米・英・仏のシリア攻撃:イスラエルは全面支持 2018.4.15

 2018-04-15
14日朝4時(現地)、アメリカ、イギリス、フランスが、共同で、地中海に駐屯する海軍からトマホークを含む巡航ミサイル、F15、F16戦闘機から巡航ミサイル、計103発を、ダマスカスとホムス郊外のシリア軍施設に向けて発射した。このうち71発は、ロシアがシリアに提供していた迎撃ミサイルが撃墜した。

BBCによると、この攻撃で打撃を受けたのは、ダマスカス郊外の化学兵器研究施設と、ホムス近郊の化学兵器倉庫、ならびに化学兵器機材倉庫の3箇所。人的被害は、市民3人が負傷したと伝えられたが、詳細は不明。

攻撃直後にトランプ大統領が出した声明によると、今回の攻撃は、シリアが今後化学兵器を製造しないようにすることが目的であり、「先週のドーマでの化学兵器使用」への対処に限局するもので、シリアの内戦に介入するつもりはないということであった。

イギリスのメイ首相は、政権の交代を求めるものではないと強調。あくまでも、イギリス国内や、シリア国内での化学兵器を容認できないということを知らせるものであるとの声明をだしている。

ロシアが、アメリカの攻撃には反撃すると言っていたため、攻撃直後は、緊張したニュースが続いた。イスラエルでは、シリアとの国境で、イランやヒズボラとも対峙するゴラン高原からの中継を行った。

しかし、事件発生から12時間後の現在、反撃はなく、ロシアは、「ただではすまない」と言いつつも、武力による反撃はなく、国連安保理の招集を呼びかけるにとどまっている。イスラエルのテレビも通常に戻り、午後には通常に戻っている。

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-43767156

<攻撃の意味>

今回の攻撃は、シリアにもロシアにも備える時間を十分に与えて後の攻撃であった。シリア軍は、大事な施設は全部避難させ終わった後であったし、ロシア軍もイラン軍も現場にいなかったので被害は受けていない。

今回は、国際社会として、「化学兵器の使用は決して容認できない。」というメッセージを送るための象徴的な攻撃であったようである。

しかし、アメリカのマティス国防長官は、今回の攻撃は、昨年4月のシリア攻撃の時の倍であり、今回の打撃で、今後シリアが再び化学兵器を使えるようになるには何年もかかるとの見通しを成果として報告している。

つまり、攻撃は、とりあえずは、一回限りということである。しかし、もしまたシリアが化学兵器を使えば、もっと大きな武力で対応すると釘をさす効果はあったと思われる。

釘を刺したのはロシアに対してでもある。この攻撃に先立ち、ロシアの要請で、今日から、OPCW(化学兵器禁止機構)が、ドーマでの化学兵器使用の調査調査を開始する予定であった。

攻撃が、調査結果に先立つ形で行われたことで、アメリカはアメリカの判断で動くと威厳を示したことにはなるが、化学兵器は使われていない、もしくは、反政府勢力が自作自演したと主張するロシアを正面から否定したことになる。まさに米露の直接対決の図式である。

しかし、ロシア軍には被害を与えていないので、今米露が戦争に入り、第三次世界大戦になることは、なんとか避けた形である。

一方で、3国が、「化学兵器使用への対応に限局する」と強調していることについて、化学兵器以外なら使っても良いのかということになり、反政府勢力は反発している。

ドーマのある東ゴータでは、先月から反政府勢力がまだ地域に残っていた住民5万人を、バスを長々と並べて避難させている。その車列がシリア政府軍に空爆され、先月にも30人が死亡した。問題は、化学兵器に限っていないのである。

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-43674329

しかし、トランプ大統領はアメリカ軍をシリアから撤退させる意向を表明しており、シリア内戦そのものには干渉しない立場である。シリアの問題であるが、実際は、まさに代理戦争がシリアで行なわれているということである。

副産物ではあるが、今回の攻撃は、来月北朝鮮との対話を控えるトランプ政権が、北朝鮮に対し、アメリカは必要な場合は、国際社会と協力の上で、軍事攻撃も躊躇なく使うということを見せつけたことにもなったと言われている。

トランプ大統領、その場その場で動いているのか、けっこう深くまで考えて動く賢明な大統領なのか、よくわからない人物である。

<世界の反応>

今回は、ドーマでの化学兵器使用への対応に限局し、アメリカ単独攻撃ではなかったこともあり、アメリカへの大きな批判はない。

ドイツは、イギリスや、フランスと違って、攻撃に参加しない道を選んだとみられるが、攻撃には賛同するとの声明を出した。NATOも、「化学兵器を使用した者はその責任を問われる。」と言っている。

http://www.bbc.com/news/world-middle-east-43767156

欧米は、軍事攻撃だけでなく、外交、経済でもシリアに圧力をかける予定で、EUは来週月曜にもシリアへの対処で外相級に会議を開く予定である。

http://www.jpost.com/Middle-East/EU-to-look-at-imposing-fresh-sanctions-on-Syria-549745

このほか、最近イスラエルや欧米に接近しているサウジアラビアもアメリカの攻撃を指示するとの声明を出したほか、日本の安倍政権も、指示を表明した。

中国は、攻撃に反対を表明している。あくまでも外交による平和的解決だけが効果的であるとし、国連安保理をスキップした攻撃には反対すると表明した。

<シリア側の反応:ロシア、イラン>

ロシアのプーチン大統領は、攻撃の後、「非常に深刻に受け止めている。正式な政府を支援するためにロシアが派遣している我が国の国民がいるところを攻撃されたのだ。」と言った。ロシアは、アメリカがOPCWの調査を待たなかったことを避難している。

