パリ中東和平会議からトランプ新大統領就任へ 2017.1.20

 2017-01-20
いよいよトランプ大統領が就任する。これに先立つ1ヶ月の間、イスラエルでは、西岸地区入植地とエルサレムについて、様々な動きがあった。

<パリ中東和平会議>

昨年12月、国連安保理で、オバマ政権が拒否権を発動しなかったことでイスラエルに対する反入植地決議案2334が可決されたのに続いて、1月15日、パリで、フランス主導のイスラエル・パレスチナ問題に関する国際会議が開催された。

参加国は、退任直前のアメリカのケリー国務長官と72カ国の代表たち。当事国のイスラエルは欠席。パレスチナも招かれていないという当事者抜きの国際会議であった。

イスラエルは、この問題は、当事者であるイスラエルとパレスチナが直接話し合いを行い、エジプト、ヨルダン、サウジアラビアなど近隣中東諸国が関わるべきであり、欧米が当事者抜きで行う国際会議など無意味だと訴えた。

一方、パレスチナは、イスラエルといくら直接交渉しても、ラチがあかないので、国連はじめ、幅広い国際社会からプッシュしてもらうしかないと考えており、こうした国際社会の動きは歓迎する立場をとっていた。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4907050,00.html

<何が決まったのか>

基本的には、昨年安保理で可決された反入植地決議案2334を、72カ国が確認、賛同したということである。

つまり、1967年(六日戦争)以後、イスラエルの主権下に入ったとイスラエルが主張する東エルサレムを含む西岸地区でのイスラエルの入植活動は、国際法上違法であるという認識で一致したということである。

また、72カ国は、今や風前のともしびと言われる二国家二民族案*こそが、あくまでも平和への道筋と再確認し、イスラエルとパレスチナ双方に話し合いへの圧力をかけた。国際社会は、今年中に再度、同様の会議を行うとしている。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4907695,00.html

最大の問題はエルサレムである。安保理の決議、並びにパリでの会議によると、現在のエルサレムは、”違法な”東エルサレムを含んでいるため、そこをイスラエルの首都とすることは国際法上の違法とされる。

パリでの会議後の声明では、トランプ次期大統領が、米大使館をテルアビブからエルサレムに移動させると公約していることについて、実施するべきでないと表明した。この会議自体が、オバマ大統領のトランプ封じだとも言われている点である。

http://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Analysis-If-the-US-Embassy-moves-to-Jerusalem-are-we-looking-at-a-new-intifada-478535

しかし、この会議は、国際社会の共通の認識をイスラエルにつきつけただけで、実際的な動きにつながることはない。

イスラエルにとっては、さらに孤立を深めた感はあるが、イスラエル紙によると、安保理では、イスラエルは国際法違反という犯罪的なイメージの言葉が使われていたのに対し、このカンファレンスでの声明では、一部表現が和らいでいたことから、イスラエルとしても、そのまま静観するという流れになっている。

<イスラエルはどうするのか?>

国連安保理ならびに、パリでの会議以後、さすがに国会でのRegulation Bill(西岸地区入植地を合法化する法案)の審議は行われていない。

しかし、Yネットによると、右派ユダヤの家党ベネット党首は、トランプ新大統領が就任すると同時に、エルサレム郊外の入植地マアレイ・アドミムを合併する審議を推し進める考えを表明している。

マアレイ・アドミムは、安保理がいう国際法上違法な、1967年以降にイスラエルが開拓した入植地である。エルサレムからわずか10分のところにある大きな入植地で、これを合併すると、エルサレムのアラブ人:ユダヤ人の人口比が圧倒的にユダヤ人に有利になる。

これまでからも合併が論じられてきたが、これをエルサレムに合併すると、地理的に西岸地区が2つに分断されることになるため、パレスチナ人たちは、「パレスチナ国家設立」への実質的な妨害だとして、激しく反発していたのであった。

ベネット投手は、トランプ新大統領がエルサレムをイスラエルの首都と宣言し、西岸地区の入植地にも理解を示していることを受けて、逆にいまこそ西岸地区を合併に導くチャンスだと考えている。

