厳戒態勢:ペンス副大統領来訪21-23日 2018.1.20

 2018-01-20
昨年末以来、2回延期になっていたアメリカの副大統領の中東訪問が始まる。20-21日にエジプト、ヨルダンを訪問後、21日日曜から23日までイスラエルを訪問する。

イスラエルでの予定は、21日夕刻に到着し、翌朝、首相府でネタニヤフ首相と会談し、国会で演説。リブリン大統領面会、ヤドバシェム(ホロコースト記念館)で献花して、23日に帰国する。

昨年に訪問が計画された時点では、パレスチナ自治政府のアッバス議長とも会談する予定であったが、トランプ大統領が、エルサレムが首都であると発表したため、アッバス議長がペンス副大統領には会わないと表明したのであった。今回もアッバス議長に会う予定はない。

エルサレム問題に加えて、UNRWA拠出金削減で、特にパレスチナ人の間で反米感情が高まっている中での訪問となるため、警備も厳戒態勢になるとみられる。エルサレム市内もあちこち道路が閉鎖されることになる

http://www.jpost.com/Christian-News/Comment-Mideast-Christians-eyes-turn-to-Pence-538184

ペンス副大統領護衛作戦”Blue Shield 2”の訓練を行うイスラエル警察の様子:
http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/240913

ペンス副大統領訪問をとりまく近況は以下の通り。

1)アメリカのUNRWA支援65億ドルへ削減

トランプ大統領が予告していた通り、アメリカは木曜、UNRWA(パレスチナ難民支援基金)への拠出金を、半額以下の6000万ドル(約67億円)にまで削減して支払いをすませた。支払い期限は1月1日であった。

UNRWA予算の25-30%は、アメリカからの拠出金でまかなわれていたことから、UNRWAにとってはかなり大きな打撃である。

さらに、金曜、これとは別に、昨年中、UNRWAに西岸地区とガザ地区への食料支援としてアメリカ政府が約束していた4500万ドル(約50億円)も凍結すると発表した。

https://www.timesofisrael.com/us-state-department-withholds-additional-45-million-from-unrwa/

これについて、アメリカ政府は、「永遠に凍結するとは言っていない。削減分は他国でカバーしなければならないだろうが、UNRWAが組織改善をするまでのことである。」と発表し、パレスチナ人テロ組織と癒着しているUNRWAの体制を改善するよう要求した。

UNRWAについては、支援金が、市民の生活改善だけでなく、テロ・トンネルの建設費用に流れたり、UNRWA運営の学校にミサイルが仕組まれるほか、パレスチナ人の子供達への教育内容にもイスラエルとの戦闘を促す内容があると様々な問題が指摘されてきた。しかし、国際社会はこれまで何の措置もとってこなかったのである。

トランプ大統領は、口にしたことは急に実施するとパレスチナ人の間でも恐れられるようになってきているが、まさにそうなったわけである。

ネタニヤフ首相は、アメリカの動きを歓迎し、パレスチナ難民支援は、いったんUNCHR(国連難民高等弁務官事務所)に戻すよう、主張している。

しかし、当初は70万人で始まったパレスチナ難民支援対象者は、今やひ孫の世代になって、530万人にまで膨れ上がっている。

特にガザ地区の200万人は、UNRWAからの食料や教育活動に頼っている人がほとんどである。またUNRWAの支援を受けるパレスチナ難民は、西岸地区とガザだけではない。ヨルダンやシリアなど中東全体にまで及んでいる。

理屈はどうあれ、70年も、あって当たり前になっていた支援が急に差しとめられることが、混乱をもたらすことになることは大いに懸念されるところである。

グテーレス国連総長は、深い懸念を表明し、最終的には、アメリカが、気を変えて、残りの拠出金も支払うことを願うとのコメントを出している。 

アメリカの拠出削減を受けて、17日、ベルギーが、2300万ドル(約25億円)をUNRWAに拠出すると約束した。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/240822

2)PLO中央委員会:オスロ合意破棄で可決

前回、ラマラで開かれているPLO中央委員会での特別カンファレンスで、アッバス議長が、エルサレムをイスラエルの首都と認め、UNRWAへの拠出金を削減すると言っているアメリカとイスラエルへの怒りを炸裂させたことはお伝えした通り。

さらに月曜、PLO(パレスチナ解放機構でパレスチナ自治政府の母体)の中央員会は、最終的にクリントン前米大統領を仲介し、アラファト議長とラビン首相が1993年に交わしたオスロ合意を破棄するかどうかの採択を行い、破棄することで合意した。

オスロ合意の主要項目は、パレスチナ自治政府を立てて、将来、パレスチナ国家を設立しようとする合意のことである。この合意以来、25年になるが、目標達成どころか、混乱はますばかりである。

今回、PLOが決めたのは、もはや、この合意は失敗であると認識するとともに、今後アメリカの仲介は拒否するということである。パレスチナ国家設立のためには、まったく違う道を歩むと言っているのである。

PLO中央委員会は、「国連決議の基づき、イスラエルの占領をやめさせること。1967年6月4日の時点(1967年六日戦争以前)の境界線から東を首都とするパレスチナ国家の独立を認めることを国際社会に要請する」と公式発表した。

http://english.wafa.ps/page.aspx?id=eJbuMka96057575031aeJbuMk

この後、水曜、カイロではアラブ諸国のカンファレンスが開かれた。その席で、アッバス議長は、改めて、アメリカと湾岸諸国が提示したとみられる新しい和平案を拒否すると表明した。

この和平案では、パレスチナの国家を認めるが、エルサレムが首都ではない上に、自治権はあるものの、防衛は認められないなど、完全な主権のない国家ということである。イスラエルはこれを受け入れているようだが、アッバス議長には認められないということである。

この時のスピーチでアッバス議長は、聖書にも出てくるカナン人を引用し、「我々は、イスラエル人より前からいるカナン人だ。」と主張。エルサレムを首都とする完全な主権を持つパレスチナ国家の独立をめざすと主張した。

https://www.timesofisrael.com/abbas-jerusalem-is-the-gate-of-peace-and-war-trump-must-choose/