なお、ロシアはすでに十分な迎撃ミサイルシステムをシリアに配備しているが、この上さらに、S300(飛行中の戦闘機を撃墜可能)を配備する可能性にも言及している。これについては、イスラエルが全力で阻止するものと思われるので、実現するかどうかは不明。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5230031,00.html

シリアのアサド大統領は、「国際法違反だ。アメリカとイギリス、フランスの試みは失敗する」と反論。シリアの日常に影響はないと主張するためか、普通に登庁するアサド大統領のビデオを流している。

アサド大統領が、支援国イランのハメネイ最高指導者に対し、「シリアはこれまでと変わらず、テロリスト(反政府勢力)の掃討を続ける。」と会話したとも伝えられている。

ダマスカス市内では、アサド大統領を支持する市民らが、シリアとロシア、イランの旗を振りかざしながら、迎撃ミサイルが効果的にミサイルを撃墜したとして喜び、「アメリカのミサイルなど怖くない」と叫ぶ様子が伝えらえている。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5229996,00.html

イランのハメネイ最高指導者は、「これはアメリカとイギリス、フランスの犯罪である。世界になんの益ももたらさない。アメリカは中東での存在を正当化したいだけだ。」と語った。

イラン革命軍関係者は、「この攻撃で、地域情勢はより複雑になった。そのツケを払うのはアメリカである。イランは”前線”(通常イスラエルとアメリカをさす)を強化する。攻撃への対処能力を高める。」と語っている。

https://www.reuters.com/article/us-mideast-crisis-syria-iran-guards/irans-supreme-leader-says-western-attack-on-syria-a-crime-idUSKBN1HL0DO 

<イスラエルの反応:イランとの敵対関係を強調>

イスラエルは、今年2月に続いて、先週9日、シリア領内のその同じイラン軍基地を攻撃し、イラン軍関係者8人を含む14人を死亡させている。イスラエルでは、今週末、もしアメリカがシリアを攻撃したら、イランとイスラエルとの戦争に拡大する可能性があるとして、懸念が広がっていた。

https://www.timesofisrael.com/attack-drone-revelation-shows-grave-immediate-adjacent-threat-to-israel-iran/

今回、アメリカがシリアを攻撃するという流れになった先週水曜、ネタニヤフ首相は、プーチン大統領に電話をかけた。

プーチン大統領は、ネタニヤフ首相に、手出しはしないよう伝えたが、ネタニヤフ首相は、イスラエルは、これまでと同様、自国の防衛のためには、躊躇なく(予告なく)攻撃する旨を伝えたという。

さらにこのタイミングで、攻撃の前日、イスラエルは、今年2月、イスラエル領内に侵入してきたイランのドローンには、軍事攻撃をする装備があったことを明らかにした。

言い換えれば、イスラエルは、イランの動きによっては、躊躇なくシリアのイランと対決する理由があると主張したということである。ことによっては、イスラエルはシリア内部のイラン軍を攻撃するつもりだったのだろう。

イスラエルは、安息日開けの土曜夕刻になってから、ネタニヤフ首相が、正式に、トランプ大統領を支持する声明を出した。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5230354,00.html 

<石のひとりごと:今後について>

今後どうなるかだが、残念ながら、予測不能な中東に加えて、予測不能なトランプ大統領が、世界を動かしている。専門家でも予測を述べられる人はいないだろう。

米露が戦争を始める可能性は、まだまだ残されているが、それ以上に、イスラエルとイランが戦争となり、ヒズビラが山のようにミサイルを飛ばしてきて、アメリカが介入。米露の戦争に発展していくシナリオの方が可能性は高いかもしれない。

そうなれば、ロシアとイランと同盟になっているトルコも介入してくるだろう。いよいよゴグ・マゴグの戦いの気配だが、そうなると、イスラエルにはまもなく大きな地震が発生し、中東は大混乱になるということである。(エゼキエル38章)

しかし、今は一応落ち着いている。今日の聖書箇所には次のように書いてあった。

神である主、イスラエルの聖なる方は、こう仰せられる。「立ち返って静かにすれば、あなた方は救われ、落ち着いて信頼すれば、あなた方は力を得る。」イザヤ書30:15
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アフリカ人不法入国者問題で二転三転 2018.4.8

 2018-04-08
<イスラエルにいる異邦人アフリカ人たち>

2000年代後半、イスラエルにはアフリカから違法に入国するアフリカ人が急増。約6万人になった。当時内戦状態にあったスーダン人など、正式に難民と認められた人もあるが、多くは経済的な理由での違法な入国だった。

アフリカ人たちは、いったんエジプトに入国し、そこからイスラエルに住むベドウインが、イスラエル内部に侵入する手引きをしたのであった。この際、強姦されたり、誘拐して身代金を要求されるなど極悪な犯罪も行われた。

当初イスラエル政府はこれを放置したため、多くは南テルアビブに住み着いた。しかし、やがて、ビザもなく、働くことも許されないアフリカ人たちは、生きるために犯罪へ走るようになった。2012年ごろには、南テルアビブ住民らが、政府の無策に対し、激しいデモを行うようになった。