トランプ氏の就任に先立ち、エルサレムのバルカット市長は、トランプ大統領の就任を歓迎するメッセージを発表した。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/223522

一方、パレスチナ自治政府は、トランプ氏に、大使館をエルサレムに移動することは、”我々の赤線を超えることになる”と、明確な反発を表明している。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/223518

<トランプ新大統領はどう出る?>

明日就任するトランプ次期大統領は、次期駐イスラエル大使に、ユダヤ人入植地支援を行ってきたフリードマン氏を指名している。フリードマン氏を通して、トランプ氏自身も、過去に入植地ベテルに多額の支援を行っている。

エルサレムへの大使館移動については、今の所、具体的な手順は示していないが、トランプ氏は、「約束は忘れていない。」と言っている。しかし、歴代大統領でこの件を約束し、実現した大統領はいない。

オバマ大統領は、退任最後のメッセージで、エルサレムへの大使館移転問題を意識したと思われることにおいて、「一方的な行動をとれば、爆発する可能性がある。」と警告した。

国連安保理や国際社会の上記のような動きの中、就任後、トランプ氏が、エルサレムへの大使館移動の公約など、どのようにイスラエル問題に取り組むのか、就任演説からして、注目されるところである。

http://www.timesofisrael.com/trump-i-did-not-forget-jerusalem-embassy-move-pledge/
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南部未認可ベドウイン村での衝突:警察官1人死亡 2017.1.20

 2017-01-20
水曜、ネゲブ地方にある違法とされるベドウインの村ウム・アル・ヒランを強制撤去しようとしていた警察と、ベドウインたちの間に暴力的な衝突が発生。

アル・ヒラン住民のムサ・アブ・アルキヤンが運転するトラックが、警察官たちにつっこみ、警察官のエレズ・レビさん(34)が死亡した。トラックを運転していたアルキヤンも射殺されて死亡した。

警察は、アルキヤンは、イスラエル南部のイスラム運動のメンバーで、ISISとの関わりもあったと主張している。

しかし、ベドウイン側は、アルヤキンに、警察官を殺害する動機はなかったと主張。逆に運転中に射殺されたことで、そのまま警察官らにつっこんだと主張している。

なお、Yネットによると、警察官らは、まだ撤去作業に入る前だった。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4909111,00.html

死亡したエレズさんには妻のクララさんと5歳、2歳の子供たちがいた。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4909313,00.html

<無認可ベドウイン村撤去について>

上記事件の後、ウム・アル・ヒランは、予定通り、強制撤去された。撤去作業が行なわれている間、警察官たちが人間の輪を作ってだれも近づかないようにして、さらなる衝突を避ける方策をとった。

ところが、そこへ統一アラブ政党の議員らが来て、村の撤去を行う警察官たち抗議して、アイマン・オデー議員が負傷した(軽傷)。アラブ議員らは、ベドウイン村の撤去は、イスラエルの少数派アラブ人に対する暴力だと訴えている。

ベドウインは、かつては遊牧していたが、今は定着しているアラブ人たちである。非常に貧しく、イスラエルの中でも最も貧しい人々である。

イスラエル政府は、貧しいベドウインたちの生活を改善しようとしているのだが、部族間の問題もあり、村は散在している。学校や設備をそれぞれの村すべてに整えることは不可能である。

そこで、いくつかの大きな村を認可し、その町に学校や様々な施設のほか、住宅をほぼ無料で提供するなど、ベドウインたちをある程度集約する計画を進めている。

しかし、これは、もともと遊牧をしていたベドウインのライフスタイルには、合わず、貧しいベドウインの生活を改善しようとするイスラエル政府のよい思いが逆に批判される結果にもなっているのである。

とはいえ、貧しいベドウインの村では、犯罪も増える一方であるため、イスラエル政府としてもなんらかの対策はとらなくてはならない。そうした中で、今回の無認可村の撤去という運びになったわけである。