<ヨルダンとイスラエルの外交関係回復へ>

ヨルダンは、国民の7割近くがパレスチナ人である。エルサレムはイスラエルの首都と宣言しているアメリカのペンス副大統領の来訪は、パレスチナ人の機嫌を損ねたくないヨルダン王室にとって歓迎できるものではない。

しかし、ヨルダンはシリア、イラクの難民を受け入れていることもあり、アメリカの支援に大きく頼っている。2016年の支援額は16億ドル(約1800億円)である。ヨルダンとしては、ペンス副大統領を断るわけにもいかず、難しい外交をせまられている。

またヨルダンは、昨年7月、イスラエル大使館職員が、ヨルダン人に襲われたとして反撃し、結果的にヨルダン人2人を銃殺したことで、イスラエルの大使を追放し、イスラエル大使館を閉鎖させていた。

ヨルダンは、ヨルダン人2人を殺害して帰国した大使館職員が、ネタニヤフ首相にまるで英雄かのように歓迎される様子を見て立腹していたのである。

実際になにが起こったのかが明らかでないため、イスラエルは、これまでのところ、謝罪はせず、遺憾を述べるにとどまっていた。

しかし、木曜、ヨルダン政府によると、ネタニヤフ首相が謝罪を申し入れたもようである。ネタニヤフ首相は、まもなく新しい大使をアンマンへ派遣することになると発表し、両国の外交関係が回復すると発表した。

ペンス副大統領の来訪を前にした圧力があったか動きともとれるタイミングである。

https://www.timesofisrael.com/israels-new-envoy-to-jordan-to-be-named-in-coming-days-netanyahu-says/

<エジプトも複雑・・・>

エジプトは、昨今、パレスチナ自治政府のアッバス議長を支援し、ハマスとの和解を仲介していた国である。そこへ、パレスチナ自治政府が関係を断固拒否を表明しているアメリカの副大統領が来るわけである。

かつてはアラブの盟主を務め、イスラエルと戦った大国エジプトが、エルサレムはイスラエルの首都と言っているアメリカの副大統領を迎えることは、エジプトにとっても大問題である。

しかし、こちらもヨルダンと同様、経済的にも大きくアメリカに依存している以上、断るわけにはいかない。

エジプトのシシ大統領は、水曜、アッバス議長に、ペンス副大統領が来ても、エジプトは、エルサレムがパレスチナの首都ということは妥協しないと約束したという。

https://www.timesofisrael.com/pence-visit-exposes-dilemma-facing-egypt-jordan-over-jerusalem-recognition/

<福音派クリスチャンとして>

ペンス副大統領は、トランプ大統領と違って、敬虔な福音派クリスチャンであることを明確にしている人物である。

キリスト教徒12人に1人は迫害の対象にあるとも報告されている中東で、世界最強の国のクリスチャン副大統領が何を言うのかもまた、注目されている点である。

<石のひとりごと>

アメリカがUNRWAの支援金を半部以下にした。そんなニュースが流れているが、エルサレムでは相変わらず、市内の道路をパレスチナ人が掃除しているのをみかける。

イスラエル、ユダヤ人の原点ともいえるヤドバシェム(ホロコースト記念館)でさえ、パレスチナ人が掃除している様子に、いまだに違和感を感じる。

ニュースでは、様々なことが報じられるのではあるが、現地で生きている一般のパレスチナ人たちは、おそらく何が来ても驚かず、すかさずなんとか生き残る道を探し出すことだろう。

国際関係でいえば、結局のところ、お金とはよく言われることであるが、結局のところ、アメリカがゴリ押しを通すという姿がペンス副大統領の中東訪問から伺える。

それでも、そういう人間のアグリーないとなみを超えたところに、歴史を動かす神がおられるということなのである。
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インドはどこまで信頼できる?:ネタニヤフ首相インド訪問4日間 2018.1.20

 2018-01-20
先週、ネタニヤフ首相夫妻がインドを訪問し、4日間も滞在した。国内状況、首相不在自身の身辺ざわついていた中で、イスラエルを離れ、手厚い歓迎を受けて、首相夫妻にはちょっとした休憩になったのではないかと思われる。

インドは、先の国連総会で、エルサレムはイスラエルの首都と言っているアメリカに、日本と同様に反対する票を投じた。イスラエルとしては、残念なことであった。

しかし、インドのモディ首相は、ネタニヤフ首相夫妻を、自身で空港に出迎えるというサプライズ歓迎をした他、相当な国賓の歓迎式典を行い、タージマハールなどのツアーにも案内している。

インドとしてもイスラエルとの関係は維持したいところなので、機嫌をとったということかもしれないが、今回のネタニヤフ首相のインド訪問で、両国の関係は、かなり深まったといえる。

1)貿易拡大へ

今回のネタニヤフ首相のインド訪問の大きな目的は、両国の貿易を成長させることである。ネタニヤフ首相は、ビジネスマン130人を同行し、イスラエルの産物200のリストをモディ首相に手渡すなど、貿易の促進を図った。

イスラエルとインドの貿易収支は、現在50億ドル程度で、その中身はほとんどが武器関係とダイヤモンドだという。

訪問に先立ち、インドは、イスラエルの武器会社ラファエルに、5億ドルの対戦車砲の注文をキャンセルすると申し入れていたが、ネタニヤフ首相の訪問後、キャンセルを取り消し、再交渉を始めることとなった。

https://www.timesofisrael.com/netanyahu-says-500m-israel-india-arms-deal-back-on-the-table/

2)ムンバイ・テロ現場に遺族モイシェ少年訪問

インド訪問の最終日、ネタニヤフ首相は、2008年にムンバイで発生した同時たてこもりテロ事件の現場の一つとなったユダヤ教ハバッド派の施設を訪問した。

この事件は、インドのイスラム主義者らが、ムンバイの10箇所で人質を取り、最終的には170人以上の犠牲者と出した重篤なテロ事件で、ハバッド・ハウスでは、ラビ・ガブリエル・ホルツバーグとその妻リブカが犠牲となった。

この時、2歳であった夫妻の一人息子モイシェ君は、死亡している両親のそばに立っているところを、インド人ナニーのサンドラさんに発見され、救出された。両親を失ったモイシェ君は、サンドラさんとともにイスラエルの祖父母のところで暮らし、今に至っている。

