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イスラエルボイコットの米イスラム教徒女性議員の来訪をめぐって 2019.8.18

 2019-08-18
昨年、アメリカで初の女性イスラム教徒議員2人、パレスチナ人でラシダ・タリーブ氏(ミシガン州)と、ソマリア難民出身のイルハン・オマル氏(ミネソタ州)が誕生した。2人は民主党で、共和党で、イスラム移民に厳しい政策を取っているトランプ大統領には対立する立場である。

2人はまた、反イスラエルで、イスラエル製品をボイコット運動をすすめていることで知られる。その両氏が、イスラエルへの訪問を表明し、論議を巻き起こした。

イスラエルでは、これに先立つ8月5日、民主党新人議員41人(235人中の17.5%)がイスラエルを訪問。イスラエルを支持する立場を表明していた。スポンサーは、AIPAC(ユダヤ系ロビー団体)であった。

https://www.jpost.com/American-Politics/Massive-delegation-of-Democrats-arrive-in-Israel-despite-efforts-by-far-Left-597695

これについて、同じ民主党でも左派系議員は、これを批判。タリーブ氏とオマル氏も、当然これには参加せず、41人のイスラエル訪問のわずか2週間後の18日に、パレスチナを訪問すると表明した。

トランプ大統領は、「これを受け入れたらイスラエルは弱腰であるということだ」とツイート。ネタニヤフ首相は、最終的に、この2人が、BDSムーブメントに関係しており、イスラエルに害を与えようとしているとして、入国を拒否すると表明した。

すると、タリーブ氏は、パレスチナにいる祖母に会うためとしてイスラエルへの入国を再申請。イスラエルは、これについては、人道的観点から受け入れると表明した。ところがタリーブ氏は気を変えて、これを拒否。祖母訪問はしないと表明した。

するとトランプ大統領が、これを嘲笑い、一番得をしたのは、タリーブ氏に会わずにすんだ祖母だとツイートした。すると、90歳になる祖母ムフティア・タリーブさんは、ロイターのインタビューで、「神がトランプ大統領を滅ぼされるように」と反発した。

https://www.timesofisrael.com/tlaibs-grandmother-wishes-ruin-on-trump-after-he-mocks-her-on-twitter/

いろいろややこしいが、この問題が浮き彫りにしたのは、イスラエルとアメリカ在住のディアスポラ・ユダヤ人社会との不仲であった。

タリーブ氏とオマル氏の訪問をイスラエルが拒否した際、アメリカのユダヤ人組織は、これを批判。民主国家としてふさわしくないと表明していた。
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北米から移住者242人到着 2019.8.18

 2019-08-18
イスラエルをとりまく情勢が厳しくなってきているが、先週7日、北米(アメリカとカナダ)からイスラエルへ移住する242人が、ベングリオン空港に到着した。

移住をサポートしたのは、北米からの移住を促進するユダヤ人団体ネフェシュ・ベ・ネフェシュ、ユダヤ機関など複数のユダヤ人団体。

医療関係者21人、最年少は生まれて28日目と、若く、高い教育を受けた人々で、イスラエルの祝福になる人々である。

新移民たちは、角笛とともに、歓迎され、踊って喜びを表していた。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/267366

CBNによると、第二次世界対戦前の1929年から今日までの90年の間に、ユダヤ機関が支援した移住者は、300万人に登るという。

<石のひとりごと>

ユダヤ人がイスラエルへ戻り始めて、1948年に国が再建された。イスラエルを憎み、破滅を望む敵はいかに多くても、イスラエルへ移住するユダヤ人は後をたたない。しかも最近は、訪米で高い教育を受け、財産もある人材が多く移住している。

これは聖書に記されている預言どおりである。イスラエルが常に正しいわけではないが、ユダヤ人とイスラエルは決してあなどってはならない存在である。それはまた同時に、聖書を単なる宗教の書として、あなどってはならないということでもある。
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夏季休暇とティシャ・ベ・アブ(神殿崩壊記念日) 2019.8.8

 2019-08-08
<夏休み気分:平和なエルサレム>

8月初頭、日本では連日、熱中症警報が続いている。エルサレムも連日29-32度前後だが、乾燥しているせいか、また水を飲む習慣が定着しているせいか、イスラエルで、熱中症という言葉はほとんど聞かない。

