ、全国を守る新しいシステムを加える予定だという。

https://www.timesofisrael.com/government-said-set-to-launch-nis-30-billion-missile-defense-plan/

<石のひとりごと:小さい国に膨大な防衛費>

イスラエルの防衛費は、年間184億ドル(約2兆円)。調べてみると、日本の年間防衛費は約5兆円。中国は18兆4000億円。

イスラエルは人口わずか880万人であるのに、その防衛費は、人口1億2000万人の日本の半分にせまる勢いである。いかに防衛費が高いかがわかる。
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シリアのホワイトヘルメッツ救出:イスラエル軍 2018.7.24

 2018-07-25
シリアの内戦で反政府勢力が劣勢となり、戦いがゴラン高原付近で激しくなってくる中、23日、シリアのホワイトヘルメッツとその家族ら400人以上が、イスラエルを経由してヨルダンに避難を完了した。救出作戦を実施したのはイスラエル軍である。

ホワイトヘルメッツは、シリアの内戦中、白いヘルメットをかぶり、激しい戦闘の中を走り回って、負傷者たちの救出にあたってきた市民グループである。世界は、英雄として彼らの働きを伝えてきた。このホワイトヘルメッツは、反アサド派である。

先週、シリア軍は、まずヨルダンとの国境ダラアを制圧、続いてゴラン高原のシリア側への攻撃を始め、南部で一部はイスラエルとの国境近くにいるISへの攻撃もはじめた。反政府勢力は、北部で唯一残っている支配域イドリブ地方へ行こうとしているが、その道路も遮断されかかっている。

このため、ゴラン高原クネイトラ地域にいたホワイトヘルメッツたちは、シリア軍に挟まれた形となった。アサド政権はホワイトヘルメッツを敵視しており、もし捉えられたら拷問、死刑になってしまう。

これを見て、カナダ、アメリカが、イスラエルとヨルダンに、隊員とその家族の救出を要請。イスラエルは、この時、ガザ国境で、自国の兵士一人を失い、ガザへの攻撃の真っ最中であったが、国際社会の要請に応じ、シリアからのホワイトヘルメッツ救出する役割を引き受けたのであった。

救出は、クネイトラ地域からイスラエルを経由して、ヨルダンに移送し、その後西側に移動させる計画であった。しかし、クネイトラも、ヨルダン国境も、今現在、戦闘が行なわれている地域であるため、非常に困難であった。

ヨルダンは当初、800人を受け入れると伝えていたが、23日、最終的にイスラエルを経由してヨルダンにたどり着いたのは、422人(隊員98人とその家族。

400人あまりは、途中で、シリア軍とISの戦いが激しくなり、ヨルダンまで到達できなかったものもいたようだが、最初の集合地に間に合わなかったり、どこへ連れて行かれるかわからないとして、イスラエル軍に身を任せなかった者もいたとのこと。

2度とないチャンスであったことを思うと、なんとも恐ろしい決断であったと思う。

https://www.timesofisrael.com/some-white-helmets-declined-to-evacuate-via-israel/ 

ホワイトヘルメッツの救出について、アサド政権は、「犯罪行為だ」と非難したが、国際社会はイスラエルの貢献に賞賛を送っている。

https://www.jpost.com/Middle-East/Inside-the-secret-and-unprecedented-rescue-of-the-White-Helmets-563216

これで、シリア領内で救急医療活動をしているのは、NGOでクリスチャンの団体FAI(アメリカの福音派で、世界の紛争地で医療支援活動を行っている)だけとなった。(FAIについてはオリーブ山便り7/19日記事参照)

<ホワイトヘルメッツはヨルダンから西側へ>

ヨルダンにたどり着いたホワイトヘルメッツ422人が、ヨルダンに滞在できるのは最長3カ月。カナダが、隊員50人とその家族で計250人近くを引き取ることが決まっている。その他は、イギリス、ドイツが引き取る予定とのこと。

<ホワイトヘルメッツはイスラエルの貢献を認めず>

国際社会は、イスラエルの貢献を認めているが、アラブ諸国ではやはりイスラエルはタブーである。ホワイトヘルメッツによる23日の公式の発表では、救出にイスラエルが関わっていたことは含まれていなかった。ヨルダンも同じである。