今回、ネタニヤフ首相は、ムンバイのハバッドハウスを訪問する際、モイシェ君(現在11歳)を同行した。モイシェ君にとっては、両親が死亡した現場への9年後の訪問である。

モイシェ君は、現場で、命が助けられたことを感謝すること、ネタニヤフ首相が、約束を守って、ムンバイの現場に連れてきてくれたことを感謝する祈りを捧げた。現場には記念碑が準備されていた。

今回の訪問は、モイシェ君とその祖父母、サンドラさんも一緒であった。

http://www.jpost.com/Israel-News/India-Israel/At-site-of-terror-attack-11-year-old-Moshe-Holtzberg-thankful-for-life-537105

<インド:モディ首相2月にアッバス議長訪問へ>

ネタニヤフ首相が帰国してまもなく、インドのメディアが伝えたところによると、モディ首相は、2月、パレスチナ自治政府のアッバス議長を訪問するという。

アラブ側との”バランスをとる”ことが目的とみられているが、イスラエルとの関係が深まったとしても、インドとしては、それとパレスチナ自治政府やアラブ諸国との関係とは別であるというスタンスである。

パレスチナ自治政府を訪問するということは、イスラエルを通過しなければならないのだが、その時にネタニヤフ首相との再会談があるかどうかは不明。

国連での動きも含め、いったいどこまでインドは友人なのか・・・と思わされるが、イスラエルはおそらくその上手をいっている。そんなことは、まったく驚きではなく、すべて計算積みであろう。

実直マジメ過ぎる日本人の頭には理解しがたい国際社会事情である。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5073306,00.html
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国連安保理:アメリカとイスラエルが孤立へ 2017.12.9

 2017-12-09
日、トランプ大統領の宣言を受けて、国連安保理は、15カ国代表を招集した。会議を要請したのは、イギリス、フフランス、スェーデン、ボリビア、ウルグアイ、セネガル、エジプトである。

安保理では、パレスチナ代表、イスラエル代表もそれぞれの言い分を語った。アメリカ代表のニッキー・ヘイリー氏は、イスラエルが建国以来、70年間、エルサレムがイスラエルの首都として機能してきたと強調。

今回の宣言は、アメリカは議会にて、すでに決定されていたが、これまでの大統領が先延ばしにしてきたことを、トランプ大統領が実行に移しただけだと語った。しかし、アメリカは、エルサレムに関して、最終決断を下したわけではなく、あくまでも当事者たちが交渉で決めることであると認識を強調した。

神殿の丘についてはこれまでとなにも変わっていないこと。またアメリカは2国家案を放棄したわけではなく、イスラエル、パレスチナ両国が合意するなら、アメリカはこれに同意する用意があることを強調した。

また、ヘイリー代表は、国連はこれまで不条理にイスラエルへの非難決議を出してきたと厳しく批判した。これ以上、イスラエルがいじめられるべきではないと語った。

イスラエルのダノン国連代表は、70年前、イスラエルの建国を認めるかどうかの決断を迫られた時も世界は、アラブ諸国からの暴力を懸念した。

今回も同じだが、当時のトルーマン米大統領と同様、トランプ大統領は、勇気を持って世界に先駆け、エルサレムはイスラエルの首都宣言したのだと述べた。

今回の安保理会議では、決議はとられなかった。アメリカが拒否権を行使することは明らかだからである。しかし、イギリス、フランス、ドイツ、スェーデン、イタリアが次のような共同声明を出した。

「この度のエルサレムをイスラエルの首都とみとめ、大使館をエルサレムに移動させるというアメリカの決定は、地域の平和に貢献するものではない。我々は、国際社会で合意された2国家案を目標にした和平交渉の再開を支持するものである。」

これはつまり、パレスチナ代表の主張に同調し、アメリカの決断を拒否するものである。この他の国々も同様の意向を表明した。アッバス議長は、パレスチナを支持する国際社会に感謝を表明している。

アメリカとイスラエルは極めて孤立したとも言えるが、アメリカに続く国が出てくる可能性もあり、まだまだ先行きは不明というところか。

http://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Security-council-members-push-Trump-for-detailed-Mideast-peace-proposal-517496

http://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Abbas-praises-international-condemnation-of-Trump-Jerusalem-announcement-517501

<日本は賛否表明せず>

朝日新聞によると、イギリスやフランスが即時にトランプ大統領の宣言について、ただちに反対を表明したのに対し、日本は賛否を表明していない。

日本はアメリカと同盟国であるし、北朝鮮問題で、今はアメリカとはもめたくない。またイスラエルとも最近友好を深めているところである。とはいえ、アラブの石油は必要という、複雑な事情がある。朝日新聞は「日本はフリーズしている」と書いている。

その中立的な立場からか、今回のエルサレム問題のための安保理会議での議長は日本が務めた。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171208-00000107-mai-int

<今後の課題:アメリカの和平案とは?>

イギリスのBBCは、反イスラエル的で知られるメディアだが、アメリカは、これほどの混乱をもたらしているのだから、早急にどんな和平案を持っているのか、提示すべきだと述べている。

BBC報道:http://www.bbc.com/news/world-middle-east-42287429
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アメリカの決断:エルサレムはイスラエルの首都 2017.12.7

 2017-12-07
トランプ大統領が決断した。トランプ大統領は、6日夜、ホワイトハウスの公式発表通り、「エルサレムを正式にイスラエルの首都と認める時が来た。」と宣言した。

トランプ大統領は、「今日、明らかな事実、エルサレムがイスラエルの首都であることを認める。これはただ事実を認めるということである。」と語り、これまでの大統領は避けてきたが、自分はこの事実を認めると語った。

トランプ大統領は、イスラエルとパレスチナの和平は、これまでと同じやり方では解決しないとして、まずは、否定できない事実として、エルサレムをイスラエルの首都と認めることが平和への道だと語った。