子供達の学校は夏休み。宿題なし。大学生はテストに追われているが、基本的に授業はない。大学の図書館は、クーラーが効いているせいか、高齢者も含め、大人たちがけっこう来ていて、読書に勤しんでいる。

安息日の夕刻になると、道路を走る車の音もほとんどなくなり、かわりに住宅地のあちこちから、子供達の声や、その親たちの声が飛び交う。食事を共にする笑い声や食器の音もする。平和そのものである。ニュースもあるようでないようで・・全国的にすべてがゆったりで、いつもはハイピッチで動くイスラエルが、まるで、時間が止まったかのようである。

夏であろうが冬であろうが、まるでベルトコンベアーに乗せられているかのように人間の川状態で、夜遅くまで働く東京からは、想像もできないこの不思議なのんびり気分・・・

しかし、実際には、イスラエルはそれどころではない事態にある。以下の記事にまとめるが、イスラエルは来月17日、再総選挙で13年ぶりに首相が変わるかもしれないという一大事にある。にもかかわらず、人々の心がどうにも休暇気分でものごとが動かない・・とイスラエル政府メディア関係者が言っていた。

おそらく、9月に入るやいなや、海外からのメディアもおしよせて、一気に選挙ムードになるのだろう。加えて緊張続くイラン情勢、シリア情勢、南北国境も、9月に入れば、再び戦闘ムードになるのかもしれない。

国が小さいせいか、イスラエル社会の空気はあっというまに変わる。今はしばしの平和でおだやかな夏休み・・といったところである。

<ティシャ・ベ・アブ(神殿崩壊記念日)>

 夏といえば、イスラエルでは、ティシャ・ベ・アブ。ティシャ・ベ・アブは、アブの月の9日目ということで、今年は、8月10日夕刻から11日にかけてが、この日にあたる。

この日は、神殿崩壊記念日と訳されているように、主にエルサレムの第一神殿(BC586年)、第二神殿が破壊(AD70年)、バルコフバの戦いで最終的にエルサレムから追放されたことを記念する。こうした古代の出来事に加え、スペインからの追放やホロコーストの決定的な決断、最近では、ガザからの撤退など、ユダヤ人を襲った歴史的な苦難がみなこの日に起こったといわれる。

敬虔なユダヤ教徒は、断食し、嘆きの壁はもちろん、全国のシナゴーグに集まって、床に座り込んで、聖書の「哀歌」を朗読する。「哀歌」は預言者エレミヤが、BC586年についにバビロンに破壊され、人々が連れ去られていったエルサレムを見て哀しんだ詩である。

この日、日没になると、神殿の丘を見下ろすエルサレム南部の丘に多くの人々が集まり、今もユダヤ人は入ることができない神殿の丘を見ながら神の前に嘆く。

しかし、これらは、日本史でいうなら、弥生時代かそれ以前の話である。いったい、弥生時代のことを今の日本人が悲しむことは可能だろうか?ユダヤ人の歴史は、想像以上にスケールが大きいということである。

<イスラムのイード・アル・アドハ>

イスラエルのティシャ・ベ・アブと同じ10日から、イスラム教では、イード・アル・アドハという例祭がはじまる。

この日は、アブラハムが、その息子イシュマエルを、エルサレムでアラーの神へ犠牲としてささげようとしたところ、その従順を認めてアラーがその代わりとなる子羊を与えたことを記念するといわれている。子羊の身代わりによって生き延びたイシュマエルの子孫が、アラブ人である。

しかし、このアブラハムが息子を捧げるという話は、もともとは聖書に書かれているもので、聖書によると、アブラハムが、神に捧げようとしたのは、イシュマエルではなく、息子イサクであった。イサクが、子羊の身代わりによって生き延び、その息子がヤコブ、つまり後のイスラエルであり、ユダヤ人である。

聖書はイスラム教よりはるかに古い時代から存在するので、イスラム教の方が、アブラハムがイサクを捧げようとしたというオリジナルの聖書の記述をとって、イサクをイシュマエルに置き換えてイール・アル・アドハにしたということである。