しかし、同時にイスラエル人の中から、アフリカ人たちを支援するNPO団体も生まれた。アフリカ人の中には、クリスチャンたちも多くいて、テルアビブに独自の教会も形成された。エルサレムアッセンブリーは、スーダン人クリスチャンたちを支援し、数名に進学教育を授ける支援を行った。

やがてスーダンの内戦が一段落すると、イスラエルはこれとばかりに、スーダン人たちをなかば強制的に南スーダンに送還しはじめる。イスラエルで訓練を受けたクリスチャンの兄弟とその家族は、この時、スーダンに戻ってから教会を立ち上げ、今、多くのスーダン人を救いに導いている。

また、ネタにヤフ首相は、進入路になった南部エジプトとの国境地域に壁を建設。壁と並行し、南部エジプトとの国境近くに、侵入を試みるアフリカ人や不法滞在で捕まったアフリカ人を収容するサハロニーム収容所を建設した。以後アフリカからの侵入者はほとんどなくなっている。

<アフリカ人送還への経過>

しかし、今も南テルアビブには、相変わらずアフリカ人がたむろし、イスラエルで子供たちが生まれるようになった。サハロニーム刑務所にいるアフリカ人はそのまま放置され、なんの対策もないまま時だけが過ぎた。やがて、いつまでもそこで人々を収容し続けることは違憲だとして、対策が求められた。

そこで2015年、送還を受け入れるアフリカ人には、一人あたり3500ドルを支給し、当時受け入れに合意したウガンダへ送還した。こうして、イスラエル国内のアフリカ人は約4万にとなった。

2017年、イスラエルは、2018年3月までに、サハロニーム刑務所にいるアフリカ人を全員国外へ強制送還すると発表した。

しかし、ユダヤ人は、1938年、ナチスドイツの危機に直面しながら、世界のどの国にも難民として受け入れてもらえなかったという苦い経験がある。そのユダヤ人が、アフリカ人の強制送還するわけにはいかないと、強制送還に反対するユダヤ人も少なくなかった。

3月の期限が近づくと、イスラエル国内では、アフリカ人の強制送還に反対する大規模なデモが、テルアビブなど各地で行われた。このため、イスラエルのマンデルビット最高裁は、ついに、強制送還するという政府の決定を差し止める決定を出した。

これを受けて、イスラエル政府は、UNHCR(国連難民人権保護団体)と交渉を続け、4月4日、合意に至ったと発表した。それによると、現在イスラエルにいる約4万人のアフリカ人のうち、1万6000人を、欧米諸国に移動させる。行き先の決まったアフリカ人1人につき、1人はイスラエルの在住ビザを出すというものであった。

イスラエル国内のアフリカ人は、これを喜び道路では祝いの声を上げた。ところがその数時間後、ネタニヤフ首相は突然、これを凍結すると、合意を翻す発表を行ったのであった。

理由は、政府閣僚から一斉に反対意見がでたためである。もしこの案が実施された場合、今後、イスラエルに行けば、欧米諸国に行く道が開かれると考える難民がイスラエルへ押し寄せると懸念されたのである。

また、アフリカ人を受け入れると思われていたルワンダが、そんな覚えはないと拒否したことから、イスラエルは、期限切れとともに、サハロニーム収容所にいる58人を釈放せざるをえなくなった。

チャンネル2が、この人々にインタビューしていたが、結局テルアビブに行くといっていた。収容所で学んだのか、流暢なヘブライ語を話していた。見た目は、どうみてもエチオピア系ユダヤ人であった。

まだサハロニーム収容所に残されているアフリカ人で、ウガンダに送還されることになっている人々もいるが、まだ行き先は決定していない。

イスラエルという国の運営は、本当に難しい・・・と実感させられている。

https://www.timesofisrael.com/israel-says-highly-probable-african-migrants-will-be-deported-to-uganda/
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ポーランドの本心:ホロコースト関連法案をめぐって 2018.3.2

 2018-03-02
ポーランド議会は、2月1日、ポーランドにホロコーストの責任があると思わせるような表現をすることを犯罪であるとし、3年を上限として禁固刑にするという法案を、賛成57、反対23で可決した。

ホロコーストに関して、ポーランドには責任はないと言い切るこの法案を、ユダヤ人が受け入れられるはずはない。イスラエル政府やヤドバシェム(ホロコースト研究機関)、ホロコースト生存者、様々なユダヤ人組織から抗議が相次いだ。

にもかかわらず、2月6日、ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領は、この法案を承認して署名。立法化に向けて動き始める形となった。

しかし、イスラエルに加えて、アメリカのトランプ大統領もこの法案に反対する意向を表明したことから、ポーランドは、とりあえずこれを凍結すると発表した。しかし放棄したわけではなく、今後、イスラエルとポーランドのチームで、話し合いが進めるということになっている。

在イスラエル・ポーランド大使ジャック・コドロビッツ氏は、27日、イスラエルの国会での移民ならびにディアスポラ特別委員会に出席し、「イスラエルとの協調なしに、この法案が立法化することはない。」と約束したが、イスラエルが求めるのは、法案の破棄である。

http://www.jpost.com/Diaspora/Envoy-Polish-Holocaust-law-wont-be-enforced-without-Israeli-coordination-543741