現実直視主義のトランプ氏らしく、まずは”現実”を認め、そこから現実的な道を模索しようと示唆したものと思われる。しかし、具体的な和平案の提示はなかった。

アメリカは今月17-19日までペンス副大統領をイスラエルとパレスチナへ派遣する予定で、その時になんらかの提示があるかもしれない。

トランプ大統領は、神殿の丘など聖地とされる場所のステータス・クオ(現状維持)は守ること、また2国家案を放棄したわけではないと強調した。

しかし、2国家案(国を2つに分割する)については、国際社会が2国家案にしか解決はないと言っているのに対し、トランプ大統領は、イスラエル、パレスチナ両者が合意するなら、2国家案を支持するという表現を使い、それだけにこだわらないというこれまでのスタンスを語った。

大使館をエルサレムに移動させる件については、その準備をすすめるよう指示したことを明らかにした。実際の移動までにはまだ何年かはかかるみこみで、その時に、まだトランプ氏が大統領かどうかもわからず、確実な異動時期は不明のままである。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5052940,00.html

<歴史的タイミング>

エルサレムはイスラエルの首都とするの宣言を、12月6日に行うということは、イスラエルにとっては大きな意味がある。

今年、エルサレムは東西統一50周年を迎えた。来年は建国70年である。また、今年はイギリスが、世界に先駆けてユダヤ人の祖国をパレスチナ地方に建設することを支援すると約束したバルフォア宣言から100年目にあたる。

そのバルフォア宣言の約1ヶ月後にイギリス軍を率いていたアレンビー将軍が、エルサレムをオスマントルコの手から解放したのだが、それが、トランプ大統領宣言の5日後の12月11日である。

この時期のエルサレム解放は霊的な意味もある。

アレンビー将軍は、敬虔なキリスト教徒で、エルサレム入城の際は、軍人ではなく、巡礼として入るとして馬を下り、徒歩で入城を果たしたほどの人である。ユダヤ教徒キリスト教は、どちらも聖書の神を信じ、同じ倫理観を共有する兄弟のようなものである。

アレンビー将軍のエルサレム解放は、ユダヤ人にとっても、イスラムの手からの解放を意味した。

さらにこの時は、紀元前167年、ユダヤ人をシリアの暴君からたった5人でエルサレムを解放したマカビー一家を覚えて祝うハヌカの祭りの時期だった。アレンビー将軍は今もハヌカの英雄と重なるイメージをもつほどもある。

トランプ大統領が、「エルサレムはイスラエルの首都」と宣言したのは、ちょうどこの時期で、タイミングはこれ以上にないと思われるタイミングであった。

*ユダヤ教とキリスト教

キリスト教は単独宗教ではない。キリスト教は聖書の神、すなわち、イスラエルの神を天地創造の神と認めている。その神が、かつてイスラエルに、「罪人は死罪にあたるが、その身代わりとなる犠牲(雄牛など)を捧げることで赦され、命を得る。」と約束をしたのであった。

キリスト教は、その最終的な身代わりとなったのが、イエスだと信じる。イエスが、十字架上で全人類の罪をあがなう犠牲になったというのがキリスト教である。従って、基本的にユダヤ教とキリスト教は同じ神を信仰していることになり、両者の倫理観は基本的に同じである。

キリスト教徒にとって、エルサレムがイスラエルの首都と言われることに特に違和感はない。むしろペンス副大統領ら福音派キリスト教徒は、それを目標としているほどである。

<イスラエルの反応>

トランプ大統領の宣言の後、ネタニヤフ首相はただちにビデオでトランプ大統領の宣言は歴史的だと述べ、「ユダヤ人の70年にわたる祈りが聞かれた。」と感謝を述べた。

また、エルサレムをイスラエルの首都と認めることが平和につながるとの認識を語った。また、トランプ大統領の動きに反対する周囲の国々に対し、イスラエルは現状維持に減速を維持する。エルサレムが、ユダヤ教徒だけでなく、イスラム教徒、キリスト教徒、またすべての人々のとって開かれた町であることを約束するとも語った。

最後に、ネタニヤフ首相は、トランプ大統領に対し、「歴史とユダヤ人は、いつもあなたの勇気ある決断を覚えるでしょう。」と感謝を述べた。

リブリン大統領も、「建国70年を前に、これほどの贈り物はない。」と感謝のコメントを出した。

エルサレムのバルカット市長は、「トランプ大統領の宣言は歴史的だ。世界にアメリカはユダヤ人、イスラエルと共に立つとのメッセージを明確にした。」と述べた。

エルサレムでは、旧市街の城壁に大きなイスラエルとアメリカの旗を並べて映し出し、アメリカに感謝する意思を表明している。

現在、各国大使館を受け入れているテルアビブのフルダイ市長は、「世界諸国の大使を歓迎するが、すべての大使館が、私たちの首都エルサレムに移動することを願っている。」と語った。

強行右派とされるユダヤの家党ナフタリ・ベネット氏は、「しばらくは衝突があるかもしれないが、長い目でみれば、平和につながると信じている。」と語った。ベネット氏は、イスラエルが主権を持つことで、パレスチナ人たちの経財の回復を助ければ、争いが減ると考えている。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5053069,00.html

しかし、よろこんでばかりではない。これがアラブ人たちの怒りをかうことは明白である。右派やシオニストたちが狂気している一方、一般の普通の世俗派で、実際に現地に住むイスラエル市民たちに聞くと、突然のトランプ大統領の動きにとまどっているようであった。

「エルサレムがイスラエルの首都となるのは良いこととは思うが、今とりあえず、平和を維持しているなら、それを壊さないでほしい。」と言った。

また、「オバマ大統領ぐらいがいうならよかったかもしれないが、トランプ大統領は、これまでからも無責任なコメントばかりだった。そのような人にエルサレムは首都だと言われても信用できない。

トランプもネタニヤフも、それぞれ私生活を暴かれて火中にある。エルサレムはそれを紛らすためだろう。迷惑だ。」と言う人も複数いた。

トランプ大統領は、違法ロシア関係疑惑。ネタニヤフ首相は、連立政権代表のバイタン氏が汚職疑惑で刑事聴取を受けており、ネタニヤフ首相の汚職は決定的になりつつある。土曜にはテルアビブで大きな反汚職デモがあった。