この日は、同時にハッジ(メッカへの巡礼)の最終日にもあたり、イスラム教の聖日とされている。遠方から家族が戻ってきて、ご馳走を食べるお祭りである。

エルサレムの神殿の丘は、9-14日までイスラム教徒意外には閉鎖となる。ガザ国境でも、毎週金曜の国境でのデモはなしになるという。
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西岸地区でイスラエル人(19歳)遺体発見 2019.8.8

 2019-08-08
平和・・との記事を仕上げていた8日、エルサレム南部、グッシュエチオン地域の路上で、刺し殺されたとみられるユダヤ人の遺体が発見されたとのニュースが入ってきた。

犠牲者は、ドビール・ソレックさん(19) 西岸地区入植地オフラの住民で、イスラエル軍に従軍する傍ら、ミグダル・オズのイシバ(ユダヤ神学校)で学んでいた若者であった。ソレックさんは、エルサレムにラビのための贈り物を買いに行った帰りに被害にあったとのこと。殺害された後、この道路脇に捨てられたとみられる。

ソレックさんは非番で軍服姿ではなく、武器も所有していなかった。まだ入隊したばかりで、軍事訓練も受けていなかったとTimes of Israelは伝えている。

イスラエルは、西岸地区いったいを大規模に展開し、犯人捜索を行っている。

https://www.timesofisrael.com/soldiers-body-found-stabbed-to-death-outside-west-bank-settlement/

<アッバス議長がイスラエルとの絶縁を宣言>

これに先立つ7月25日、パレスチナ自治政府のアッバス議長は、ラマラで、指導者たちを集めての緊急会議を行い、治安問題での協力等、これまでにイスラエルと達した合意を全て破棄すると表明した。

今回、アッバス議長が絶縁を宣言するほどに怒った原因は、7月22日、イスラエルが、東エルサレム、ツール・バヘルのパレスチナ人家屋10棟を破壊したからである。

*東エルサレムのパレスチナ人ビル10棟破壊について

地域は、ワジ・アル・フムスとも呼ばれる地域で、建物が防護壁(イスラエルとパレスチナ人居住区の間にある壁)に近すぎて、治安上問題があるというのが破壊の理由である。

これについては、イスラエルの裁判所で審議されていたが、破壊許可が出たことから、イスラエル軍が破壊に踏み切ったとのこと。当然ながら、イスラエル軍は、突然破壊しにいったのではなく、話し合いが重ねられ、家から出て行くよう、6月には勧告されていた。

筆者が知る限りではあるが、イスラエルでは、治安やインフラ、都市計画を鑑みて、正式な許可が降りるまでは家を建ててはならないということが法律で定められている。このため、家やアパートを建てるとなると、何年もかかっている。

ところが、東エルサレムなどのパレスチナ人はこのルールをまもらず、どこにでも家を建ててしまうので、後に問題になり、裁判になるのである。そういうわけで、残念ながら、イスラエルが、パレスチナ人たちが違法に建てている家屋を破壊することは珍しいことではない。

しかし、今回は、破壊した建物の一部が、エリアA、パレスチナ自治政府に属する土地に建っていたことが問題であった。アッバス議長は、これを鬼の首をとったかごとくに避難している。

https://www.timesofisrael.com/idf-moves-to-demolish-east-jerusalem-buildings-in-pa-controlled-area-ngo/

<現代のパレスチナ人の義なる異邦人:イスラエルが永住権を提供>

イスラエルとパレスチナ自治政府の関係が悪化している中、イスラエルから永住権を与えられたパレスチナ人家族がいた。

ヘブロンのパレスチナ人男性は、2016年7月1日、西岸地区の路上で、ラビ・ミキ・マークとその家族の乗った車が銃撃テロに遭遇したところを通りかかった。この時ラビは死亡していたが、家族たちは生きていた。

このため、このパレスチナ人男性は、イスラエルの救急隊や治安部隊が到着するまで、家族たちを救出し次なる危険から保護した。

ところが、この後、この男性は、イスラエル人を助けたとして、職を失い、殺すとの脅迫を受けるようになった。このため、イスラエル政府は、男性とその家族に、イスラエルに一時住んで働く許可を出した。