西側でもフランスの外務省も、報告の際、イスラエルが関わっていたという事実は報告しなかったという。

https://www.jpost.com/Middle-East/White-Helmets-fail-to-acknowledge-Israels-part-in-their-rescue-from-Syria-563253
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イスラエル国境で保護を求めるシリア難民の声 2018.7.19

 2018-07-19
先週、シリア南部ダラアをシリア政府軍が奪回したことで、30万人とも言われる難民が発生。そのうちの5-6万人が、イスラエルとの国境に近いクネイトラ方面へ逃れてきたことはお伝えした通りである。

懸念された通り、シリア南部ダラアを抑えたシリア軍とロシア軍は、イスラエルとの国境クネイトラ周辺の反政府勢力への攻撃を始め、1974年に策定された国連ひきはなし軍が監視する非武装地帯からシリア側数キロの地点にまでせまっている。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5311082,00.html

17日朝には、クネイトラを見下ろす戦略的要所であるアル・ハアラ高地を攻撃し、反政府勢力から4年ぶりに奪回している。この時の攻撃で、クネイトラの学校が被害を受け、子供達を含む少なくとも10人が死亡した。

これを見て、この地域に避難しているシリア難民たち100人ほどが恐れをなし、白旗をかかげて、イスラエルとの国境200メートルまで接近してきた。

イスラエル軍は、拡声器で、アラビア語にて、イスラエルは国境を開けられないことを説明。そこからイスラエルとの間には、地雷が多数埋められていることから、「無理に入ってくることはあなたがたのためにならない。」と伝えた。まもなくシリア難民たちは引き返していった。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5311566,00.html

<クネイトラのシリア難民の声:イスラエルに行けば安全>

クネイトラのアル・ブルカ・シリア難民とビデオ電話で、記者会見が行われた。代表はアブル・ハンマルさん。通常なら、安全のために、名前や顔は非公開なのだが、悲惨な状況をなんとか国際社会に知ってもらいたいと、顔を隠さない記者会見であった。

アブルさんによると、今、アル・ブルカにいるシリア難民は、イスラエル軍は1万~1万5000人と見ていたが、実際には3万人ぐらいいるようである。多くはシリア南部ダラアから逃げてきたか、ダマスカスから逃げて、クネイトラ周辺に来ていた人々である。

イスラエル国境に近いこの難民キャンプは、イスラエル軍とNGOクリスチャン団体が支援している。テントなどの必需品は、イスラエルが用意したものである。ダマスカスからクネイトラへ逃れてきた女性は、ここに来るまで、テントもなく、木の下で野宿であったという。助けてくれたのはイスラエルだったと語った。

アブルさんは、「ここ数年、人道支援をしてくれたのはイスラエルだけだった。イスラエルは良い国だ。イスラエルに入ることができれば、安全で助けてもらえるはずだ。」と叫ぶように言った。またイスラエルに、国際社会に私たちを助けてもらうよう、働きかけてほしいと叫んだ。

アブルさんによると、キャンプでは、テント一張りに10家族が寝起きしており、食料も医療も足りてないという。

しかし、「食べ物はいらない。とにかく安全な場所を用意してほしい。私たちは反政府勢力でもなんでもない普通の市民だ。人間だ。私たちは政治的な解決を望んでいる。」と悲痛な様子であった。

<これからどうなるゴラン高原?>

イスラエルの懸念は、シリアでの戦闘が1974年のラインを超えてイスラエルにまで影響が及んでくることであり、そのどさくさに紛れて、イランやヒズボラが、イスラエルに近づいてくることである。

18日深夜すぎ、ゴラン高原のイスラエル側の地域で警報が鳴り響き、人々がシェルターへ駆け込む騒ぎがあった。しかし、この警報は、同じゴラン高原のシリア側での激しい戦闘に反応したもので、イスラエル側には危険はなかったようである。

今後、戦闘が激しくなることが予想されるため、流れ弾などがイスラエル側に被害を及ぼすことのないように、また難民たちがなだれ込んでくることがないよう、イスラエル軍は目を光らせている。

難民はこの戦闘の間におり、逃げ場がないわけだが、イスラエルが難民を受け入れることはない。難民の中に非常に危険なテロリストが混りこんでくる可能性が高いため、ただ人道だけの視点で、受け入れることはできないのである。