<パレスチナ人、アラブ諸国、国際社会の反応>

1)パレスチナ自治政府の反応

アメリカは、この宣言には、政治的な意図はなく、歴史的な事実として、エルサレムをイスラエルの首都と認めるだけだと言っている。

アメリカの言う歴史的事実というのは、エルサレムが紀元前1000年ごろから紀元後70年に至るまでの間(日本では弥生時代)、イスラエルの首都であったということ。また、現代イスラエルが建国して以来70年間、イスラエルの政府機関はエルサレムにあり、事実上、イスラエルの首都として機能してきたということである。

これは、言い換えれば、東エルサレムはパレスチナの首都として国家建設をめざすパレスチナ人に向かって、「現実として、エルサレムはイスラエルの首都だ。そろそろ東エルサレムはあきらめて、別の場所で考えよう。」と言っているのと同じである。

エルサレム市は、その境界線がまだ定まっていないことも問題である。イスラエルはマアレイ・アドミムも含めた大エルサレム構想を進めようとしているが、これが実現するとパレスチナ人の領域が分断されるため、衝突の原因になっている。そのあいまいなエルサレム市を、イスラエルの首都と言い切ってしまうことはやはり歴史的認識だけではすまない。

パレスチナ自治政府は、「今後、アメリカはイスラエルとパレスチナの和平交渉を公正に行うとは思えない。」として、和平交渉は終わったと言っている。

アッバス議長は、ハマス指導者ハニエに電話をかけ、トランプ大統領の発表にすぐにも協力して対応しなければならないということで合意した。両者の和解は暗礁にのりあげているが、トランプ大統領の一件で、共通の敵と戦うということで対話ができたようである。

アッバス議長は、アルジャジーラを通して、「トランプ大統領の決断は、パレスチナ人、イスラム教徒、自由な世界の怒りを呼び起こすものだ。これから何が起こるのかはだれにもわからない。

今後イスラエルが存在するかどうかわからない。エルサレムはパレスチナの首都なのだ。」と不気味なコメントを語っている。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5052862,00.html

東エルサレムでは、アメリカの公式発表を受け、大統領を非難するビラが出回っている。ラマラやベツレヘムの通りでは、若者たちがトランプ大統領の顔写真やアメリカの旗を燃やすなどして、トランプ大統領への怒りを訴えている。

ガザ地区では、ハマスが、「アメリカは、地獄の門を開けた。」といい、イスラム諸国にアメリカとの経済関係を断ち切るよう、呼びかけた。(ありえないと思うが)

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5053082,00.html

しかし、一方で、エルサレムポストが伝えたところによると、旧市街イスラム地区のパレスチナ人からも、「トランプは何者だというので、こんな問題を持ち込むのか。」と言っている人もいるようである。

メディアや国際社会がヒートアップする中、現地のユダヤ市民、パレスチナ市民ともに、実際のところは平穏に暮らせるならそれでいいと考えているようである。

2)近隣アラブ諸国の反応

東エルサレムも含めたエルサレムをイスラエルの首都と宣言するということは、旧市街、神殿の丘がイスラエルのものということになる。

神殿の丘に今見えている黄金のドームはイスラム第三の聖地とされてからすでに1400年以上になる。これがイスラエルの主権下に入ると宣言するとなると、これは、イスラム全体を敵に回すことになる。

ホワイトハウスは、上記のように、これは歴史的認識であり、政治的な意図はないとし、神殿の丘のステータス・クオ(現状維持)はそのままで、エルサレムの境界線を広げようとするイスラエルの試みには反対する立場であると主張している。

しかし、神殿の丘は、おそらく、トランプ大統領が思うよりはるかに大きな震源地である。

アメリカの公式発表の後、ヨルダンのアブダラ国王は、トルコのアンカラにエルドアン大統領を訪問。両首脳は、「パレスチナ人は絵東エルサレムを首都として国を立ち上げる権利があるという点で合意を確認した。

またアブドラ国王は、イスラムとクリスチャンの権利を無視する事は許されることではないと語った。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5052902,00.html

エルドアン大統領は、アメリカがエルサレムをイスラエルの首都とするなら、トルコはイスラエルとの国交を遮断すると警告している。

エジプトは、アメリカの宣言を拒否すると言っている。アメリカ・イスラエルよりとも言われるサウジアラビアは、パレスチナ人を支持する立場に変わりはないとし、エルサレムをイスラエルの首都と認めることは深刻な結果を招くと警告した。

http://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Saudi-Arabia-hopes-US-will-not-recognize-Jerusalem-as-capital-of-Israel-517043

イランのハメネイ最高指導者は、「アメリカは失敗者だ。」として、イスラエルの治安を守るために、中東で戦争をしようとしていると語った。

http://www.jpost.com/Israel-News/Iran-Supreme-Leader-US-intention-to-move-embassy-sign-of-incompetence-and-failure-517164

3)国際社会の反応

フランスなど、西側諸国は、トランプ大統領のエルサレムに関する”一方的な宣言”が、暴力を招くのではないかと懸念を表明している。

トランンプ大統領の声明の直後、国連のグテーレス事務総長は声明をを出し、「エルサレムの帰属は、2国家案をもとに、両者がきめることである。」とトランプ大統領の宣言に反対する意向を表明した。

しかし、これまで2国家案での和平を試みてきたのだが、すべて失敗してきた。もはや道はないというのが現状である。それで、トランプ大統領は、思い切って新しいアプローチを考えようと言っているのである。

トランプ大統領はいかにも実質主義者の考え方である。しかし、今後の状況によっては、イスラエルとトランプ大統領は世界を敵に回すことになる可能性もある。

<トランプ大統領のエルサレム首都宣言の本質>

今回のトランプ大統領の宣言はイスラエル史上、歴史的な出来事として、100年先、200年先も覚えられることだろう。しかし、これはバルフォア宣言のときと同様、まだ実現していないビジョンの提示のようなものである。

実際の大使館の移動には少なくとも3-4年、10年はかかるとの見通しもある。そのころにトランプ大統領がまだ大統領かどうかの保証はなく、次の大統領が、また見直し、中止するということも十分にありうる。

ということは、冷静に考えれば、現時点では、まだアメリカ一国、もっと言えばトランプ大統領が、エルサレムを首都と認めると言っているだけのことで、今の所、特に何かが変わるというものでもないということである。