この夏、この特別ビザが切れたが、男性とその家族は、ヘブロンへ帰ることもできずにいたため、イスラエル内務相は、このパレスチナ神家族に永住権を提供した。この決断をした現在のイスラエル内務相は、超正統派政党のアリエ・デリ氏であった。

https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5565232,00.html

イスラエルは、ホロコーストの時代に、自分の命をリスクにおき、なんの利益ももらわずにユダヤ人を助けた異邦人を、「義なる異邦人」として探し出し、感謝し、覚える活動を続けている。

ホロコーストの時代にも、ナチスに追われていたユダヤ人家族を助けたイスラム教徒がいた。このイスラム教徒たちが戦後、クロアチアで追われる身になったとき、イスラエルは、この家族にも永住権を出してイスラエルに迎えている。

<石のひとりごと>

イスラエル国内は、ごくごく平和にやっているし、多様な国であるせいか、どの国から来ても、基本的な生活には、なんの不自由もない。キリスト教でもイスラム教でも殺しにくることもない。

政府の決める政策は、国も軍隊も、最終的には、国そのもよりも、国民一人一人を大事にする政策であることを感じるものが多く、人々は、自分は国に大事にされていると感じている人が多い。まあ表面的ではあるかもしれないが、世界的にみれば、おおむね、非常によい国ではないかと思う。

それがなぜここまで憎まれるのか。存在を否定されなければならないのか。歴史的な紛争が原因ではあるのだが、あまりのこのパラドックスはやはり理解しがたいものがある。

今回、19歳の息子を失った家族や仲間たちを覚えて祈るとともに、ただただ憎しみにふりまわされているパレスチナ人たちを覚えて祈りたい。
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イランがハマスに月3000万ドルへ増額 2019.8.8

 2019-08-08
<ハマスのテヘラン訪問:イランとの関係強化>

ハマス政治部長官サレ・アル・アロウリらハマスの代表9人が7月22日、イランを訪問し、テヘランでハメネイ師と会談した。その中で、ハマス、イスラム聖戦、シリアとヒズボラが、協力して抵抗体制を整える同盟関係について話し合われたと報じられていた。

https://www.jpost.com/Middle-East/Hamas-pursues-axis-of-resistance-alliance-during-Tehran-visit-596640

8月になり、イスラエルのテレビチャンネル12が、この時に、イランが、イスラエルのミサイルなどに関する情報を提供する見返りとして、ハマスへの支援金を年1億ドルから、月3000万ドル(年約36億円)に増額する約束をしたと伝えた。

ロウハニ大統領が、イランとアメリカの戦争は、“すべての戦争の母”と言っていることから、イランがガザからイスラエルを攻撃させて、戦火を拡大する準備をしているのではないかとの懸念もあがりつつある。

https://www.timesofisrael.com/iran-agrees-to-increase-hamas-funding-to-30-million-per-month-report/

<ガザ国境でイスラエル兵3人負傷>

こうした中、ガザ国境では7月末、ガザからイスラエルへ銃を持った状態で侵入したハマス戦闘員ハニ・アブ・サラによって、イスラエル兵3人が負傷(いずれも命に懸念なし)するという事件が発生した。

狭いガザ国境に、大規模に展開しているイスラエル軍の間に1人のハマスが侵入した状態である。イスラエル軍は、攻撃の際にその背後にいる友軍を攻撃することにならないよう、慎重にならざるをえなかった。

結果、ハニ・アブ・サラは、イスラエル領内250メートルまでの間を2時間近く、自由に移動したのであった。これは新たな予想外の課題として認識された。

イスラエル軍は、近くガザとの大規模な戦闘があるとして、国境付近での訓練を終えたところである。
https://www.timesofisrael.com/gazan-who-wounded-3-soldiers-was-in-israel-for-2-hours-officer/

<イランとホルムズ海峡危機>

 ホルムズ海峡で、アメリカ、ならびに欧米とにらみ合うイラン。イギリス船籍のタンカーが拿捕されたのち、8月4日、再びイランが外国籍タンカーを拿捕したとのニュースが流れた。

イランは、このタンカーが原油を密輸しようとしていたと発表したが、どの国のタンカーかは不明。8日、アメリカは、イランがホルムズ海峡で、GPS妨害を行っていると警告を発した。