また、近年、イスラエルは、アフリカ難民を不用意に受け入れ、テルアビブ南部が犯罪の巣窟になり、彼らの対処に相当な苦労をさせられた経験から、疑問の余地なく、シリア難民に門戸を開くことはない。

しかし、ホロコーストを経験したイスラエルが、難民を放っておけないはずで、知恵をしぼっていると思われる。

<石のひとりごと:戦場にいる人々とのテレビ会話>

この日の記者会見は、エルサレムで空調の効いた部屋にいる記者団と、いつ残虐に殺されてもおかしくない場所にいる人々をテレビ電話でつないだものだった。電波が切れていた間、記者たちは、コーヒーを飲むことも可能であった。

車でわずか数時間先に、いつ死ぬか顔がふきとぶかわからない人々がいるのに、私たちはエルサレムで安全そのものの快適な場所にいる。そこにいながらにして、この世の地獄にいる人々と普通に話ができている。

緊張しながら話を聞き、その場にいるような気にもなったが、話が終わると、急にいつもの平和な日常が目の前にあった。なんとも不思議な感覚だった。世の中は不公平なのだということを実感させられた。
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シリア南部ダルア陥落:難民がイスラエルか国連に保護を要請 2018.7.13

 2018-07-13
シリア南部デラアでは、2週間に及ぶ激しい戦闘の末、ロシアが仲介した停戦合意が成立し、反政府勢力が武装解除するとともに、これに応じない者がイドリブ方面へ移動している。これを受けて12日、シリア政府軍が、ダルア市内で、勝利宣言とともにシリア国旗を掲げ、内外にその陥落が明らかとなった。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5309059,00.html

今後、シリア軍が、イスラエルとの国境ゴラン高原方面の反政府勢力掃討を開始することは避けられない見通しである。

<イスラエルはアサド政権容認を表明:ネタニヤフ首相モスクワ訪問>

内戦勃発の町ダルアがシリア政府軍にほぼ陥落した11日、プーチン大統領のワールドカップ外交の一環で招かれたネタニヤフ首相がモスクワを訪問していた。ネタニヤフ首相は、プーチン大統領に、イランとヒズボラをシリアから撤退させるなら、治安維持に支障とならない限り、イスラエルは、アサド政権がシリアを支配することを容認すると伝えた。

公式発表はないが、イスラエル政府関係者によると、ロシア、さらにはアサド政権も、イランの独走には閉口しており、イスラエルのイラン追放の要求が実現する可能性はおおいにあるとの楽観視を語っている。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5308957,00.html

しかし、アメリカからは、イスラエルに対し、ロシアを信用しすぎないよう、警告する意見も出ている。

https://www.timesofisrael.com/top-us-senator-warns-israel-against-deal-with-russia-over-syria/

<戦闘を前に:シリア難民がイスラエルへ保護を要請>

イスラエル・メディアTPSによると、ネタニヤフ首相・プーチン大統領会談の翌12日、ゴラン高原周辺に逃れてきていたシリア南部からの難民たちが、シリア政府軍の攻撃が間近に迫ったことを受けて、イスラエルか、国連による保護を要請するデモを行った。

しかし、イスラエルは、シリア難民を領内へ受け入れることはないと表明、代わりにゴラン高原シリア側で医療・人道支援を行っており、今後もこの方針に変わりはない。シリア難民たちもこの点は理解しているようだが、今はイスラエルに頼るしかないというのが現状だろう。

今後、この地域でシリア政府軍と反政府勢力が戦闘に入った際、イスラエルに被害が及んだり、流れ弾が飛来しないかどうかに加え、難民たちが一斉にイスラエルに流入を試みないかどうか、またその際にどう対処するのかに備える必要があるだろう。

https://www.jpost.com/Middle-East/Open-the-borders-Syrians-appeal-to-Israel-calling-for-intervention-562366

<トランプ大統領とプーチン大統領会談予定:16日>

トランプ大統領とプーチン大統領は来週月曜16日、ヘルシンキで会談することになっている。内戦後のシリアについても話し合うとみられる。

イスラエルが懸念するのは、アメリカ軍の撤退の時期。ポンペイオ国務長官は、イラン軍が撤退を完了するまで、アメリカ軍は撤退しないと言っているが、どうもトランプ大統領自身の考えと一致していないのではないかとの懸念もある。トランプ大統領は、アメリカ軍を中東から撤退させることを公言しているからである。