<エルサレムはどのぐらい危険か>

6日、エルサレムの町中は、東エルサレムのパレスチナ側も含めて、今の所、いつもと変わらない様子であった。幸い、雨と風で天気が悪いので、大規模なデモやテロは起こしにくい夜を迎えた。しかし、アッバス議長が言うように、これから何が起こるのか予想がつかない。

ホワイトハウスからの公式発表があってから、実際のトランプ大統領の演説までの間に、パレスチナ人たちは、6日から3日間の「怒りの日」と宣言した。特に金曜礼拝日が危ないとされ、エルサレムでは治安部隊が警備を強化している。

東エルサレムでは、煽動が始まっているので、若者が単独テロを繰り返すか、大きな暴動からハマスや、ヒズボラが関わってくる可能性もある。日本大使館からも警戒の指示も届いている。

一方で、実際のところ、エルサレムがイスラエルの首都と言っているのはイスラエル以外ではアメリカ一国であり、国際社会全体が言っているわけではない。実際には何も変わらないということである。

また、中東では、アメリカの影響力が落ちていることから、もしこのまま、暴力事件もなく時が過ぎて行けば、今回は、「アメリカが言っているだけ」でとアラブ人達が気づき、そのまま下火になっていく可能性もありえないことではない。

ローゼンタール警察スポークスマンによると、ソーシャルネットワークも監視しているが、今の頃、深刻なテロや、暴動の情報はないとのこと。しかし、警戒は強化しており、何かあれば対処する用意はあるとのこと。

エルサレムポストによると、旧市街イスラム地区のパレスチナ市民もユダヤ市民と同様、「トランプ大統領がいったい何者だというので、混乱を持ち込むのか。」と迷惑がる声もあるようである。

アメリカは、イスラエル在住の大使館職員らにエルサレムの旧市街に行かないよう警告している。17日から来るペンス副大統領はパレスチナ側にも行く予定だが、かなり厳しいと思われる。

<石のひとりごと>

トランプ大統領は、ジャイアンである。ごり押しでなんでも実行してしまう。しかしそれで、普通の大統領なら絶対避けて通るこのエルサレム首都宣言が実現したわけである。

聖書によると、終わりの時、エルサレムにユダヤ人が住んでいて、そのエルサレムを憎む全世界が攻めてくるということが預言されている。(ゼカリヤ12章)

今、アメリカ一国がエルサレムはイスラエルの首都と宣言しただけで、世界はイスラエルをもっと憎む気配である。トランプ大統領は意識してなかったかもしれないが、終わりの日の世界情勢に向けて、一コマすすめたようである。
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エルサレムはイスラエルの首都?:どうするトランプ大統領 2017.12.3

 2017-12-03
アメリカでは1995年の議会で、イスラエルの首都をエルサレムと認め、大使館をエルサレムに移動するという法案が通過し、これを1999年までに実施するということになった。

しかし、エルサレムについては、肝心の現地イスラエルとパレスチナがまだ合意しておらず、アメリカが、先にエルサレムを首都と認めて、大使館を移動すると、著しい治安の悪化を招く可能性がある。

このため、歴代大統領は、期限切れごとに、これを延期するという大統領令に署名するというのが、伝統になっている。期限は半年ごとに来るため、トランプ大統領もすでに6月に署名している。

その半年がまたやってきたたらしく、先週から、ペンス副大統領が、トランプ大統領は、イスラエルのアメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに、近々移動させること検討していると語るなど、この問題に動きがあるとして、メディアが騒ぎ始めた。

トランプ大統領は、アメリカ大使館のエルサレムへの移動を公約にあげていた。また、大統領が代表を務める共和党と、福音派キリスト勢力からの圧力もある。

さらに今年、4月に、ロシアのプーチン大統領が、突然、西エルサレムについては、イスラエルの首都に認めるとの認識を、明らかにしたこともあり、トランプ大統領としては、先を越された形で、アメリカがこの問題に何もしないわけにはいかないという流れにもなっている。

https://www.timesofisrael.com/in-historic-first-russia-recognizes-west-jerusalem-as-israels-capital/

しかし、イスラエルの同盟国アメリカとしては、ロシアのように、無難に西エルサレムだけを首都と求めるわけにはいかず、東西統一したエルサレムを首都として認めることが求められている。無論、これは、パレスチナだけでなく、アラブ社会全体を敵にまわすことを意味する。

世間が騒ぐのを受けて、トランプ大統領は、大使館は移動せず、「アメリカはイスラエルの首都はエルサレムと認める」という認識を発表することを検討しているという流れになっている。

しかし、たとえ大使館は移動しなくても、この宣言をすることは、現地の当事者どうしが決める事だとするアメリカの立場を大きく変える事になり、大きな動きになる。最終的な結論は、早ければ、今週水曜にも発表があるとみられる。

<パレスチナ・アラブ社会の反応>

これを受けて、まっさきにパレスチナ自治政府の交渉担当エレカット氏が、「アメリカがイスラエルを首都と認めることは最後通告になる。危険な火遊びだ。」とコメント。アッバス大統領府スポークスマンは、「和平交渉を破壊する行為だ。」と述べた。

アッバス議長については、3日、ヨルダン、エジプト、フランス、カタールに、トランプ大統領にエルサレムに関する発表をとりやめるよう圧力をかけるよう要請する動きを始めたとの情報が入っている。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5050918,00.html

アラブ同盟も、「このアメリカの動きは、平和ではなく、過激派の暴力につながる。」とのコメントをHPにアップした。このコメント通り、ハマスは、「インティファーダを再燃させる。」と豪語した。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5050831,00.html

<国連総会:イスラエルのエルサレムへの権利を否定>

上記のような事態を受けて、ニューヨークの国連総会(193カ国)では、イスラエルとエルサレムの関連を否定する採択が行われ、賛成151、反対6、棄権9で、可決された。

http://www.jpost.com/Israel-News/UN-disavows-Israeli-ties-to-Jerusalem-515730

<それどころではない!?トランプ政権の違法ロシア接触疑惑>

大事な決断を迫られているトランプ大統領だが、足元には火がついている。

トランプ政権は、政権担当前にロシアと接触していた疑いがかかっていた件で、この度、その中心人物とみられるフリン元大統領補佐官が、自らの虚偽罪を認め、捜査当局にロシアとの接触に関する証言に応じていることが明らかとなった。