イスラエルが少数派アラブ人に、わけもなく暴力を振るっているというのは誤りである。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4909187,00.html
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国連安保理:反イスラエル決議を採択 2016.12.26

 2016-12-26
日本でも大きく報じられていたが、23日、国連安全保障理事会(国連安保理)は、イスラエルの西岸地区での入植地政策を非難する反イスラエル決議を理事国15カ国のうち賛成14カ国、棄権1カ国の圧倒的多数で可決した。

こうした反イスラエル決議は、通常ならアメリカが拒否権を発動して却下されてきたのだが、今回、オバマ大統領が、異例にも棄権にまわって拒否権を発動しなかったため、可決されたものである。

これにより、エルサレムの旧市街を含む東エルサレムはじめ、1967年の六日戦争以後、イスラエルの支配下に入ったとされる西岸地区(いわゆるグリーンラインよりパレスチナ側)にあるユダヤ人入植地はすべて、違法とみなされる。

先にユネスコが神殿の丘とユダヤ人の関係を無視したのに続き、神殿の丘のみならず、嘆きの壁や、旧市街のユダヤ人地区についてもイスラエルが支配することは違法ということになり、イスラエルにとっては非常に痛い決議である。

アメリカが拒否権を発動しなかった理由について、サマンサ米国連代表は、「(西岸地区にユダヤ人の)入植地活動を認めながら、(西岸地区にパレスチナ人の国を作るという)二国家二民族を同時に承認することは不可能である。」と述べている。

決議案を安保理に出したのは、マレーシア、ニュージーランド、ベネズエラ、セネガル。エジプトは、イスラエルとトランプ氏の圧力を受けて、決議の数時間前になって、これらの国々とともに名前をつらねることを断念していた。

賛成票を投じた国は、棄権したアメリカ以外の安保理理事国すべてで、以下の14カ国。

イギリス、フランス、ロシア、中国、アンゴラ、マレーシア、ベネズエラ、ニュージーランド、スペイン、エジプト、セネガル、ウクライナ、ウルグアイ、日本。

<決議の結果どうなるのか:世界からのさらなる孤立>

この決議は、国連総会ではなく、国連安保理での決議であるため、ある程度の実効力がある。イランの核開発疑惑が持ち上がった際、国際社会はいっせいに経済制裁に入ったが、それは国連安保理で、条項7と呼ばれる条件の元で避難決議が可決されたからである。

今回の反イスラエル決議の場合、まだそこまでの実効力はない条項6の条件下だが、今後のイスラエルの出方によっては、条項7になる可能性もあるという。

イスラエルでは、特に現在、西岸地区の入植地を、合法的にイスラエルの土地として登録するためのRegulation Bill(正常化法案)が国会審議にかけられ、すでに1回目が通過。あと2回通過すれば、正式にイスラエルの法律になるところである。

国連安保理の今回の決議はまさに、これに大きな釘をさすもので、今後、国会審議中のこの法案について、イスラエルがどう動くのか、注目される点である。

ネタニヤフ首相は、閣僚たちに対し、とりあえず、オバマ大統領が正式に退任するまでは、この件に関するコメントや行動を控えるよう指示したもようである。

現時点での具体的な影響としては、西岸地区のユダヤ人入植地をめぐって国際法廷への訴えを準備しているパレスチナ自治政府への追い風が懸念される。

また今後、東エルサレムや西岸地区での建築許可を出す閣僚や政治家たちが国際法廷に訴えられる可能性が出てくる。

現在、イスラエルは、テロ予防策として、イスラエル人を殺害したテロリストの家を破壊する報復措置がとられているが、こうした行為はジュネーブ協定における”戦犯”とみなされる可能性もある。

入植地におけるイスラエル人の存在、また事業もすべてが違法とみなされるこことから、そこで、事業を展開しているイスラエルの民間人も、世界中の法廷で訴えられる可能性が出てくる。

産業については、今回の決議により、出処はイスラエル国内か入植地か明記することが義務付けられており、今でも世界中で加熱しつつある入植地製品のボイコット運動に拍車がかかるかもしれない。