<ポーランドの言い分とイスラエルの反論>

ポーランドが、「ホロコーストの責任がポーランドにある」と思わせる表現と指摘するのは、たとえば、「ポーランドの死の収容所」といった表現である。

確かにアウシュビッツなど死の収容所は、大半が現ポーランド領域にあったので、この表現は間違いではない。しかし、この表現では、まるでポーランドが死の収容所を運営していたようにとられてしまうというのが、ポーランドの懸念である。

ナチスの死の収容所が機能していた1941-1945年、ポーランドは、全域をドイツに占領され、ポーランドという国はなくなっていた状態にあった。またこの時代、ユダヤ人とともにポーランド人もまた300万人近くがナチスの犠牲になっている。

ポーランドとしては、ポーランドも犠牲者であり、あくまでもホロコーストの責任は、ポーランドではなく、ナチスドイツであると強調したいのである。今回の法案の冒頭には、「ポーランド共和国とポーランド国家の名誉を守るため」と記されている。

確かにポーランド人も犠牲者であり、義なる異邦人(命のリスクを負ってユダヤ人を助けた異邦人)は6700人とポーランド人が最も多い。しかし、ポーランド人に全く罪、責任はないのかといえば、そうとは言い切れないのも事実である。

ポーランド人の中には、ナチスに協力し、ユダヤ人を売り渡すか、殺戮に加わるか率先して殺戮を実施した者も少なくない。また大多数の人々は、自分を守るため、沈黙を守った。沈黙を守って、何もしなかった人々は、自分には罪はないと考えている。

しかし、はたしてそうであろうか。。。?この問題は、歴史研究の対象であるとともに、非常に繊細な倫理の問題であり、まだまだ研究、議論がなされるべき点である。

そうした中、もし今回の法案が実施された場合、ポーランドにも責任があるという意見は今後、出せなくなってしまうというのがイスラエルの懸念である。(一応、法案では、科学的な研究の場合は例外とするとされている)

ヤドバシェム(イスラエルのホロコースト記念館)のシニア歴史学者デービッド・シルバクラング氏は、「ヤドバシェムは、この法案は歴史的事実を歪曲するものであるとして抗議する。ポーランド人がユダヤ人虐殺に関わっていたことは事実である。

確かに”ポーランドの死の収容所”という表現自体には問題があるが、そこから、ポーランドの責任を論じた場合、犯罪とされることは歴史の歪曲であり、議論の自由を奪うことに他ならない。」とコメントした。

http://www.jpost.com/Israel-News/Yad-Vashem-Polish-law-jeopardizes-free-and-open-discussion-about-Holocaust-540422

<隠せないポーランドの反ユダヤ感情>

戦後ポーランドは、自国民で戦争犠牲になった人の数はは300万人と、ユダヤ人犠牲者の数は含めずに報告していた時期があった。ユダヤ人の多くはポーランド国籍であったにもかかわらずである。ナチスに植え付けられた反ユダヤ感情は深そうである。

今回の論議ががはじまってからも、ポーランドの政治家からは、反ユダヤ感情が現れる発言や出来事が続いた。

たとえば、ポーランドのモラビエツキ首相は、「ユダヤ人の中にもナチスに通じたうらぎりものがいたではないか。」と言って、イスラエルの激しいバッシングを受けた。

また、ポーランド与党は、動物保護の観点から、ユダヤ人の食物規定(コシェル)にかなった屠殺に制限をかけ、これに違反するものは、4年までの禁固刑にするとの法案を提出した。

この法案には、ユダヤ教律法にかなう牛の屠殺の禁止や、コシェルの肉の輸出入の制限も含まれている。ポーランド在住のユダヤ人が困るだけでなく、イスラエルもコシェルの肉をポーランドから輸入しているらしく、イスラエルの肉に価格にも影響する可能性があるという。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5108605,00.html

<ポーランドは危ない!?>

今回の法案をめぐる論議以降、ポーランドでは反ユダヤ主義運動が増大する傾向がすでに現れており、ポーランド在住のユダヤ人たっちが、恐怖を訴えている。

これまで、ポーランドは、他のヨーロッパでの反ユダヤ主義に比べると比較的安全で、反ユダヤ主義もインターネット上の嫌がらせであったのが、実際の社会生活でも反ユダヤ的な行為が目立つようになってきているとのこと。

http://www.jpost.com/Diaspora/In-open-letter-Polish-Jews-say-they-dont-feel-safe-in-Poland-543080

来月のホロコースト記念日には、今年もアウシュビッツでの特別記念イベントが行われる。世界中からの参加者が集まるが、イスラエルからは、大勢の高校生が参加することになっている。リスクはあるが、中止にはしないとのこと。
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アメリカ大使館エルサレム移動は5月へ 2018.3.2

 2018-03-02
2月23日、ホワイトハウスは、テルアビブにある米大使館を、今年5月、イスラエル建国70周年に合わせて、エルサレムへ移動させるという決定を公式に認めた。

まずは、現在エルサレムにあるアメリカ領事館に大使と少人数のスタッフが入り、来年までには、建物を拡大して、大使館専門の設備を建設する予定だという。その間、領事館業務は、今と変わりなく継続される。

http://www.jpost.com/Israel-News/US-confirms-Jerusalem-embassy-opening-in-May-543467

