困窮深まるガザ地区 2017.6.16

 2017-06-16
パレスチナ自治政府のアッバス議長が、ハマス切り捨て政策をはじめたことで、ガザ地区の市民生活への締め付けがさらに厳しくなってきた。

アッバス議長はこれまでに、ガザ地区のファタハ、ハマスへの給与の支払いを停止。肩代わりしてきたガザ地区の電気代支払いの一部も停止した。

さらにYネットによると、ここ3ヶ月に間、医療物資の供給も止めていたらしく、ガザの病院では深刻な医療物資不足に陥っている。

http://www.jpost.com/Middle-East/PA-has-not-sent-medical-shipments-to-Gaza-for-over-three-months-496999

また先週、ガザの主要支援国家であるカタールが、サウジアラビアなど中東4国から断交され、ガザへの支援停止を求められていることから、今後、カタールからの支援も途絶えるみこみとなった。

こうなると、ガザ地区を支援するのは、単発で時々支援するトルコだけということになり、ガザ地区は危機的状況に直面する事態に陥っている。

なぜ今、アッバス議長が、ここまで厳しく、ハマス切り捨て政策に転じたかについては、憶測でしかないが、ハマスを追放してガザ地区の支配権をとりもどすとともに、サウジアラビア陣営に加わり、アメリカや、湾岸諸国の間での立場を向上させるねらいがあるとみられる。

<イスラエルも電力供給の削減を決定>

アッバス議長は、イスラエルに対し、ガザ地区電気代の支払いのうち、40%の支払いを停止するからその分のガザへの電力供給を止めるよう要請してきた。

イスラエルは、人道上の問題もあり、今後、支払いがない分も電力の供給を続けるかどうか検討していたが、11日、国会で、アッバス議長の要請通り、電力をカットすることが決まった。

カットが実施された場合、ガザ地区の電気供給は、1日2-3時間(現在4時間)になるという。こうなると水道やガスの供給にも影響が出てくるとみられ、ガザ地区はいよいよ住みにくい場所になってくる。

ただし、ハマス幹部たちは24時間の電力を得ているとのことで、ツケは結局ガザ市民だけが払うことになる。

ネタニヤフ首相は、「これはパレスチナ人内部の問題であり、イスラエルの問題ではない。」と強調した。しかしながら、そうも言いきれない点もある。

電力をさらにカットすることで、ガザ地区では、下水をますます処理できなくなり、海水に垂れ流しとなる。すでにアシュケロン、アシュドドへと汚水が広がり、このままでは、テルアビブにまで達する可能性も出てきている。

国連は、もしイスラエルが電力の供給をカットすれば、ガザ地区は大惨事にな可能性があると指摘した。これを受けて、一時ヨーロッパ諸国が、ガザへの支援を申し出たとのニュースもあったが、その後は音沙汰がない。

今のヨーロッパは、イギリスのEU離脱や、相次ぐテロ問題で、手一杯なのである。

<ハマスがイランへ支援要請>

ハマスは、エジプトに加えて、イランにも支援要請の代表団を派遣した。エジプトについては大きな結果は伝えられていない。

イランはかつてハマスを支援していたが、シリア内戦において、ハマスが反政府勢力側に立ったことで、以後支援は停止していた。もとより、ハマスはスンニ派で、イランはシーア派である。イスラム教としては決して協力できない関係にある。

それを乗り越えて、共通の敵、イスラエルをはさんで、ハマスとイランが協力し合うようになるのかどうかはまだ不透明である。

http://www.jpost.com/Israel-News/Analysis-Gazas-problems-in-the-greater-scheme-of-things-496674

なお、イランは先週、サウジアラビア陣営に村八分になったカタールへの支援を開始すると発表している。イランは、カタールとは海を挟んで向かい合っているため、海路、物資を搬入することが可能である。

<ガザ地区内部の様子>

マアヤン(西岸地区パレスチナメディア)によると、自治政府が、ガザ地区にいるファタハならびにハマスへの給料支払いを停止したことで、現金が不足し、市場には十分な食料があるにもかかわらず、人々はそれを購入できなくなっているという。

そのため、結局、ガザ市民は、国際支援に頼らざるをえない。しかし、国連の世界食糧機構によると、基金が不足しており、新たに支援金が入らなければ、来月、ガザ市民15万人の食糧支援がカットされることになると懸念されている。

https://www.maannews.com/Content.aspx?id=777634

イスラエルがガザ地区から完全撤退をしたのは2005年だった。それからわずか2年後の2007年、ハマスが、ガザ地区からファタハ(アッバス議長勢力)を追放し、武力でガザを支配するようになった。