産業にとどまらず、世界のブラックリストに乗せられることをさけようと、ハイテク関連企業、銀行、ガス会社や、健康管理をするHMOなども、入植地にあるブランチを閉じる可能性が出てくる。影響は様々な分野に及ぶと懸念されている。

いずれにしてもイスラエルは違法行為を行っている国として、外交上は国際的な孤立が深まっていくと思われる。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4897773,00.html

<イスラエル政府の反応>

金曜に反イスラエル決議が採択されると、イスラエルは、「アンバランスなイスラエル非難」であると反発。拒否権を発動しなかったオバマ大統領とケリー国務長官に対し、「友は友を国連安保理に持ち込まないものだ。」と非難した。

今回のアメリカの拒否権不行使は、皮肉にも、ネタニヤフ首相が、世界の報道陣に対し、アメリカがこれまで国連において拒否権を発動してきたことに感謝し、あらためてアメリカとの友好関係の重要性を語るとともに、感謝を表明した直後のことであった。

イスラエルのダノン国連代表は、「イスラエルの最大の友(アメリカ)は、これまでの慣例に基づいて行動すると思っていた。次期新政権がこれまでと違うものになるというのも頷ける。」と反発。

エネルギー相ステイニッツ氏は、「これは単に反入植地政策ではない。イスラエル、ユダヤ人とユダヤ人の国に反対する決議だ。アメリカは、中東で唯一の友を見捨てた。」と述べた。

強行右派で、問題の正常化法案を押しているユダヤの家党ベネット党首は、「これまでの世界に遠慮する政策が問題だった。今こそ、入植地にイスラエルの法律を適応する時だ。」と主張した。

一方で、イスラエルの左派勢力は、危機感を募らせている。

左派シオニスト陣営のヘルツォグ党首は、今回の外交危機は避け得た事態であり、ネタニヤフ首相は道をあやまったとして、クラヌ党に連立から抜けて、ネタニヤフ首相をクビにするべきと訴えた。

未来がある党のラピード党首も、ネタニヤフ首相はパニックに陥っていると指摘。国連安保理の決議を「一方的で悪い。受け入れられない」事態である。ネタニヤフ首相はもっと明確な対処を示すべきだと訴えた。

リクードのツィッピー・リブニ氏は、「強行右派の政策がイスラエルに害になることがあきらかになった。世界はあきらかに入植地政策に反対だ。」とコメントしている。

1)国連に対する反発措置

ネタニヤフ首相は、国連でのイスラエルの役割についての再検討を指示。すでに、国連の中でも特にイスラエルを敵視する5つの組織に拠出していた3000万シェケル(約9億円)を停止する。

またこれら5組織のスタッフに対するイスラエルでの労働ビザの発給停止。特にUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業期間・ハマスなどのかくれみのと言われる)については、そのスポークスマンの追放も検討している。

加盟国としての年1億8600万シェケル(約31億円)の拠出についても検討する。

2)諸国に対する反発措置

イスラエルは、この決議案を提出したニュージーランドとセネガルに派遣しているイスラエルの大使を呼び戻した。

セネガルについては農業の技術支援を行っていたのだが、それを停止した。3週間後にセネガル外相がイスラエルを訪問する予定だったが、これをキャンセルした。

上記2国とともに、今回の決議案を提出したマレーシアとベネズエラについては、もともと国交がないため、特に対処はしていない。

続いて、決議案に賛成した14カ国の中で、イスラエルに大使館をおいている10カ国(日本を含む)に対し、抗議を行う為大使を召喚した。しかし、各国大使を召喚したのが、ちょうど日曜で、クリスマスの祝日でもあったため、実際には、大使ではなく、次官や高官が応じた国々もあったという。

この他、来月ウクライナの首相のイスラエル訪問が予定されていたが、これもキャンセルした。

通常はイスラエルに友好的なウクライナやその他の国々が反イスラエル決議に賛成していたことから、イスラエルは、背後で、オバマ政権が動いていたとみている。

ネタニヤフ首相は、今回の国連決議が出た後、「イスラエルは諸国に(技術など)提供するものを多く持っている。ともに働く国々は得るものがあるが、イスラエルに敵対する国はそれらを失う。」と語った。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4898065,00.html