この領事館だが、筆者宅から歩いて10分のアルノナ地区にある。米領事館は、元ディプロマホテルで今は高齢者社宅になっている建物の隣。さらには、だいぶさびれているが、ダイヤモンド工場、販売センターにも隣接している。

この地域は、いわゆるノーマンズランドとよばれた地域周辺で、1967年の六日戦争でイスラエルが獲得した東エルサレムとの境目にあたる。領事館建物は、ユダヤ人居住地の中にあるが、谷をはさんで向かい側には、アラブ人居住区が広がっている。

この発表で、パレスチナ自治政府やハマスは怒りを表明したが、今の所、大きな紛争までは発生していない。しかしアメリカ政府は、アメリカ市民に対し、西岸地区にはいかないようになどと警告を発している。
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ペンス副大統領:アメリカはイスラエルと共に立つ 2018.1.23

 2018-01-23
ペンス米副大統領が、エジプト、ヨルダンを訪問後、20日夜、イスラエルに到着した。

迎えはレビン観光相とフリードマン駐イスラエル米大使が担当し、空港での歓迎式典はなかった。翌朝の首相官邸でも盛大な歓迎のイベントは催されず、ペンス副大統領のコメントもないなど、控えめな歓迎となった。

国会では、ペンス副大統領が講壇に上がり、話し始めるや否や、アラブ系議員らが、「エルサレムはパレスチナの首都」と書いた大きなポスターを複数掲げて叫び、全員セキュリティに退室させられるという1幕もあった。

ペンス副大統領は、この後、すぐれた民主主義の前にへりくだる思いだとコメントし、スピーチをはじめた。

30分あまりのスピーチは、全体的に聖書を土台としたイスラエル理解に満ちており、クリスチャン・シオニストの考えを100%伝えた内容となった。

また昨日の公務に続いて23日の帰国前の訪問先も、ヤドバシェムと嘆きの壁となっており、”クリスチャンであるのに”聖墳墓教会を含めなかったとして、ペンス副大統領は、キリスト教の中でも福音派であることが改めて世界に報じられた形となった。

*聖墳墓教会は、ギリシャ正教などの正教会、カトリック、コプト教が運営するゴルゴダの丘とも目される場所にある教会。福音派は、中に多数のイコンがなどがあるため、偶像礼拝と位置付ける人も少なくない。トランプ大統領夫妻は、キリスト教の代表と位置づけ、聖墳墓教会にも訪問している。

ペンス大統領のスピーチの要点は以下の通り。

1)アメリカ大使館:2019年末までにエルサレムへ移動

ペンス副大統領は、まず、「イスラエルの首都であるエルサレム」の国会でスピーチする初めての副大統領になるのは光栄なことだと述べ、喝采をあびた。

ペンス副大統領は、エルサレムが首都であるということの根拠として、アブラハムからダビデが首都としてことをあげ、ユダヤ人はエルサレムに確かな深いつながりがあると述べた。

またエルサレムがイスラエルの首都であることは事実であるとし、事実に基づいてはじめて平和は実現すると述べ、トランプ大統領が直ちに大使館の移動準備を始めるよう指示したので、2019年末までには、アメリカ大使館はテルアビブからエルサレムへ移動すると宣言。国会全体が、スタンディングオベーションとなった。

しかし、同時に神殿の丘(ハラム・アッシャイフ)を含むエルサレム市の「現状維持」の原則は守ること、アメリカが最終的な合意(エルサレム市の境界線など)を決めるのではないという原則も強調。イスラエルとパレスチナ双方が合意するなら、アメリカは2国家を指示するとのトランプ大統領の立場も強調した。

2)悪の政権イランを核保有国にはさせない

ペンス大統領は、臆すことなく現イラン政権を悪と呼び、アメリカは、イランが核保有国にさせないと断言。スタンディングオベーションとなった。

ペンス副大統領は、現在のイラン政権が、市民を抑圧していると指摘。イランへの経済制裁を訴えるのではあるが、イラン市民に対しては、残酷な現政権が終わり、自由な国になった時には、アメリカはあなたがたの友人だと述べた。

3)アメリカはイスラエルと共に立つ

ペンス副大統領は、23日、ヤドバシェム(ホロコースト記念館)を訪問することになっているが、国会でのスピーチでも、ユダヤ人の苦しみについて述べ、それからわずか3年後にイスラエルが建国したことをあげ、神がそれを実現したのだが、ユダヤ人が希望を失わなかったからだとユダヤ人への敬意を述べた。

今年建国70年を迎えることに言及した際には、「天地創造の神に祝福あれ。神は私たちに命を与え、今日に至るまで生かしてくださった。」という伝統的なユダヤ教の祈りをヘブル語で述べ、再びスタンディングオベーションとなった。

また、今エルサレムでは、アブラハムを父祖とするユダヤ人、クリスチャン、イスラム教徒すべてが平和に生きているとし、ユダヤ人の信仰が、エルサレムを再び立て直し、強くしたと指摘。

イスラエルは、奇跡の証人であり、世界へのインスピレーションだと述べた。そのイスラエルと、その人々と共に友として立つことは、アメリカの誇りだと語った。

これまでのアメリカの大統領や高官と違い、イスラエルの「入植地」への非難はいっさい含まれていなかった。

4)エルサレムの平和のために祈る

ペンス大統領は、詩篇122編から引用したと思われるが、私たちはエルサレムの平和のために、その城壁のうちに平和があるように祈る。あなたがたを愛する人々に、その城壁の中には平和があるようにと述べ、以下のように締めくくった。