アメリカでは、政府関係者以外が他国政府関係者と接触することは違法なので、もしこれが証明された場合、トランプ政権が違法行為をしていたということになる。これが、トランプ大統領に実際に、どう影響してくるかは不明だが、大きなスキャンダルには違いない。

トランプ大統領は、こうした疑惑をまっこうから否定している。このようなときに、トランプ大統領は、エルサレム問題のような重要な問題について決断するということである。

http://www.bbc.com/japanese/42202810
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ベエルシェバの戦い・バルフォア宣言から100年 2017.11.2

 2017-11-02
イスラエルでは、今年、建国の大きなきっかけとなったイギリス政府の公式文書「バルフォア宣言」が出されてから今年11月2日、ちょうど100年を迎える。

これに先立ち、イギリスがパレスチナ地方の委任統治をはじめる大きな転機となったベエルシェバの戦いから100年を記念する国家行事が10月31日、ベエルシェバにて執り行われた。

なぜイスラエルがこれを祝うのかといえば、結果的にはこの戦いが、パレスチナ地方のトルコによる支配を終わらせ、イギリスが支配権をとったことで、ユダヤ人の移民が進み、建国への大きな足がかりになっていったからである。

ベエルシェバの戦いは、世界にとって、またイスラエルにとってのターニングポイントになったのである。

ベエルシェバの戦いは、イギリスを中心とする連合軍と、ドイツ、オスマントルコとの戦いであった。ここで連合軍として戦ったのが、アンザックとよばれるオーストラリア・ニュージーランドの将兵である。このため、ベエルシェバには、大きな十字架を掲げたアンザック将兵たちの広大な墓地がある。

31日には、この墓地で、ネタニヤフ首相、オーストラリアのターンブル首相、ニュージーランドのレディ総督が出席する中、国家記念行事が盛大に執り行われた。

http://www.bbc.com/news/world-australia-41826602

式典では、ネタニヤフ首相たちが参列する中、クリスチャンであった兵士たちのために様々な賛美歌が流れ、詩篇23篇が朗読された。一方で、オーストラリアのアボリジニが伝統の楽器を奏でたり、ニュージーランドのマオリ族の祈りがささげられるなど、若干霊的戦いを思わせる場面もあった。

100年前を彷彿とさせるアンザックの騎馬隊が再現され、人々はこの歴史的なできごとと、そこで命を落とした兵士たちに思いをはせていた。

<第一次世界大戦勃発からベエルシェバの戦い>

1914年、オーストリアの皇太子が暗殺されるというサラエボ事件が発生。これを機に、ドイツ、オスマントルコと、連合軍(イギリス、フランス、ロシア)が戦争を始めた。これが人類初の世界大戦である。

この時代、パレスチナは、オスマントルコの支配下にあったが、1882年から始まった、ヨーロッパからのユダヤ人のアリヤ(移住)の波は2度目となり、テルアビブの開拓がはじめられたころだった。エルサレムは、まだ城壁の中だけにしか人がいない時代である。

この当時、オスマントルコが徐々に勢力を失いはじめていたため、イギリスは、アラブ人をあおってオスマントルコに反乱させることを考えた。そうして1915年、イギリスは、メッカの太守でベドウィンのフセイン・イブン・アリーに協力を求め、トルコ崩壊時はアラブの帝国を設立することを約束する。これがマクマホン・フセイン協定である。

その翌年1916年、イギリスは、フランスと中東をどう分割するかについて話しあった。これをサイクス・ピコ協定という。この時期、石油の重要性が注目され始めたころだった。ロシアは、ボルシェビキ(ユダヤ人)が主導する内戦が勃発したことから、世界戦争から身をひかざるをえなくなっていた。

この流れの中、まだ国を持たないユダヤ人シオニストたちが、国家設立に向けて動き出すのである。当時はまだイギリスにつくのか、オスマントルコにつくのかで判断が難しい時代だった。トランペリドールと、ジャボティンスキーは、イギリスに道を選び、イギリス軍の中にユダヤ人部隊を立ち上げるよう奔走する。

ユダヤ人は1915年のガリポリの戦い(イギリス、フランスなど連合軍がトルコのガリポリ半島へ上陸しようとして失敗した作戦)において、ろばによる輸送隊として貢献したことから、正式なユダヤ人部隊がイギリス軍の中に立ち上がった。

その翌年2017年、イギリスは、北アフリカからパレスチナ地方へとオスマントルコをおいつめたが、ガザをどうしても攻め落とすことができなかった。トルコはドイツとともに、ガザとベエルシェバを結ぶラインを固辞しており、イギリス率いる連合軍はそれより北へは進めない状態が続いた。

ここで登場してくるのがアレンビー将軍である。アレンビー将軍は、連合軍はガザへ攻め込むと見せかけ、ベエルシェバと奇襲。続いてガザも攻め落とし、そのわずか6週間後の12月、ついにエルサレムを陥落させることになったのであった。

このベエルシェバでの戦いを戦ったのは、アンザックとよばれるオーストラリア軍、ニュージーランド軍であった。アンザックは、騎馬隊で、塹壕から銃撃してくるドイツ軍、トルコ軍を前に、正面から突撃し、その頭上を飛び越えてベルシェバに突入。町を奪回したという。

この戦いで戦死したオーストラリア人兵士は173人、ニュージーランド人兵士は31人。ベエルシェバには、この戦いの面影を残す場所が多数残されている他、ここで戦死したトルコ軍兵士を記念する石碑も残されている。

http://www.kkl-jnf.org/tourism-and-recreation/israeli-heritage-sites/anzac-trail/sites/anzac-sites-beersheba/

<バルフォア宣言>

ベエルシェバでの勝利の数日後の11月2日、イギリスのロイド・ジョージ内閣のバルフォア外相が、シオニズム運動を支えていた第2代ロスチャイルド卿に、ユダヤ人のホームランドを設立することに全力を尽くすと書いた書簡が送られた。これがバルフォア宣言である。