トランプ大統領は、タンカー保護のための有志連合を呼びかけていたが、イギリスは自分のタンカーは自分で守る体制をとり、ヨーロッパも独自でイランと交渉するなど、アメリカと歩調をあわせる様子はない。

イランのロウハニ大統領は、この地域での戦争は、大きく世界に拡大すると警告し、アメリカ抜き、ヨーロッパ諸国と核合意の継続を呼びかけている。

5日、ロウハニ大統領は、1ヶ月の期限で、ヨーロッパが、イランが納得出来る条件を出さなかった場合、核合意から逸脱する方策をまた一つ増やすと脅迫した。イランはこれまでに、核保有300キロまでの合意、ウラン濃縮3.67%までという合意を破棄してきている。

https://www.reuters.com/article/us-mideast-iran/iran-says-it-will-further-breach-nuclear-deal-in-one-month-unless-europeans-act-idUSKCN1UV1TV

さらに、イランは、8日、最新の誘導型ミサイル3基を公表した。中東のアメリカ軍拠点は、すべて射程にあると豪語した。

https://www.jpost.com/Middle-East/Iran-unveils-precision-guided-missiles-597844

アメリカは先週、イランのザリフ外相個人への経済制裁を発動したが、ザリフ外相は、「全く影響なし」とこれを嘲笑った。

ヒズボラやハマスへの支援を増額するイラン。実際のところ、イランは、経済制裁にていったいどのぐらい苦しいところに立たされているのか、意外にロシアや中国との交易に支えられて、西側の経済制裁は、それほど功をそうしていないのか、判断が難しいところである。

トランプ大統領は今、人種差別に基づく銃撃テロで、原因を作ったのはトランプ大統領だとして、母国での立場が苦しくなりはじめている。イランは、なんとか来年、アメリカの大統領が交代し、状況が一変するのを待つ作戦にあるのかもしれない。
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再総選挙情報:ネタニヤフ首相ついに終了するか? 2019.8.8

 2019-08-08
夏休みのんびりムードのイスラエル社会だが、政界は、9月17日の再総選挙に向けてまるでチェスのような動きになっている。その中で、どうやら、ネタニヤフ首相の13年にわたる統治の時代が終焉を迎えるのではとの流れになり始めている。

1)ネタニヤフ首相に不利な流れ:右派の分裂

 現時点での世論調査によると、次回の選挙では、右派リクード(ネタニヤフ首相)35議席、中道左派ブルーアンドホワイト(ガンツ氏+ラピード氏)35議席と互角である。

しかし、ブルーアンドホワイトが右派意外の勢力として数える場合、左派やアラブ政党が含まれることから、基本的にブルーアンドホワイトによる連立政権樹立は不可能である。したがって、次回も大統領は、ネタニヤフ首相に連立樹立を委任するとみられる。

しかし、前回、連立政権を樹立できなかったネタニヤフ首相が、今回、樹立できる確率は低い。

前に樹立できなかったのは、同じ右派ながら、リーバーマン氏(イスラエル我が家党)が連立に加わらなかったため、国会で過半数を占めることができなかったからである。リーバーマン氏は、現在もネタニヤフ首相の連立には加わらないと断言している。

さらに今回は、ネタニヤフ首相に不利な動きが続いている。右派の分裂である。

まずは昨年末、右派勢の間では大きな動きがあった。当時防衛相であったリーバーマン氏が、ガザへの対応に合意できないとして政権から離脱。続いて、ベネット氏(元教育相)が、その防衛相のポジションを要求し、かなわない場合は政権から離脱するとゆさぶりをかけた。

ネタニヤフ首相は、北部情勢を利用してこれをうまくかわし、ベネット氏は政権維持を優先するとしてこの要求を取り下げたのであった。ところが、その直後、ネタニヤフ首相は、国会を解散。総選挙を宣言する。ベネット氏はすっかり信用を失った形となった。

これを巻き返すため、ベネット氏は、自身が立ち上げたユダヤの家党を、相棒のシャキード氏とともに離脱。あらたに世俗派にも理解を示すとする「新右派党」を立ち上げた。

ところが、前回の総選挙で、この党は、予想外にも議席獲得最小得票率に達することができず、ベネット氏は入閣どころか、国会での議席も失ってしまった。ネタニヤフ首相は、ベネット氏とシャキード氏を解雇し、暫定政権から追放した。