私たちは、この古くからの町を祖国と呼ぶ人々のために、神のいちじくの木の下に座る人々の平和のために働いていく。

私は心から申し上げる。神がユダヤ人を、イスラエル国家を祝福されるように。そして、アメリカ合衆国を祝福され続けるように。

ペンス副大統領スピーチ全録画(アメリカ大使館による):https://www.youtube.com/watch?v=eHqKpCvCMlI

<祈りきかれた!?>

ペンス副大統領が、中東歴訪のためにアメリカを発った日、アメリカ政府は、暫定予算案が失効したことにより、政府機関が一部閉鎖になる、いわば部分的シャットダウンに陥った。

イスラエルでの国会でのスピーチでの後、ペンス副大統領はトランプ大統領と電話で連絡を取ったが、つなぎ予算が可決されたために、政府の閉鎖は3日で終わる見込みになったと報告した。

http://www.bbc.com/news/world-us-canada-42785678

<懸念を表明する意見も>

ペンス副大統領のメッセージは、イスラエル人の心をおおむね温めるものではあるが、現ネタニヤフ政権と一致するもので、完全にシオニスト、言い換えれば右派の考え方である。

かつてパレスチナとの対話を担当したこともある中道左派よりと思われる議員ツィッピー・リブニ氏は、「ペンス副大統領の今回の中東歴訪が、中東和平への死亡証明書にならなければよいが。」といったコメントを出している。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5074688,00.html

確かに、アメリカの動きで、パレスチナ自治政府はアメリカを見限り、和平交渉への道のりは、これまで以上に遠のいている。また、今回のペンス副大統領のメッセージで、絶望、または怒ったパレスチナ人に、テロに走る大義を作ったとも考えられる。

実際、ペンス副大統領のスピーチを受けて、アルカイダは、ユダヤ人とアメリカ人を狙えとユダヤ人を先にあげ、攻撃の標的にするようにと指令を出している。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/241055

またイスラエルの国会でアメリカとイスラエルが一緒になって悪といわれたイランが、今後どう出てくるかも気になるところである。主の介入がどう出てくるのかが注目されるところでもあるが。。。

また、トランプ政権が、イスラエル支持であることから、全世界で、反ユダヤ主義が激増しているとの報告もある。これから祈りとりなしがさらに深刻になる時代を迎えることは十分予想されることである。

<石のひとりごと:エルサレムを背負う者>

昨日朝、首相官邸での地味なペンス副大統領歓迎式典に行ってきた。朝6時に家を出て、首相府についてから中に入るまでに2時間。それからさらに2時間、カメラの立ち位置で他のテレビカメラやカメラマンらと争いながら待ったあげく、ペンス副大統領とネタニヤフ首相の歓迎式典はわずか3分たらずであった。スピーチもなしであった。

必死に撮影している間に終わってしまったため、ペンス氏をよく見る時間もなかったが、ネタニヤフ首相と並んで歩いているペンス副大統領を見ながら、ユダヤ人とクリスチャンの関係がいよいよここまで回復したかと感動する思いだった。

明確に福音派クリスチャンであると告白しているペンス副大統領が、ユダヤ人の国、イスラエルの国会で公式のスピーチをし、ネタニヤフ首相と同じところに立って、硬い握手を交わす。これは、ユダヤ人とクリスチャンの関係の癒しが大きく前進した歴史的なできごとであるといえるだろう。

また、ペンス副大統領が、聖書理解に基づいて、エルサレムをイスラエルの首都と認めると宣言し、「神がユダヤ人とイスラエルを祝福されるように。」と、ゆっくり心をこめて語り、続いて祖国を覚え、アメリカに神の祝福があり続けるように。と述べて、自分のおかれている立場を正しく認識している姿にも感動した。

しかしキリスト教は一枚岩ではない。同じプロテスタントでも、パレスチナ系ルーテル派教会の司祭は、「イエスを政治的なイエスにしている。」と、ペンス副大統領に反対するコメントを出している。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5074816,00.html

また根強い反ユダヤ主義は、キリスト教会が育て、ホロコーストという惨状にまでなったたのであるが、その根が今、特にヨーロッパで、反ユダヤ、反イスラエル主義の暴力となって激増傾向にある。

自分の理解や感情、利益ではなく、聖書に立つのか。そのために、テロの標的になる覚悟はあるのかどうか。今回、ペンス副大統領が、明確にクリスチャンとして、イスラエルを祝福する立場を明確にしたことで、今後、この点においてもキリストの教会が、ふるいにかけられていくのかもしれない。

またペンス副大統領が、エジプトとヨルダンも訪問したことも覚えたい。これらの国々は、エルサレムはパレスチナの首都であるとの立場を、改めてペンス氏に伝えたのではあるが、実際にはどんな話になったのか、この訪問のインパクトは不明である。

キリスト教会と同様、イスラエルと国境を接するこれらの国々も今後、エルサレムについて、どうするのかを考えざるをえないだろう。前にも書いたが、聖書には次のように書かれている。エルサレムとそれを支持する者たちは攻撃されるが、最終的には主によって救い出されるということである。