それから10年。国際社会は、イスラエルが国境を封鎖し、ガザ地区が実質、監獄状態になっていると非難する。しかし、ハマスのイスラエルへの敵対行為はおさまることがないため、イスラエルは国境封鎖を緩和できないのである。

さらに近年では、エジプトも国境封鎖を行っており、ガザが監獄状態になっているのはイスラエルだけの責任ではない。

いずれにしても、ガザ地区住民の生活は、明らかにハマスの支配が始まる前、もっというなら、イスラエルがガザ地区にいたころのほうが明らかに豊かであった。

こうした状況から、困窮を増していくガザ地区で、ガザ市民自身が、ハマスを転覆する動きも考えられる。しかし、今のところ、まだハマスの恐怖政治は効果をあげていることと、ハマス以外の過激派もガザ地区に入り混んでいることから、ガザの内部事情ははるかに複雑になっていると考えられる。

しかし、内部ではやはり不満が高まっているとみられる。マアヤン(西岸地区パレスチナメディア)によると、11日、ガザ市内で、パレスチナ人同士の争いがあり4人が撃たれて負傷した。1人は重症となっている。

https://www.maannews.com/Content.aspx?id=777588
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パレスチナ自治政府との和平交渉:水面下で進む? 2017.6.16

 2017-06-16
トランプ大統領は、イスラエルとパレスチナの和平交渉再開に意欲を示しており、イスラエル来訪時には、ネタニヤフ首相とアッバス議長双方に会い、双方に何らかの圧力をかけたもようである。

その内容については、明確には報道されておらず、じわじわとその動きが現れてきているが、全貌はまだ明らかではない。これまでに表面化してきていることは以下の通り。

1)パレスチナ自治政府は、テロリスと家族への給与支払いをやめること

トランプ大統領は、アッバス議長に対し、”殺人や暴力”でイスラエルに逮捕されたテロリスト家族への給与支払いをアメリカは受け入れられないとして、停止を求めていた。

これに対し、アッバス議長は、給与は”正当な戦闘員”に対するものであると反論していた。

ティラーソン国務長官は、アッバス議長は、この政策をを変更すると約束したと主張したが、結局支払いはなされるとみられる。

http://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Tillerson-suggests-Palestinian-Authority-will-change-policy-on-terror-funding-496773 

http://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Israel-Tillerson-wrong-PA-still-paying-jailed-terrorists-496806

2)イスラエル政府は、一部C地区をB地区へ移行せよ

C地区とは、西岸地区の入植地、ならびに道路で、イスラエルが完全支配している地域。B地区は治安はイスラエルが守るが管理はパレスチナ自治政府という地域である。

トランプ大統領は、イスラエルに対し、一部のC地区をパレスチナ側へ移行するよう求めたと伝えられていた。

http://www.jpost.com/Israel-News/Politics-And-Diplomacy/Trumps-envoy-returns-amid-push-to-renew-direct-talks-493972

これを受けてかどうか、ネタニヤフ首相は、水曜、ネタニヤフ首相は、パレスチナ人の村カルキリヤの範囲を拡大する形で、C地区に、パレスチナ人の家屋14000戸を建設する許可を出した。

http://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Israel-advancing-14000-Palestinian-homes-in-Area-C-right-wing-warns-496875

さらに、イスラエル政府はパレスチナ自治政府に、ラマラ、ヘブロン、ツルカレム、ジェニン、カルキリアの5つのエリアA地区から周辺C地区に向けて拡大することを許可するとの通達を行った。

http://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Five-Palestinians-cities-to-expand-into-Area-C-497032

これを受けて、右派系議員、西岸地区入植地を管轄するユダヤ・サマリア地区の代表達は、「政府は、入植地拡大には及び腰なのに、パレスチナ人地域を拡大するのはどうしたわけか」と怒りをぶつけた。

C地区にパレスチナ家屋を建設するということは、将来、2国家分離案に向けて、パレスチナの地域をきめようとしているのではないかとも考えられ、1国家解決をめざす右派たちには、政府の裏切りともとれる動きである。

<イスラエルのとるべき道:リーバーマン防衛相>

リーバーマン防衛相は、今週はじめ、イスラエルのチャンネル2のインタビューに応じ、パレスチナとの合意は近いと語った。

その翌日、それが実現するにあたっては、「まずは、穏健派スンニ派勢(サウジアラビア勢力)との関係改善ありきで、それからパレスチナとの交渉という順番になる」と語った。

http://www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Liberman-Israel-Arab-normalization-first-then-Israel-Palestinian-peace-496634