これは、言いかえれば、ネタニヤフ首相が将来、味方になる可能性のあった2人を完全に失ったということでもあった。

一時は、政治生命を失ったかにみえたベネット氏とシャキード氏であったが、この後、まきかえしを図る。

特にシャキード氏は、ユダヤの家党(ペレツ党首)に加わり、新右派党(ベネット党首)を統一した右派連合の形で、次回の選挙に出る方向性を模索した。ベネット党首はこれに合意した。

https://www.jpost.com/Israel-Elections/New-Right-official-Shaked-is-a-figurehead-Bennet-pulls-the-strings-596656

しかし、次なる課題は、極右と目されるオツマ・ヤフディ党(イタマル・ベン・グヴィール党首)が、右派連合に加わるかどうかであった。

世俗派にも寛容な立場であることを強調しているベネット氏はこれに反対。一方、相棒のシャキード氏は、加えることに賛成すると意見が割れた。最終的に、トゥクマ党は右派連合に入らず、単独で選挙に出ると発表した。

その後の調査によると、オツマ党は、最小投票率を獲得できないという結果になった。もしオツマ党が右派連合に加わっていれば、この党に流れて失う票を考えると、ネタニヤフ首相の右派勢力は、4議席を失ったと指摘されている。

このように、ネタニヤフ首相の立場は、徐々に悪化しているということである。

http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/266826

しかし、そこはイスラエル。何が起こるかわからない。それでもネタニヤフ首相が何らかの形で、政権をとるかもしれない。

しかし、その場合、次なる課題が待ち構えている。総選挙の2週間後、ネタニヤフ首相の汚職問題に関する尋問が始まる。ネタニヤフ首相の疑惑が完全に晴れないかぎり、いずれにしても、政権維持は難しいとみられている。

ではいったい、だれがどのような政権を立ち上げるのだろうか???

2)鍵をにぎるリーバーマン氏(イスラエル我が家党)

 前回、ネタニヤフ首相の連立政権樹立を阻止したのは、リーバーマン氏だが、今回も結局、リーバーマン氏が、どちらにつくかでだれが首相になるかが決まる形に変わりはない。

リーバーマン氏のユダヤの家党は、現在、前回の選挙から5議席も伸ばして10議席とも11議席ともと予想されている。リーバーマン氏本人が、政権をとることはないが、今回もリーバーマン氏がどちらにつくかで政権がだれになるかが決まるという鍵的な存在になっている。

リーバーマン氏は、自身のイスラエル我が家党とリクード、ブルーアンドホワイトの3党が、右派左派を含む統一政権を立ち上げることを主張している。これにより、リーバーマン氏が理想とするユダヤ教政党抜きの政府が可能になる。

しかし、ネタニヤフ首相がリクードの党首のままでは、この3党が協力することは、ほぼ不可能である。リーバーマン氏は、リクードが、党首を変えて選挙にのぞみ、統一政権をめざすよう、呼びかけている。

では、だれが、ポスト・ネタニヤフになるかがだ、リクードの選挙名簿で2番目は、現在、国会議長を務めるエデルステイン氏となっている。人格的に紳士、穏やかで、時期大統領と目されるが、首相の器ではないと言われている。

また、リーバーマン氏が提唱する統一政府については、国民の59%が反対との意思表示をしている。

*ネタニヤフ首相意外の党首は認めない忠誠署名問題

こうした中、リクード党のダビッド・バイタン議員が、リクード党員らに対し、時期選挙でも、政府指導者に立つのはネタニヤフ氏のみであると署名させていたことが明らかとなった。

リクードの選挙名簿トップから40人が、署名したという。ネタニヤフ首相ばこれに感謝するコメントを出している。しかし、他党からだけでなく、リクード内部からも、批判が相次いだ。

https://www.jpost.com/Israel-Elections/Likud-MKs-embarrassed-by-loyalty-oath-to-Netanyahu-597768

https://www.jpost.com/Israel-News/Likud-petition-Netanyahu-is-our-leader-597593

<石のひとりごと:予想不可・ポスト・ネタニヤフ>

ネタニヤフ首相は13年以上に渡る在職で、多くの貢献をしてきたことは、明らかである。トランプ大統領の信頼もあり、これからアメリカの中東和平案が出てくるかどうかという時に、新たな首相になることは大きなかけである。