*入植地アモナは戦わずして解決

前回、入植地アモナについて、右派活動家が集結。強制撤去をしにくるイスラエル軍兵士たちに抵抗する準備をすすめているとお伝えした。これについて、イスラエル政府がアモナ住民に新たな妥協案を提案。アモナ側がこれを受け入れたため、この件については平和裡に解決することが決まった。

合意した内容は、政府は、現在の位置からすぐ近くの丘に24家族が住むことを許可すること。さらに、撤去期限は12月25日であったところ、45日延長して2月8日と決まった。(トランプ新政権発足後)

ネタニヤフ首相としては、国際社会の入植地への厳しい視線から、今、この時に強制撤去を実施すれば、逆恨みした右派入植者たちが、”値札作戦”とよばれるパレスチナ人への暴力に出る可能性があると懸念したとみられている。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4894734,00.html

<トランプ新政権との関連は?>

1月20日に発足するトランプ次期大統領は、イスラエル支持派、さらには入植地政策支持派と目されている。この安保理での採択の前には、イスラエルとともに、アメリカは拒否権を発動するべきであると主張していた。

決議が出たあと、トランプ氏はツイッターで、「1月20日以降は、違う流れになる。」と発信している。イスラエルとパレスチナの問題については、この決議案で和平実現はさらに困難になったが、それでも和平は必ず実現するとの決意も述べている。

いったん国連安保理で採択された決議を排斥することは困難だが、それが実際に実効へと移される条項7への移行についての決議になる時には、オバマ大統領はおらず、トランプ新大統領は、拒否権を発動すると期待されている。

・・・が、予想外の連続のトランプ氏である。あまり期待しすぎないほうがよいかもしれない。

<石のひとりごと>

12月20日、安保理決議の2日前、エルサレムでは、海外からの報道陣を集めて年末のネタニヤフ首相記者会見が行われた。

この時のネタニヤフ首相の報告では、一部のイスラム諸国を含め、最近ではイスラエルとの交流を求める国が増えているということだった。実際、記者会見には、最近国交が回復したばかりのトルコの大使もにこにこと同席していた。

経済についても、諸国との関係が改善するにつれ、大荒れの中東にあって、イスラエルの経済だけは、毎年右肩上がりだという。

現実においてはイスラエルと世界諸国との関係は改善しているにもかかわらず、国連では、反イスラエル決議になるといういわばねじれた外交状況になっている。これは多数決の限界ということであろう。

これまでは、多数決で決める国連は公正であると考えられてきた。しかし、今や、多数決が必ずしも正しい答えであるとは限らないことや、必ずしも現状を反映するものではないという事実が明らかになりつつある。

しかし、明らかにまちがっているとだれもがわかっていても、システム上の流れは、だれにも変えられないのである。

聖書には、世の終末には、イスラエルが国際社会から孤立するだけでなく、世界から軍事攻撃されると書かれている。

もしかしたら、矛盾であり、不条理であるとわかっていても、世界はそれを止められず、やがてイスラエルを攻撃するようになるという図式が、なんとなく出来上がり始めているのかもしれない。
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次期米在イスラエル大使は強行右派イスラエル支持者 2016.12.17

 2016-12-17
金曜、トランプ次期米大統領が、在イスラエル大使に経済と法律の専門家デービッド・フリードマン氏(71)を指名すると発表した。 

フリードマン氏は、強硬右派で、イスラエル支持者として知られる。アメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移行するというトランプ氏の布石ともいえる。

フリードマン氏はまた、西岸地区の入植地支持者でもある。American Friend of Beit El と呼ばれる組織の長で、ラマラ近郊の入植地ベイト・エルを経済的に支援している。入植地が平和の妨害ではないと考えているのである。

二国家二民族(国を2つにわけて、イスラエルとパレスチナが隣国として共存する案)を支援するオバマ大統領、ケリー国務長官と違って、西岸地区をイスラエルが合併し、ユダヤ人が治める一国家に二民族(ユダヤ人とアラブ人)を支持している。