この書簡は、先の2つの協定とは違い、イギリス政府の公式書簡であった。このため、戦後、パレスチナ地方でイギリスによる委任統治が始まると、イギリスは、ユダヤ人移民がパレスチナ地方(ヨルダン川より西に入ってくるのを許したのであった。

一方、アラブ側はフセイン・マクマホンの約束が守られないことに立腹する。このため、イギリスは、フランス領シリアから追い出されたフセインの息子ファイサルをイラクの国王にすえ、フセインのもう一人の息子アブドラをヨルダン側東岸んトランスヨルダンに据えた。チャーチル英首相はこれでフセイン・マクマホン書簡の約束は果たせたと考えたのであった。

いずれにしても、このバルフォア宣言は、ユダヤ人の祖国イスラエル再建への大きな一歩になったということである。

このバルフォア宣言が出されてから今年100年になる。ネタニヤフ首相は11月2日にイギリスで行われる記念式典に出席するため、1日、イギリスへ向かった。イスラエル国内での記念式典は11月7日の予定。

BBCは、バルフォア宣言は、イスラエルにとっては祝いかもしれないが、同時にパレスチナ人にとっては、解決不能な中東問題の原因になったと伝えている。

http://www.bbc.com/news/uk-41819451

<イスラエルとクリスチャンシオニストの関係>

イスラエルが建国するまでには、祈りだけでなく、実際的な面においても様々な形でクリスチャンが大きな影響を及ぼしてきた。バルフォア宣言は、通常、アセトンを発見して、第一次世界大戦中でのイギリスの勝利に貢献したユダヤ人化学者ワイツマンの功績とされている。

しかし、それだけでなく、当時の英ロイド政権に多数のクリスチャンシオニストがいたことも注目される事実である。

イスラエル人歴史学者アビ・ベン・ハー氏によると、当時の首相ロイド・ジョージ、その外相で、バルフォア宣言を書いたアーサー・バルフォアもクリスチャン・シオニストであった。

この分野を専門とするシャロム・ゴールドマン博士も、バルフォア宣言の背後には、聖書に基づくプロテスタントたちのクリスチャンシオニズムの考えが大きな影響を及ぼしたと強調する。

このことから、イギリスのクリスチャンの多くは、この時代のイギリスは、近代のクロス王(バビロン捕囚以来、ペルシャにいたユダヤ人にイスラエルへ帰るよう指示した王)だったと考えている。バルフォア宣言100周年を記念し、イギリスではクリスチャンたちによるイベントも企画されている。

クリスチャンシオニズムはユダヤ人のシオニズムより100年も遡るという。もっとも古い例は、デンマークのホルガー・パウリ(1644-1714)のケース。パウリは、突然、ユダヤ人の王、メシアであると自称し、ユダヤ人をキリスト教に改宗させ、イスラエルの地に連れていく召しを受けたと主張した。

パウリはちらし配りをしていたほか、少人数のユダヤ人を集めて家庭集会などをしていたようだが、最終的には、デンマークの政府からこれを差し止められた。パウリは、いわばクリスチャンシオニストの走りのようなもので、ユダヤ人の歴史には、「宗教ファナティック(極端)」と記録されている。

近年においては、福音派クリスチャンがクリスチャンシオニストとして、イスラエルをサポートしている。これについて、今のイスラエルのユダヤ人たちは、「ユダヤ人がイエスを信じることで再臨があると考えているからだ。」と懐疑的になっている。しかし、それも少しづつ変わってきているようでもある。

バルフォア宣言100周年にあたり、エルサレムポストがクリスチャンシオニストたちに関する記事をだしていたが、それによると、今の福音派クリスチャンは、パウリほどユダヤ人改宗に熱心ではない。中には、純粋にイスラエルの再建をただただよろこんでいる者もいるとも書いている。

そのまま喜んでいいのかどうなのか複雑なところだが・・・

イスラエル政府も、これからの時代、クリスチャンしか見方はいないと判断。先日もクリスチャンメディアサミットを政府みずから開催し、イスラエルへの支持を求めたところである。イスラエルとクリスチャンの関係が今、新たな時代に入りつつある空気を感じ始めている。

http://www.jpost.com/Opinion/Christian-Zionism-and-the-Balfour-Declaration-508034

*イスラエル建国当時にもいた現地アラブ人のクリスチャンシオニスト

筆者の友人にナザレに住むアラブ人クリスチャンの家庭に生まれた女性がいる。彼女の父カルメル・マターさんは、すでに召されたが、生きていれば100歳になる。プロテスタントの牧師で、非常に福音的でどこへ行っても福音をのべつたえるような人だった。

マター牧師は、昔からナザレに住むアラブ人だが、聖書を読んでいて、やがてユダヤ人が帰ってきてイスラエルを再建されると確信していたという。そのため、ほかの祈りは忘れても、イスラエルの再建のための祈りは欠かしたことがなかった。そんなマター牧師を、アラブ人の友人は疎んじていたという。

しかしやがてユダヤ人の軍隊がナザレにもやってくる。マター牧師とその妻は、預言が成就したと大きなよろこびに満たされ、なんの抵抗もなく白旗をあげてユダヤ人たちを迎え入れた。マター牧師の話を受け入れなかったアラブ人の友人は、イスラエルを受け入れることができず、今もヨルダンに行ったままだという。

地元アラブ人は、通常はユダヤ人に土地を奪われ、そこから追い出されたという歴史があるので、通常は、クリスチャンであってもイスラエルに苦い思いを残す場合が多い。しかし、ただ聖書ゆえにイスラエルの再建のために祈り続け、その実現を見て、心から喜んだアラブ人クリスチャンがいたとは驚きだった。

マター牧師のように、白旗をあげたナザレのアラブ人たちは、イスラエル建国後もそのままナザレに住むことができた。

しかし、残念なことに、今に至るまでの間に、経済や治安の悪さからクリスチャンはどんどんナザレから出て行きつつある。かつてはクリスチャンが多数派であったナザレだが、今はムスリムが多数派のイスラムの町になっている。しかし、少数派ながら福音派の教会もあるという。
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