首相にむかないエデルステイン氏、政治経験のない元将軍ガンツ氏、元アナウンサーのラピード氏、どの人物もネタニヤフ首相ほどの貫禄はない。とはいえ、13年以上も同じ人物が首相で、中東和平が進まない中、別の道を探りたいというのも国民の思いのようである。

イスラエル情勢は、ますます緊張しているのに、この選挙。いったいどこへ向かっていくのか。本当にまったく予想不可能である。その分、主のみこころが働きやすいということか・・・
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緊迫するホルムズ海峡情勢:ヒズボラがイスラエル国境へ武力移動か 2019.7.23

 2019-07-23

ホルムズ
ホルムズ海峡:出展BBC

ホルムズ海峡でのアメリカとイランの対立が緊迫を続けており、ヨーロッパ諸国や日本や韓国などアジア諸国も巻き込み始めている。こうした中、イランの傀儡であるヒズボラが、レバノン南部やシリア東部に部隊を増強し、イスラエルへの攻撃に備えるとも見える動きに出ているという情報がある。

今後、ホルムズ海峡での情勢によっては、ヒズボラがイスラエルを攻撃してくるのではないかと懸念されている。

<ホルムズ海峡をめぐる緊張>

ホルムズ海峡でのアメリカとイランの緊張拡大の経過については、この記事の最後にまとめたので参照いただければと思う。

最も最近では、19日、イギリス船籍(乗組員は全員イギリス人以外)タンカーがイランに拿捕された。イランは、このタンカーが、海峡通過時のルールに反していたとし、警告に従わなかったためと主張している。

しかし、イランは、先月、イギリスがジブラルタル海峡で、違法にシリアに原油を搬入しようとしていたイランのタンカーを拿捕したことへの報復とも言っている。これを受けて、イギリスはじめ、フランス、ドイツがイランを非難する声明を出した。続いてサウジアラビアも、イランを非難する声明を出した。

https://www.jpost.com/Middle-East/France-Germany-and-Britain-ban-together-to-condemn-Irans-actions-596261

https://www.timesofisrael.com/saudi-arabia-urges-global-action-against-iran-after-uk-tanker-seized/

続く22日、イランは、CIA(アメリカの中央情報局)のためにイラン国内でスパイ活動をしていたイラン人17人を逮捕し、一部には死刑宣告をしたと発表した。トランプ大統領は、ただちにこの17人と、CIAとの関連を否定する声明を出した。

https://www.bbc.com/news/world-middle-east-49074162

<アメリカの「有志連合」呼びかけで世界規模の対立へ>

アメリカは、ホルムズ海峡に部隊を派遣しているが、中東からの原油を必要としているわけではない。そのため、基本的に、タンカーを守るのは、アメリカではなく、それぞれの国であるべきとの姿勢を表明している。

アメリカは19日、ホルムズ海峡を経由して原油を輸入している60カ国の代表者を集め、アメリカとともに「有志連合」を結成し、地域の安全を監視するシステムを呼びかけた。外交的にもイランに圧力をかける目的があるとみられている。

日本も、この枠に入るため、19日の会合に出席。さらに今、ボルトン米大統領補佐官が来日しており、この件について話し合われたもようである。

日本は、イランからの原油を必要としていることからも、あまりイランを逆なでするようなことはしたくないところだが、日米有効関係からもこの構想に参加しないという選択肢はないと思われる。自衛隊派遣になるかどうか、安倍政権にとって非常に難しい決断になる。

*便宜置籍船システム

ホルムズ海峡を通過するタンカーだが、ややこしいのは、日本を含む先進国が、「便宜地船籍」というシステムを導入している点である。

便宜置船籍とは、自国のタンカーと自国民の乗組員ではなく、パナマなど、海運業により有利な条件を持つ国のタンカーと乗組員を雇うことである。大幅な節税や人件費削減ができるため、昨今、日本を含むほとんどの先進国がこれを採用している。