そのトランプ大統領だが、プーチン大統領との会談に先立ち、現在、NATO首脳会談に続いて、イギリスを公式訪問中である。

NATOでは、アメリカだけが多額の費用を負担をしていると訴え、他の国々も資金負担を増額すべきだと主張して、交渉は難航した。トランプ大統領は、「ロシア(NATOの敵国)と交渉する方が楽だ。」と発言し、これまたヨーロッパ諸国のブーイングを買った。

イギリスでは、市民たち数千人が、反トランプデモを行っている。いうまでもないが、トランプ大統領はまったく気にしていないようである。

http://time.com/5334381/president-trump-putin-europe-nato/
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シリア南部からイスラエルへイラン製ドローン 2018.7.13

 2018-07-13
ネタニヤフ首相が、プーチン大統領に会っていた時、シリア南部から偵察用ドローンがガリラヤ方面へ侵入。イスラエル軍は、ロシア軍のものでないことを確認してから、約16分後、パトリオット迎撃ミサイルでこれを撃墜した。この間、ゴラン高原やヨルダン渓谷で警報が鳴った。

撃墜はガリラヤ湖上空であったため、破片はガリラヤ湖に落下。多くの住民が迎撃ミサイルがドローンを撃墜する様子や大きな爆音を聞いたが、被害はなかった。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/248849

これを受けて、イスラエル軍は、ゴラン高原クネイトラ周辺のシリア軍拠点3カ所を空爆した。物損はあったが負傷者等はなかったもようである。


https://www.timesofisrael.com/reports-of-israeli-strike-in-syria-hours-after-regime-drone-penetrates-airspace/

後にこのドローンがイラン製であったと報告された。イランは今年2月にも爆発物つきのドローンを送り込み、緊張が高まったという経過がある。
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シリア南部停戦でアサド政権勝利への一歩 2018.7.11

 2018-07-11
7年目を迎えるシリアの内戦。2015年にロシアが軍事介入を始めて以来、アサド大統領率いるシリア政府が勢力を回復し、ISはじめ、各地の反政府勢力を鎮圧、領地を奪回しつつある。

こうした中、シリア政府軍がいよいよシリア南部、ヨルダンとイスラエルの国境付近の反政府勢力の掃討を開始した。

これにより、デラアを中心とした地域で6月19日から激しい戦闘となり、シリア難民32万人が発生。ヨルダンは、難民をこれ以上受け入れるのは限界だとして、受け入れを拒否したため、6万人ほどが、イスラエルとの国境、ゴラン高原クネイトラ方面へ近づいてきた。

イスラエルは、難民を受け入れない方針を決め、代わりにゴラン高原シリア側に、テント村を提供し、人道医療支援を行なっている。(以下に詳細)

その後、約1週間後の7月7日、シリア政府軍と反政府勢力が、ロシアの仲介で停戦に合意。反政府勢力が非武装に応じ、一部はシリア北部にかろうじて残っている反政府勢力支配域イドリブ地方へ移動したもようである。これで、シリア南部はアサド政権の支配するところとなった。

戦闘がやんだことを受けて、難民数万人が、デラア方面への帰還を始めている。

https://www.timesofisrael.com/thousands-head-home-in-south-syria-after-ceasefire-deal-monitor-says/

<シリア内戦終焉のはじまり?>

今回、シリア南部で反政府勢力が敗北したことで、いよいよアサド政権が反政府勢力鎮圧に成功し、内戦が終焉に向かう可能性が出てきた。

イスラエルとの国境、クネイトラ周辺にいる反政府勢力は、北部はすでにシリア政府勢力になっているので、南部のヨルダンからの補給に頼っていた。今回の南部での敗北により、反政府勢力は、いわばシリア政府軍に包囲された形になった。

クネイトラ周辺の反政府政府勢力が、シリア南部のように降参する日はそう遠くないだろう。今回のシリア南部でのアサド政権の勝利は、7年間続いたシリア内戦終焉のはじまりとの見通しになっている。