今回のC地区にパレスチナ人家屋を建てるという策は、サウジアラビア勢力の好意を得る一手であるとも考えられる。

アッバス議長もまた、ハマスへの締め上げを行って、サウジアラビア勢力の好意を得る一手をすすめていると考えれば、リーバーマン防衛相が言うように、パレスチナとの交渉・合意は、本当に近いのかもしれない。

これに先立ち、スカットハレルのリック・ライディング師は、イスラエルが悪いたくらみに陥らないよう、とりなしが必要との警告も発していた。ネタニヤフ首相や、トランプ大統領を覚えるとりなしに使うみことばとして、以下の聖書箇所が提示されている。

(詩篇9:13-15、35:4-9, 57:6、119:110、124:1-8、140:4-11、142:2-7)

<右派と左派:それぞれのビジョン>

イスラエルには右派も左派もいる。同じイスラエルのユダヤ人でも、皆が同じ方向を向いているとは限らない。

右派は、パレスチナ人との共存はもはや無理と考え、1国家解決、つまり、イスラエルがエルサレムも西岸地区も全部を支配するべきと考えている。今のネタニヤフ政権は、史上最も右派と考えられている。

数年前、右派シオニストの投資家が発起人となり、一部の右派閣僚も加わって、5800/2050と名付けられた大エルサレム構想が発表された。

それによると、エルサレム市は、今より拡大し、旧市街(神殿の丘)を中心に、ちょうど玉ねぎのように、5つの層に囲まれる形で市境界線が定められている。

エルサレム市に入る主要道路にはゲート(門)が6か所あり、町は、道路のほか、地下鉄と、エルサレム空港もある。

この計画の主要な推進メンバーで、エルサレム市議会議員のアリエ・キング氏は、こうしたエルサレム市の開発の最終目的は、神殿の丘に、ユダヤ人の神殿が再建されることであると明言した。

キング氏は、エルサレムの魅力は、神であり、聖書である。世俗的なフェスティバルを数多く催してエルサレムへの来客を増やそうとする今のバルカット市長の方針には賛成できないと語る。

では最終目標が第3神殿であるとして、今の黄金のドームはどうなるのかとキング氏に聞くと、「それはどこかへ移動させる。」とあっさりと答えていた。

いうまでもなく、エルサレム5800は、パレスチナ人の存在をほぼ無視する形で成り立っており、少なくとも現段階では、とてもなしうることのできない夢物語である。

当然、イスラエル政府、エルサレム市が公式に認めるものではないが、エルサレム遺産相、観光相の閣僚2人は推奨している。

一方、左派は、西岸地区を”占領”していることこそが、パレスチナ人のみならず、イスラエル人をも苦しみに追い込んでいるとして、イスラエルを救うためには、”占領”をやめなければならないと考えている。

具体的には、右派と違って2国家解決を支持。つまり、東エルサレムを含む西岸地区は、全部がパレスチナとなり、入植地は全部、西岸地区から撤退するべきと考えている。

左派たちは、ベツァルエルや、ブレーキング・ザ・サイレンス、SISOといった組織を立ち上げ、イスラエル政府や、西岸地区におけるイスラエル軍兵士の”悪いしわざ”を摘発することにいそしんでいる。

その活動を通して、一人でも多くのイスラエル人に、今の右派政権は間違っているということを分からせたいのだという。

では、その行為を通じて、本当に西岸地区からイスラエルを撤退させるという明確なビジョンがあるのかといえば、実際には無理だろうということもわかっているのか、「私たちが訴えているのは、”占領”が悪いということであって、解決策を論じているのではない」と言っていた。

つまり、右派も左派も、現実的な解決策を提示してるとはいえないということである。
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ネタニヤフ首相:ギリシャ訪問 2017.6.16

 2017-06-16
ネタニヤフ首相は、昨日より、ギリシャのテサロニキを訪問。ギリシャのチブラス首相と、2国間で、外交、エネルギー、ビジネスなど様々な分野で、協力活動を行っていくことで合意した。

その後、キプロスのアナスタシアディス大統領も加わって、天然ガスの海底パイプライン(2200キロ)建設に関しても話し合いが持たれた。

ギリシャとキプロスは、かつてはイスラエルとの関係はよいものではなかった。しかし、ここ数年、ギリシャとキプロスの経済が非常に悪化するのと同時に、イスラエル沖では天然ガスが発見され、3国はこの天然ガスの供給をめぐって、昨年、急接近したのである。

今では、3国で共同で軍事訓練をするほど、関係は深まっている。


http://www.timesofisrael.com/netanyahu-in-greece-med-pipeline-would-be-revolution/
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大地震に備えるイスラエル 2017.6.16