西岸地区を合併して、アラブ人が多数になってもまだユダヤ人国家の民主国家を維持できると考えているのである。

フリードマン氏のこうした考えは、前回お伝えした”正常化法案”(Regulation Billー西岸地区のユダヤ人入植地の合法化案)を提出している右派ユダヤの家等のベネット氏と同様である。

大使の立場で、政府の方針を変える力はないのだが、これまでの大使は、西岸地区に家を1つ立てただけで、アメリカ本国へ報告し、イスラエルへの国際的な批判にまで発展させてきた。フリードマン氏が大使になれば、このパターンが変わってくると思われる。

たとえば、入植地が拡大していても、問題視しないので、本国にいいつけることもない。また、フリードマン氏は、トランプ氏とも関係が深いため、非公式にでもトランプ氏に影響力を持つと予想されている。

Times of Israelがフリードマン氏が語ったこととして伝えたところによると、トランプ氏は、ガザ地区の小学1年生たちが、ステージでイスラエル兵をナイフで殺害し、作り物の血まで流しているのを見て、これこそが平和を妨害するものだと言っていたという。

http://www.timesofisrael.com/trumps-israel-envoy-new-administration-wont-tell-israel-what-policies-to-adopt/


しかし、同時にフリードマン氏が、明白な強硬右派であることから、アメリカのユダヤ人や、イスラエルの左派からもこの人選に反対する声も上がっている。

アメリカの親イスラエル・親平和主義のユダヤ人組織J streetは、平和的に二国家2民族を推進しようとしているユダヤ人グループで、この人選に懸念を表明している。フリードマン氏は、以前、このグループを「カポ(ナチス協力したユダヤ人)より悪い。」と言ったことがあるという。

http://www.haaretz.com/israel-news/.premium-1.759455

*フリードマン氏の宗教についての記事はみあたらないが、ウィキペディアによると、無神論者。

<国務長官はエクソンCEOを指名>

フリードマン氏がいくら親イスラエルでも、実際にイスラエルとパレスチナ、そしてアメリカ政府を行き来し、大統領とともに、事を動かしていくのは国務長官である。

トランプ氏は、ケリー現国務長官からこのポジションを引き継ぐ人物として、世界的な石油会社エクソンのCEO・レックス・ティラーソン氏(64)を指名した。

ティラーソン氏には政治的な外交経験はないが、エクソンのCEOとして、数多くの国際的な交渉を成功させている。特に、ロシアのプーチン大統領とのパイプをもつことで知られる。しかし逆に、果たして、アメリカの国益を最優先できるのかどうか疑問視する声もある。

イスラエルにどのような考えを持っているかは、現時点ではまだ不明である。

http://www.jpost.com/Us-Elections/Trump-Stay-tuned-for-secretary-of-state-475093
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西岸地区合併への一歩!?:正常化法案 2016.12.12

 2016-12-12
ユダヤの家党のナフタリ・ベネット党首が提出した入植地の正常化法案について、情報が錯綜していたが、最終的には以下のようになっていることがわかった。

*そもそも・・正常化法案とは?

イスラエルの最高裁が、パレスチナ人個人の所有の土地の上に建てられていて違法であると裁定した西岸地区のユダヤ人入植地を、合法化する法案。法律問題で、へりくつをこねているようでもあり、非常にわかりにくい。

たとえば、所有者不明のまま一定年数が経っている場合は、土地を利用しても良いとか、所有者がわかっている場合は、長期リースという形にするとか、様々な形で、ユダヤ人が住むことを合法化するということである。

この法案が実現した場合、55の前哨地(まだ入植地として認められないレベルの開拓地)と、既存の入植地に加えられる形のあらたな家屋約4000戸が合法化が可能になる。

特に問題になっているのは、建てられてから20年、西岸地区最大の”Outpost(前哨地)”アモナで、2006年に一部9戸の強制撤去が施行され、住民と治安部隊で暴力的な衝突になった。常に問題児とされてきた地区である。