これにより、たとえば、日本のタンカーであっても、船はパナマの船であって、船員はパナマ人やフィリピン人などである。今回拿捕されたイギリスのタンカーも、スェーデン船籍で、乗組員は、インド人やロシア人、フィリピン人などの外国人でイギリス人はいなかった。

それでもイギリスのタンカーということになり、守るのはイギリスの責任ということになる。

https://www.jsanet.or.jp/seminar/text/seminar_047.html

元タンカー乗りのベテラン、片寄洋一氏は、ホルムズ海峡の危険性が高まれば、雇われ船員が、船を降りてしまう可能性を指摘する。すると原油が各国に届かなくなり、世界が混乱に陥るが、特に日本は、中東の原油に依存しているため、大きく影響を受けることになると警鐘を鳴らしている。

https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20190720-00134950/

<ヒズボラが南部(イスラエル国境)へ部隊を増強か>

Times of Israelが報じたところによると、複数のヒズボラ司令官が、イスラエルとの戦争に備え、レバノン南部、シリア西部のイスラエルとの国境に部隊を増強しているという。

アメリカの雑誌Daily Beastが伝えたところによると、ヒズボラの司令官”サミール”が、万が一イランが攻撃されたら、ヒズボラが、イスラエルへの攻撃を開始するといっていたということである。

イスラエル軍北部担当アミール・バラム大佐は、ヒズボラは、レバノン南部に武力設備を建築中だと指摘。ヒズボラは、レバノン住民の安全には興味がないので、イスラエルとの戦争になった場合、ツケを払うのはレバノン市民になると警告している。

https://www.timesofisrael.com/as-sanctions-choke-iran-hezbollah-said-deploying-for-war-on-israels-border/

*イラン・ホルムズ海峡危機の経過 

(A:アメリカ陣営 I:イラン陣営)

5月2日:A)アメリカのイランの原油禁輸を発動

5月12日:I)サウジアラビアのタンカーをイランが攻撃か

6月13日:I) ホルムズ海峡近辺で、日本企業のタンカー含む2席が機雷による攻撃(イランか?)

6月21日:I) イランが、アメリカのドローンを撃墜。トランプ大統領、直前でイラン攻撃見送り

7月1日:I)イランが濃縮ウランの貯蔵量超過を発表

7月4日:A) イギリスが、ジブラルタル海峡でイランのタンカー(シリアへ原油密輸)拿捕

7月7日 I) イランがウラン濃縮上限を(3.67%)を超過 (20%に達すると核兵器に急速に到達)

7月9日 A) アメリカが有志連合(対イラン連合組織)結成を宣言

7月10日:I) イランが、イギリス船籍タンカー拿捕未遂

7月18日:I) イランがパナマ船籍タンカー拿捕 アメリカのドローンをイランが撃墜とアメリカが発表(イランは否定)

7月19日:I) イランが、イギリス船籍タンカー拿捕(2隻拿捕して1隻解放) アメリカが、ホルムズ海峡を監視する有志連合をよびかけ

7月20日:A) イギリス、フランス、ドイツがイランへの非難声明 サウジアラビアも。

7月22日:I)イランが国内にいるCIAのイラン人スパイ17人を逮捕(一部死刑宣告)したと発表 アメリカはCIAスパイについては否定

<石のひとりごと>

ホルムズ海峡の様子を見ていると、皆が戦争にはしたくないと言いながらも、後戻りできない状況に進んでいるようにみえる。

世界は大きく動いている。政治指導者の決断により、日本もまた国際的な対立や、戦争に巻き込まれていく時代である。国内だけでなく世界においても日本をうまく舵取りのできる人物が必須になっている。

こうした中、日本での参議院選挙での投票率は、50%を下回った。せっかくの選挙権を無駄にする有権者が半数以上にのぼったということである。また今回、れいわ新撰組が大躍進し、日本でも左派ポピュリズムが生まれたと注目されている。ますます内向きになっていくのではないかと懸念される。

あまりにも平和で、若干、過ぎたる個人主義が通る社会。超豊かな生活に慣れきっている私たち日本人が、次なる国際的な戦争に耐えうるだろうかと思わされる。
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