 2017-06-16
イスラエルは、ヨルダン渓谷を挟んで地下のプレートが反対方向に移動する場所にある。このため、ほぼ100年に一度大きな地震がきて、大きな被害を残している。現在、その100年目はすでに過ぎており、いつ大地震がきてもおかしくない時期にあるという。

しかし、イスラエルの多くの建物は1930年代のもので、一階部分は細い足だけというアパートが多い。実際に大地震がきた時には、それらが倒壊し、大災害になることは避けられない。

政府は、大地震発生時には、死者は少なくとも7000人。9500人ががれきに閉じ込められ、17000世帯が家を失うと見て、最悪のシナリオで準備をすすめている。

今年も、先週、数日をかけて、イスラエル軍、警察、病院などが救出訓練を行う他、教育機関などでは避難訓練が行われた。

イスラエルでは、地震の余地機能システムも発達している。Yネットによると、ヨルダン渓谷にそって10キロごとに地震波を吸収するフェンスが地下に埋められており、地震を吸収するとともに、通常は、地下プレートの動きを計測している。

もし地震発生の予兆があった場合、ただちにシステムが、人間の声で逃げるようにと警報が鳴り響くよう設定されている。人間の判断をはさまないので、地震の数十秒前には警告するテストも完了しており、多くの命を救うと期待されている。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4974857,00.html
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イスラエル日本学会:日本イスラエル国交65周年 2017.6.16

 2017-06-16
イスラエルにはイスラエル日本学会(IAIS)があり、2-3年ごとに、日本を研究する学者たちが、日本の文化、ビジネス、政治、アートなど様々な角度から日本に関する研究発表を行っている。

出資は、国際交流基金と日本大使館、つまりは日本外務省で、今年6月11-13日の3日間、ハイファ大学、エルサレムのベツァレル・芸術大学が中心となり、カンファレンスが行われた。ハイファ大学だけでなく、ヘブライ大学、テルアビブ大学からも教授や学者たちが招かれていた。

日本からは、在イスラエル日本大使の富田浩司大使はじめ、慶応大学教授、阪大教授、また今回は特にベツァレルアカデミーと提携を始める東京芸大の教授や学生さんたちが参加していた。また福島原発の今を発信しつづけている日本人活動家らも発表した。

今年は、特に平成時代がテーマになり、戦後昭和から、日本がどう変わってきているのか、どこへ向かっているのかなどが、多角的に論じられた。

政治経済では、バブル後の日本は、グローバルゼーションの波に乗り遅れたために、ビジネスが悪化の一途をたどっていると指摘された。

具体的には、日本の大企業が、市場を国内にのみ求める傾向にあり、海外への進出を真剣に求めていないこと。また、海外に進出した際に、現地の会社を買収せず、また、現地の人材を徴用することもしないため、失敗するケースが多いという。

こうしたグルーバリゼーションへの乗り遅れと、製造業の減少、また高齢化で労働力の低下などから、日本の将来は明るいとはいえない、と警鐘を鳴らした。日本を愛するイスラエル人学者たちが頭を揃えて、どうしたらよいのかと、懸念してくれていた。

しかし、国力は低下しているものの、日本の文化への注目度はむしろ上がっているということだった。私たち日本人はあまり気にもしていないが、イスラエル人の目からみると、日本文化は独特で、奇妙な点もあり、だからこそおもしろいようである。

特に日本には「かわいい」という感覚があるが、これを正確に表現する英語、ヘブル語表現はない。カンファレンスでは、心理学的視点なども含め、「かわいい」とは何か、詳しく、かつ細かく研究されていた。

「かわいい」は、日本では、警察などのイメージを変えたり、購買意欲を伸ばすなど経済効果もあげている。このため、日本の文化外交でもさかんに使われているようである。(イスラエル人の方がよく知っている。。。)

しかし、稲田防衛大臣が、文化外交だとして、「かわいい」コスチュームに身をつつんでいる写真に、イスラエル人たちは、驚愕していた。イスラエル人にとって、防衛大臣は、ハードボイルドでしかありえないからである。

それにしても、ハマスやヒズボラ、イランばかりを論じているのがイスラエルでない。日本の「かわいい」まで細かく研究しているという、この余裕がなんとも面白かった。

<国交65周年:リブリン大統領との交流会>

カンファレンス後、日本大使館が、キングデービッドホテルに主要な教授たちと、リブリン大統領を招いて、両国の国交65周年を記念するレセプションを行った。

リブリン大統領は、日本の「金継ぎ」をあげ、壊れたところに金で継ぎをすることで、以前より美しいものになる。そういう経験は両国が共有するものだと述べた。(GPO報告)

国交65周年ということは、日本は、建国後5年しかたっていない時期のイスラエルと正式な国交を結んだことになる。
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