正常化法案では、このアモナはじめ、最高裁が違法であるとして、これまで裁判を続けてきた3つの地域(エリ、ナティブ・アボット、オフラ)も合法化する可能性が出てくる。

これは、現在、イスラエルとパレスチナ双方がめざしている2国会2民族(国をイスラエルとパレスチナで分け合うという考え方)に反して、一国家一民族(イスラエルはユダヤ人の国)、つまりは西岸地区の合併への一歩になる。

右派勢力にとっては、非常に画期的な法案である。

当然、この法案は、パレスチナ自治政府はじめ、国際社会も反発している。イスラエル国内でも、この法案が国際的なイスラエルの立場を悪くすると懸念する声が大きく、左派はいうまでもなく、右派内部でも分裂して論争になっている。

http://www.timesofisrael.com/q-and-a-on-the-israeli-legislation-that-aims-to-legalize-west-bank-outposts/

<国会審議第一回目通過:もめる右派> 

この法案について、クラヌ党(中道右派)のカフロン党首(現財務相)は、もしこのままで国会を通過して、法律になれば、(いったん違法と判断し、撤去を命じた)最高裁の決定に権威がなくなると主張。

すでに違法と判断されているアモナと問題の上記3地域が、この法案によって、撤去を免れるなら、クラヌ党はを国会で、賛成票は投じないと表明した。クラヌ党は10議席あり、この党が賛成しないと国会審議を通過することは不可能である。

そこでベネット党首とネタニヤフ首相、カフロン財務相が交渉を行い、アモナの撤去だけは、2014年に最高裁が命じたとおり、今月25日までに実施するということで、カフロン氏も妥協し、合意に踏み切った。

この合意に基づき、国会では7日、この法案に関する審議が行われた。結果、賛成58、反対51で、第一回目の審議を通過した。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4889955,00.html

アモナ住民は、見捨てられたとして、怒りを表明したが、ベネット党首は、たとえアモナを失っても、その他の地域が合法化されるという、大きな目標は達成できたとして、国会で、記念すべき勝利だと宣言した。

実はネタニヤフ首相にとっても、目の上のたんこぶであったアモナが消えてくれる上、右派勢力に借りを作ることができたので、今回のベネット党首、カフロン党首両氏との合意は、都合のよい流れになったとの分析もある。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4891270,00.html

しかし、今後、実際に法律になるには、まだ国会審議を3回通過し、さらに司法長官の承認が必要になる。

最終的に、法律として承認することになる司法長官(最高検事)のマンデルビルト氏は、「結局のところ、パレスチナ人個人の土地を、政府が取り上げるということに変わりはなく、この法案は、どうころんでも違憲(基本法)である。国際法上も違反で、弁護のしようがない。」と主張。最終的は却下せざるをえないとの考えを明らかにしている。

http://www.timesofisrael.com/attorney-general-says-outpost-bill-still-illegal-even-without-amona/

しかし、最終的には政府は、司法長官を更迭することも可能であるらしく、この正常化法案が、正式に法律になる可能性は十分にある。

時期的な問題を指摘する意見もある。アメリカでは、イスラエルの入植地政策に厳しいオバマ大統領があと1ヶ月は大統領である。

もしこの案件が現時点で国会を通過していった場合、国連安保理が動き、オバマ大統領が、反イスラエル決議、制裁などに拒否権を発動しないという可能性も否定できない。*安保理での決議は、総会決議と違って実効力がある。

リーバーマン国防相は、右派だが、正常化法案を通すのは、来年1月20日に、親イスラエルとみられるトランプ氏が大統領になるまで待ったほうがよいと主張している。

<パレスチナ自治政府:国連・国際法廷へ>

まだ法律にはなっていないものの、パレスチナ自治政府は、当然、危機感を持ったようである。この法案が国会で一回め通過した後、パレスチナ自治政府、ドイツ、EUからイスラエルに対する厳しい批判が出された。