見よ。わたしはエルサレムを、その回りのすべての国々の民をよろめかす杯とする。ユダについてもそうなる。エルサレムの包囲されるときに。その日、わたしはエルサレムを、すべての国々の民にとって重い石とする。すべてそれをかつぐ者はひどく傷を受ける。地のすべての国々はそれに向かって集まってこよう。

その日ー主の御告げーわたしは、すべての馬を打って驚かせ、その乗り手を打って狂わせる。しかし、わたしはユダの家の上の目を開き、国々のすべての馬を打って盲目にする。

ユダの首長たちは言おう。エルサレムの住民の力は彼らの神、万軍の主にある、と。(ゼカリヤ書12:2-8)


今はまだ世界最強を誇るアメリカだが、これから国際社会の風当たりはさらに強くなってくるだろう。福音派クリスチャンへの迫害もお懸念される。ペンス副大統領とトランプ政権、アメリカを覚えて祈る必要とともにキリストの教会のためにもさらに祈る必要を覚えた。
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厳戒態勢:ペンス副大統領来訪21-23日 2018.1.20

 2018-01-20
昨年末以来、2回延期になっていたアメリカの副大統領の中東訪問が始まる。20-21日にエジプト、ヨルダンを訪問後、21日日曜から23日までイスラエルを訪問する。

イスラエルでの予定は、21日夕刻に到着し、翌朝、首相府でネタニヤフ首相と会談し、国会で演説。リブリン大統領面会、ヤドバシェム(ホロコースト記念館)で献花して、23日に帰国する。

昨年に訪問が計画された時点では、パレスチナ自治政府のアッバス議長とも会談する予定であったが、トランプ大統領が、エルサレムが首都であると発表したため、アッバス議長がペンス副大統領には会わないと表明したのであった。今回もアッバス議長に会う予定はない。

エルサレム問題に加えて、UNRWA拠出金削減で、特にパレスチナ人の間で反米感情が高まっている中での訪問となるため、警備も厳戒態勢になるとみられる。エルサレム市内もあちこち道路が閉鎖されることになる

http://www.jpost.com/Christian-News/Comment-Mideast-Christians-eyes-turn-to-Pence-538184

ペンス副大統領護衛作戦”Blue Shield 2”の訓練を行うイスラエル警察の様子:
http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/240913

ペンス副大統領訪問をとりまく近況は以下の通り。

1)アメリカのUNRWA支援65億ドルへ削減

トランプ大統領が予告していた通り、アメリカは木曜、UNRWA(パレスチナ難民支援基金)への拠出金を、半額以下の6000万ドル(約67億円)にまで削減して支払いをすませた。支払い期限は1月1日であった。

UNRWA予算の25-30%は、アメリカからの拠出金でまかなわれていたことから、UNRWAにとってはかなり大きな打撃である。

さらに、金曜、これとは別に、昨年中、UNRWAに西岸地区とガザ地区への食料支援としてアメリカ政府が約束していた4500万ドル(約50億円)も凍結すると発表した。

https://www.timesofisrael.com/us-state-department-withholds-additional-45-million-from-unrwa/

これについて、アメリカ政府は、「永遠に凍結するとは言っていない。削減分は他国でカバーしなければならないだろうが、UNRWAが組織改善をするまでのことである。」と発表し、パレスチナ人テロ組織と癒着しているUNRWAの体制を改善するよう要求した。

UNRWAについては、支援金が、市民の生活改善だけでなく、テロ・トンネルの建設費用に流れたり、UNRWA運営の学校にミサイルが仕組まれるほか、パレスチナ人の子供達への教育内容にもイスラエルとの戦闘を促す内容があると様々な問題が指摘されてきた。しかし、国際社会はこれまで何の措置もとってこなかったのである。

トランプ大統領は、口にしたことは急に実施するとパレスチナ人の間でも恐れられるようになってきているが、まさにそうなったわけである。

ネタニヤフ首相は、アメリカの動きを歓迎し、パレスチナ難民支援は、いったんUNCHR(国連難民高等弁務官事務所)に戻すよう、主張している。

しかし、当初は70万人で始まったパレスチナ難民支援対象者は、今やひ孫の世代になって、530万人にまで膨れ上がっている。

特にガザ地区の200万人は、UNRWAからの食料や教育活動に頼っている人がほとんどである。またUNRWAの支援を受けるパレスチナ難民は、西岸地区とガザだけではない。ヨルダンやシリアなど中東全体にまで及んでいる。

理屈はどうあれ、70年も、あって当たり前になっていた支援が急に差しとめられることが、混乱をもたらすことになることは大いに懸念されるところである。

グテーレス国連総長は、深い懸念を表明し、最終的には、アメリカが、気を変えて、残りの拠出金も支払うことを願うとのコメントを出している。 

アメリカの拠出削減を受けて、17日、ベルギーが、2300万ドル(約25億円)をUNRWAに拠出すると約束した。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/240822

2)PLO中央委員会:オスロ合意破棄で可決

前回、ラマラで開かれているPLO中央委員会での特別カンファレンスで、アッバス議長が、エルサレムをイスラエルの首都と認め、UNRWAへの拠出金を削減すると言っているアメリカとイスラエルへの怒りを炸裂させたことはお伝えした通り。

さらに月曜、PLO(パレスチナ解放機構でパレスチナ自治政府の母体)の中央員会は、最終的にクリントン前米大統領を仲介し、アラファト議長とラビン首相が1993年に交わしたオスロ合意を破棄するかどうかの採択を行い、破棄することで合意した。