とはいえ、アサド政権は、多くの国民を殺戮しており、このまま平穏にシリアという国が回復するとはとうてい考えられない。反政府勢力、特にISやアルカイダなどが消滅したわけではなく、シリア国内では今後も恐ろしいテロは続くだろう。

また、国土は、今や北西部はクルド人勢力の独立を危惧するトルコが支配し、北東部はアメリカの支援を受けたクルド人勢力が支配する地域となっている。たとえ内戦が終焉を迎えても、シリアに平和が戻るとは考え難い。

<イスラエルの対処>

イスラエルと国境を接するゴラン高原のシリア側を再びアサド政権が支配するようになることは、アサド政権を支持するかどうかは別として、イスラエルにとって益になる可能性がある。

ただし、回復する(予定の)アサド政権が、1974年の合意を順守するなら、である。

イスラエルとシリアは、ヨム・キプール戦争後の1974年に定められた合意で、両国が接するゴラン高原に、非武装地帯を設け、それを監視する国連軍をクネイオラに置くことで、40年以上、衝突することなく、比較的平穏に過ごしてきた。

しかし、内戦で、反政府勢力がクネイトラ周辺を支配するようになり、国連の監視団はいるにはいるが、まったく無能状態でいるのかいないのかもわからないというのが現状だ。

もしアサド政権が、この地域の反政府勢力を掃討したあと、両国の間の非武装地帯を順守せず、ゴラン高原に迫ったきた場合、イスラエルはシリアとの国境に大規模な軍事力配備を余儀なくされるだろう。

シリア軍にまじって、ヒズボラやイランがその中に混じって迫ってくる可能性があり、戦争勃発の可能性は高まる。イスラエルは、今後のシリア情勢を注意深く見守っているところである。

<イスラエルがイラン基地T4を攻撃か>

9日、シリアのメディアは、イスラエルが、再びシリア領内のイラン軍が使用する空軍基地T4をミサイル攻撃したと伝えた。T4が攻撃されるのはこれが3回目である。

イスラエルはノーコメントを続けているが、おそらくイスラエルによるもので、シリアとイラン、そしてロシアに向けたイスラエルの「防衛のためには躊躇しない」という意思表示であると言われている。

https://www.haaretz.com/israel-news/syria-airstrike-hits-t4-airbase-near-homs-1.6248915

ネタニヤフ首相は、今週木曜、ロシアのプーチン大統領の招きで、モスクワを訪問することになっている。プーチン大統領は、ワールドカップ外交として、諸外国を招いているのである。このタイミングでのT4攻撃である。

ネタニヤフ首相は、プーチン大統領に、シリア領内のイラン勢力を、一掃するよう要請するとみられている。

https://www.timesofisrael.com/netanyahu-to-meet-with-putin-in-moscow-next-week/

<イスラエルに接近するロシア>

今週、ネタニヤフ首相がプーチン大統領を訪問するが、両首脳の会談は、6月15日に続いて2回目である。ところのロシアの様子をみると、どうもイスラエルに接近するような態度をとっている。

シリア領内でイスラエルが、イラン軍関連基地を攻撃できているのは、背後にロシアの暗黙の了解があると考えられている。

また、今回のシリア南部へのシリア政府軍の攻撃では、ロシア軍が大きな役割を果たしていた。これはイスラエルの要請に応じて、シリア軍の中にヒズボラやイランが加わらないよう要請したため、ロシア軍がカバーしたともみられている。(35万人いたシリア兵は今や3万5000人しかいない)

なぜロシアは今、イスラエルに接近していると思われる態度に出ているのだろうか。

シリア内戦終焉後のシリアでは、プーチン大統領が大きな影響力を持つことになるが、そのロシア影響下のシリアで、今後、問題を起こすとすれば、イランの台頭と、それと衝突するイスラエルである。

ロシアは、今、イスラエルのイラン軍施設への攻撃を黙認し、イラン勢力の台頭を抑えようとしていると考えられている。

一方、イスラエルとしては、今後、ロシアとの友好関係を良好に維持し、できれば、ロシアの一声で、今のうちにヒズボラとイランをシリアから追放してもらいたところである。

https://www.jpost.com/Israel-News/Football-diplomacy-Netanyahu-to-attend-World-Cup-meet-Putin-in-Moscow-561638
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