パレスチナ自治政府のプレスオフィスは、パレスチナからみたエルサレムと入植地に関するビデオクリップを発表し、国際社会に、「イスラエルは西岸地区をパレスチナ人を追い出して、土地をとりこもうとしている。」と訴えている。

イスラエルの主張や、東エルサレムの開発のための努力、パレスチナ人によるテロで多数のユダヤ人が犠牲になったことなどはまったく反映されていないが、これがパレスチナ側の見方である。参考までに見ることをおすすめする。

https://www.nad.ps/en/videos/east-jerusalem-israel’s-colonial-project-unravelled

さらに、パレスチナ自治政府は、エレカット氏率いる代表団をアメリカへ派遣。ケリー国務長官に面会し、反イスラエル法案への拒否権を発動しないよう、要請するもようである。パレスチナメディアによると、トランプ氏にも面会する可能性があるという。

パレスチナ自治政府は、今のイスラエル入植地政策に厳しいオバマ政権の方針を変えないよう、要請するとのこと。

http://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Palestinian-Authority-delegation-heads-to-US-hoping-to-meet-with-Trump-474987

<アモナ住民が徹底抗戦への支援を呼びかけ>

ベネット党首が、法案を通すためとはいえ、予定通り今月25日までに撤去しなければならないアモナ住民は、激怒している。

政府は、アモナ住民に対し、変わりの土地を提供するほか、補償金として、1家族に50万シェケル(約1500万円)を検討しているようだが、どこまで話が進んでいるのかは不明。

http://www.timesofisrael.com/state-moves-on-compensation-for-amona-residents-as-evacuation-looms/

今の所、アモナ住民に自主退去する意思はなく、強制撤去に来る治安部隊と戦う構えである。撤去自体はすでに決まったことなので、もういつ何時、治安部隊が撤去に現れてもおかしくはない。住民たちに加えて、外部からも一緒に戦う応援隊が集結している。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4890544,00.html

イスラエル人どうしの衝突を避けたい政府は、住民に移動準備期間を与えるために、撤去期限を30日延期することを最高裁に要請することも検討している。30日伸ばすと、トランプ新大統領になっているので、政府としても都合がいい。

<ネタニヤフ首相黄金の像事件:テルアビブ>

今のネタニヤフ政権は、これまでになく右派政権で、ネタニヤフ首相が、政権運営しやすい形となっている。上記のようなイスラエルの動きは、世界各国で右傾化が進んでいるのと同じ流れともとれる動きである。

しかし、イスラエル社会は、右派ばかりではない。イスラエル、特にテルアビブは、リベラルで、左派が多く、右派エルサレムと対照的。様々な点で、対立しているともいえる。

そのテルアビブで5日、ラビン・スクエアのテルアビブ市役所前に、実物大の金のネタニヤフ像が出現した。台座が高いので4mの高さがあり、通行の人々が見上げる形である。出エジプト記の金の牛を連想した人も多かったようである。

像は月曜朝9時にこの場所に置かれ、人々が興味しんしんに眺めている様子は笑えるほどである。テルアビブ市役所は、像に「4時間以内に撤去せよ。」との張り紙をした。

4時間もあれば、会社の昼休みを含め、人々が十分見ることのできる時間である。多くの人々が写真を撮ったりしていたが、午後1時過ぎ、像は倒されて、創作者が撤去した。

この金のネタニヤフ像を設置したのはアーティストのイタイ・ザライト氏。イスラエルにおける言論・表現の自由を試してみたかったと語っている。

アライト氏が何を訴えたかったかを明記した記事はなかったが、この像が置かれたのは、故ラビン首相が、過激右派の青年に暗殺された現場である。

象徴的にいえば、左派でパレスチナとの対話をすすめた故ラビン首相を信奉するテルアビブが、西岸地区合併をもくろむエルサレムの右派勢力の台頭に警告したとも考えられる。

いずれにしても、この事件の後、ネタニヤフ首相が怒ったということもないし、ザライト氏も逮捕されなかった。イスラエルは、民主国家である。

http://www.timesofisrael.com/golden-statue-of-netanyahu-toppled-in-tel-aviv-plaza/
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