オスロ合意の主要項目は、パレスチナ自治政府を立てて、将来、パレスチナ国家を設立しようとする合意のことである。この合意以来、25年になるが、目標達成どころか、混乱はますばかりである。

今回、PLOが決めたのは、もはや、この合意は失敗であると認識するとともに、今後アメリカの仲介は拒否するということである。パレスチナ国家設立のためには、まったく違う道を歩むと言っているのである。

PLO中央委員会は、「国連決議の基づき、イスラエルの占領をやめさせること。1967年6月4日の時点(1967年六日戦争以前)の境界線から東を首都とするパレスチナ国家の独立を認めることを国際社会に要請する」と公式発表した。

http://english.wafa.ps/page.aspx?id=eJbuMka96057575031aeJbuMk

この後、水曜、カイロではアラブ諸国のカンファレンスが開かれた。その席で、アッバス議長は、改めて、アメリカと湾岸諸国が提示したとみられる新しい和平案を拒否すると表明した。

この和平案では、パレスチナの国家を認めるが、エルサレムが首都ではない上に、自治権はあるものの、防衛は認められないなど、完全な主権のない国家ということである。イスラエルはこれを受け入れているようだが、アッバス議長には認められないということである。

この時のスピーチでアッバス議長は、聖書にも出てくるカナン人を引用し、「我々は、イスラエル人より前からいるカナン人だ。」と主張。エルサレムを首都とする完全な主権を持つパレスチナ国家の独立をめざすと主張した。

https://www.timesofisrael.com/abbas-jerusalem-is-the-gate-of-peace-and-war-trump-must-choose/

<ヨルダンとイスラエルの外交関係回復へ>

ヨルダンは、国民の7割近くがパレスチナ人である。エルサレムはイスラエルの首都と宣言しているアメリカのペンス副大統領の来訪は、パレスチナ人の機嫌を損ねたくないヨルダン王室にとって歓迎できるものではない。

しかし、ヨルダンはシリア、イラクの難民を受け入れていることもあり、アメリカの支援に大きく頼っている。2016年の支援額は16億ドル(約1800億円)である。ヨルダンとしては、ペンス副大統領を断るわけにもいかず、難しい外交をせまられている。

またヨルダンは、昨年7月、イスラエル大使館職員が、ヨルダン人に襲われたとして反撃し、結果的にヨルダン人2人を銃殺したことで、イスラエルの大使を追放し、イスラエル大使館を閉鎖させていた。

ヨルダンは、ヨルダン人2人を殺害して帰国した大使館職員が、ネタニヤフ首相にまるで英雄かのように歓迎される様子を見て立腹していたのである。

実際になにが起こったのかが明らかでないため、イスラエルは、これまでのところ、謝罪はせず、遺憾を述べるにとどまっていた。

しかし、木曜、ヨルダン政府によると、ネタニヤフ首相が謝罪を申し入れたもようである。ネタニヤフ首相は、まもなく新しい大使をアンマンへ派遣することになると発表し、両国の外交関係が回復すると発表した。

ペンス副大統領の来訪を前にした圧力があったか動きともとれるタイミングである。

https://www.timesofisrael.com/israels-new-envoy-to-jordan-to-be-named-in-coming-days-netanyahu-says/

<エジプトも複雑・・・>

エジプトは、昨今、パレスチナ自治政府のアッバス議長を支援し、ハマスとの和解を仲介していた国である。そこへ、パレスチナ自治政府が関係を断固拒否を表明しているアメリカの副大統領が来るわけである。

かつてはアラブの盟主を務め、イスラエルと戦った大国エジプトが、エルサレムはイスラエルの首都と言っているアメリカの副大統領を迎えることは、エジプトにとっても大問題である。

しかし、こちらもヨルダンと同様、経済的にも大きくアメリカに依存している以上、断るわけにはいかない。

エジプトのシシ大統領は、水曜、アッバス議長に、ペンス副大統領が来ても、エジプトは、エルサレムがパレスチナの首都ということは妥協しないと約束したという。

https://www.timesofisrael.com/pence-visit-exposes-dilemma-facing-egypt-jordan-over-jerusalem-recognition/

<福音派クリスチャンとして>

ペンス副大統領は、トランプ大統領と違って、敬虔な福音派クリスチャンであることを明確にしている人物である。

キリスト教徒12人に1人は迫害の対象にあるとも報告されている中東で、世界最強の国のクリスチャン副大統領が何を言うのかもまた、注目されている点である。

<石のひとりごと>

アメリカがUNRWAの支援金を半部以下にした。そんなニュースが流れているが、エルサレムでは相変わらず、市内の道路をパレスチナ人が掃除しているのをみかける。

イスラエル、ユダヤ人の原点ともいえるヤドバシェム(ホロコースト記念館)でさえ、パレスチナ人が掃除している様子に、いまだに違和感を感じる。

ニュースでは、様々なことが報じられるのではあるが、現地で生きている一般のパレスチナ人たちは、おそらく何が来ても驚かず、すかさずなんとか生き残る道を探し出すことだろう。

国際関係でいえば、結局のところ、お金とはよく言われることであるが、結局のところ、アメリカがゴリ押しを通すという姿がペンス副大統領の中東訪問から伺える。

それでも、そういう人間のアグリーないとなみを超えたところに、歴史を動かす神がおられるということなのである。
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